ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百二十話「海賊王候補の病」

 

シャンクスが見聞色に目覚めてから数日後、ロジャー海賊団が島へ上陸して十日が経っていた。

 

流石にそろそろ出航するらしい。

 

港ではロジャー海賊団の船員達が準備を進めていた。

 

荷物の積み込み。

 

帆の確認。

 

船体点検。

 

いつでも出航できる状態である。

 

レインとルークも見送りに来ていた。

 

「ついに帰るんですね」

 

ルークが言う。

 

「長かったな」

 

レインも苦笑する。

 

十日。

 

普通の海賊なら数時間で去る。

 

だがこの連中は違った。

 

もはや島民と化している。

 

ロジャーなど漁師達と釣りをしていたし、おでんは子供達と鬼ごっこをしていた。

 

レイリーですら島の酒場の常連になっている。

 

「ガハハハ!」

 

「世話になったな!」

 

ロジャーが笑う。

 

すると、レインが何かを思い出した。

 

「あ...」

 

「どうした?」

 

ルークが聞く。

 

レインは少し考えた後、ロジャーを見る。

 

「ちょっと待った」

 

「ん?」

 

「一日出航遅らせられるか?」

 

港が静かになる。

 

ロジャーが首を傾げる。

 

レイリーも見る。

 

ギャバンも見る。

 

おでんも見る。

 

「何だ?」

 

ロジャーが聞く。

 

レインは腕を組んだ。

 

「忘れてた」

 

「何をだ?」

 

「診察」

 

全員が固まる。

 

「診察?」

 

「そう」

 

レインはロジャーを指差した。

 

「ロジャーを診察させてくれ」

 

沈黙。

 

数秒。

 

「は?」

 

ロジャーが固まる。

 

「何でじゃ?」

 

「病気だから」

 

再び沈黙。

 

今度はレイリーが固まった。

 

クロッカスも固まった。

 

おでんも固まった。

 

ルークだけは納得していた。

 

「ああ...そういえば医者でしたね」

 

その瞬間、ロジャー海賊団全員がルークを見る。

 

そして、

 

「は?」

 

綺麗に揃った。

 

レインは首を傾げる。

 

「何だよ」

 

ギャバンが聞く。

 

「お前医者なのか?」

 

「ああ」

 

「船大工だろ?」

 

「ああ」

 

「鍛冶屋だろ?」

 

「ああ」

 

「覇気も使うだろ?」

 

「ああ」

 

「何個肩書あるんだよ!」

 

全員の総ツッコミだった。

 

おでんなど腹を抱えている。

 

「ははははは!」

 

「意味分からねぇ!」

 

レイリーも苦笑した。

 

「今更だろ」

 

「確かにな」

 

ロジャーも笑う。

 

だが、レインの表情は真剣だった。

 

ロジャーの病。

 

未来を知るレインにとって最大級の謎の一つ。

 

海賊王になる男を蝕む不治の病。

 

それが何なのか。

 

どうしても知りたかった。

 

「頼む」

 

珍しく真面目な声だった。

 

ロジャーも察したらしい。

 

笑いながら頷く。

 

「良いぞ」

 

「ありがとう」

 

そして、診察は始まった。

 

工房の奥。

 

簡易診療所。

 

ロジャー。

 

クロッカス。

 

レイン。

 

三人だけだった。

 

まず脈を測る。

 

次に目を見る。

 

呼吸。

 

心音。

 

全身状態。

 

前世の知識。

 

そして今世で学んだ医学。

 

その全てを総動員する。

 

だが、診察が進むほど。

 

レインの表情は曇っていった。

 

一時間後、診察が終わる。

 

ロジャーが笑う。

 

「どうだ?」

 

レインは黙る。

 

クロッカスも黙る。

 

そして、静かに首を横へ振った。

 

「……駄目か」

 

ロジャーは笑った。

 

だが、レインは思わず言った。

 

「いや」

 

「何だ?」

 

「それでよくそんなに元気だな」

 

本音だった。

 

普通なら立っているのも辛い。

 

それほど体は蝕まれていた。

 

ロジャーは大笑いする。

 

「ガハハハハ!」

 

「クロッカスがおるからな!」

 

クロッカスも苦笑する。

 

だが、その表情は少し複雑だった。

 

レインは聞く。

 

「何なんだ?」

 

「え?」

 

「病名」

 

「分かるのか?」

 

クロッカスはしばらく黙った。

 

そして、静かに首を横へ振る。

 

「分からん」

 

レインが固まる。

 

「分からない?」

 

「ああ」

 

クロッカスは深いため息を吐いた。

 

「俺も分からん」

 

沈黙。

 

レインは目を見開く。

 

海で最高峰の医者。

 

後にラブーンを世話し続ける男。

 

そのクロッカスが分からないと言った。

 

「症状は分かる」

 

「進行も分かる」

 

「治らないことも分かる」

 

「だが」

 

クロッカスは拳を握る。

 

「病名が分からん」

 

部屋が静まり返る。

 

ロジャーだけが笑っていた。

 

「だから不治の病なんじゃろ」

 

「笑い事じゃない」

 

レインが即答する。

 

ロジャーはまた笑った。

 

「ガハハハハ!」

 

「お前は本当に面白いな!」

 

だが、レインは笑えなかった。

 

前世でも分からなかった。

 

今世でも分からなかった。

 

それほど異質な病だった。

 

そして、レインは改めて理解する。

 

ロジャーの命は長くない。

 

未来は変わっていない。

 

その事実だけは、どうしても変えられなかった。

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