英雄憧憬の少年と風精の少女   作:長夜月

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 今回から原作道理に行きます。
 何故ベルたんの活躍が見れん!!と思った方もいるでしょうが、それは私が単にベルたんとアイズたんが並んで戦っているところが描きたいからです。



第一章 迷宮探索編
quest(クエスト)3 こっちが兄であっちが妹?(ベル&アイズ)


 50階層、僕らは今ダンジョンの深層にて探索をしていました。

 その内容とはアミッドさんから冒険者依頼(クエスト)強竜(カドモス)の居る泉の聖水を採取するというもの。

 なのにどうして僕らはこうして極彩色の芋虫に追われているのだろうか……。

 

「ラウル、大丈夫かい?」

 

「はい、でも腕が……」

 

 フィンが心配そうに声をかける、ラウルは苦しみながらもなんとか声を絞り出す様に答えた。

 

 僕らは今、フィンさん、ガレスさん、ラウルさん、そして殿(しんがり)のベートさん、そして最前線で芋虫から全力で逃げる僕、という布陣になっている。

 なんでかと言うと僕は虫が大の苦手だからだ、昔お祖父ちゃんに森に叩き出された時なんて本当に死ぬかと思った。

 だから僕は虫が怖い、ので僕は逃げる!!

 

『ベルよ、流石にそれはダサくないかのぉ?』

 

(いいんです!どうせ皆さん死にませんし、それにあいつらには僕らの武器が溶かされるんですか!!攻撃が効かない化け物相手に真っ向から挑んでも僕溶かされますよ?!)

 

『お主のその漆黒の特殊武装(スペリオルズ)なら大丈夫じゃろ?不壊属性(デゥランダル)が付いているんじゃし』

 

(じゃあ僕の代わりにあいつら倒して下さい!!!)

 

 僕は逃げながらジュピターと掛け合い漫才をしていた、ただ闇雲に逃げているだけでもない、元々耳が良かった僕のレベル6の聴覚を使いアイズさん達を探していた。

 

「聞こえた、ティオネさんの声が……これは…喜んでる?フィンさん、後で褒めてあげてください」

 

「いったい何があったんだろうね?」

 

「さあのぉ、もしかしたら強竜(カドモス)の外皮でもドロップしたんじゃないのか?」

 

「知るかよ!!あの馬鹿ゾネス共のことなんかよ、それよりもベル!お前じゃなくて俺でも良いだろ?!んで俺に押し付けた?」

 

「僕、虫嫌いなんですよ!だから頑張れ!ベートお兄ちゃん!!!」

 

「お前ぇぇぇえ、後でしばくからな!!」

 

「その時はティオネさんとティオナさんに泣きつくので大丈夫です」(⁠◡⁠ ⁠ω⁠ ⁠◡⁠)

 

 そんなベートさんの怒号が飛び交っていると、目の前からアイズさん達が現れた。

 ティオネさんの手には確かに何かの外皮を持っていた、フィンさん、頑張れ!!

 

「団長!!」

 

「いっ…芋虫?!」

 

 ティオネの声、レフィーヤの困惑の声が響く中、一瞬のためらいも無くティオナがその大双刃(ウルガ)を持って斬り伏せようとした…、斬ったのだ…、ティオナの武器が芋虫の頭を貫いて。

 

「ッァ!あんの馬鹿ゾネス、ちっとは人の話を聞け」

 

「なにさ!助けてあげだんでしょ――ってあ!!私のウルガが」

 

 溶け出した、芋虫の体内を駆け巡る酸性の体液を持ってアダマンタイトの武器が溶かされた。

 その体液がティオナに触れる瞬間、あたり一帯の芋虫が雷霆と共に消え去った。

 

「【目覚めろ、神の威光(グランディウス)】――雷霆の剣」

 

 ベルの漆黒の長剣は芋虫の体液でも溶かされない、漆黒の長剣に雷霆の付与魔法を施した大剣は何物にも侵されることなく敵を排除した。

 

「っと…、不壊属性(デゥランダル)なら行けるみたいですね」

 

「わ…私のウルガが……、どうしよう」

 

「たく馬鹿ゾネスが、イキって装備失ってるんじゃねぇよ」

 

「皆さん!!――」

 

「どうしたんじゃラウル」

 

 ラウルが苦痛に喘ぐ中声を張った、それを聞いて全員がラウルの方を見た。

 

「あの芋虫……、拠点の方から来ませんでした?」

 

「これは…、少し不味いな、すぐにキャンプ地に戻る!!急ぐぞ」

 

 ラウルさんの最悪の予測、その予想がどうか外れていることを願うばかりだが、そういう時に限って予感は当たる、ラウルさんはフィンさん後継といして育てられているため、その思考も似通っているところがあった。

