転生者やめなって!キヴォトスでモビルスーツをばら撒くのは恥ずかしい行為なんだよ! 作:AGIの素
「キヴォトス史上初のモビルスーツ戦…。意外と呆気ないものだな」
爆発炎上する01ガンダムをその場に残し後にした偽マフティー(偽)は今回の戦闘で失った弾薬や損傷具合に注意を向ける。
目立った損傷はほぼなく、強いて言えば陸戦型ガンダムから受けたバルカンの痕が僅かに残るのみ。
武装の方はといえば頭部バルカンは撃ち尽くし、35mm連装ガトリング砲も後僅か。ヒート・サーベルは殆ど消耗し、ヒート・ダートは交戦の際に数本が損失。ヒート・ランサーも見かけ上問題ないが整備が必要だろう。
そして駆動系も無茶をしすぎた弊害かショートしかけており、今は問題ないもののこのまま活動すれば何かの拍子にイカれてしまってもおかしくはない。
「この時期のモビルスーツではこんなものか。マグネットコーティングの標準化が待ち遠しいな」
とはいえ相手は3機のガンダム。それも全員が中々に練度の高いパイロットを相手取ったものと考えれば十分にお釣りがくる。
偽マフティー(偽)は伏兵の存在を警戒しながらも迅速に目的地を目指すのであった。
もっとも、戦闘可能な人員は正規、予備含めて全員偽マフティー(偽)の手にかかっているために戦闘が行われることはなかったが、その警戒を怠らない姿勢も熟練の戦士の証と言えよう。
そのまま目的の外縁部へと足を運んだ偽マフティー(偽)の目にもう一つの目標であるザク・トレーナータイプが映る。
光の灯らないそれをイフリートで無理やりに起こすと、そのまま基地外へと脱出しようとして、回線にコールが入って呼び止められる。
「罠か?」
『あーあー、こちら総帥。こちら総帥。これは罠や足止めの類じゃないから安心するように。あ、総帥だからって後ろから撃ったり毒ガス撒いたりはしないでね』
「総帥?この場に来ていたのか」
『そりゃあ、こんな面白そうなのやってたらね』
見れば、基地の通路の窓に通信機を手に取る人物の姿が見える。こちらに手を振っていることから本当なのだろう。
『まずはおめでとう。圧倒的な数的不利とビーム兵器という差を抱えながらものともせずにパイロットを全滅させた腕前は流石と言わざるを得ない。いやね、掲示板でも盛り上がってるよ。Cランクパイロットの駆るガンダムを同時に相手にしてビーム兵器無しの機体で壊滅させたって。……えーと、君ランク何?もしかしてテロリストにヤバい人解き放とうとしてたりする?』
「はっはっは。何、高々Aランクのテストを一発で通った程度の腕前だよ」
『ヤバいじゃん。え、嘘…?あれかなり苦戦したんだけどな…。私は同じところで9回かかったのに…。もしかしてSだったりする?』
「いや、受けてないから分からないな…。今度暇があればやってみよう。それで、本題は?」
本気で落ち込んだ様子の総帥の話をそこそこに切り上げさせ、今回呼び止めた要件を訊ねる。
『ああっと、すまん。話が長くなった。いやね。私自身最近話足りないなってところがあったからつい余計な会話まで入れてしまった。……ああうん。ごめん。話します』
更に回る口にため息を一つこぼせば流石に悪いと思ったのか本題に入る。
『今回の襲撃イベントなんだけど、折角モビルスーツを広めるための案も出してくれたうえに外での活動もさせるんだから、モビルスーツだけ渡してポイじゃ負担が大きくなるだろう?』
「まあ間違ってはいないな」
『そうそう。それに今回の戦闘自体、人数の差や持ち込みによるモビルスーツの性能の違いなんかが出てたからね。もう少し何かあってもいいだろうと思ってね。……まあ君は全員倒してしまったんだけど』
「ビーム兵器を使えない機体という条件付きの相手に平気でビーム兵器搭載機を持ち込むとは何を考えているんだ?それも移動の制限される重力圏の屋内だぞ?」
『いやもう全くもっておっしゃる通りです……!』
どうやら総帥側としてもちょっとズルいと思っていたらしい。ビーム兵器が載せられない時代のモビルスーツの警備に当然のようにビーム兵器持ちが並んでいる状況はおかしくすらあった。
