ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
気付けば太陽は西へ傾いていた。
朝から始まった特訓は、いつの間にか夕方まで続いていたのである。
海岸近くの広場では、シャンクスとバギーが地面へ大の字になって倒れていた。
「はぁ……」
「はぁ……」
二人とも全身汗だくだ。
服は砂まみれ。
頭には立派なたんこぶまで出来ている。
一方、レインは木刀を肩に担ぎながら平然としていた。
汗はかいているが、まだ余裕がある。
ルークは苦笑しながら二人を見下ろした。
「お疲れ様です」
「レインの奴、全然疲れてねぇ……」
バギーが恨めしそうに言う。
シャンクスも頷いた。
「強すぎるだろ……」
「まあな」
レインはあっさり認めた。
「否定しないのかよ!」
バギーが叫ぶ。
だがレインは真面目な顔だった。
「事実だからな」
「腹立つなぁ!」
シャンクスとバギーが同時に叫んだ。
そんなやり取りをしながら、一行は宴会場へ戻る。
すると既にロジャー海賊団の面々は酒を飲み始めていた。
ロジャーは大ジョッキを片手に笑う。
「おー!」
「帰ってきたか!」
おでんも豪快に手を振る。
「どうだった?」
レイリーとギャバンも興味深そうに視線を向ける。
ロジャーがシャンクス達を見る。
「成果はあったか?」
すると、二人は顔を見合わせた。
そして、
「全然駄目だった……」
「一回も当たらなかった……」
ロジャー海賊団が大笑いした。
「ガハハハハハ!」
「そりゃそうだ!」
「相手が悪い!」
おでんなど腹を抱えている。
レイリーも苦笑していた。
だが、レインは笑わなかった。
「弱い」
その一言だった。
場が静まる。
シャンクスとバギーが固まった。
「え?」
「今のままだと弱い」
レインは真顔だった。
「身体能力は悪くない」
「根性もある」
「でも弱い」
容赦がない。
シャンクスが悔しそうに拳を握る。
バギーも唇を噛んだ。
レイリーが苦笑する。
「厳しいな」
「事実だからな」
レインは肩を竦めた。
「東の海なら強い方だと思う」
「でもグランドラインじゃ厳しい」
その言葉にロジャー達は頷く。
新世界を知る者達だからこそ、その意味が分かった。
「だが十二歳なら十分だろう?」
ギャバンが言う。
おでんも頷いた。
「普通はそうだな」
すると、レインは首を傾げた。
「そうか?」
その一言で、ルークが顔を覆った。
嫌な予感しかしない。
「そうか?とは?」
レイリーが聞く。
レインは本気で不思議そうだった。
「俺が十二歳の時なんて」
ロジャー海賊団が静かになる。
ルークは空を見上げた。
始まった。
「海兵に覇気教えてたぞ」
沈黙。
数秒。
誰も反応しない。
いや、反応できなかった。
「……は?」
ロジャーが固まる。
「しかも海軍本部に招待された」
さらに沈黙...
今度はおでんが固まる。
ギャバンも固まる。
レイリーも固まる。
「……は?」
レイリーが聞き返した。
レインは普通に続ける。
「確か二十一歳だったな」
「クザンって海兵がいて」
「見聞色と武装色のコツ教えたら」
「海軍本部に来ないかって誘われた」
数秒後、
「「「はぁぁぁぁぁぁ!?」」」
ロジャー海賊団の大絶叫が響いた。
島中に聞こえたんじゃないかというレベルだった。
レインがびくっとする。
「何だよ」
「何だよじゃねぇ!!」
ロジャーが机を叩いた。
「十二歳だぞ!?」
「うん」
「海兵に覇気を教えた!?」
「うん」
「海軍本部に招待された!?」
「うん」
「うんじゃねぇ!!」
おでんが大爆笑する。
「はははははは!」
「何だそりゃ!」
ギャバンは頭を抱えていた。
レイリーも額を押さえる。
「なるほどな……」
「何がです?」
レインが聞く。
レイリーは深いため息を吐いた。
「お前の基準がおかしい理由が分かった」
「そうか?」
「そうだ」
全員一致だった。
ルークも力強く頷く。
「レインさん」
「何だ?」
「普通の十二歳は海軍本部に招待されません」
「そうなのか?」
「そうです」
即答だった。
シャンクスとバギーは目を輝かせていた。
「海軍本部!?」
「すげぇ!」
「大将とかいたのか!?」
レインは少し考える。
「いたな」
「うおおおお!」
「本当にいたのか!」
二人は興奮している。
だがロジャー達は別の意味で頭を抱えていた。
すると、レインがふと思い出したように言った。
「あ」
嫌な予感がした。
今度はロジャー達が顔をしかめる。
「言うの忘れてた」
「何をだ?」
ロジャーが聞く。
レインは何でもないことのように言った。
「たまにここにガープ中将来るぞ」
沈黙。
ロジャーの笑顔が消えた。
レイリーも固まる。
ギャバンも止まる。
おでんも動きを止めた。
「……は?」
ロジャーが聞き返す。
「だからガープ中将」
「ガープ?」
「そう」
再び沈黙。
「何で!?」
ロジャーが叫んだ。
レインは首を傾げる。
「何でって」
「来るから」
「説明になっとらん!」
ロジャーが机を叩いた。
レインは少し考えた。
そして、
「ああ、てか看板見えてるよね?」
「看板?」
全員が首を傾げる。
レインは海岸の方を指差した。
「港の入口」
「ガープ中将歓迎」
「って書いてある看板」
沈黙...
ロジャー海賊団が一斉に振り向く。
確かに、遠くの港には大きな看板が立っていた。
そこには、
『海軍本部中将 ガープ殿歓迎』
と大きく書かれていた。
再び沈黙...
ロジャー達がゆっくりレインを見る。
レインは不思議そうだった。
「見てなかったのか?」
ロジャーが頭を抱えた。
レイリーも頭を抱えた。
ギャバンも頭を抱えた。
おでんだけが爆笑していた。
「はははははは!」
「最高だなこの島!」
ロジャーは天を仰ぐ。
「何なんだこの島は……」
海軍の英雄が遊びに来る島。
海軍本部に招待された少年。
最上大業物を持つ十四歳。
そして空飛ぶ船を作ろうとしている船大工。
レイリーが酒を飲みながら呟く。
「やっぱり」
「何だ?」
ロジャーが聞く。
レイリーは苦笑した。
「レインを基準にしたら駄目だな」
全員が深く頷いた。
レインだけを除いて...
「だから何でだよ」
その言葉に、宴会場は再び爆笑に包まれるのだった。