 だけど一番似ている所は、最悪を予見した時、その予測は大体当たっている。

 

「これは……本格的に不味いな」

 

 そこには芋虫が山のようにいた、リヴェリアさん達は中央の高い山へと避難しながら僕らの帰りを待っていた。

 

 そんな中アイズさんが一番にリヴェリアさん達の元へと駆け出した。

 

「って…、仕方ない、レフィーヤはここで詠唱を、ガレスが守ってくれ、それ以外は僕と一緒にアイズを追うぞ!!」

 

 刹那、団長 フィン・ディムナの一声に、先程までの困惑が投げ出さなかった一団がまるで別人のように駆け出した。

 

「ベル!そいつを寄越せ!!」

 

 そういうとベートはベルの雷霆をそのブーツに宿して敵を蹴り殺していった。

 特殊武装(スペリオルズ)の第二級武装【フロスヴィルド】、その効果は魔法吸収、ベートの力を模した劣化版の装備、だがその威力はレベル5の力を持ってして暴れ馬の様なベルの雷霆を自在に操ってみせた。

 

「どうだ見たか!クソ芋虫どもめ!!」

 

「五月蝿いベート」

 

「他人の力借りてイキってんじゃないわよ」

 

「うるせぇ、ぶっ殺すぞ馬鹿ゾネス共」

 

 芋虫型のモンスターに八つ当たりをするベート、それを遠巻きに見ながらベルはアイズの後を追った。

 

「アイズさん!!前に出過ぎです、幾ら風があってもそれは危険です!!」

 

 ベルの制止を意にも返さずアイズは芋虫の中を斬り進んだ。

 

 

 駄目、こんなんじゃ足りない、あの子は…ベルには追いつけない。

 たったの3年でフィン達と同じレベル6へと至ったベル、特に最後のウダイオスを討ち取った一撃は私では真似できない。

 ベルに何度も教えてもらったけど、それでも完成しないどころか打てもしなかった。

 私じゃまだあの子に追いつけない、置いていかれる、

あの日の様に、お父さんみたいに。

 

「【目覚めて(テンペスト)】―――【エアリエル】」

 

 その一撃は芋虫の溶解液ごと吹き飛ばし、薙ぎ祓い、そしてリヴェリアのもとまで着いた。

 

「アイズ…、ありがとう、助かった」

 

 崩壊寸前の防衛陣を守った、それはとても大事なこと、仲間を守るのは大事だ、だけども。

 

 さっきフィンさんに二人仲良く怒られたじゃないですか?!さっきので反省をどこでやったんですかアイズさんは。

 

 それは49階層の時、陣形が乱れかけていた所を、フィンさんは戦線維持の指令を出した、だけど僕とアイズさんはその命令を無視して敵を殲滅した。

 そのことについて昨日怒られたばかりだというのに、あの日の反省をどこでやら、無理をしてアイズさんは敵を討ち続けた。

 本来なら詠唱時間を稼ぐのに魔剣を用いれば良い、だが今回は僕の武器を打つためにヴェルフが遠征への帯同を見送った為、もちろん僕の長剣を打つために魔剣を打つ暇もなく武器を打っている、今も尚打ち続けている最中の筈だ、いつもならこんな事にはならない、だけど今回はイレギュラーが続いた、そのせいでこんな事態になってしまった。

 

(ジュピター、力を貸して、全力で行く!!)

 

『分かったわい、行くぞ!!』

 

 ベルは纏っていた雷霆の力を更に上げ、周りの芋虫型のモンスターを斬り伏せ続けた。

 

 そうして出来た一瞬の隙、そこにロキ・ファミリア二番手の魔力バカの一撃が加わる。

 

「【ヒュゼレド ファラーリカ】!!!」

 

 炎属性の広域攻撃魔法。数百数千にも及ぶ炎の矢を雨のように降らせるその魔法を持って芋虫型のモンスターを掃討した。

 

「あっぶなかった、危うく僕まで焼かれるところだったよ」

 

『思い出すなぁ、初めての遠征の帰りで、ラウルの坊主達に連れられてあのおなご達を覗いたことが』

 

(しばきますよ、というかあの時はまじで僕、知らなかったんですよ!!僕はただ『着いてくるっすベル君、僕らがオトナの階段を登らせるっす』とか言ってついて行ったら僕、危うくレフィーヤさんに兎絶対焼却魔法(アルクス・レイ)されかけたんですからね!!!)

