ハリー・ポッターと偽物の継承者 作:ミミズトカゲ
ちなみに、自分の知識は賢者の石~不死鳥の騎士団がメインで、謎のプリンス以降はほぼ忘れているのでご了承下さい。
(原作確認しながら書いていこうとは思ってますが)
1. ホグワーツからの客
「グリフィンドール!!!!!」
闇の時代を終わらせた英雄の行く先が叫ばれる。その瞬間、大広間は割れるような歓声で包まれた。
英雄の名を知らない魔法使いは、この魔法界においては居なかった。彼がその寮のテーブルに向かい歩いている途中でも、「ポッターを取った」とまだ叫び続けている者もいた。
その喧騒の中、帽子の置かれた丸椅子から少し離れた場所で、目に掛かりそうなぐらいの前髪を持つ少女──サラはぼんやりとその光景を眺めていた。
彼女も、その名前のことは知ってはいた。彼が元になったのであろう、魔法界の小説をいくつか読んだことがある。運命に選ばれし者が、生まれたばかりにも関わらず世界を闇に陥れた者を打ち倒す──この世界で実際に起きた英雄譚としては、素晴らしいものだったろう。
彼女は残り数人となった一年生の列の中に立ったまま、羊皮紙のリストに目を落とす魔女──マクゴナガル先生を見やった。
列車で出会い、城に入るまでそばにいた彼女は早くにスリザリンに組分けされていた。(ABC順に呼ばれると言われたのに、サラがここまで名を呼ばれていないのに怪訝な顔をしているのが見える)
少しだけ口を開いた彼も、数人前にスリザリンに組分けされた。新入生が組分けされる度に歓声は上がっていたが、ここまでではなかった。
それほどの歓声の中でも、組分けは続く。この後に組分けされる新入生は、さぞ肩身が狭いだろう…と、自分を棚に上げてサラは思った。
そして、ハリーが席につき、少し経ったところでその時は訪れた。
「
その名前が呼ばれた瞬間、大広間を覆う声が小さくなり始めた歓声からどよめき声に変わった。
「スリサリン」。ホグワーツ魔法魔術学校の創始者の一人にして、寮の名前にもなっている「サラザール・
この名前は面倒なことになるかもしれない。そう言われていたのは覚えていたものの、実際に体感するのとは大違いだ。
その上、英雄様の直後だ。先程までとのギャップで、より自分が注目されているように感じてしまう。
とはいえ、ただ他人のふりをしているわけにもいかない。
溜息をつきながら、サラは前に歩み出た。
すべての始まりは、数十日前のあの日だった。
サラはいつものように、ソファに深く沈み込みながら膝の上に本を広げていた。「シャーロック・ホームズ」シリーズのうちの一冊。マグルの世界で大ヒットし、その名を知らぬ者は居ないほど有名な小説だった。
彼女の周りには、「ヴァンパイアとバッチリ船旅」をはじめとした、魔法界の小説が周りに散らばっていた。いや、よく見ると魔法界の小説だけではない。不思議の国のアリスや嵐が丘などの、彼女が今読んでいるようなマグルの小説も多々あった。
一見無造作に散らばっているようなそれらは、ある程度ジャンルが分けられて置かれていた。他に人間が居ない家での、彼女なりの整理の仕方らしかった。
少し口が乾き、淹れてもらった紅茶を口にしたとき、居室のドアが叩かれた。紅茶は少し冷めていた。
2回ほど喉を鳴らし、目を再度本に移したところで、ドアが開かれた。いつも通りのことだった。
「失礼します、お嬢様。お客様がいらしております」
ドアを開いたのは、
サラは、物心がつく前から彼に育てられていた。あまり覚えていないが、今の半分ぐらいの歳のときに普通の服を着るように言ってしまっていたらしい。
それでもまだこの家に残ってくれているのは、彼が変わり者だからだろうか。屋敷しもべの契約について、サラはよく分かっていない。
サラは目線を変えずにアルヴァーに応えた。
「客、ですか」
「はい。……少々見慣れない方でして」
そもそも、客が来たことは今まで一度も無かった。いや、本当は時々あったのかもしれないが、少なくともアルヴァーがこのように知らせに来たことは無かった。
ふくろうが窓ガラスを割ろうが、近所の家が爆発したときだろうが、アルヴァーがわざわざ知らせに来たことはなかった。せいぜい、事後報告があるぐらいだった。
なぜ私がわざわざ対応しなければならないのですか、と内心薄っすら思ったものの、「わざわざ」知らせがある時点でアルヴァーだけでは対応できない相手だったのだろう。サラには身に覚えが無かった。
「この部屋に通してもいいです」
読みかけの本を閉じ、紅茶のカップの隣に置いた。買い物などは基本的にアルヴァーにまかせ、家からほとんど──というより全く──出ていないため、他人と話すのは久しぶりだった。内心、だいぶ緊張していた。
数分も経たずに、アルヴァーが部屋にその客を招き入れた。
第一印象は、ただの老人だった。長い銀色の髪と髭。半月型の眼鏡から覗くその青色の目は、サラを見た瞬間少しだけ微笑んだ感じがした。
