ダンジョンに強さを求めるのは間違っているだろうか |迷宮神聖譚《ソード・オラトリオ》   作:ベル虐サイコ〜!!!

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 ベル君の過去について少しだけ明かします。
 これからの章に学区とのオリジナル編とかベル君の過去編とかやりたいな。



quest(クエスト)4 隠したい過去(メモリアル)

 僕の名前はベル・クラネル、そしてここは【ロキ・ファミリア】の執務室、そこに鎮座していたのは団長のフィン・ディムナ、副団長のリヴェリア・リヨス・アールヴ、三首領の一人ガレス・ランドロック、【剣姫(けんき)】アイズ・ヴァレンシュタイン、【大切断(アマゾン)】ティオナ・ヒリュテ、【怒蛇(ヨルムガンド)】ティオネ・ヒリュテ、【凶狼(ヴァナルガンド)】ベート・ローガ(何でお前居んねん!!)【千の妖精(サウザンド・エルフ)】レフィーヤ・ウィリディス、【純潔の園(エルリーフ)】アリシア・フォレストライト、ロキファミリアの英傑達が鎮座する中、その中心にて今か今かと裁きの時を待つ最強が一人、【剣聖の英雄(アルゴノゥト)】またの名を【戦王(せんおう)】ベル・クラネル、誰よりも強いはずなのに、今はそんな風貌の欠片も見せず、それはまるで天敵を前にうずくまる小兎の如し。

 

「さあベル…、話してもらうよ」

 

「あ…あぁ、分かってる…で、俺は何を話せばいい?」

 

「そんなのは決まってます!!あの魔法の事です!!あそこで放った魔法は二種類、でもベルさんは私達の前で二つの魔法を行使してきました、それを合計すると四つ、明らかに魔法スロットをオーバーしてます!!!」

 

「それは…、それを話せば良いのか?」

 

「ベルたん諦めいや!もうあらかたゲロっちゃえばええやんけ、その後でウチらが補足したる、それに魔法のことについてはいずれ話さなあかんやろ?それはええやん!!」

 

「はい…確かにそうですね、それじゃあまず、()の魔法は三種類あります、それぞれ防御系の付与魔法と障壁魔法の性質を兼ね備えた物、全体にバフと自身に強力な付与(エンチャント)をかける魔法、外界と隔絶させる魔法の三種類です」

 

(ベルが使ってたやつ、超短文詠唱なのにとんでもない強度のバリアを出してた…、それにあの詠唱文を…私はどこかで聞いた事が…ある?でも……そんな事より……)

 

 ベルの説明を受けてアイズは少し思考した後、すぐに切り替え、ベルに今できた疑問を挺する瞬間、山吹色のエルフが一言。

 

「待ってください!!!それじゃベルさんの使う速攻魔法はどこにあるんですか?!」

 

 今の説明を聞いた全員…ティオナ以外はその思考にたどり着く、そこに割ってはいるようにロキが口を挟む。

 

「そこからはウチが話そか、まず初めにベルたんにレフィーヤの様な召喚魔法はない、だから今言った魔法がベルたんの持つ全てや、それはわかったか?」

 

 ロキの言葉にレフィーヤはゆっくりと頷く、だが今の言葉で余計に疑問が増えた。

 それを聞くように次はアリシアが声を上げた。

 

「でしたらベルさんの速攻魔法はどういった原理で扱えているのですか?」

 

 アリシアの問いにベルはゆっくりとその重い唇を開ける。

 

「あればスキルの恩恵、魔法スロットを介さない魔法の顕現、そのレアスキルが二つある、それのおかげで()は魔法を五つ扱える」

 

「ベルたんのスキル【雷霆血統(ゼウス・ブラッド)】、【神創英雄(アルケイデス)】の二つがそれやな」

 

 その2つのスキル名を聞いて理解した、そこにいる誰もがその名前をしらない、つまり全てレアスキル。

 だが、レアスキルは滅多に出ないから()()スキルなのである、それが二つもある、その事実にそこにいた主神ロキとフィン、リヴェリア以外の団員は目を見開いた。

 だが、それ以上の事実をロキは言う。

 

「ベルたんのスキルは合計四つ、その全てがレアスキルや、そしてそれら全てが化け物並みの効果をしとる(ほんまはあと一つあるけど、それは言わんほうがええな、【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】あれは異常すぎる、それを知られると、特にアイズたんがヤバいしな)」

 