 

 中に宿る精霊とそんな雑談を繰り広げている所、ベルはフィン達の元へと戻った。

 

「ティオネさん、どうしたんですか?」

 

「奴らの頭の魔石を直接取り除いたんだと、後でこってりと説教だね、あれは」

 

「それってティオネさんにとってはご褒美じゃないっすか?」

 

 ベル達はティオネの喜んだ顔を見て苦笑した。

 

 何はともあれ皆さんが無事なら良かった、そんな事を考えていると、ダンジョンが…いや、モンスターが哭いた。

 

 

 そこに映るのは極彩色のモンスター、その全長は優に10Mを越えていた。

 

「あれも下の階層から来たっていうの?」

 

「通路を壊しながらだったらワンチャン?」

 

「んな訳あるか、バカ言ってんじゃねぇ」

 

 三人が各々考察を繰り広げている中ラウルがまたしても最悪の予想を立てる。

 

「あれも腐食液を飛ばすんすかね?そしたら…あの大きさでそんなことしたら………」

 

 その場にいた全員が戦慄した。

 あの躯体であれば階層全域とは言わずとも、ファミリアの半分近くが被害に遭うはずだ。

 それが最悪の未来。

 

 そしてその極彩色の巨大モンスターはフィン達に向かって光る粉粒を振りまく。

 その一撃に何らかの作為があるも思ったガレスが手に持っていた大盾を全員の前で展開。

 その数秒後、爆発した、幸いガレスの直感のお陰で被害はないがこのままでは全滅する。

 そう感じ取ったロキ・ファミリアの団長、フィン・ディムナは命令を下した。

 

「総員撤退だ、速やかにキャンプを破棄、最小限の荷物を持って離脱する」

 

 強く、聡いフィンだからこそ、その決断を即座に下せた、それを聞いたベートやティオナは声を荒げた。

 

「おいフィン!逃げんのかよ」

 

「そうだよ、あのモンスターを放って置くの?」

 

「でもあのモンスターを討伐して、更に被害を最小限に抑えるにはこれしかない、月並みの言葉で悪いけどね――」

 

 そのモンスターを見てフィンが一言。

 

「――ベルとアイズ、二人であのモンスターを討て」

 

 下された命令を聞いてベルは即座に剣を抜刀、身体を雷霆の付与魔法で覆い、敵を討つ準備を始める。

 それを見たアイズも即座に抜刀、風を纏って迎撃の準備に入る。

 

「待ってください団長!!」

 

「時間がない、ラウル!!リヴェリア達に撤退の合図を出せ!」

 

 レフィーヤが待ったをかける…が、その一声は光粉の爆発を持って掻き消される。

 それでもティオナやベート、ティオネはフィンに向かって声を荒げた。

 

「なんで二人だけなので?!私も行くよ!!」

 

「ガキに尻を守られるのはごめんだぞ!!」

 

「そうですよ団長!私からもお願いしますご再考を!!」

 

 その三人の声をフィンは一声で掻き消した。

 

「二度も言わせる、()()

 

「「「…………!!!………つ!」」」

 

 

 そのフィンの切羽詰まった一声に、もう反論する者は居なかった、ベート、ティオナ、ティオネ、ガレス、ラウルが各々課せられた命令を実行した。

 それでも納得のいかない一人の妖精が声を荒げる。

 

「せめて援護射撃だけでも!!お願いします団長!!」(あの二人の隣に居なくても良い、せめて出来る限り二人を……)

 

「大丈夫ですよレフィーヤさん!」

 

「……そうだよ、大丈夫だよレフィーヤ」

 

 その二人の声が、どこまでも遠くにいる二人の言葉が、少し悔しく感じた。

 

(!!!………私じゃ……何も…)

 

「先で待っています……!!」

 

 レフィーヤは駆け出した、その後をフィンが追う、そこで二人に一言。

 

「ここから十分距離を取ったら合図を出す、それまで時間を稼いでくれ」

 

「はい!!」「うん!」

 

「……すまない、二人とも」

 

 そう言ってフィンは撤退した。

 それを見送ったベルとアイズは眼の前の化け物と正対する。

 

(わかってるよフィン、大丈夫だからねレフィーヤ…)

 

「アイズさん、僕が陽動で撹乱します、その隙にアイズさんの風で一気に仕留めてください」

 

「うん…、分かった」

 

(大丈夫ですよレフィーヤさん…)

 

「【目覚めて(テンペスト)】」

 

「【目覚めろ、神の威光(グランディウス)】」

 

((絶対に負けないから!!!))

