マイクラから来ました。 作:マイクラ外から失礼するぞ
伊丹とロウリィが特殊部隊に連れて行かれて待っていたのは、狭間司令官の深刻な顔であった。両脇に特殊作戦群のメンバーと思われる者に囲まれ、まるで囚人のような雰囲気を醸し出している。そんな狭間司令官から発せられた言葉は疑問が残る内容だった。
伊丹、命令だ…
意味が分からなかった。言葉の意味は理解できたが、なぜこのタイミングで聞かれるのかが理解できなかった。てっきりロウリィが口走った神やら世界の法則何たら等の知るべきでない内容について問われると思っていたのだ。
…は!
その言葉を聞いて、特殊作戦群のメンバーは互いに目で合わせ何かを理解し合う動作をしている。それがどういう意思なのかは伊丹にはわからない。だが、一端の自衛隊である自分が口や足を突っ込む事柄ではないと本能で理解できていた。
そちらのお嬢さん…貴殿は神や魔法などに詳しいご様子。我々が持ち込んだ食料についてどう感じましたか?
次に質問したのは特殊作戦群の者だった。伊丹の衣服を掴み、どこか不安そうに連いて来ていたロウリィに問いかける。一見落ち着いた音程の穏やかそうに聞こえる声に聞こえるが、伊丹はその瞳から相手を図ろうとする独特の感覚を見抜いていた。万が一の時を考え、動けるように腰の力を強めてロウリィの言葉を待った。
あれは…世界を塗り替えて生み出された物よぉ・・・本来はあってはならないモノよ
それは伊丹も聞いていた内容。特殊作戦群の面々も平然とその言葉を受け止めて言葉を強めた。最初からあの食事に関する事象について現実的ではない何かとして認識・理解をしていた故にだ。
質問を変えましょう。貴殿は神と表現しましたが、どこに神の要素を捉えたのでしょうか?
神としての力。それは何だ、何を見てそう思ったのか。それが一番聞きたいのだと、何を持って食事が神として捉えられたのだと、活動していく上で障害になりえる要素を教えろ。
伊丹は裏の内容を読み取った上で、あの食事が何のために避難民に配られていたのかを察してしまった。わざわざ狭間司令官より、炊き出しを交代させてまで接種を促す行為…人体実験。あの謎の力で生まれた食事を接種して経過を見たいのだ、避難民を体よく使い、異世界人で様子を観察したいのだ。その考えに辿り着いた伊丹の腕に力が入り、手が震えた。
だって、あれは世界からそうであれと生み出された存在の成れの果てでしょ…あれは神なのよ、食事に、食材になれと願われて、そうあれと塗り替わったモノ・・・魂すらも必要ないとされた恐ろしい末路よ
体を震えさせてあの配られていた食事を思い出したのだろう。ロウリィは死と狂気と戦争と断罪の神、エムロイに仕える亜神である。亜神とは一種の神へと至るまでの中間点。人から神へと向かう為の修行中の身のことを指す。故に死とは彼女にとって儀式に等しい行為であり、死へと至るまでの過程は自らが信仰する神エムロイへ向ける信仰そのもの。死した後、神へと向かうべき魂を導く存在がロゥリィ・マーキュリーとしての在り方なのである。
…わかりました、ご協力感謝いたします。
アメリカでは日本にゲートという存在が発生する前からインフラ問題、人権問題、性問題、金融格差など様々な課題に対し、手をこまねいていた。資本主義社会として繋がりが、個人主義としての在り方が、自由の国であるとしての人権が…。
国民は綺麗な言葉で言うのだ。こうあるべきだ!と。そして政治家は言うのだ。そうあるべきだ!と。言葉だけは綺麗ごとを重ね、実利を優先し、アメリカとして愛国心を大事に、資本主義として実利を優先し、どちらも現実的に実現できる存在を求めているのだ。
「何が愛国心だ! 何がアメリカの誇りだ! そんなもんは豚に食わせろ!」
「ディレル大統領、お気を確かに」
ホワイトハウスの執務室にて、ディレル大統領と副大統領のリチャードが現状の支持率低迷に悩まされていた。任期満了を迎えようとしていたディレル大統領だが、良くも悪くも現状維持の政権として世論の眼は厳しい。
どうにか挽回したい。そんな時にゲートである。しかも二つ、正確には片方においては日本が勝手に国家認定したため国家として認識せざる得ない。ここで否定すれば人権団体などからぶん殴られてしまう。