『ま、まあそういうわけで、モビルスーツを運ぶにも足がいるだろう?そういうわけで大気圏内でも移動可能な艦を見繕ったからこちらも提供するよ。1年戦争の機体ではあるけど、カスタマイズは施しているから安心してほしい』
「これは……ホワイトベース…いや、ペガサス級か?」
そう言って指されたのは、なんと驚くべきことにペガサス級強襲揚陸艦であった。
何を隠そう、ファーストガンダムにおいて主人公アムロ・レイらと共に1年戦争を戦い抜いたホワイトベースはこのペガサス級強襲揚陸艦の2番艦。作品においても系列機やあやかった存在が後の作品でも作られた、一種の象徴的な艦だ。
導入されたミノフスキー・クラフトによって宇宙空間は勿論のこと、大気圏内においても空中飛行が可能で、単独での大気圏突破、突入能力を持ち、あらゆる環境での運用に対応している。
さらにはモビルスーツの運用能力も導入され、単艦運用には必要な要素は概ね揃っていると言えよう。
『そう。試験的に複数生産されたそれを回してもらったんだ。どのみち大気圏内での運用も必要だったし、既に作中の生産数を大幅に超えてるからね。手土産にいいかなと。ああ勿論操縦はある程度はAIに学習させたデータで可能な筈だよ。勿論ベテランの操縦士がいたらそっちの方がいいけど、最悪の場合は一人でも動かせるようになってる』
思わぬおまけに驚いた偽マフティー(偽)は、けれどそれをおくびにも出さずに謝礼の言葉をはく。
「いや、移動の案自体考えてはいたが、ここまで素晴らしいものではなかった。ありがたくいただくとしよう。ただしかし…こちらには宇宙戦艦の類はなかったのだろう?加えてミノフスキー・クラフト搭載機だ。……悪目立ちしないか?」
『そこは大丈夫。渡して即撃墜なんてされちゃ困るからこの艦にはブラックライダーにも用いられていた光学迷彩を基礎に、色んな技術でのステルス技術を導入している。勿論過信は禁物だけど、移動や輸送程度なら距離を取れば余程のことでもない限りは気取られないと思うよ。後はミレニアムの中枢あたりはそういった対策が強いから近づかないほうが賢明だね』
「強襲揚陸艦に光学迷彩とは、随分と粋な真似をしてくれる」
『それはどうも。でも今回の件は私たちだけの問題ではないからね。備えられるなら備えたいのさ』
「成る程、了解した」
好意に甘えることにした偽マフティー(偽)は早速貰ったペガサス級にザク・トレーナータイプを運び込むと思わぬ先客に眉根を寄せる。
すわ騙し討ちかとも思ったが、機体は完全に停止しており、固定もされている。
『中は見てくれたかな』
「…これも手土産か?」
ペガサス級のモビルスーツハンガーの中にはオレンジ色に塗装されたザクによく似た機体が安置されていた。
「“MS-04 ブグ”…。それもテスト機カラーか。…ザクではない理由は?」
『正式発売がされてるMSはザクⅠからになっているけど、それはそれとしてその前身であるブグやヴァッフなんかにもファンはいるから少数生産はされている。でも曲がりなりにも正式量産されているザクⅠより前の世代の機体を商品として売るのは何だか気が進まない…といった時にこの機会があったからね。基地からの強奪という形なら前身的な機体でも世に流せることに気づいたオリジンのファンがこぞって用意してきてね。……一応反対はしたんだけど、ブグの性能自体はザクⅠ以上だからと押し切られてね…』
どうやら断りきれなかった様子だ。とはいえ、これからの活動を考えれば元手があるのは有難い。
そう考えた偽マフティー(偽)は特別反対もせずに受け入れる。
「いや、これで構わない」
『そう言ってもらえるなら幸いだ』
「要件はそれだけか?」
『ああちょっと待って。一応不良グループの分布やメカや武器なんかに強いタイプの連中の情報なんかもあるけど…』
「いや、そちらはいい。決行が確定した時から下見と接触は済ませている。一つのグループに取り入ることに成功した。初となるモビルスーツの運用だ。事前の評価がそのとおりに働くとは思えん」
