ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百十五話「基準がおかしい男」

 

気付けば太陽は西へ傾いていた。

 

朝から始まった特訓は、いつの間にか夕方まで続いていたのである。

 

海岸近くの広場では、シャンクスとバギーが地面へ大の字になって倒れていた。

 

「はぁ……」

 

「はぁ……」

 

二人とも全身汗だくだ。

 

服は砂まみれ。

 

頭には立派なたんこぶまで出来ている。

 

一方、レインは木刀を肩に担ぎながら平然としていた。

 

汗はかいているが、まだ余裕がある。

 

ルークは苦笑しながら二人を見下ろした。

 

「お疲れ様です」

 

「レインの奴、全然疲れてねぇ……」

 

バギーが恨めしそうに言う。

 

シャンクスも頷いた。

 

「強すぎるだろ……」

 

「まあな」

 

レインはあっさり認めた。

 

「否定しないのかよ!」

 

バギーが叫ぶ。

 

だがレインは真面目な顔だった。

 

「事実だからな」

 

「腹立つなぁ!」

 

シャンクスとバギーが同時に叫んだ。

 

そんなやり取りをしながら、一行は宴会場へ戻る。

 

すると既にロジャー海賊団の面々は酒を飲み始めていた。

 

ロジャーは大ジョッキを片手に笑う。

 

「おー!」

 

「帰ってきたか!」

 

おでんも豪快に手を振る。

 

「どうだった?」

 

レイリーとギャバンも興味深そうに視線を向ける。

 

ロジャーがシャンクス達を見る。

 

「成果はあったか?」

 

すると、二人は顔を見合わせた。

 

そして、

 

「全然駄目だった……」

 

「一回も当たらなかった……」

 

ロジャー海賊団が大笑いした。

 

「ガハハハハハ!」

 

「そりゃそうだ!」

 

「相手が悪い!」

 

おでんなど腹を抱えている。

 

レイリーも苦笑していた。

 

だが、レインは笑わなかった。

 

「弱い」

 

その一言だった。

 

場が静まる。

 

シャンクスとバギーが固まった。

 

「え?」

 

「今のままだと弱い」

 

レインは真顔だった。

 

「身体能力は悪くない」

 

「根性もある」

 

「でも弱い」

 

容赦がない。

 

シャンクスが悔しそうに拳を握る。

 

バギーも唇を噛んだ。

 

レイリーが苦笑する。

 

「厳しいな」

 

「事実だからな」

 

レインは肩を竦めた。

 

「東の海なら強い方だと思う」

 

「でもグランドラインじゃ厳しい」

 

その言葉にロジャー達は頷く。

 

新世界を知る者達だからこそ、その意味が分かった。

 

「だが十二歳なら十分だろう?」

 

ギャバンが言う。

 

おでんも頷いた。

 

「普通はそうだな」

 

すると、レインは首を傾げた。

 

「そうか?」

 

その一言で、ルークが顔を覆った。

 

嫌な予感しかしない。

 

「そうか?とは?」

 

レイリーが聞く。

 

レインは本気で不思議そうだった。

 

「俺が十二歳の時なんて」

 

ロジャー海賊団が静かになる。

 

ルークは空を見上げた。

 

始まった。

 

「海兵に覇気教えてたぞ」

 

沈黙。

 

数秒。

 

誰も反応しない。

 

いや、反応できなかった。

 

「……は?」

 

ロジャーが固まる。

 

「しかも海軍本部に招待された」

 

さらに沈黙...

