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神様が言った。
次はどんな人生が良いですか?
「みんなを助けたいです。」
「良い願いですね。あなたにその力を授けます」
「はい、ありがとうございます。私、みんなを助けて……
ちやほやされたいんです。」
――――
「モテたい」
「………あ?」
「私、ハーレムを作りたいんです」
「お前さぁ、いい加減そーゆーのやめろ。」
松田くんがパックジュース片手に実に嫌そうな半目でこちらを睨んでくる。昼休みの喧騒の中、私がポツリとこぼした言葉が大層お気に召さなかった様子だ。
「……お前はある意味、既にモテモテなんじゃねぇの?」
「いえいえ、誰でもいいわけではなく、とにかく顔のいい男性にちやほやされたくて。」
「最低だな」
「そうですか?」
「夢主ちゃん今日もかわいいよ!」
「萩くんありがと!」
満面の笑みで褒めてくれる萩くんに満面の笑みで返す。
これこれ!こんな風に欲しい時に欲しい言葉を投げかけて欲しいのだ。流石女心が分かっている。お礼に指ハートにウインクをつけると萩くんも同じく返してくれる。
「おい萩!お前このクソビッチ甘やかすの止めろよ」
「無理、俺のとこの店に太客紹介してくれたのこの子だから。」
そう、私は家業の傾きかけていた萩原家へ「単価が高くて修理に手間のかかる車が大好きなお金持ち」を大量に紹介している。結果、家族経営の修理工場に全国から旧車名車が大集合、ちょっとしたサロンのようになって経営も回復。紹介した車好きもみんなで集まれる場所が出来て幸せ。Win-Winである。
「萩くんのところ腕も良いから紹介した人たちも喜んでるよ」
「ありがと、俺も毎日レア車いっぱい見れて幸せだわ。一生ついてく」
「松田くんは何か弱みとか無いですか?困ってることとか」
「下心丸出しで来んな。たとえ困っても俺はぜってーお前には頼らねーよ」
松田くんはお行儀悪く、私の座る椅子をゲシゲシと蹴ってきた。つれない。
「いやいや、皆さん私を頼りにしてますよ?私が助けた人はみんな私を助けてくれますし。今度私のサロンに来るのはどうですか?」
「いかねーよばーか」
「あぁそうだ、景光は元気にしてる?俺、最後に会ったの何年前だったかなぁ?確か長野で離れて暮らしてたお兄さんの東都大進学に合わせて、一家で暮らせるように都内の広めのマンションの管理任せたって言ってたよね?」
萩くんが話題を変えるようにサロン仲間の名前を出した。
「マンションオーナーさんからは、留守を任せられる信用できる方の紹介をってご相談でしたからね。諸伏一家ならバッチリです」
「……それもお前が近くにはべらしときたかっただけじゃねーのかよ?どうせ面の良い兄弟なんだろ?」
ストローをガジガジと噛み潰して苦々しげな顔をした松田くんが胡散臭いものを見る目を向けてくる。
「そうですけど....?何か問題ありますか?オーナーさんとの間に私が入ってて…諸伏兄弟が2ヶ月に1回、近況報告を兼ねて家賃を私に手渡しする契約です」
そう、諸伏一家はとてもかっこいい。好き。
「…なんでお前に手渡しなんだよ。嫌~な条件つけやがって....」
「私が美形に会いたいだけです」
「だから…相手の面見て堂々と下心を出すなつってんだよ。いちいち人助けはすんのに....妙に俗っぽくて台無しなんだよ」
「やらぬ善よりやる偽善って言うじゃ無いですか?何が悪いんですか?」
「偽善って自分からいってんじゃねーよ。開き直んな」
「なんかすごく怒られてるんですけど…」
ガルガルと牙を剥く松田くんに困っていると、苦笑いを浮かべた萩くんが間に入ってくれる
「まぁまぁ、人助けが趣味だって考えたらそう悪い子じゃ無いって、面食いなとこさえ目を瞑ればさ。ほら、そもそもここに越してきたのだって陣平ちゃんの親父さんの件を新聞で見たからだろ?」
「はい、冤罪で困ってるだろうなと思ったので」
「........ちっ......あぁ~!クソが!色々引っ掛かって素直に感謝しずれぇんだよ!お前は!」
松田くん一家には冤罪事件に強い弁護士とマスコミ関係を数人紹介済みである。証拠の矛盾を突いて世論を味方につけ、バラエティ番組の再現ドラマやら何やらで何度も大々的に取り上げられた事もあり、先日一度は消滅した王座決定戦タイトルマッチが遂に差し戻され「幻の再戦!涙の復活マッチ!帰ってきた松田」が開催された。チケットは早々に完売御礼、プレミアムチケットとなったその試合の主役である松田くんの父親は、今やこの国で一番有名なプロレス選手と言っても過言ではない。私が越してきた頃は事件の影響で遠巻きにされていた松田くんも今やクラスの人気者だ。
世間の注目を大いに集めたこの事件の解決は、紹介した弁護士とマスコミ側にとっても大きな実績となった。Win-Winである。
「…何でお前は最初から親父の件が冤罪だって信じてたんだよ」
「だって冤罪ですよね?」
「そーだけど……」
「占いで出たんです」
私は手の中でトランプをパタパタとそれらしくシャッフルしながら、お決まりのセリフを答えた。
―――
きっかけは
私が小学1年生だった夏まで遡る。
当時、長野に住んでいた私は
お隣さんの敷地に不審者がいるのを発見した
うつろな目、ひかる刃物、
黒の全身タイツ
あ、これコナンくんで見たヤツだ。
とりあえず金属バットで殴った。
だって黒全身タイツだよ?殴るよね?