 隠したいことは頑として隠す、これが天界切手のトリックスターであるロキのやり方、嘘と真実を絶妙なバランスで織り混ぜ、そしてさも真実かのように語る。

 そして残った疑問が一つ、それをレフィーヤは身を乗り出して聞く。

 

「じゃあ、あの雷属性の広範囲魔法は何ですか?あれは中文詠唱でした、でも……それでもあの威力は……」

 

「レフィーヤ、気にすることはない。そうだな、あれは私の第一階位魔法【ウィン・フィンブルベトル】と同等の威力があっただろうな」

 

 そのリヴェリアの一言に皆が驚愕した、都市最強の魔道士が言うのだ、それにベルには魔法威力増幅系の装備は無いはず、それにいち早く気づいたアイズが言う。

 

「それじゃなんで?あの威力を出せたのは…?」

 

 アイズは答えに辿り着きかけていた、何かは分からないけど、それは特別な…自分と同じ特別な()の筈という思考に行き着いていたアイズはその疑問を解消すべくベルに問うた。

 それに対してベルはゆっくりと、さっきより重い空気を孕みながら言う。

 

()の……いや、()のあの力は、()()()()だ」

 

 

「――え?」

 

 

 アイズの透き通る様な声が、瞠目しながらアイズはベルの方を見る、そこに映るのはさっきまでとは違う、何も詠唱してないのに、ベルの身体には蒼白い光沢を放つ雷霆の付与がされていた。

 

「この力は精霊の力、大精霊の加護を受ける俺にはこれが自在に操れる、それに言霊を介す事で魔力自体に命令できる、あればそれを使った、あのモンスターも行っていたが、あれは大気中のマナを効率良く回収して放出したんだ、無論、俺には雷属性以外の精霊の力は使えんがな」

 

 

「「え?!」」

 

 それを聞いて驚いたのはレフィーヤとアリシアの二人だった、エルフの二人が驚愕の声を上げるのに対し、ティオナが疑問の声を上げる。

 

「なんで、普通じゃない?そもそも精霊ってその力しか使えないんじゃ――」

 

「――それは少し違うぞティオナ」

 

 ティオナの疑問に答えたのはリヴェリアだった。

 

「元来精霊とは自然と共に生きる者、確かに英雄譚などではその力しか使っていないが、本来精霊であれば全属性の魔法が使えるのは当たり前、それも大精霊ともあれば全属性を最上位で扱える…筈だ」

 

「じゃあ何でアルゴノゥト君の精霊は使えないの?」

 

 リヴェリアの発言にティオナは疑問を挺する、それに答えたのはアリシアだった。

 アリシアは重い口を開きながら言う。

 

「大精霊であれば本来は使える…、でも……その更に上の()()なら話は違います…………。ベルさん、答えて下さい、これはエルフである我々からすれば大きな問題です!!」

 

「ああ、アリシアの見立て通りだよ、俺の中にいる精霊は大精霊じゃない」

 

「え?それじゃアルゴノゥト君の精霊って何?」

 

 ベルの一言にティオナはまたしても疑問を挺する、それに対してベルはゆっくりと答えた。

 

「俺の精霊は()()している、冠する名は【雷霆】つまり、その頂点に君臨するという事だ」

 

「「「「「「「――――?!」」」」」」」

 

 その場にいた全ての団員が瞠目した、精霊の事をよく知らないベートやティオネ、ガレスでさえもその異常性に気づいた。

 それに対して声を荒げたのはレフィーヤだった。

 

「それじゃ名前は何ですか!!そもそもどうやってその精霊と……まさか…森を……」

 

「いや、違う。俺の精霊の名前は『ジュピター』、正しく雷霆を司る大精霊で―――」

 

「すっご〜いーーーーーーー!!!!!」

 

「五月蝿い馬鹿ティオナ!!耳が壊れるでしょ?!」

 

 ティオナの咆哮(ハウル)にも勝る威力の声にティオネが一喝、それでもティオナは目をキラキラさせてまるで子供のようにベルに言う。

 

「じゃあさ……、もしかしてアルゴノゥト君って本当にアルゴノゥト君なの?!」

 

「あんたはさっきから何を言ってるの?」

 

 ティオナの一言にティオネは呆れる、一件それは同じ事を言ってるようにしか聞こえないが、ベルにだけは分かった、同じ英雄譚好きのベルにだけは。

 

「それは…分かりません、でもティオナさんが考えていると事が正解です」

 

「えぇ!?本当に!!!スッゴーイ」

 

「ちょ!?私たちにも分かるように言いなさいよ」

 

