ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百九話「未来へ残したもの」

 

リリィ王女の手紙。

 

Dの意味。

 

そして未来への願い。

 

八百年前から届けられた想いは、確かに全員の胸へ届いていた。

 

レインは静かに息を吐く。

 

だが、まだ日誌は終わっていなかった。

 

最後の数ページが残されている。

 

レインはゆっくりと次のページを開いた。

 

そこには再びルーメンの筆跡が刻まれていた。

 

『私は最後に黄金都市シャンドラへ向かった』

 

おでんが顔を上げる。

 

ロジャーも反応した。

 

シャンドラ。

 

空島へ消えた伝説の黄金都市。

 

『黄金には興味が無かった』

 

『元々私は技術者だ』

 

『金よりも鉄』

 

『宝石よりも工具の方が好きだった』

 

地下に小さな笑いが起きる。

 

何となくレインに似ている。

 

父も苦笑していた。

 

『だが、シャンドラなら都合が良かった』

 

『人の目が少ない』

 

『歴史を残すには最適だった』

 

『私は光月家と協力し』

 

『ポセイドンの在処を示すポーネグリフを残した』

 

ルークが思わず息を呑む。

 

「ポーネグリフ……」

 

「そういうことだったんですね」

 

レイリーも静かに頷いた。

 

『本当にリリィ王女はよくやってくれた』

 

『彼女が世界中へポーネグリフを散らしてくれたお陰で』

 

『希望は消えなかった』

 

『だが、もう会えないのは残念だった』

 

『彼女は友人だった』

 

『最後まで自由を信じた仲間だった』

 

地下に静寂が落ちる。

 

『だが、彼女が残した未来は決して無駄にしない』

 

『私はそう誓った』

 

レインは続きを読む。

 

『シャンドラでの仕事を終えた後』

 

『私は光月家の者達と別れた』

 

『恐らくもう二度と会うことは無い』

 

『そう分かっていた』

 

『だから別れは辛かった』

 

『だが、皆笑っていた』

 

『ジョイボーイがそうだったように』

 

ロジャーの口元が少しだけ上がった。

 

『そして私は東の海へ向かった』

 

『世界の果て』

 

『誰も知らない島へ』

 

『未来へ希望を残すために』

 

地下にいる全員が周囲を見回す。

 

今、自分達が立っているこの島。

 

全ての始まりの場所。

 

『島へ着いた私は山を改造した』

 

『未来へ残すための地下施設を建設した』

 

『一人ではない』

 

『私を慕ってくれた者達も手伝ってくれた』

 

『皆』

 

『ジョイボーイを知る者達だった』

 

『未来を信じる者達だった』

 

父が静かに目を閉じる。

 

長老も同じだった。

 

ヴェルク家の始まり。

 

その瞬間が語られている。

 

『建設は二年続いた』

 

『岩を削り』

 

『通路を掘り』

 

『部屋を造った』

 

『そして完成した』

 

レインは無意識に周囲を見る。

 

今いる場所そのものだ。

 

『私は三つの部屋を造った』

 

地下にいた全員が息を呑んだ。

 

『一つ目』

 

『ポーネグリフと設計図を保管する部屋』

 

『未来へ技術を残すための部屋だ』

 

ロジャーが振り返る。

 

先程までいた部屋。

 

あそこには確かに設計図が大量に残されていた。

 

『二つ目』

 

『私の日誌』

 

『書物』

 

『歴史』

 

『知識を残す書斎』

 

レイン達が今いる部屋だ。

 

全てが繋がった。

 

『そして』

 

『三つ目』

 

地下の空気が張り詰める。

 

『その奥に私は残すことにした』

 

『未来の誰かが作れることを祈って』

 

『未来の誰かが空へ届くことを祈って』

 

『ジョイボーイが夢見た世界へ辿り着けることを祈って』

 

レインの鼓動が速くなる。

 

『私の最高傑作を』

 

『私が生涯をかけて研究した全てを』

 

そして、それが日誌の最後だった。

 

文章はそこで終わっていた。

 

地下に沈黙が落ちる。

 

誰も動かない。

 

誰も喋らない。

 

八百年前の男が残した最後の言葉。

 

未来への願い。

 

その全てが胸に響いていた。

 

やがて、ロジャーが静かに口を開く。

 

「終わったな」

 

その声はどこか寂しそうだった。

 

レイリーも頷く。

 

おでんも何も言わない。

 

レインはゆっくりと日誌を閉じた。

 

八百年間眠っていた物語が終わった。

 

だが、その瞬間だった。

 

奥の壁のさらに向こうに続く通路を見つけたのは...

 

「……あった」

 

レインが呟く。

 

全員が顔を上げる。

 

書斎の奥。

 

今まで気付かなかった隠し扉。

 

それがゆっくりと開いていた。

 

ロジャー達も立ち上がる。

 

レインは先頭に立った。

 

そして全員で奥へ進む。

 

扉の先、そこに広がっていた光景を見た瞬間、レインは言葉を失った。

 

「……は?」

 

思わず前世の言葉が漏れる。

 

そこには大量の金属が並んでいた。

 

見たことがある。

 

いや、見間違えるはずがない。

 

前世で何度も見た材料だった。

 

「嘘だろ……」

 

レインの手が震える。

 

チタン合金。

 

アルミ合金。

 

高強度特殊鋼。

 

強化プラスチック。

 

軽量複合素材。

 

どう考えてもこの時代に存在してはいけない物ばかりだった。

 

ロジャー達には価値が分からない。

 

だがレインだけは理解していた。

 

理解してしまった。

 

「これ……」

 

「空飛ぶ船が作れる……」

 

地下に沈黙が落ちる。

 

レインの瞳は目の前の材料へ釘付けになっていた。

 

ルーメン...あんたはどこまで先を見ていたんだ。

 

八百年前、世界が滅ぶ中、この男は未来の船を作ろうとしていた。

 

そして、その夢を未来へ託したのだ。

 

レインという、八百年後の船大工へ...

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