ボッコボコにする姿に最初は私が警察に囲まれた。
黒全身タイツは昏倒。昏倒って結構怖いんだけどね?まぁでもそこは黒全身タイツだから。案の定、警察とか関係者が揃ったら黒全身タイツ姿に光が入って人間になった上、割とすぐ起き上がって理屈の分からない犯行事情をべらべら喋りだした。そう、黒全身タイツは案外丈夫だ。
お隣の諸伏一家は助かった
もの凄く美形だった。
私はコナンの世界に転生していた
しかも黒全身タイツが見える
それから私は理由も分からないまま黒全身タイツを見かけては次から次へと退治した。
とりあえず絶対に犯罪者だからである。
実際全部犯罪者だった。
するとマスコミが殺到した
「なぜ犯行直前に止めることが出来たの?」
「なぜ犯人が分かるの?」
いやいや、黒全身タイツは犯罪者に決まっている。
前世からそう。しかしこの常識はこの世界では通じない……まぁまぁ…前世って大抵、秘密にした方が無難だよね。
「占いで出たんです。」
私はとっさにそう答えていた。
これが私の転機であった
正義の占い少女として有名になった私の元には、沢山の人が占いを希望して相談に訪れた。大抵は困った事を抱えた人である。
コレが本当にね…面倒だった
面倒なので困ってる人と困ってる人をマッチングして相殺するすべを覚えた。サロンも作って運命と称して人脈と人脈をぶつけたり、相変わらず黒全身タイツを打っ叩いたりして、兎に角がむしゃらに事件や悩みを解決していく。事件も困った人も黒全身タイツも尽きることがない。
そんな日々をやり過ごしていた所、何故かカルト的な人気を獲得。今では運命を操る正義の女子高生として全国に信奉者を抱える救済のカリスマ占い少女となっている。
いやいやいや.....
なんか違う
せっかくコナン世界に転生したのに、なんで私はお悩みマッチング業者みたいな事やってるんだろう…どうせ転生したなら原作キャラを救済して逆ハーレム状態になるような、みんなハッピーなドッキドキが味わいたかった。
えぇ....どうやったらドキドキ展開出来るの?
とりあえず主要キャラを救済したら良いの?まぁまぁ…それなら全部救済するから、もうとにかく見返りがほしい
こんなに頑張っているのだから。
萩原研二は家業が無事ならば警察官になることは無いだろうから爆死は回避したとカウントして…
松田陣平はどうだろ…
父親の背中を追ってプロレス選手になるかな?
いやいや、冤罪が起こったことは変わらないのでやっぱり警察になって警視総監を殴りたいんだろうか?
........あ~.....全然わっからないや.....やることが多すぎる。これからうまく出来るかなぁ?....ほんとに癒しが欲しい....切実にちやほやされたい
.....ハーレム....私にはハーレムが必要だ。
萩くんに向き直り真面目な顔を作って真摯に勧誘をする。
「萩くんはハーレム入ってくれますか?」
「えーどうしよっかな?ちなみに今何人いるの?」
「今はまだ…諸伏兄弟を勧誘中です。お願いしますドキドキがほしいんです」
「だから....何っでハーレムなんだよ!」
松田くんが頭をかきむしりながら叫んだ。