 ベルの言葉にティオナは今度こそ嬉しそうに飛び上がる、それを見たティオネは話に置いてけぼりな全員を代表して言う。

 

「俺の中にいる大精霊ジュピターは、三千年以上前から下界に存在していた、それは古代と呼ばれる神時代以前の話だ」

 

「それって…、つまり古代の精霊をベルさんが見つけ、契約を結んだんですか?」

 

「少し違うな、こいつが選んだんじゃない、()()()()()()()、生まれた時にな」

 

「「え?」」

 

 本日何度目かの驚愕、レフィーヤとアリシアは開いた口が塞がらなかった。

 それを見たティオナが一言、それに対してアリシアが答える。

 

「それって何が違うの?ほぼ同じじゃない?」

 

「いえ!それは文面以上に大きく異なります、元来精霊の力を行使するには大きな対価必要です、それは分かりますか?」

 

「そう言えばアルゴノゥトも最後は盲目になったった………じゃあアルゴノゥト君も…、まさか代償は寿命?!」

 

 その一言に一番反応したのはアイズだった、まるで確かめる様にアイズはベルを見つめた。

 

「大丈夫だよアイズ、俺は何も代償を払ってない、だろ?アリシア」

 

「はい、本来は精霊が自身の力に見合った『器』を探し、そして気に入ったら契約する…それが当たり前でした、でもベルさんは違う、『器』が自身の力に見合った『存在』を選んだんです……それも生まれた時に…」

 

「ああ、だから俺は何も代償を支払ってない…いや、強いて言うならあるが…本来ならなかったものだがな」

 

 ベルが苦笑しながら言う、アリシアやレフィーヤがゆっくりとベルのほうを見ながら次の言葉を待つ。

 

「初めに言おう、俺の精霊は外界に出れる、俺の許可が必要だかな、だが出さん、俺の精神世界の中で俺一人でこいつを請け負う」

 

「なんでよ!?私にも見せてよ、アルゴノゥトとも契約したんでしょ?じゃあその時の事について聞きたい」

 

「それは俺が話す…、じゃあ駄目かな?」

 

「私は…直接本人から聞きたい…駄目?」

 

「それにこいつは前任者の事は覚えていない、そもそも忘れている」

 

「なんで?!」

 

「それは当然だろ…、エルフからしたら数年前の事など一ヶ月前と変わらない、それが三千年以上も生きてるんだぞ!?一時間にすら満たないったの」

 

「あ…そっか…」

 

 ティオナは納得したような声を漏らす、だがそこが問題などではなかった、もっと問題なのはその精霊の性格だった。

 

「俺がこいつを出したくないのはひとえにこいつの性格についてだ」

 

「それって…どういうことですか?ベルさん」

 

「こいつは…ウチの主神と同じなんだ……ッ!!」

 

 その瞬間、ロキは「ウチ?!」と言った驚愕の声を漏らし、事情を知るフィンやリヴェリアですら驚きの表情を隠せなかった。

 

「単刀直入に言おう、こいつはエロ親父だ、神様はまだ女神だからギリ送還されずに済んでいる…、だがこいつらどう見ても変態親父、性別が男で、それも大精霊、放つ神威も神に片足突っ込むぐらいはある…つまり何が言いたいか分かるな?」

 

 その言葉にレフィーヤやアリシアは貞操の危機を感じていた。

 その言葉を聞いていたリヴェリアは固唾を飲み込んでベルに聞く。

 

「ベル…、本当にそうなのか?なら一度聞かせてくれないか?」

 

「良いですけど…、不快になりますよ?」

 

「ああ、構わない」

 

 リヴェリアの言葉に対してベルは手のひらに蒼の光を放つ何かを出す。

 そこから発せられは声は…凄まじかった。

 

『おなごが…(おなご)が儂について知りたがっておるぞ!?そこのハイエルフよ、どうじゃ今晩儂と夜をと―――』

 

 その瞬間、その言葉が発せられる前にベルはその右手を思いっきり握る。

 

「分かったか…、普段団員達の前で眉間にシワが寄ってるだの何だのと、怖い顔をしてるだの取ってつけたような笑みをしてるなどと言われるが、当たり前だろ?!こんなんがいつも俺の中で馬鹿みたいに騒いでんだぞ?!」

 

「これは………危険ですね、ベルさん、絶対に出さないで下さい」

 

「ベルさん、貴方を悪く言いたくないですけど、その精霊からはロキと同じ変態の気配がします!!」

 