 

 アイズの風が、ベルの雷轟が鳴り響き、その一撃は確実に極彩色のモンスターの命を脅かしていた。

 それに負けじと光粉を振りまき、ベルの速度とアイズの火力を潰そうとする。

 その一撃を紙一重で避けながらベルは速度を上げ、アイズも風の出力を上げる。

 

 広範囲の爆撃、連発されれば皆の方に被害が及ぶ、連発はさせないほうが良いな、アイズさんは…僕が心配する必要はないな。

 

 そうしてベルは更にスキルを発動させた、そのスキルはアイズの風を彷彿とさせるものだった。

 その雷嵐を纏って極彩色のモンスターへと一撃を放つ、頭部に一撃、倒さないにしても手加減された一撃は確かに効いた、アイズの風が、ベルの雷嵐が肉薄し、その触手の防御を破壊していく。

 

 その初撃、二人は安堵した、本気の一撃であれば倒せる、そして手加減していてもこのモンスターの相手をできる。

 二人の思考はリンクし、この囮作戦の成功を直感する。

 

 けれどそこに隙が…

 

(え?触手からも攻撃?!)

 

 距離を取るのを惜しんだが故のミス、二人はあまりにも肉薄しすぎた、アイズは光粉の爆撃を弾いた剣では続く触手の攻撃をいなしきれなかった。

 ベルは速度を上げ、触手を弾き続けた、超近距離での肉薄、それでも対応する極彩色のモンスターを前にベルは一瞬身体の力が弱まった。

 

 アイズは脱出不可能な爆粉包囲網の中へと、だが――

 

「風よ」

 

 ――彼女は剣に愛された姫、二つ名は【剣姫】 アイズ・ヴァレンシュタイン。

 

 三秒、そのわずかな爆撃まで時間を正確に測っていた。

 

 情報はあった、山程あった、もう行ける、対応できる、。

 

 爆発までの三秒、冒険者として情報収集を怠らなかった、爆撃を見ること三度、既にアイズは未知を既知へと変えていた。

 

疾走れ(はしれ)、雷轟よ」

 

 そのベルの一声で纏っていた雷鳴が歓喜する。

 まるで走るかの如く、その雷鳴は極彩色のモンスターの触手を弾き返した。

 

 爆撃までの三秒、大精霊の名を冠する精霊の力を何の代償を無しに遺憾無く発揮することが出来るベルにとってその三秒は止まって見えた。

 彼はベル・クラネル、神時代で最も才能に愛された女、アルフィアと同様に彼には災禍の権化という通り名が付いた。

 

 ――才能に愛された人格者、二つ名は【剣聖の英雄(アルゴノゥト)】、ベル・クラネル

 

 爆撃までわずか三秒の時間、刹那の時を一瞬を凌駕する速度を持って蹂躙する。

 

 ロキ・ファミリアの団長 フィン・ディムナは見抜いていた。

 未知のモンスター、その唯一の天敵、それこそ

 

――《剣姫》アイズ ヴァレンシュタイン

――《剣聖の英雄(アルゴノゥト)》ベル クラネル

 

 遠方で赤の煙弾が登った。

 

((撤退完了の合図!!))

 

 爆撃の力を応用し加速、アイズは肉薄する。

 

「風よ」

 

 全てを薙ぎ祓い雷嵐を引き連れてベルは加速した。

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

 チャージが始まる、勝利への鐘が今、鳴り響いた。。

 

 強くならなきゃいけない、もう誰も失わない為に、強くなりたい、二度と置いて行かれないように。

 

 強くなりたい、お義母さん達の悲願を果たす為に、僕は更に強くならなきゃいけない。

 

 その為なら――僕は/私は、どこまでだって強くなれる

 

「【(エアリエル)】――最大出力!!!」

 

「【想いよ、加速しろ(グランディウス)】――雷霆の剣」

 

 最強の風を纏いアイズは加速する、最強の雷をその剣に纏わせる、するとその剣は青い光沢を放つ大剣へと変わった。

 そこに更にファイアボル卜を纏わせた大剣は圧倒的なまでに輝いていた、その極光は本来ならばモンスターなどでは一生お目にかかれないものだった。

 

 二人は更に距離を取り、大技の準備をした

 

『ベルよ、技名を言うのはな、想いを叫ぶのと同じなんじゃよ』

 

 思い出される、お祖父ちゃんとの会話が、珍しく真面目な話をしているお祖父ちゃんを前に僕は少し珍妙な目を向けた。

 

『ベルたん!アイズたん!ええ事教えたるわ、必殺技(わざ)の名前を言えば更に強くなるでー』

 

 ロキに言われた、あの言葉、本当かは分からないけど、それでも強くなっている気がする。

 

「リル・ラファーガ」「聖火の英斬(アルゴ・ウェスタ)

 

 刹那――100Mは優にあった距離が一瞬で詰められる。一瞬の戸惑いもなく極彩色のモンスターは防御態勢へと移る。

 この反応の速さはまさにモンスターの本能によるもの――

 

