ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百七話「神なき世界」

 

誰も口を開かなかった。

 

ジョイボーイの死。

 

ルーメンの絶望。

 

そして東の果ての島への到達。

 

その全てが重く胸にのしかかっていた。

 

レインは静かにページをめくる。

 

そこには震えるような文字が刻まれていた。

 

今までの日誌とは少し違う。

 

まるで書いている本人の感情が、そのまま紙に刻まれているようだった。

 

『ジョイボーイは最後まで笑っていた』

 

『死ぬ瞬間まで笑っていた』

 

『それでも駄目だった』

 

地下に沈黙が落ちる。

 

レインは続きを読んだ。

 

『勝てなかった』

 

『私たちは負けた』

 

『戦士達も』

 

『仲間達も』

 

『光月家も』

 

『誰一人としてジョイボーイが負けるなど考えていなかった』

 

『それでも負けた』

 

『私たちは負けたのだ』

 

ロジャーが静かに目を閉じる。

 

レイリーも黙ったままだった。

 

おでんも拳を握っている。

 

『この先』

 

『何年も』

 

『何十年も』

 

『何百年も』

 

『この世界に自由は無くなるだろう』

 

『ジョイボーイがいた世界は希望に満ち溢れていた』

 

『人々は笑っていた』

 

『未来を信じていた』

 

『自由を信じていた』

 

『だが、ジョイボーイがいなくなった今、世界は絶望へ変わった』

 

地下の空気が重くなる。

 

ルーメンの絶望が伝わってくる。

 

『あの男こそ自由の象徴だった』

 

『あの男こそ希望だった』

 

『あの男こそ未来だった』

 

『だから私は理解した』

 

『世界はジョイボーイを失ったのだと』

 

レインは拳を握る。

 

その感覚は何となく分かる気がした。

 

ルフィを失った未来。

 

ロジャーを失った未来。

 

そんなものを想像したくもない。

 

『なんて世界は残酷なのだろう』

 

『この世に神はいないのだろうか』

 

『私は何度もそう考えた』

 

『何度も海へ問い掛けた』

 

『何度も空へ問い掛けた』

 

『だが答えは返ってこなかった』

 

『だから私は決めた』

 

『神がいないなら』

 

『私が残そうと』

 

地下にいた全員が顔を上げる。

 

ロジャーも。

 

レイリーも。

 

おでんも。

 

その言葉の意味を理解し始めていた。

 

『私は新しい船を設計した』

 

『人生最高の船だった』

 

『そして最初に向かった場所は魚人島だった』

 

おでんが目を見開く。

 

『そこにはジョイボーイの友人がいた』

 

『魚人島の王』

 

『そして人魚姫がいた』

 

『私は彼女に会った』

 

『そこで私は頼んだ』

 

『もし未来に』

 

『特別な力を持つ人魚姫が生まれたなら』

 

『その子に一つの名前を与えてほしいと』

 

地下が静まり返る。

 

『海の神の名を』

 

『希望の象徴の名を』

 

『ポセイドンを』

 

ルークが息を呑んだ。

 

レインも同じだった。

 

古代兵器。

 

魚人島。

 

全てが繋がっていく。

 

『魚人島を出た私は再び旅に出た』

 

『次の目的地はワノ国だった』

 

おでんが静かに日誌を見つめる。

 

『ワノ国は要塞だった』

 

『高い壁』

 

『険しい山々』

 

『外敵を拒む天然の城』

 

『私は思った』

 

『ここなら隠せると』

 

レインは続きを読む。

 

『私は光月家へ会いに行った』

 

『そして一隻の軍艦を預かってほしいと頼んだ』

 

『私がウォータセブンの船大工の友と共に設計した最高傑作』

 

『世界最強の軍艦』

 

『その名も』

 

『プルトン』

 

地下に衝撃が走る。

 

レイリーが目を見開く。

 

ギャバンも固まった。

 

おでんでさえ驚いている。

 

『だが光月家は悩んだ』

 

『それを隠せば国はさらに閉ざされる』

 

『外との繋がりは失われる』

 

『すると光月家の殿は静かに言った』

 

『世界はもう絶望だ』

 

『今更外と繋がっても意味は無い』

 

『ならば未来へ託そう』

 

おでんは静かに目を閉じた。

 

先祖らしい。

 

そう思った。

 

『私は全てを託した』

 

『プルトンを』

 

『そして』

 

『その在処を示すポーネグリフを』

 

『未来へ残すことを』

 

レインは静かにページをめくる。

 

そして、次の文章を見た瞬間、思わず息を呑んだ。

 

『最後に向かった場所』

 

『それはアラバスタだった』

 

ロジャーが顔を上げる。

 

レイリーも反応した。

 

『二十の王の中で』

 

『唯一最後まで反対してくれた友人がいた国』

 

『ネフェルタリ家』

 

『リリィ王女』

 

地下に沈黙が落ちる。

 

『私は信じていた』

 

『彼女なら生きていると』

 

『彼女なら何か知っていると』

 

『だが、アラバスタへ着いた私達は絶望した』

 

『リリィ王女がいなかった』

 

レインの鼓動が速くなる。

 

『王族に尋ねた』

 

『家臣に尋ねた』

 

『兵士に尋ねた』

 

『だが、誰も首を横に振るだけだった』

 

『そして私は一通の手紙を受け取った』

 

地下にいた全員の視線が日誌へ集まる。

 

『リリィ王女からだった』

 

レインは静かに次のページを開いた。

 

そこには別の筆跡で文字が刻まれていた。

 

八百年前、最後の手紙、ネフェルタリ・D・リリィの言葉が、そこに残されていた。

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