「こんにちは」と老人は言った。「君がサラフィーナ、かね」
もう知っていることだろうに、彼はそう確認した。これが挨拶程度の確認だということは、普段あまり会話をしないサラでもわかった。
「そうです。あなたは誰ですか」
サラは老人が誰かわからなかった。彼のことは見たことがないはず。実は私の祖父だ、とかでも言うつもりなのだろうか。
「読書中じゃったかの、すまんかった。儂はアルバス・ダンブルドアじゃ。ホグワーツ魔法魔術学校の校長をしておる」
「ホグワーツ…ですか」
ホグワーツ。外に出ないサラでも名前を知っている…というどころか、時々小説の舞台になっていた。
このイギリスにある、魔法界最高の魔法学校の一つ。生きていた頃の姿を見たことがない両親も、ここに通っていた…と聞いた。
「そうじゃ。何週間か前に手紙を送っておるはずじゃが……返信が無かったのでの」
「……ああ、思い出しました。これは失礼しました」
ちらと本の山の下敷きになっていた手紙に視線を向ける。アルヴァーから渡され、この本を読み終わったら開封しよう、と思っていたが、実際に読み終わった後には眠ってしまっていた。翌朝には忘れていた。
アルヴァーもリマインドしてくれれば良かったのに。大方、初めてのサラ宛の手紙だったから…とか、そういう理由だったのだろうか。視界の隅に、彼が少しだけ頭を下げているのが見えた。
「いやいや、構わんよ。儂も外出ついでにちょいとキャンデーを買いたい気分じゃったしの」
「そうなんですか。校長先生というものは暇なんですね」
ただの少女(しかも無名だ)の返答を聞くためだけに校長自らが迎えに来るなんて、普通ではありえないことだということはサラにでもわかる。
「それで、私はどうすれば」
「そうじゃの。まずは、ホグワーツからの手紙を読んでもらってもいいかの」
特に断る理由もない、むしろ忘れていたのは自分の方なのだ。サラは封筒を手に取った。宛名に、「サラフィーナ・スリサリン」と書いてあった。
……校長自らが来た理由がわかったかもしれない。
その手紙の中身は、予想通りホグワーツへの入学許可証(と新入生に必要な物品リスト等)だった。
今年の春、サラは11歳になった。イギリスの魔法族は11歳から魔法学校に通い始めるのだから、内容としては当然のものだった。
「それで、返事はいかがかの。……ミス・
今度こそ、サラのことをファミリーネームで呼んだ。これが校長が来た原因で間違いなさそうだ。
老人の青い瞳が、サラをじっと見つめていた。
「特に拒否する理由もありませんし、入学は了承します」
「おお、ありがとう。それで……」
「──しかし、私はサラフィーナ・
魔法界で、スリザリンといえば闇の魔法使いを連想させる。そもそも、スリサリンという苗字だって、父親がサラが生まれる前後あたりに勝手に名乗り始めた苗字…らしい。アルヴァーは、「お父様の旧姓を名乗るのがよろしいかと」と言っていた。
「ほう、コルドウェル…かの?つまり、君の両親が居ないのは……」
「私の親を知っているのですか」
「もちろんじゃ。彼らが生徒じゃった時も、儂はホグワーツの校長じゃったからな。卒業後は残念ながら、連絡は取っていなかったのじゃがのう」
彼は少しだけその目を細めた。ダンブルドアは、コルドウェルという家系を知っていた。直近でも20年近く前に入学してきたのが最後だった。最後の入学者だった彼は、死喰い人に殺されていたという連絡を受けた。しかし、彼自身も死喰い人だったという。
母親に関しても、今この家に居ないのならば既に亡くなっていると考えるのが自然だろう。
「君が彼らの娘じゃとすると……なぜ儂らはミス・コルドウェルのことをスリサリン、と認識していたのかのう」
ダンブルドアは顎に手をやりながらそう呟いた。悩みが解決した一方で、新たな問題が現れたようだった。
「私が生まれた頃に父が名乗り始めたのが、この苗字だと聞きました」
同意を求め、アルヴァーに視線を向ける。思った通り、「はい、お嬢様のおっしゃるとおりでございます」と答えてくれた。
「なるほどのう。確かに、魔法界でそのようなケースは想定しとらんかった」
ダンブルドアはある程度納得したようだった。ただ、彼女が(おそらく)スリザリン関連の謎の人物ではなく、身元が分かっただけでも十分だった。
元死喰い人の娘ではあるが、そのような人物自体はホグワーツでも珍しくない。
「ともかく、本名自体はスリサリン、でいいのじゃな?」
「まあ……そうです。ただ、普段はコルドウェルと呼んでほしいです」
「ふむ。教師としては偽名を推奨するようなものになってしまうのじゃが……非公式な場なら良いじゃろう」
「感謝します」
それ以上、ダンブルドアは名前について追求しなかった。一段落したところで、ダンブルドアは再度部屋を見渡した。サラが手紙を引っ張り出す際に、本が更に散らばった。とはいえ、大差は無かった。
