ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
宴は最高潮を迎えていた。
ロジャーは酒樽を抱えて笑い、おでんは肉を頬張り、島の人々も巻き込んで大騒ぎになっている。
シャンクスとバギーはレインの周りをうろうろしていた。
「なあなあ!」
「本当に今度戦い方教えてくれるのか?」
「少しだけですよ」
「やった!」
シャンクスが喜ぶ。
その横でバギーも腕を組みながら頷いていた。
「俺は強くなるからな!」
「そうですか」
「反応薄いな!?」
そんなやり取りをしていた時だった。
「む?」
おでんの視線が止まる。
その先にあったのはレインの腰。
正確には腰に差された刀。
黎明。
鍛冶修行を終えたレインへ、師匠が託した一振りだった。
おでんの表情が変わる。
先程まで宴会で騒いでいた男とは思えない。
完全に剣士の顔だった。
「レイン」
「何ですか?」
「その刀」
おでんがゆっくり立ち上がる。
「見せてくれないか?」
レインは少し驚いたが頷いた。
「良いですよ」
そう言って黎明を鞘ごと差し出す。
おでんは慎重に受け取った。
その動作だけで分かる。
本当に刀が好きなのだろう。
レイリーも視線を向ける。
ギャバンも腕を組んだ。
ロジャーは肉を食べながら眺めている。
そして、おでんがゆっくりと刀を抜いた。
キィン―――。
澄んだ音が夜空へ響く。
月明かりを受けた刀身が静かに輝いた。
その瞬間だった。
おでんの目が見開かれる。
「……おい」
低い声だった。
レイリーが反応する。
「どうした?」
おでんは刀身から目を離さない。
そして静かに呟いた。
「信じられん」
宴の空気が変わる。
おでんがここまで驚くのは珍しい。
ロジャーも肉を食べるのを止めた。
「何じゃ?」
おでんはゆっくり顔を上げた。
「この刀」
そして。
はっきりと言った。
「最上大業物だ」
沈黙。
宴会場が静まり返った。
レイン以外の島民達は何のことか分からない。
だが、
ロジャー。
レイリー。
ギャバン。
そしてロジャー海賊団の面々は違った。
全員が目を見開いていた。
「は?」
ロジャーが固まる。
「最上大業物じゃと?」
「間違いない」
おでんは即答した。
「そんな……」
レイリーですら驚いている。
ギャバンも刀身を見つめていた。
ロジャーが首を傾げる。
「そんなに凄いのか?」
おでんは呆れたようにため息を吐く。
「凄いなんてもんじゃない」
「この海に何本あると思う?」
「知らん」
「十二本だ」
ロジャーの手から肉が落ちた。
「十二本!?」
「世界中探しても十二本しか存在しない」
「その頂点に立つ刀だ」
周囲がざわつく。
シャンクスも目を丸くしていた。
バギーは完全に固まっている。
「じゅ、十二本……」
「そんなの持ってるのかよ……」
レインは苦笑した。
正直なところ。
刀の価値よりも師匠から貰ったことの方が大切だった。
おでんは刀身を見つめる。
その目は真剣そのものだった。
「驚いたな」
「何がです?」
レインが尋ねる。
するとおでんは笑った。
「刀もだ」
「だがもっと驚いていることがある」
「?」
おでんは黎明を軽く持ち上げる。
「この刀がお前を選んでいる」
その言葉にレインは少し目を見開いた。
「刀がお前を認めている」
「だから力を貸している」
「そうでなければこんなに馴染むはずがない」
レイリーも頷いた。
「確かにな」
「刀は使い手を選ぶ」
「特に名刀はな」
ロジャーだけがよく分かっていない顔をしている。
「そういうものなのか?」
「そういうものだ」
レイリーが即答した。
おでんはゆっくりと黎明を鞘へ戻した。
そしてレインへ返す。
「良い刀だ」
「大切にしろ」
レインは静かに受け取った。
「もちろんです」
師匠から託された刀だ。
手放すつもりなど無い。
おでんはそんなレインを見て笑う。
「それで?」
「何ですか?」
「その刀で俺と戦ったらどうなると思う?」
突然だった。
周囲が静まり返る。
レインは少し考える。
そして、
「負けますね」
即答だった。
おでんが笑う。
「正直だな」
「まだ敵いません」
「だろうな」
ルークも頷いた。
今のおでんは新世界でも最強格だ。
流石にまだ勝てない。
だが、おでんは続けた。
「だが十年後は分からん」
その言葉に周囲が固まる。
ロジャーが吹き出した。
「ガハハハハ!」
「お前がそんな評価するとはな!」
レイリーも少し驚いていた。
おでんは笑う。
「面白いからな」
そしてレインを見る。
「十四歳で最上大業物を持つ剣士」
「見聞色も武装色も使える」
「飛ぶ斬撃まで使う」
「しかも船大工だ」
おでんは豪快に笑った。
「意味が分からん!」
「俺もそう思います」
ルークが即答する。
宴会場が爆笑に包まれた。
レインだけが納得いかない顔をしていた。
だが、そんな賑やかな宴の中。
ロジャーだけは静かに笑っていた。
まるで未来を見ているかのように。
そして誰も気付いていなかった。
この出会いが、未来の海を大きく動かす縁の始まりだったことに。