「なんか今回のウチの扱い酷くない?!」

 

「「「日頃の行いを振り返って下さい(振り返れ馬鹿者)!!!!!!!!!!」」」

 

「ちなみにあの大技は、大気中のマナに直接命令して、俺の精霊炉を介して扱ってるから、だから詠唱と言うよりは命令文の方が近いかな?」

 

「「え?」」

 

 レフィーヤとアリシアは硬直した、そうして今回の第一回ベル君の問い詰めるの会は終了となった、次は恐らく遠くない未来に、きっと修羅場の様な雰囲気となっているでしょう。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 (結構話さなかったな、僕の過去について、それもこれもジュピターがあの場で変な事を口走ってくれたおかげたよ、ありがとう)

 

『儂としては複雑じゃわい!!まぁ良いか、お主も儂も語れん過去があるからな』

 

 そうだ、僕には言えない過去がある、アルフィアお義母さんとザルド叔父さんの事、お祖父ちゃんやヘラ叔母さんの事も、色々語れないことが多い、それを語れば、きっと今での関係には戻れない。

 アルフィアお義母さんやザルド叔父さんの事を恨んでるかと聞かれれば、恨んでないと答えるだろう、でも…僕はあの人達を守れなかった、その後悔だけが残り続けてる。

 

(僕ってなんでこんなに弱いんだろうね?)

 

『お主は強い、同年代の者よりも遥かにな。お主の想いも覚悟もきっと誰よりもな』

 

 僕の覚悟、それは団長達やヘラ・ファミリアの人達が成し得なかった偉業を僕が成すこと、それが唯一の…生き残った僕に残された使命。

 これはゼウスとヘラの最後の系譜である僕に課された…俺が俺に課した誓い(ゲッシュ)なのだから。

 

 いつか、黒龍を討ったら僕もお義母さん達のいる所に行くよ。

 その時はまた、僕も次代の英雄候補達に未来を託してね、だからもう少し、もう少しだけ待っててね。

 

 ベルは誓った、誰もいない月に向かって一人、それはきっと誰よりも辛く、それでも折れることすら、立ち止まることすら許されない青年の…(がわ)だけが大きくなってしまっただけの少年の英雄への道…いや、覇道だ。

 

(その時は…ジュピターも着いてきてくれる?)

 

『愚問じゃ、儂はお前に着いていくぞ、例えおなごがおらん世界だとしてもな』

 

(それは少し…僕は嫌かな、流石に男だけの世界は無理すぎる)

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 ベルは…私達に隠し事をしてた、きっともっと隠してる、それをベルは絶対に離してくれない。

 可笑しな話だ、自分の事は良くてベルは駄目なんて…でも、話して欲しいな…信用…して欲しいな。

 これは我儘だ、子供の癇癪と同じ、これをベルに言うのは違う。

 

 アイズは中庭に出ていた、そこには一人の青年が居た、初雪を思わせる白髪の短髪に異色双眼(オッドアイ)の瞳、片方が灰色で片方が翠色、私はそれによく似た人に会ったことがある…筈。

 

 なんでだろう…、ベルが誰かに似ているよ、それにあの魔法は…やっぱり誰かに似てる、あの理不尽な強さも…あの瞳も。

 

 ゆっくりとアイズはベルの下へと行った、確かめる様に、それに気づいたベルがアイズの方を向きながら笑う。

 

「どうした?アイズ」

 

「ねぇ…ベル、ベルはさ…その…暗黒期って知ってるよね?」

 

「何だ?急に、俺はてっきりさっきの事について聞きに来るもんだとばかり思ってたんだかな」

 

「それも聞きたかった…けど、私も…ベルにも話したくない過去がある…だから…聞かない」

 

「そうか…、それで暗黒期だったな、俺もその話は知ってるよ、確か【アストレア・ファミリア】のアリーゼさんやリューさん、アイズ達も参加して闇派閥(イヴィルス)を追い詰めたんだろ?多くの神や民間人が犠牲になったやつ…だろう?」

 

 ベルは言う、それは聞いた話だった、アルフィアやザルドの最後はエレボスやオッタルに聞いただけだった。

 そんな事は知らないアイズはベルの顔を見て思った。

 

(笑ってるの…?)

 

 少し、いつもあまり感情を表に出さないベルにしては珍しくやや口角が上がってる。

 それに気づいたアイズは頭の中で一つの疑問が過る。

 

(なにか…知ってる?それは…何?)