 ――だが、認識した時には既に遅すぎたのだ

 

 どんな力を持ってしても、その閃光は止められない。

 

 風を纏い、貫通力を上げたアイズの技は、雷嵐(らいめい)を纏い、聖火を纏ったベルの一撃は極彩色のモンスターの身体を一撃で穿ち抜いた。

 

 

 爆音が鳴り響いた、極彩色のモンスターが討たれた。

 

「アイズ!アルゴノゥト君!!」

 

「ヤバくないっすか!?」

 

「大丈夫です、あの二人なら…」

 

 あの二人を前に私は出来ることがなかった、何時までも私の憧憬であり続けたアイズさん、私と同期だったのに、最初は私のほうがレベルが上だったのにも関わらず、そんな事も意に返さずベルは前へと進んでいった。

 だから信じて待つって決めたんだ。

 

 あの人はどこまでも強い人だから、あの二人がタッグを組んだなら、それはもう必勝なのだから。

 

 誰よりも憧れた、私の憧憬達なら――

 

 ――アイズ ヴァレンシュタインとベル クラネルなら!!!

 

 来た!!どこまでも強いあの人が、勝利の鐘を鳴らした少年が。

 

 レフィーヤは抱きついた、アイズから離れることなく、ベートはベルの背中を叩いた。

 全員が二人の帰還を喜んだ。

 

 

 51階層にて【ロキ・ファミリア】は地下迷宮(ダンジョン)遠征は終了。

 この時点より帰還行動に移る。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「暴れ足りないよ!!まだまだ行けたのにィ!!」

 

「あんなは何時まで騒いでるのよ」

 

「えぇ~だってせっかく50階層(ここ)まで来たんだよ」

 

 51階層…そして50階層で遭遇した新種のモンスター、その戦闘で多くの武器を…そして多くの物資を失った【ロキ・ファミリア】(わたしたち)は遠征続行を断念。

 部隊を二手に分けて帰還する事となる。

 

「悔しいよ!まだ行けたのに!!」

 

「ならなんであの時ウルガを無駄に削ったんですか?もうティオナさん装備ないじゃないですか、駄目ですよそんなんじゃ」

 

「にしても何だったんすかね、あのモンスターは」

 

 ティオナの声にベルが呆れ気味に言う、そんな二人を見ながらラウルが疑問を挺した。

 それに反応したティオネが胸の谷間から一つの魔石を取り出した。

 

「不思議な点は多々あったけどね、これがあれば少しは分かるでしょ!」

 

 それはティオネが服と肌を代償に捻りとった魔石、それを自慢げに見せていると、それを遠巻きで聞いていたレフィーヤが身体を身震いさせていた。

 そんな中、姉のことなど何のその、魔石を手にして光を仰ぐようにしてティオナはその魔石を見た。

 

「変な色〜、普通の魔石は紫紺色なのにねぇ~」

 

 そんな事をしているとアイズの隣で苦しそうに荷物を抱えていたリーネがとうとう音を上げて膝から崩れてしまった。

 それを見たアイズが手を差し伸べようとした時、べートの罵声が響いた。

 

「雑魚に手を貸すなんて時間の無駄た、せいぜいお前は雑魚を見下してろ、お前はそれで良いんだよ」

 

 その一言がアイズの頭に強く刻まれた。

 

 ベート ローガさん、典型的な…いや、過度なまでの実力主義者、だから私や、私達より年下で私達よりもレベルの上な第一級冒険者(ベル)とは、その扱いが大きく違う。

 でも…、ベートさん程じゃないけど、私も他の団員達からは遠慮されている。

 

(私って怖がられている?!)

 

「こらクソ狼!アイズに指図しないでよ!!」

 

「うるっせぇな馬鹿ゾネス、アホみたいに突っ込んで装備溶かされたクセして何言ってんだ!!装備皆無(手ぶら)のお前は大人しくサポーターでもやってやがれ!!!」

 

 ティオナとベートの咆哮が飛び交い、それをレフィーヤがなだめる、これがいつもの遠征帰り、もう見慣れた光景であった。

 

 そんな中一人、なんだか浮かれない顔をしているアイズにベルは声をかけた。

 

「どうしたんですかアイズさん?何か悩んでいるんですか?」

 

「ううん、そうじゃないんだけど…」

 

 ベルは違う、私達と同じ第一級冒険者でありながらも、皆にはよく色んな事を頼まれる、そしてその全てを笑って引き受けてくれているベル、いつもは優しいけど、戦闘になれば誰よりも頼もしい。

 

「私って怖がられてるのかな?」

 

 アイズの言葉を聞いて、ベルはクスッと吹き出した、それを見て「なんで笑うの」と言いながらアイズはベルの背中をポコポコ叩いた。

 遠巻きに見ていればそれは仲のよい兄妹そのものだった。

 

 そんな茶番を繰り広げていると、突如壁から咆哮が飛び交った。

 それを見たベートやティオナは戦闘の準備をするが、それを見てラウルが一喝。

 

「二人とも…、上層では下の者に経験を積ませるために戦闘は――」

 

 ――程々に!!