『そう?ならいい。あ、折角用意したし一応データは送っておくとするよ』
そうして一つの圧縮ファイルが彼の端末に送られる。……一体どうやって把握しているのか謎だが、これもこちらでの基盤を作り上げた人物のなせる技であろうか。
「そうだ、この艦の名前は?名無しではつく箔もつくまい」
『8番艦ヒポグリフ。本来あり得ない出生ということもあって名付けられた試験機さ。その名にあやかってステルス機能の増設と導入が進められたって裏があるよ』
「ほう、ヒポグリフ…。悪くない名前だ。ではこちらは貰っていくぞ」
そイフリートの補給を済ませるや、操縦席についたが離陸を始めた。
一つの提案から始まったこの襲撃イベントは、襲撃者側の完全勝利として幕を下ろしたのであった。
◯◎◯◎◯◎◯
そこは打ち捨てられた廃墟群の一角。
都心から少し離れてこそいるが、完全に廃れたという訳でもない工業区。
寂れたシャッター街は閉鎖され、機能を停止した廃工場が二つほどある。
一昔前はそれなりの活気があったであろうそこは、今や見る影もなく枯れていた。
住人も殆どがいなくなっており、最低限のインフラこそあれど、使う者もいないのだから修理業者も呼ばれず、消灯したままの街灯や壊れて久しい自動販売機が立ち並んでいた。
そんな場所であるものだから、よりつく者は殆ど居らず、そうなれば自然と浮浪者や不良の溜まり場なんかになってしまい、更に人の足は遠ざかるばかりだ。
そんな場所を縄張りとする不良の一団があった。
その不良たちは勉強についていけなかったことによる成績の悪化や素行不良、そういった試験でのカンニング行為などが問題となってドロップアウトした者たちの集まりだった。
しかし、学校を辞めても待ち受けていたのは厳しい現実だった。
勉学や学校の重圧から解き放たれた彼女たちだったが、それは国家にも等しい学園からの庇護を失うことに他ならない。
そんな経歴なものだからバイトは殆どが書類落ちで、それらの経歴に左右されないバイトとなれば怪しい案件や危険なものが増え、そういった生活苦から楽な手段としてカツアゲなどを行い小銭を稼いだことだってある。
しかし同じ不良同士でもルールやシマがある。割のいいバイトやカツアゲ場などは既に他のグループに抑えられており、そういった場所にもやはり人が集まるようで軋轢や抗争なんかも増える。
かつては自信のあった腕っぷしも不良の中では自慢できるものでもなく、8人やそこらの小規模な人数であるため質でも規模でもヘルメット団などには遠く及ばない。
競争率の高い区角で他のならず者と治安維持組織の両方と争えば、真っ先に潰れるであろう。
かといってブラックマーケットの後ろ暗い依頼を受ける気にもなれず、こうして実入りが低い代わりに安全で人の少ない寂れたシャッター街に腰を落ち着けた、というのが事実であった。
無論そんなことであるからお世辞にも上手くやっていけているなどとは言えず、どうにか食いつないでいる弱小の不良グループというわけである。
今日も今日とてその日暮らし。安定しない生活と粗悪な環境にぼやきながらも、けれど動かなければ自分たちの生活を保障してくれる存在などいないのだからやるしかない。
普通の生活というものの有難さを痛く実感したところで、今更復帰や転入などできようはずもない。
そうして日々を過ごしていたところに転機が訪れる。
彼女たちの縄張りに奇妙な大人が現れたのである。
「私はマフティー・ナビーユ・エリン。キヴォトスにおける歪な社会構造とそれを取り纏める立場にいながら堕落を良しとする連邦生徒会へと反省を促しあるべき秩序を取り戻させる。先を見るだけの随分と暇な大人の一人だ」
因みに、戦闘技能のDランクにおける十分な訓練を積んだ正規軍人クラスというのは逆シャア以降の腐って弱体化した軍でなく、全体の練度が高かったグリプス戦役〜第二次ネオジオン抗争あたりの軍人を基準としています。
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