やまうちのなく頃に   作:おやまうちさま

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まさかのAクラス編その2 予習とか反則だろ

「葛城さん」

「どうした山内」

「俺、葛城さんを支えますよ」

「別に必要ないが」

「そんなこと言わずにさー、絶対に役に立ってみせますから」

「……好きにしろ」

 

 やったぜ。

 こうして俺は葛城派の一員となって葛城さんを支えることになった。

 Aクラス山内(葛城派の重鎮)の誕生だ。

 え? 重鎮とは言ってないだろって?

 好きにしろって言われたんだから、重鎮って名乗るのも自由だろ。

 まあ、実質的なナンバー2ってやつ? Aクラスリーダーの葛城さん俺が支えてやるぜ。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 中間テストシーズンに入った。

 Aクラスは、特に勉強会とかが開かれることなかった。

 すげえよ、当たり前に勉強して突破するんだな。

 

「山内、勉強は大丈夫か?」

 

 そんな中でも葛城さんは、俺のことを気にかけてくれている。

 さすが葛城さんだ。優しくて頼りがいがある。

 

「赤点は大丈夫っすよ」

 

 つっても、中間テストに関しては、誰よりも経験しているプロ中のプロだ。

 中間テストの山内と言っても過言じゃないし、赤点回避は問題ない。

 自信満々で答えると、葛城さんが心配そうにこっちを見てきた。

 

「……それは大丈夫なのか?」

 

 え? 俺なにかおかしいこと言ったか?

 

「葛城さんの方こそ大丈夫っすか? ずっと勉強してますけど、もしかしてやばいとか」

 

 葛城さんが自習に勤しむ姿を連日のように見かけている。

 葛城さんに限って中間テストで躓くとは思えねえけど、ナンバー2として一応気にかけておかないとな。

 

「これか。これは二学期の予習だ」

「え? 二学期ってだいぶ先じゃないっすか」

「そうだな。だが、必要なことだ」

「本当に必要なんすか?」

 

 まさかの二学期の勉強をしていたらしい。

 中間テストは余裕で突破できるという自信の表れなのかな。

 つーか、予習って何? そんな先のことまで勉強するのかよ。

 

「いいか、山内。この学校は進学校だが、高校の3年間しか学べない」

「そんなの当たり前じゃないっすか」

「一部の進学校の生徒は、中高一貫で6年かけて学んでいる」

「ええ!?」

「学校のカリキュラムによるが、大体高2までに高3までの勉強を終わらせて、高3では受験対策を1年かけてやっていくことが多い」

「え? そんなのずるじゃないっすかずる」

「ずるではない。それが中高一貫校の強みだ」

 

 いやー、どう考えてもずるじゃねえか。

 俺達よりも1年多く勉強するってことだろ。

 納得できねえ。

 

「大学受験は、その中高一貫校組との勝負になる。彼らに追いつくためには、ある程度自力で先に進めて時間の余裕を作った方がいい」

「……高2までで3年間分の勉強をするんすか?」

「目安はそうなる。そう都合よく出来るものではないが、こればかりは己の限界との挑戦だな」

 

 すっげー、なんか葛城さんがめっちゃ頭のよさそうなことを言ってる。

 ハゲのくせに。

 

「で、でも、授業でやってないところって勉強のしようがないじゃないですか」

「教科書を読む、単語を覚える、問題集を解く。方法は色々だ」

「それで理解できるんすか」

「参考書を利用するという手もある。どうしてもわからなければ、先生に質問することだ。先の範囲でも意欲を示せば応えてくれるはずだ」

「さ、参考書!?」

 

 え? 参考書って中学の復習だけじゃねえのか。

 そうだよな、参考書ってめちゃくちゃ分かりやすいもんな。

 

 そっかー、参考書を使えば先の勉強の予習とかできるんだ。

 つっても、俺は赤点回避のちょっと上くらしか取れてないから、今学んでる範囲をやった方がいいんだろうけどさ。

 あ、でも、夏休みとかは復習にも飽きて、結構暇してたんだよなぁ。

 その時間が空いてるなら予習すればいいじゃん。

 そうすりゃ、予習で分からなかったところを授業で学べばフォローできるじゃん。

 