 

 そんなラウルの言葉を聞いて、二人は構えを解き、大人しく見守っていた、何かあればすぐに助け出せるように。

 

「進行方向にミノタウロス…大群です!!!!」

 

「ほら、ベートが五月蝿いから怒られたじゃん!」

 

「るっせ、俺のせいじゃねぇだろ!!」

 

「ラウル!今後の為だ、お前が指揮を執れ」

 

 リヴェリアの一声にラウルは瞬時に戦術を具立てた、その間も今にも飛び出しそうな三人、ベート、ティオナ、ティオネに視線を飛ばした。

 

「空気、読んで下さいね!!」

 

「大丈夫、大丈夫」

 

「分かってるわよ」

 

装備ナシ(ステゴロ)だ、手加減ぐらいはねぇとな?」

 

 そんな三人の、いや悪魔の声に、ミノタウロス達は涙を流しながら撤退した。

 

「え?!逃げた?」

 

「はぁ?テメェらモンスターだろうが!!」

 

「不味い!!上には行かせるな、上層には下級冒険達が居る」

 

 ミノタウロスは逃げた、リヴェリアが大声で焦るように迎撃指示を出した。

 

 だが、そこにいた誰も動くことはなかった、雷轟を鳴らしながら閃光の如き速度で上層への階段の前に立ち塞がった一人少年が居たからだ。

 

「疾走れ、雷将よ」

 

 怒涛の雷轟を持って全てのミノタウロスを焼き払ってしまったベル、それを見て、ベートやティオネ、ティオナは呆れる。

 

「ったく、どんな阿呆火力してんだよ、お前は!!」

 

「えへへ、それ程でも…」

 

 ベートが褒めるようにベルの背中を叩く、それに満更でもなさそうにベルは応える。

 

 これにて【ロキ・ファミリア】遠征、終了。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「ん~~、二週間ぶりの地上だぁぁあ」

 

 ティオナの声に皆も歓喜する、二週間、それが彼らがダンジョンに籠もっていた時間だった。

 

「ほんとに、誰も犠牲が出なかったのは奇跡っすよ…良かったす」

 

 ラウルはその身を窶れさせながら言う、片腕にはまだ包帯をつけており、その悲惨さが目に浮かぶ。

 

 

 ここは摩天楼施設「バベル」、唯一モンスターを生み出すことが出来る(ダンジョン)を封じる「蓋」としての役割を果たしていた。

 かつて怪物(モンスター)の地上進出を防ぐために無数の人間(ヒューマン)や様々な亜人(デミ・ヒューマン)がこの地に集い、数多の防衛の中でその目的は防衛ではなく『穴』への探求心へと変わっていた。

 そして時代の流れと共に衰退を繰り返していたオラリオはいつしか冒険者達の集う都市へと変わっていた。

 

 ここは迷宮都市オラリオ、未知と冒険に満ちた都市。

 

 

「やっと返ってきたァーー」

 

 そのオラリオの中でも他の建物とは一線を博している建物が一つ、それは黄昏の館、僕らの本拠地(ホーム)である。

 

「私は肉を頬張りたいな〜」

 

「あはは………」

 

「私はシャワーを浴びたいわねぇ!!」

 

 各々がダンジョンで溜まった欲を発散させとうと思いに耽っていると、奥の方から道化が一人…いや、一柱。

 

「み〜ん~~な〜〜〜〜、お帰りぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!」

 

 馬鹿みたいな大声で僕らを出迎えるのはロキファミリアの主神 ロキである。

 

 そんな主神が飛び付いた相手は……、レフィーヤであった、レフィーヤは嫌がりながらも皆に助けを求めるが、誰も彼もが「いつも通り」と言った風貌でその行為を見ていた。

 

「皆、無事やったか?良かったわ!!」

 

「ああロキ、今回も犠牲者はなしだ、到達階層の更新は出来なかったけどね、詳細は追って報告させてもらうよ」

 

「ん~~、了解や!」

 

 フィンは今回の遠征の経緯を簡潔に話す、それを聞いたロキも、笑いながらフィン達の帰還を喜ぶ。

 

「お帰り、フィン」

 

「ああ、ただいまロキ」

 

 そんなロキだが、それでも決してレフィーヤの胸を触るのを辞めない。

 そんなロキに対してティオナが一喝。

 