「ところで、ミス・コルドウェルはなかなかの読書家のようじゃな」
「他の人は知らないですが、私は小説なら毎日読んでます。勉強の本はあまり読んでないですが」
「それでも良いことじゃ。何を読もうと、学べることはある」
先程まで読んでいたのだろう、机の上のシャーロック・ホームズを見ながらダンブルドアはそう言った。もちろん、彼もその本は読んだことはないにせよ知っていた。マグルの本だ。
娘は純血主義に染まっていないように思えて、何よりだった。
「確か、その本はマグルの推理小説じゃったかのう?」
「はい。知っているようですが、マグルでは有名な物です。もう三回は読んでいますね」
これに限ったことではないですが、と彼女は周りを見ながら続けた。
「そうかそうか。それほどまでに小説が好きなんじゃな。……ホグワーツの図書館の蔵書にも、いくつかはあったはずじゃ。マグルの物はさすがに殆ど無いがの」
きっと楽しめるはずじゃ、と微笑みながらダンブルドアは言った。
「おっと、もう一つ話すことがあるんじゃった。このまま話しているのもいいんじゃが、それだとキャンデーの店が閉まってしまうからの」
「はい、何ですか」
話しているのもいいと言われたものの、サラは特に話していることには喜びを覚えなかった。
読書を再開するために、むしろ早く終わらないですか、と思っていた。本を読んでいる途中でなければよかったのだが。
「封筒に他の紙も入っていたじゃろう?それはホグワーツで必要になるもののリストじゃ。ホグワーツ生はダイアゴン横丁でそれらを買うのじゃが……ミス・コルドウェルは行ったことがあるかの?」
「……行ったことはあるかもしれませんね」
サラの記憶は曖昧だった。フローなんとかとかいう書店にはアルヴァーと行ったことがある気がするが、それがダイアゴン横丁なのかは知らなかった。魔法族の書店であることは確かだったはずだ。
書店以外の記憶が全くと言っていいほどないので、屋敷しもべ妖精の特殊な魔法で書店と家を直接行き来していたのかもしれない。
「ふむ、その様子じゃと買い物をするのにも困るかもしれんの。ならば、ホグワーツの教師を一人、同伴させてもよいかのう?」
「私にはアルヴァーが居ますが」
「屋敷しもべ妖精と少女が二人でダイアゴン横丁を歩いている姿は珍しいからの。目立つじゃろう?それに、教師と共に歩いておれば他の魔法使いから見てもホグワーツの新入生とわかるはずじゃ」
サラは顎に手をやり、少しの間だけ考えた。とはいえ、普段出歩かないといっても、特に拒否する理由もない。ただただ厚意でそう言ってくれているのだと感じた。
「構いません」とだけ彼女は答えた。
「ありがとう。セブルス・スネイプという教師の予定じゃ。明日でもいいかの?」
「問題ないです」
特に予定はあるはずも無かった。いつも、起きてから寝るまで殆どの時間を読書にしか費やしていなかった。
「では、今日はここで失礼させてもらうとするかのう、サラフィーナ嬢。また、ホグワーツで会うとしよう」
「はい。それでは」
来たばかりの時の雰囲気は彼が帰るときにはすっかり消え去っていた。あっさりと帰っていく姿を(サラは座りながらだったが)アルヴァーと共に見送った。何回かキャンデーと言っていたのだ、きっと、菓子屋にでも行ったのだろう。
「明日は別の先生が来るみたいですね」
「はい。資金などは明日までにご用意致します」
それだけ言って、アルヴァーはサラの部屋から退室していった。サラも小説の続きを読もうと、机に手を伸ばした。すっかり冷めた紅茶は、既に片付けられていた。
数時間が経ち、サラは追加でもう一冊を読み終えた。もう日は暮れていた。
この巻を読んだ回数は、多分4回目になった。
余韻に浸りながら居室から出ると、アルヴァーが既に夕食の用意を終えたところだった。いつも通りのことだった。
夕食を終え、再度小説を読もうと居室に戻ったところで、明日は買い物に行かなければならないことを思い出した。
「ああ、そういえば明日は更に他の人に会うんでした。最近読んでいませんでしたが、あれは再度読んでおく必要がありそうですね」
彼女はそう思いながら、本の山を物色し始めた。目当ての本を見つけるのに、そう時間はかからなかった。
「他の魔法族と会うのならば、またこれに目を通しておいたほうがいいでしょうか」
そう独り言を言って、彼女は昼と同じようにソファに腰掛け、膝の上にその本を広げた。
しかし、その本は先程までとは異なり、小説ではなかった。この家では、数少ない小説以外の本だ。
その本の背表紙には、「純血一族一覧」と記載されていた。
色々独自設定とかも多くなると思います。
ロックハート以外に小説書いてる魔法族っているんですかね。
ちなみに自分はハーメルン以外の小説を読んでないので、そこもご了承ください。
あと、今まで書いた小説は全部エタってます(小声) 評価してくれたら嬉しいです。