 

「どうかしたか?んなとこだな、俺が知ってるのは、他に聞きたいことは?」

 

「……ううん、大丈夫…ありがとう」

 

「そうか、じゃあ俺も寝る、アイズも風邪をひく前に寝ろ」

 

「うん…」

 

 ベルは黄昏の館へと戻る、それを見送って、アイズは一人星を眺める。

 

(ベルの過去…、何があったんだろう?)

 

 それは知る由もない、そしてベルは絶対に誰にも教える気がなかった。

 だが…ここは神々が降り立つ英雄の都オラリオ、愉快な神々はそれを良しとはしなかった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 僕達は遠征での物資を換金しに行った、そんな中、僕は一人取り残されていた…何故って?僕は値切られたら断れないたちでね、それが原因で僕には任されなかった…故に僕はこの修羅場を見据えることしか出来なかった。

 

「1200マントヴァリスよ、これ以上は無理ね」

 

「ご冗談を、900万ヴァリスでお引き取り致します」

 

 女と女の戦い、片や自分の惚れた男に褒められたいが為の煩悩の塊、片や単純に面倒くさいだけの女。

 ベルは恐怖した、戦闘民族(アマゾネス)の習性を、そして自分はアマゾネスにだけは気に入られないようにしないといけないと(もう既に無理である、都市最強の一角、その頂に立つベルに惚れないアマゾネスは居なかった。ヒキガエルも例外なく)。

 

「今回のは息が良くてね、こっちも死にかけたんだし、正当な対価が欲しいわよねぇ〜」

 

 拾い物で何言ってんだティオネ…、既にその声を上げるには遅すぎた、アイズは沈黙…というか置いていかれていた、ティオナは呆れて声も出せなかった、僕は既にアミッドさんに頭の中でごめんなさいをしていた。

 

「1000万ヴァリス、これ以上は無理です」

 

「良し!!売ったわ!!!!」

 

 ティオネはアミッドに強竜(カドモス)の外皮を売った、アミッド的には「足元を見て冒険者依頼(クエスト)を受注したのはこっち、だからこれで痛み分け」との事。

 

「アミッドさん、すみません…無理を言ってしまって」

 

「大丈夫ですよベル、そんな事を気にするのであればもう少し怪我をする頻度を減らしてください、毎月のように貴方の怪我を観てきたおかげでもう多少の事であれば動じない精神力が身についてしまいました」

 

「それは俺のおか……なんでもないです、すみません」

 

 般若だった、聖女のお面を被ったおっかない般若を前にベルはうずくまり、怯える小兎となっていた。

 

 僕はアイズ達と別れ【ヘファイストス・ファミリア】のホームの近くの一つの鍛冶場に寄った。

 

「ヴェルフ、来たよ!!」

 

「おう!ようやくか。悪いな、今回の遠征にはついて行ってやれなくて」

 

「ううん、俺の方こそ悪いな、面倒かけた」

 

 ヴェルフの右手には一本剣が握られていた、それはベルが半年前に討伐したイレギュラーで発生した黄金のウダイオスの使っていた大壊剣、それを片手剣にまで加工してくれたものだった。

 

「ありがとう、引き抜いて良い?」

 

「当たり前だ、感想を聞かせてくれ」

 

 ベルは刀身を鞘から引き抜いた、そこには深紅の輝きを放つ刀身が、前任の【深紅の長剣(スカーレティア)】よりも深みのある深紅(ルベライト)色だった。

 

「これは…特殊武装(スペリオルド)?」

 

「ああ、お前の【ファイアボル卜】の唯一の弱点である出力の低さを補う為に≪大火増幅(クロスフレア)≫を付与させてもらった」

 

「それって…ありがとう、だけど値段は?かなり高いんじゃない?」

 

 正直、ベルにとっては値段はどうでもよかった、何はともあれヴェルフが魂を込めて打ってくれた剣、どんな値段だろうと払う覚悟はあった、だが特殊武装(スペリオルド)になるとは思ってなかった。

 

「値段は6000万だ、そもそも素材はお前の持ち込み、それを俺が打っただけだ…だが、今回はかなりキツかったな、多分火傷のし過ぎで『耐久』のアビリティが50は上がったんじないか?」

 

「それは…いや、あの回復薬(ポーション)の殻の瓶の山を見れば分かるよ、ありがとうヴェルフ」

 

「礼は要らん、今度の遠征は俺と椿、他の団員もついて行く、魔剣も何本か打ってやるからな、安心しろ」

 