「ロキ〜、レフィーヤが困ってるから離れてくんない」

 

「ん~~、悪いな、愛しの眷属(こどもたち)が息災やったんや、感極まってついな―――

 

 ――にしてもレフィーヤ…胸、ちょっと大きくなったんとちゃう?」

 

 親父である、女神なのに親父である、ただの変態親父であった。

 

「ちゅうかティオネ、それフィンの腰巻きやろ!なんや自分まさかポロリしたんか?な、どうなんや」

 

「五月蝿い、暑苦しいから寄って来ないでよ」

 

 

 ああ、騒がしいのに何故か落ち着く、帰ってきたんだ、私達の「(ホーム)」に。

 

「ん~~、アイズたんお帰り――

 

「うん、ただいまロキ……」

 

 そんないつも通りの会話をするアイズの肩をロキは突くように触る。

 

 ――ちょっと身体ズキズキ痛むなぁ、ちゃんと休まなあかんよ――――――リヴェリア!!」

 

(バレた…、ベル達にもバレてないのに。仕方のない神様だけど…、それでも神様なんだよね。)

 

 私はそんな事を考えながら周りの荷物を運ぶのを手伝おうとすると。

 

「アイズさん!片付けは僕らがやりますから」

 

「アイズさんはお先にシャワーを!!」

 

「え……でも…」

 

「大丈夫です!順番ですから」

 

 私はそんな言葉を受け取り、ティオナ達と共にシャワーへと向かう、そんな中ベルは私達とは違い周りの団員に頼られながら荷物を運ぶのを手伝っていた。

 仕方の無いことだ、あの子はいつも周りを気遣っている、そんなあの子と私達では対応の違いがあって然るべきなのだ。

 何故か心の中にモヤモヤが残る、あの子は誰にでも優しく出来る、あの子にとっては当たり前の事、私に優しくするのも、他の人に優しくするのも。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「レフィーヤ〜、早く着替えちゃいなさい、後ろが支えてるわよ」

 

「は…はい!!」

 

 アイズ達は他の団員よりも早くシャワーを浴びた、後ろが支える為、そんなに長くは居られないが、それでも遠征の疲れを癒すには十分であった。

 そんな中アイズは悩みを抱えた顔をしていた、そんなアイズを見兼ねてティオナは気さくに話しかける。

 

「ねぇアイズ、なんか落ち込んでない?」

 

「……ん?」

 

「だってさ、ダンジョンから帰ってきてからずっとそんな感じだよ、誰だって分かるよ」

 

 私って皆に怖がられてるのかな?そんなに私は怖い?そんな不安をティオナにぶつけた。

 

「ん~~、第一級冒険者(わたしたち)って仲間内でも(よそ)でも扱いが変わるから……、それはある意味モンスターよりも怖いんじゃない?」

 

「でもベルは…、仲間からも街の人からも好かれてるよ?」

 

「それはねぇ、アルゴノゥト君はよくボランティアとか奉仕活動もしてるしね、でも仕方ないんじゃない?気にしないのが一番だよ」

 

「うん…、そうだよね」(仕方の無いことだ、それでも私は強くなりたい、強くなるってことは、怖いってことなんだのね)

 

 気にしないのが一番、それでも私は強くなりたい、たとえそれが孤独(ひとり)になる事だったとしても。

 

 

「ち…違います!!」

 

 そんなアイズを見て、レフィーヤが声をかけた、その際にかなりのお湯がアイズとティオナにかかった。

 

「す…すみません、盗み聞きしちゃって……」

 

「良いよ、別に隠してなかったし、それより何?」

 

「皆、その…アイズさんを怖がってるんじゃなくて……その……えっと……憧れてるんだと思います!!」

 

 レフィーヤは絞り出す様に言った、その頬をピンク色に染めながらもレフィーヤは言った。

 

「自分で立ち上がらないといけないから、だからその手は取れないんです、アイズさん言ってたじゃないですか、ダンジョンではできることをすればいいって」

 

 思い出すのは50階層での事、レフィーヤを慰める為に言った言葉だった。

 

「同じダンジョンで戦える様になりたいから、だからその手は掴めないんです」

 

 レフィーヤは優しい声でそう言った、だけど…それでもあの子は…ベルは違う。

 

ロキファミリア(わたしたち)はアイズが好きだよ!!それじゃ駄目?」

 

 ティオナの言葉にアイズは少し考え込む、あの子は…、私をどう思ってるんだろう。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 コンコンコン、アイズはロキのいる部屋へと足を運んだ、遠征帰りはいつもロキの部屋へと赴きステイタスを更新するのがアイズの日課だった。

 