「ゲートへの介入はどうなっている?」
「日本側からの回答は変わらず、自衛中の為や、日本の中心地区である銀座に米軍を入れるのはと様々な理由で拒んでおります」
「あの西国のサルぅ!」
「ヘイトスピーチはお控えください」
アメリカとしては介入したい。表向き銀座事件で友好国であり、在日米軍がある同志として攻撃を受けた日本を守護すると名目はどうでもいいので介入したい。とにかくディレル大統領は成果を求めた。ゲート先は異世界というフロンティア、未開拓地域であり、相手も日本の自衛隊で対処できるレベルの存在しかいないときた。西武開拓時代のように米軍が介入すれば瞬く間に成果を得られる環境がすぐそこにあるのだ。だというのに、日本は介入を拒む。逆の立場なら当然だが、こちらはアメリカ合衆国である。国歌を流しながら突撃したい衝動に駆られる大統領である。
「友人である森田総理に強く願うべきか…それとも、新たな君主方と友好的に会談を望むべきか」
「どちらにしても日本は拒否の姿勢を強めるでしょう」
「国家君主との会談に口を出す権利は無いはずだが」
「日本国の土地内に相手側の世界があるのが問題です」
「大使館ならどうだね?」
「呼べたとしても時間がかかるでしょう。任期まで果たして持つか否かですね」
「…介入止む無しだ。それと私のエアフォースワンの準備をしてくれリチャード」
「事前通告はしないと…よろしいですか」
「私がいる場所がホワイトハウスになる。ようこそ、ホワイトハウスへ、とでも伝えよう」
不敵に笑いながらディレル大統領は続けた。
「そういえば、中国とロシアはどうなっている。EUの方は互いに監視して動けないでいるが」
どの国もゲートへの介入を模索している。だが物理的に介入してしまえば、他国からの介入が来るのは明白。ゲートが日本国内にあるのが問題であったが、今は口実ができた。マイクラ世界の首脳たちである。
依然としてゲートは日本の銀座にある。しかし、そのゲートを通って別世界とはいえ首脳が日本国内にいる事実がある。それを理由に我々他国が日本国内へ挨拶に行く正当性ができた。あとは上手く他世界の首脳と話し合いをして、ゲート経由の取引に移行すればいい。
「中国に関しては介入を強めています。ロシアは未だ動きはないとのことです」
「意外だな。私はてっきり日本にいるお友達からお話に行ってると思っていたよ」
「当初はその動きがありましたが」
「異世界からの首脳が現れたか?」
「はい。実にタイミングがいい時に」
「…特地担当大臣だったか。我々の矛先を一点にまとめたか」
マイクラ世界の情報がテレビを通して全国に広がった。ゲート先、特地と呼ばれる場も順次情報の公開予定だとマイクラ世界の首脳たちが発言している。彼女たちが実に現実離れした容姿をしているのも合わさり妖精からのお告げの如く、民衆は彼女たちを受け入れる世論に傾きつつある。
「純鉄やモンスター…実に愉快な世界そうじゃないか。お話し合うのが楽しみだ・・・だがリチャード、私は疑問なんだが、残りの2名は放送中にどこで何をしていたと思う?」
「途中でまかれましたが、片方は飛行機を経由して移動を行っていたと」
「我々の為の使者…ではないな?」
「北海道方面に向かった様子です。北海道にある自衛隊基地だと考えていいかと」
「ほう、ゲートに向かった者もいると聞いているが…なぜだと思う?」
「情報が少ないため断定できませんが…他世界の技術を扱う為、あるいは互いの軍事力の視察などでしょうか」
「荷物を彼女たちは持ってきていたか」
「…いいえ大統領。ゲート近辺に待機している者達からは何も」
ディレル大統領は少し上を向き、冗談半分に発した。
「アイテムボックス・・・ゲームのような魔法があるかもしれないな」
テレビで発言していたモンスタードロップ。嘘か本当か、ほぼ事実だろうと思うが現状確信がない。もしかしたら、空想上の魔法や特殊なサイキックパワーなどの力が本当にあるかもしれない。
夢が広がるのはいいが、頭が痛くなる現実だ
「わかります?この罪の重さ・・・どうするんですか?我々の世界にもう住民はいないんですよ?元からいなかったって説明してますよ?」