 これってすごくね? 天才的な発想じゃん。

 これがAクラスのカラクリかよ。こんなカラクリ知らなかった。

 

 ったく、堀北め復習だけじゃなくて予習についても教えてくれれば、よかったのに。

 やっぱクラスのリーダーは葛城さんだわ。堀北じゃダメだ。

 葛城さん最高だぜ。

 

「ありがとうございます。俺、勉強します」

「そうか。何かわからないところがあれば聞け」

「あざーっす」

 

 葛城さんについていけば、Aクラスでの卒業間違いないじゃん。

 よーし、油断せずに中間テストを突破するぞ。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 中間テストは問題なく突破できたぜ。

 なんだったら過去最高点だったはず。中間テストは安定して突破できるようになってきた。

 解答欄さえミスらなきゃ余裕だっつーの。

 

 Aクラスは、過去問とか出回ってないし、勉強会とかしてないはずなのにDクラスと赤点ラインがほとんど変わらなかった。Aクラス恐ろしいぜ。

 

 そろそろ外を走るには暑くなってきたな、とか思いつつ日課のランニングの途中で、ベンチに座る葛城さんを見つけた。

 

「葛城さん、何やってるんすか」

「山内か。身体を動かしている。今は小休止だ」

「運動っすか」

「そうだ」

「葛城さんも運動するんすね」

 

 なんとなく足を止めて軽く会話だ。別に急いでるわけでもないし。

 

「『健全なる精神は健全なる身体に宿る』という言葉を知っているか」

「聞いたことないっす。どういう意味なんすか」

 

 初めて耳にした言葉だ。

 なんかかっこいいじゃん。葛城さんが口にすると重みがあるし。

 

「身体が健康であれば、精神的にも健康であることだ」

 

 おお、そういうことか。

 

「で、どういう意味なんすか」

「山内……」

「す、すみません。精神的な健康ってのが分からないっす」

 

 あれ? 俺なんかしちゃいましたか。

 葛城さんがちょっと呆れた気がする。気のせいか。

 

「そうか。分かりやすく言えば、安定といえば伝わるか」

「安定っすか」

「精神が不安定な場合、感情に振り回されて疲弊する。それを避けることができれば、軸が安定し地に足をつけた日々を過ごすことができる」

「……なんかいいっすね」

 

 かっこいい。葛城さんが言うと説得力があるっていうか。

 そうだよなー、あんまり感情に振り回されるといいことないもんな。

 俺とかよく焦ってやらかしちゃったりするし。

 欲にまみれて女子更衣室を盗撮とか絶対ダメだもんな。

 

「それには健康な身体。適度な運動をし、食事にも気を遣うことが大事だ」

「おお、ちょうどランニングしてたんすよ。間違ってなかったっす」

 

 すっすすっす口癖になっちまったけど、ナンバー2の口調ってこれでいいんだよな?

 葛城さんを立てるには、この口調でいくしかないっす。

 

「そうか」

「ジムにも通った方がいいっすか?」

「……そうだな。無理のない範囲で通うのもいいだろう」

「葛城さんは通わないっすか?」

「今のところはその予定はない。時間に余裕が出来れば通うかもしれん」

「あーー、葛城さんリーダーで忙しいっすもんね」

「……そうだ。よし、休憩終わりだ。一緒に走るか?」

「もちろん、ついていくっすよ」

 

 そっか、葛城さんと一緒なら面白そうだったのに、ジムには通わないのかよ。

 俺一人だとどうしよっかなぁ。

 Aクラスだけあってクラスポイントが多いから、プライベートポイントにも困ってねえんだよなぁ。毎月10万円の夢の生活がまさか実現するなんてさ。実際は9万前後だけど。

 

 ジム代払っても、Dクラスより手持ちポイント残るし、ジム通い再会しよっかな。

『健全なる精神は健全なる身体に宿る』

 良い言葉だし、俺も実戦しよっと。

 

 マッスル山内再びだぜ。

 

 こうして俺は、二度目のジム通いをスタートさせた。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 夏休み。

 

 運命の無人島生活がスタートする。

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