ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
シャンクスが見聞色に目覚めてから数日後、ロジャー海賊団が島へ上陸して十日が経っていた。
流石にそろそろ出航するらしい。
港ではロジャー海賊団の船員達が準備を進めていた。
荷物の積み込み。
帆の確認。
船体点検。
いつでも出航できる状態である。
レインとルークも見送りに来ていた。
「ついに帰るんですね」
ルークが言う。
「長かったな」
レインも苦笑する。
十日。
普通の海賊なら数時間で去る。
だがこの連中は違った。
もはや島民と化している。
ロジャーなど漁師達と釣りをしていたし、おでんは子供達と鬼ごっこをしていた。
レイリーですら島の酒場の常連になっている。
「ガハハハ!」
「世話になったな!」
ロジャーが笑う。
すると、レインが何かを思い出した。
「あ...」
「どうした?」
ルークが聞く。
レインは少し考えた後、ロジャーを見る。
「ちょっと待った」
「ん?」
「一日出航遅らせられるか?」
港が静かになる。
ロジャーが首を傾げる。
レイリーも見る。
ギャバンも見る。
おでんも見る。
「何だ?」
ロジャーが聞く。
レインは腕を組んだ。
「忘れてた」
「何をだ?」
「診察」
全員が固まる。
「診察?」
「そう」
レインはロジャーを指差した。
「ロジャーを診察させてくれ」
沈黙。
数秒。
「は?」
ロジャーが固まる。
「何でじゃ?」
「病気だから」
再び沈黙。
今度はレイリーが固まった。
クロッカスも固まった。
おでんも固まった。
ルークだけは納得していた。
「ああ...そういえば医者でしたね」
その瞬間、ロジャー海賊団全員がルークを見る。
そして、
「は?」
綺麗に揃った。
レインは首を傾げる。
「何だよ」
ギャバンが聞く。
「お前医者なのか?」
「ああ」
「船大工だろ?」
「ああ」
「鍛冶屋だろ?」
「ああ」
「覇気も使うだろ?」
「ああ」
「何個肩書あるんだよ!」
全員の総ツッコミだった。
おでんなど腹を抱えている。
「ははははは!」
「意味分からねぇ!」
レイリーも苦笑した。
「今更だろ」
「確かにな」
ロジャーも笑う。
だが、レインの表情は真剣だった。
ロジャーの病。
未来を知るレインにとって最大級の謎の一つ。
海賊王になる男を蝕む不治の病。
それが何なのか。
どうしても知りたかった。
「頼む」
珍しく真面目な声だった。
ロジャーも察したらしい。
笑いながら頷く。
「良いぞ」
「ありがとう」
そして、診察は始まった。
工房の奥。
簡易診療所。
ロジャー。
クロッカス。
レイン。
三人だけだった。
まず脈を測る。
次に目を見る。
呼吸。
心音。
全身状態。
前世の知識。
そして今世で学んだ医学。
その全てを総動員する。
だが、診察が進むほど。
レインの表情は曇っていった。
一時間後、診察が終わる。
ロジャーが笑う。
「どうだ?」
レインは黙る。
クロッカスも黙る。
そして、静かに首を横へ振った。
「……駄目か」
ロジャーは笑った。
だが、レインは思わず言った。
「いや」
「何だ?」
「それでよくそんなに元気だな」
本音だった。
普通なら立っているのも辛い。
それほど体は蝕まれていた。
ロジャーは大笑いする。
「ガハハハハ!」
「クロッカスがおるからな!」
クロッカスも苦笑する。
だが、その表情は少し複雑だった。
レインは聞く。
「何なんだ?」
「え?」
「病名」
「分かるのか?」
クロッカスはしばらく黙った。
そして、静かに首を横へ振る。
「分からん」
レインが固まる。
「分からない?」
「ああ」
クロッカスは深いため息を吐いた。
「俺も分からん」
沈黙。
レインは目を見開く。
海で最高峰の医者。
後にラブーンを世話し続ける男。
そのクロッカスが分からないと言った。
「症状は分かる」
「進行も分かる」
「治らないことも分かる」
「だが」
クロッカスは拳を握る。
「病名が分からん」
部屋が静まり返る。
ロジャーだけが笑っていた。
「だから不治の病なんじゃろ」
「笑い事じゃない」
レインが即答する。
ロジャーはまた笑った。
「ガハハハハ!」
「お前は本当に面白いな!」
だが、レインは笑えなかった。
前世でも分からなかった。
今世でも分からなかった。
それほど異質な病だった。
そして、レインは改めて理解する。
ロジャーの命は長くない。
未来は変わっていない。
その事実だけは、どうしても変えられなかった。