マイクラ世界にて自衛隊たちと取引を終えたイッチとサッチ。打ち合わせの為に迎えに来た二ッチとファイブからテレビで話してしまった事を聞いていくと…問題が多数出て来た。
第一にマイクラ世界の住民は間引きしている。元々こちらの弱みを見せない前提で動いていた為、まともな思考もできないNPCである住民はいらない判断だったのだ。トラップタワー用に
「仕方ないじゃない…私たちが首脳扱いになった時点で住民の有無は絶対だったんだから」
「私はいないの今知ったんだけど」
「余計な事を口走るからよ。モンスターの件だってまだ発表する気はなかったのに」
第二の問題としてモンスタードロップに関してである。ファイブが口走った事であったが、モンスターがいる事に加え、ドロップ品がある事が世間に知られてしまった。
「一応ですが、松明で大事な地区周辺は湧いてこないようにしてますけど…武装してない一般人だとゾンビにすら勝てませんし、クリーパーなんて相手にしたらバラバラですよ」
既にマイクラ世界にいる自衛隊たちはモンスターと戦闘している。軽銃で純分対処可能であったが…ゾンビを相手にした時、恐怖心を駆り立てられた隊員が乱射する事故があった。クリーパーは問題なかったが、試しにどんな風になるかサッチが近づいて自爆させて見せると自衛隊員全体が緊張状態になって大変だったと記憶に新しい。とにかく、武装した者達でも事故が起こりえるのに興味本位で来た一般人なんて死ぬだけである。
「ゲートは自衛隊たちが管理してますが、侵入者が絶対今後出てきます。想定外の事故を我々の責にされちゃかないません。まだ情報を出してなかったなら、責任は無かったですが…こちら側からモンスター云々の情報を出して暴走した市民に犠牲者が出たとなると、相手側から口実を作る切っ掛けになってしまいますよね?ねえニッチ?あなたはそれぐらい理解できていたはずですよね?火消を済ませるのも大事なお仕事ですよね?」
「・・・」
「えっと…ごめんなさい…」
「謝れてえらいなファイブ。君は実に馬鹿だなファイブ。役人にとって人の良悪はどうでもいいの、肝心なのは目的に対しての切っ掛け。特に自国民の生死が関わってしまったら否が応でも介入してくるの。君は遊びに対して純粋だ、だからこそ、その役目を果たしている。融和の象徴として役割を果たしている・・・が、考える力がないわけではないと思っていたよ」
涙目で無言になったファイブ。サッチは笑顔でニッチとファイブを眺めながら説教を続けた。イッチがオロオロとしながらも怒っているサッチにそのへんでと話しかけるが、サッチは笑顔で無視した。
「ごっごべんなさい」
「私は別に謝罪がほしいわけではないの。なぜ問題を起こしていながら、対処できなかったのかと聞いているの・・・ねえ?」
「…もういいでしょ。サッチ、確かに想定より早く情報を出したけど対処は容易じゃない。ゲートを閉じればいい、違うかしら…これ以上貴方の趣味の対象になりたくないわ」
「あら残念、じゃこの話はおしまい。ごめんね!ファイブも頑張ってたよね!」
「・・・うん」
「ごめんね、ごめんね…私もちょっと怒りすぎちゃった」
「えへへ…私もごめんね」
緑髪のサッチ。ファイブとは友達で特に仲が良い。頭を撫でたり、優しい笑顔で話しかけてすぐに仲良くなるほどである。
「ああ、そうだ。私たちの世界の
特地の自衛隊基地。アルヌスの丘において日本へ向かう者達が、ゲート前に集結していた。
「参考人招致か…異世界の首脳といい、何も起きないといいけど」
集結しているのは自衛隊を含め、民間人の3名。エルフのテュカ・ルナ・マルソー、魔導士のレレイ・ラ・レレーナ、亜神のロゥリィ・マーキュリー。
「あの缶詰美味しかったな~」
「まだ炊き出しで余ったのがあるぞ、テュカ」
「わぁ!ありがとう伊丹!」
缶詰を渡すとパぁーと明るい顔になったエルフを見ながら、これから国会で追及されるであろう事柄を考え、頭を悩ます伊丹だった。
次回 参考人招致+帝国編の始まり
未完状態は解除しません。だっていつ書けるか不明なんだもん。お客様の愚痴聞いたり、上司から仕事を任されたり・・・胃が死ぬで。