ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百二十一話「未知の病」

 

診察が終わった後、レイン達は工房の応接室へ移動していた。

 

ロジャーは椅子へ座りながら笑っている。

 

まるで自分の病気の話ではないかのようだった。

 

クロッカスは腕を組み、静かに考え込んでいる。

 

そしてレインは机へ向かい、診察結果を書き留めていた。

 

部屋の中は静かだった。

 

そんな中、ルークがぽつりと呟く。

 

「初めて見ました」

 

レインが顔を上げる。

 

「何を?」

 

「レインさんが出来ないって首を横に振るところです」

 

部屋が静かになる。

 

ロジャーが笑う。

 

クロッカスも少しだけ驚いた顔をした。

 

確かにそうだった。

 

レインは今まで様々な問題を解決してきた。

 

船。

 

鍛冶。

 

工房経営。

 

覇気。

 

医学。

 

地下遺跡。

 

資源開発。

 

どんな問題でも何かしら答えを見つけてきた。

 

だが今回は違った。

 

レインはため息を吐く。

 

「思ったより厄介だった」

 

本音だった。

 

いや、厄介などという言葉では足りない。

 

意味が分からなかった。

 

医者として絶対に言ってはいけない言葉だが。

 

正直な感想は一つだった。

 

「呪いって言われた方がまだ納得できる」

 

クロッカスが思わず苦笑する。

 

「全く同じことを考えたことがある」

 

レインが驚いて顔を上げる。

 

クロッカスほどの医者が同じ結論に至っていた。

 

それだけ異常なのだ。

 

「症状はある」

 

「身体は蝕まれている」

 

「確実に進行している」

 

「だが原因が見えない」

 

クロッカスは静かに言う。

 

「何なんだこの病気はとな」

 

レインも深く頷いた。

 

前世の医学知識。

 

今世で学んだ医学。

 

両方を総動員しても分からない。

 

ロジャーだけが大笑いしていた。

 

「ガハハハハ!」

 

「面白い病気じゃろ!」

 

「全然面白くない」

 

レインが即答する。

 

ルークも頷いた。

 

「全然面白くないですね」

 

「そうか?」

 

「そうです!」

 

二人に同時に言われ、ロジャーはまた笑った。

 

そんな時だった。

 

レインが何かを思いつく。

 

そしてロジャーを見る。

 

「一つ頼みがある」

 

「何じゃ?」

 

「血を少し分けてくれ」

 

ロジャーが首を傾げる。

 

「血?」

 

「ああ」

 

レインは真剣だった。

 

「研究したい」

 

部屋が静かになる。

 

「不治の病を」

 

ロジャーは数秒だけ考えた。

 

そして、

 

「良いぞ」

 

あっさりだった。

 

レイリーならもっと悩む。

 

クロッカスならもっと警戒する。

 

だがロジャーは違った。

 

「本当に良いのか?」

 

「構わん」

 

ロジャーは笑う。

 

「お前なら悪いことには使わんじゃろ」

 

レインも笑う。

 

「当然だ」

 

その後、採血が始まった。

 

必要な量だけ採取する。

 

ロジャーは終始平然としていた。

 

採血が終わる頃には、むしろ退屈そうだった。

 

「終わったか?」

 

「終わった」

 

「なら寝る」

 

そう言って長椅子へ横になる。

 

相変わらず自由な男だった。

 

やがて寝息が聞こえ始める。

 

その間、レインは机へ向かった。

 

目の前にはノート。

 

そしてクロッカス。

 

「クロッカスさん」

 

「何だ?」

 

「知っていることを全部教えてください」

 

クロッカスの目が少し変わる。

 

医者の顔だった。

 

「全部か」

 

「ああ」

 

「長くなるぞ」

 

「構わない」

 

クロッカスは頷いた。

 

そして話し始める。

 

最初に症状が出た時期。

 

進行速度。

 

発作の有無。

 

薬への反応。

 

食事との関係。

 

睡眠との関係。

 

過去の検査結果。

 

考えられる原因。

 

否定された仮説。

 

試した治療法。

 

全て、レインは一言も聞き漏らすまいと必死に記録していく。

 

ノートが一冊埋まる。

 

二冊目も埋まる。

 

ルークは隣で驚いていた。

 

これほど真剣なレインを見るのは久しぶりだった。

 

夕方、窓から差し込む光が赤くなる頃にようやく話は終わった。

 

レインはノートを閉じる。

 

そこには膨大な記録が残されていた。

 

だが、答えはまだ見つからない。

 

それでも、レインは諦めなかった。

 

机の上にはロジャーの血液。

 

そして大量の記録。

 

「絶対に調べてやる」

 

小さく呟く。

 

その言葉を聞いたクロッカスは静かに笑った。

 

もしかしたら。

 

この少年なら。

 

自分達が辿り着けなかった場所へ辿り着くかもしれない。

 

そんな予感がしていた。

 

そして長椅子では、当の本人が大いびきをかいて眠っていた。

 

「ガー……ガー……」

 

レインとクロッカスは顔を見合わせる。

 

そして同時にため息を吐いた。

 

「本当に病人か?」

 

「私もたまにそう思う」

 

二人の言葉が綺麗に重なるのだった。

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