「ヤンデレられてみたい」と実はヤンデレだったマスターの前で言ってしまっただけの話 作:藤丸立香”に”ヤンデレられたい
思ったより需要があったようで何よりです
ところで、画面の前のあなたもこんなことを言ったことはないですか?
「ぐだ子にヤンデレられてみてぇー……!」
しがないFGOの一プレイヤーである少年は、スマホの画面に移る数々のマスター礼装を着たプレイヤーキャラである女版藤丸立香(通称ぐだ子)を眺めながらそうボヤいた。
何を隠そう、彼はヤンデレが好きだった。もっと言えば現実で女の子にヤンデレられてみたいという願望を抱えている。だが、
「まあそんなこと現実で起こりっこないんだけどな」
ヤンデレな女の子に好かれるのにはそれ相応の素養がいる。スパダリに分類されるような人間であるとか、そうでなくとも女の子に好意を抱かせるに足る人格者であるだとか、そういう資格が。そして彼はそんなものを持ち合わせていない、普通の少年だった。
その上今彼が最も好きな女の子、ぐだ子は二次元にのみ存在する架空のキャラクターだ。どう頑張っても彼女に好かれることはおろか、現実で出会い触れることすらできない。
「要するに、夢は叶わないから夢だってこったな」
スマホの電源を落とし枕元に放り投げ、彼自身もボスンとベッドに寝転がる。この感情も情熱も、いずれは冷めるものだと理解はしていた。それでも彼は、一度でいいから彼女に出会ってみたかった。そんなこと奇跡でも起こらなければ不可能だとわかっているのに。
「会いたいな……」
ところで急に話は変わるが、ぐだ子の登場するFGOを始めとする型月シリーズには度々使われるとあるセリフが存在する。曰く――
「やっほー、マスター君」
「……は?」
――だがここに例外が存在する。
「はじめまして、かな?まあ少なくともこっちではそうだよね。私は藤丸立香。あなたが会いたいと願った、人類最後のマスターだよ」
日が沈む際の真っ赤に染まった空のように鮮やかな髪を持つ少女がそう挨拶をする。少年の持つ純粋な、だが叶わぬはずの願いはとある執念に後押しされ、こうして実現することとなったのだった。
「え……は?本、物?」
「本物だよ?私は他の誰でもない、君が画面越しに見守り続けていた藤丸立香だからね」
唐突に訪れた未知との遭遇に、少年の脳内は困惑の二文字に埋め尽くされる。そんな彼を見かねたのか、少女はそっと彼の手を握った。
「……ほら、触れられるでしょ?」
「あ、ああ。……本当に、ぐだ子なんだな」
「そうだよ。私は君が愛の言葉を囁いてくれるくらい大好きな『藤丸立香』なんだよ」
少女と触れ合うことで冷静になった少年は、彼女のその一言で自分の今までの言動が画面越しにあちら側に筒抜けだったという事実に赤面することになった。
「まっ……!俺の独り言って、全部……」
「うん。聞こえてたよ。少なくとも私にはね」
「マジかよ……」
ゲームとは元来一人でやるものであり、自分の中の世界に籠もって行うものだ。そうなれば必然誰に聞かせるわけでもないしと若干あれな言葉や黒歴史になるようなセリフだって言うだろうし、少年自身にもそういったことをした覚えがあった。
「お願いだから全部忘れてくれ……!」
「うーん、嫌、かな。だって全部君が私のことを思ってかけてくれた言葉だもん」
満更でもなさそうな様子で少年の頼みを却下する少女を見て、少年は諦めたように話題を変えた。
「……そういえば、なんでぐだ子がここにいるんだ?」
「ああ、それはね、君が願ったからだよ。んんっ……喜べ少年、君の願いはようやく叶った……なんてね」
某神父のような言い回しでこちらに語りかけてくる少女を可愛いと思いながらも、彼はこの現状を引き起こした原因について理解した。
「なるほど、聖杯か」
聖杯。それは型月世界の願望気の代名詞にして、FGOにおけるレベル上限解放用のアイテム。もし自分のスマホの先に本当にカルデアが存在するのなら、そこに溜め込まれた無数の聖杯があるのならば、次元を、あるいは世界線さえ跨いだ願望の実現が行われたのもおかしいことだと断じることはできない。少年はそう判断した。
「おお、やっぱりこういうことになると頭の回転が早いね。テストの結果はいつも散々みたいだけど」
「言わないでくれ……」
自分がプレイ中に口にしていたシナリオの考察、そして愚痴っていた成績に関する話題すらも聞かれていたことを改めて実感し、なんとも言えない気分になる少年。だが彼はすぐに持ち直すと、すぐにこの事態の解決に向けて思考を回し始めた。
(俺の願いが原因ってことは、俺がある程度満足すればいいんだよな。カルデアに貯蓄してある聖杯の暴走だっていうんなら、もう既にあっちでキャスターのサーヴァントなんかが事態解決に向けて動いてるだろうし、その後押しのためにも俺の願望、いや欲望をある程度薄れさせないといけないしな)
結論、藤丸立香が同じ世界にいるというこの非日常をある程度満喫すれば、彼女は元の世界に帰還し人理修復の旅へと戻ることができる。ならばとりあえず彼女に許可を取った上で行動を共にさせてもらおう。そう少年が決めその旨を少女に伝えようとしたところで、彼は
「……ぇ?」
「残念、不正解。君が満足したところでこの特異点は解決しないし、私があっちに帰ることもないよ。だってそもそもこれは……
事故ではない。ならば、意図的なものだということになる。確固たる意思を持って俺の下に来た?何故そんなことを……
「まだ気付いてないの?そういうのはクソボケっていうんだよ?私はね……君のことが好きなの」
「なん……で……」
俺のことが好き?こんな俺のことが?