「お…、やっぱりアイズたんが一番乗りやったか」

 

「私は…ベルは?あの子は来てないの?」

 

「ベルたんは今頃ご飯の用意をしとるからな、まぁあの子自身、ステイタスの力よりも自分の自力を鍛える系やから、ステイタスへと思いもちゃうんやろ」

 

 そんないつも通りの会話を繰り返し、毎度の如くロキのセクハラをナイフを持って迎撃。

 そうして更新されたステイタスの写しを見てアイズは戦慄した。

 

「レベル5と言えばオラリオの中でも極わずかの第一級冒険者、その上Aクラスアビリティが3つもある…ちゅうのに、なんや自分…えらい顔しとるで」

 

 低すぎる、レベル5になってからかもう3年が過ぎた。

 ダンジョンの遠征であれだけモンスター斬ったと言うのに少ししかアビリティが上がっていない。

 それが意味するのは…、ここが私の上限(げんかい)

 

 強くなりたい!どこまでも貪欲に、際限なく強くなりたい、必要なのはLv(レベル)の上昇、すなわち、より高次の器へと昇格……

 

『アイズ、つんのめりながら走りまくっていたらいつか必ずコケる、いつも言っとるやろ?これからも何度も言うで、だから忘れんようにな』

 

 ごめんロキ、それでも私は(げんかい)を超えたい。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 夜ご飯を皆で食べて、後片付けを終えると僕は神様に呼ばれた、何でも一応ステイタスの更新をしようとのこと。

 そんなこんなで僕はステイタスを更新した、そして更新したステイタスを見て一言。

 

「まぁこんなもんですよね?」

 

「何言っとるんや自分、これ見たらアイズたん…血涙を流すで……」

 

 

❑❑❑❑❑❑

ベル クラネル

レベル 6

 

力:I51⇒I99    幸運:D

耐久:I56⇒I81   技量:D

器用:G210⇒G294 斬撃:E

敏捷:G246⇒E311 連撃:D

魔力:H146⇒G211 覇撃:I

 

≪スキル≫

英雄憧憬(アルゴノゥト)

【大精霊の加護】

復讐王(リベンジャー)

風精の加護(エアリエルオース)

 

≪魔法≫

雷霆英刃(ケラウロス)

【ファイアボル卜】

静寂の園(シレンティウム・エデン)

 

❑❑❑❑❑❑

 

 

「ベルたんはホンマにアイズたんとは逆やな、レベル6でそないなまでステイタスが上昇しとるんやで、もう少し喜んだらどうや?」

 

「僕は逆に困らされてばかりですよ、どんどん上がって行くステイタスに対応するのにようやく慣れたところです、これ以上は正直厳しいですよ……」

 

 そんな僕を見て神様は苦笑した、そんな中神様が細れていた瞳を僕に見せて言った。

 

「アイズたんは悩んでるみたいやから、あの子はリヴェリアとベルたんには心を開いとるようやし、あの子の事…頼んでもええか?」

 

 そんな言葉にベルはニッコリと笑っていつも通りの言葉を言った。

 

「はい!任せて下さい」

 

 ベルはそう言ってロキの部屋を後にした、そんなベルを優しい眼差しで見送ったロキは一言。

 

「ホンマに下界の子は…、すぐに変わるんやなぁ」

 

 思い出されるのはベルがここに来てから少しした時、いつものようにリヴェリアの後を着いて歩くベルを見てロキは『お母さんの後をついて行って、可愛えぇな!』と言ったこと。

 無論、その後リヴェリアのファルナキックをお見舞いされロキはダウンした。

 

 その時のベルの怯えた顔を今でも思い出す、ウチの事を「神様!」と言って慕ってくれる可愛い眷属(こども)、そんなあの子がゼウスもヘラの系譜だと聞いた時は戦慄したな。

 どないな事をしたらあの静寂(アルフィア)暴食(ザルド)からこんなええ子が生まれるやとウチらは考えまくったわ〜。

 あの子の成長に引っ張られるように皆も変わっていった、ベートなんてベルたんの事を弟みたいに扱っとるしなぁ、アイズたんも色々すれ違いがあったけど、今となってはベルたんと仲良くやっとるしな。

 最初の頃は「ウチのアイズたんはやらん」と言っとったのになぁ、今となってはラウルとアキに次ぐウチの推しカプやしな。

 

 ホンマにええ子やで皆、だから…誰も欠けへんとえぇな。




 今回はここまでです。
 今のベルたんは簡単に言えば、近接戦が馬鹿みたいに強く、遠距離戦もかなり強いという馬鹿です。

 次回は迷宮探索編です、リヴィラの街へゴー。

 それでは次回までお楽しみにしていてください。
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