 

今度はおでんが固まる。

 

ギャバンも固まる。

 

レイリーも固まる。

 

「……は?」

 

レイリーが聞き返した。

 

レインは普通に続ける。

 

「確か二十一歳だったな」

 

「クザンって海兵がいて」

 

「見聞色と武装色のコツ教えたら」

 

「海軍本部に来ないかって誘われた」

 

数秒後、

 

「「「はぁぁぁぁぁぁ!?」」」

 

ロジャー海賊団の大絶叫が響いた。

 

島中に聞こえたんじゃないかというレベルだった。

 

レインがびくっとする。

 

「何だよ」

 

「何だよじゃねぇ!!」

 

ロジャーが机を叩いた。

 

「十二歳だぞ!?」

 

「うん」

 

「海兵に覇気を教えた!?」

 

「うん」

 

「海軍本部に招待された!?」

 

「うん」

 

「うんじゃねぇ!!」

 

おでんが大爆笑する。

 

「はははははは!」

 

「何だそりゃ!」

 

ギャバンは頭を抱えていた。

 

レイリーも額を押さえる。

 

「なるほどな……」

 

「何がです?」

 

レインが聞く。

 

レイリーは深いため息を吐いた。

 

「お前の基準がおかしい理由が分かった」

 

「そうか?」

 

「そうだ」

 

全員一致だった。

 

ルークも力強く頷く。

 

「レインさん」

 

「何だ?」

 

「普通の十二歳は海軍本部に招待されません」

 

「そうなのか?」

 

「そうです」

 

即答だった。

 

シャンクスとバギーは目を輝かせていた。

 

「海軍本部!?」

 

「すげぇ!」

 

「大将とかいたのか!?」

 

レインは少し考える。

 

「いたな」

 

「うおおおお!」

 

「本当にいたのか!」

 

二人は興奮している。

 

だがロジャー達は別の意味で頭を抱えていた。

 

すると、レインがふと思い出したように言った。

 

「あ」

 

嫌な予感がした。

 

今度はロジャー達が顔をしかめる。

 

「言うの忘れてた」

 

「何をだ?」

 

ロジャーが聞く。

 

レインは何でもないことのように言った。

 

「たまにここにガープ中将来るぞ」

 

沈黙。

 

ロジャーの笑顔が消えた。

 

レイリーも固まる。

 

ギャバンも止まる。

 

おでんも動きを止めた。

 

「……は?」

 

ロジャーが聞き返す。

 

「だからガープ中将」

 

「ガープ?」

 

「そう」

 

再び沈黙。

 

「何で!?」

 

ロジャーが叫んだ。

 

レインは首を傾げる。

 

「何でって」

 

「来るから」

 

「説明になっとらん!」

 

ロジャーが机を叩いた。

 

レインは少し考えた。

 

そして、

 

「ああ、てか看板見えてるよね?」

 

「看板?」

 

全員が首を傾げる。

 

レインは海岸の方を指差した。

 

「港の入口」

 

「ガープ中将歓迎」

 

「って書いてある看板」

 

沈黙...

 

ロジャー海賊団が一斉に振り向く。

 

確かに、遠くの港には大きな看板が立っていた。

 

そこには、

 

『海軍本部中将 ガープ殿歓迎』

 

と大きく書かれていた。

 

再び沈黙...

 

ロジャー達がゆっくりレインを見る。

 

レインは不思議そうだった。

 

「見てなかったのか?」

 

ロジャーが頭を抱えた。

 

レイリーも頭を抱えた。

 

ギャバンも頭を抱えた。

 

おでんだけが爆笑していた。

 

「はははははは!」

 

「最高だなこの島!」

 

ロジャーは天を仰ぐ。

 

「何なんだこの島は……」

 

海軍の英雄が遊びに来る島。

 

海軍本部に招待された少年。

 

最上大業物を持つ十四歳。

 

そして空飛ぶ船を作ろうとしている船大工。

 

レイリーが酒を飲みながら呟く。

 

「やっぱり」

 

「何だ?」

 

ロジャーが聞く。

 

レイリーは苦笑した。

 

「レインを基準にしたら駄目だな」

 

全員が深く頷いた。

 

レインだけを除いて...

 

「だから何でだよ」

 

その言葉に、宴会場は再び爆笑に包まれるのだった。

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