「なんでって言われてもなあ……君は私のことを誰よりも好きでいてくれる。誰にも言ってない私の内面すらも理解してくれる。私が歩んだ旅路も、苦難も、喜びも、悲しみも、全部全部わかってくれている。そんな人のことを好きにならない理由がある?」
それは違う、そう否定はできなかった。彼女はある意味孤独だ。だからこそそんな彼女に理解者が現れれば、こうなるのもまた当然のことではある。少年はそう
「そんな君が私に会いたいって言ってくれた。私に好かれたいって言ってくれた。こんな病みきった私に愛されたいって言ってくれた。それを聞いた時、私がどれだけ嬉しかったと思う?正解はね……無理をしてでも君に会いに来ちゃうくらい!」
少年は悟った。彼女にはもう帰る気などないということも、決して俺を逃がしてくれないということも。
「これでわかってくれた?じゃあ早速
それは嫌だし困る。彼女が消えてしまうのは問題しかない。それでも、少年にはその
「大丈夫だよ。いっぱい気持ちよくしてあげるから。それに君も童貞卒業したいって言ってたし、ちょうどいいでしょ?こういうのは一種のコミュニケーションだってみんなも言ってたしね。君が私のことを何でも知ってるように、私も君のことをもっと知りたいんだ。全部、ぜんぶ、ゼンブ知りたいの。そうすれば私たちはきっと、もっと深い関係になれるでしょ?」
いや、もう既に呑まれてしまっているのかもしれない。嬉しそうに自分を襲おうとしている彼女から目が離せない。自分を知ろうとしてくれていることが嬉しい。そう思ってしまっているのだから。
「き、て……
「……!うん♡一緒にイこうね、■■」
シュルシュルと衣擦れの音を立てて服を脱いだ少女が少年のためだけに見せてくれた生まれたままの姿は、とても美しいものだった。
「あははっ♡好きな人と交わるのって、こんなに気持ちいいものなんだね」
「そう、だな」
メイヴを始めとする女性サーヴァントから指南を受けたという彼女の技量に翻弄されっぱなしだった少年は、朦朧とした夢見心地の気分のままそう答えた。今自分がどうなっているのかもよくわからない。ここが現実なのか、それとも都合のいい夢なのかすら……
「ここは現実だよ?私は君の恋人。そうだよね?」
「あ、ああ……うん、そうだ。そうだった」
そんな心地良い気分すらも、彼女によって与えられたもの。彼女の目を見るだけでぼんやりとした思考の霧が晴れ、すっきりとした気分になっていく。
「うーん……頭蕩けさせすぎたかなあ。まあでも、これで君は私のものだよね」
「ああ。俺は立香のものだ」
少年はそれを当然の事実であるかのように簡単に口にした。
「うんうん。ならいっか!これからもよろしくね、■■」
「よろしくな、立香」
かつて
「これにて哀れな少年と少女の物語はめでたしめでたし……まあ奈落に落ちるよりかはマシなエンディングなんじゃない?
「それで、今日はどうする?立香」
「そうだな……君と一緒に学校に行きたいかな。目障りな女共に牽制もしたいしね」
「ん?今なんか言ったか?」
「何も言ってないよ。そうでしょ?」
「ああうん。何も言ってないな。よし、じゃあ準備するか」
「うん。楽しみだなあ……君とずっと一緒にいられる生活♡」
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大好きな女の子と一緒になり、幸せになれた少年
藤丸立香
大好きな男の子を手に入れて、幸せになれた少女
少女は世界より一人の少年を選んだ
第四の壁を超えるシチュもいいですよね
ってことで書いたお話です
今までのに比べてヤンデレ感が薄いかな?
まあでも幸せそうなのでいいですね
……できれば作者にも幸せ(感想)を分けてください