「次回は多分ヴェルフにもついてきてもらう事になる、だから頼むよ」

 

「何だ?また厄介事か?」

 

 ヴェルフはベルに呆れたように聞く、ベルは静かに頷く。

 

「今回の遠征は途中で帰還することになった、それはまだ(おおやけ)にはなってないけど…、あれは精霊だった、だから魔道士殺しの魔法を持つヴェルフが居ると安心できる」

 

「また厄介事…それも精霊か、一応聞くが元には…」

 

「無理だ…恐らく何らかの外的要因で魂自体が穢されてる」

 

「そう…か、分かった」

 

 ヴェルフは静かに頷く、するとヴェルフの隣で寄り添うように焔の化身が現れる。

 ウルス、それがヴェルフ・クロッゾの持つ精霊だった、オラリオに来た時、一番最初に知り合い、そしてお互いに精霊の力を持った仲間だったことで意気投合、そこから専属鍛冶師になるまでにそう時間は掛からなかった。

 

「ありがとう、じゃあ俺は行くぞ、そろそろ宴があるんでね」

 

「あのドワーフの酒場か、俺はあのドワーフが怖くて堪らねぇってのに…」

 

「俺もだよ、一度あの人の拳骨を喰らった時は走馬灯が見えたよ…お義母さんや叔父さんが…そしてお母さんが()に向かって手を振ってるのがね」

 

 生きているのである、だがそんな事を知らないベルにとってはそれが全てだった。

 幼少の頃、たった二年だけ共に過ごした母親との記憶、ベル自身と同じ白髪の髪に白を基調としたワンピース、ヘラが自らお世話をしていた時のあの衝撃をベルは二度と忘れることはないだろう。

 ゼウスとヘラのファミリアが壊滅し、それでもヘラはメーテリアの世話を欠かさなかった、それでもメーテリアの病が治ることはなく、亡くなってしまった。

 その時、ヘラの心は完全に閉ざしてしまった…、だが!今はゼウスの事を追って、ゼウスはそれから必死で逃げ惑っている。

 ベルはその事実を知っている、何でヘラは立ち直ったって?それは当然だろう、愛しの眷属達の生存の兆しが生まれたからだ、それを期にヘラはゼウスを探した、オラリオの暗黒期収束と共に立ち直り、ゼウスは顔を真っ青にしてベルに「儂は逃げなければならん?!あやつに捕まれば終わる?!ベルもオラリオに向かうのじゃ!!」と言ってゼウスは逃げた、あれは可哀想だった…、そうしてベルもオラリオに向かったのは、また別のお話。

 

「じゃあねヴェルフ!!またダンジョンに一緒に潜ろう!!」

 

「もうコロシアムで寝泊まりは嫌だぞ!!椿と同じになるのは嫌だからな」

 

 鍛冶師のヴェルフのレベルは4、僕と一緒に深層に定期的に行っては愚痴を吐いている。

 

「そうかな?あれはいい金策だったと思うけど、駄目だった?」

 

「ふざけろ?!お前が居なきゃ俺死んでたぞ!!巷で俺がなんて呼ばれてるか知ってるか?『椿の後釜』だぞ!!あと一回偉業を成したら俺、レベル5だぞ!!!どうすんだよ」

 

「いいじゃんそれはそれで!!そのおかげで俺らの遠征についてくれるんだからさ!!」

 

 そう言ってベルはヴェルフの工房を後にした、終始文句を垂れながらもベルとの別れ際では手を振った。

 ベルも手を振り替えした、その後、外は夕暮れとなり夜の帳が折りかけていた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

名前 ヴェルフ・クロッゾ

ステイタス  ≪Lv.4≫

力:A841  鍛冶:E

耐久:A809 魔防:F

器用:B751 精癒:I

敏捷:B792

魔力:S901

≪スキル≫

魔剣血統(クロッゾ・ブラッド)】【炎化創化(ベリタス・バーン)

≪魔法≫

【ウィル・オ・ウィスプ】

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「ごめん下さーい」

 

「下さい」

 

「やぁいらっしゃぁい………って、げぇぇぇ大切断(アマゾン)!!!!」

 

「親方〜!!壊し屋(クラッシャー)が来やしたぜぇ〜!!」

 

「クッソ〜、今度は何の用だ?」

 

「また武器を作ってもらいに来たんだけど」

 

「はぁ~?ウルガはどうした?俺らが三日三晩不眠不休で鍛えたんだぞ!!!」

 

「溶けちった、ごめんね」(⁠。⁠•̀⁠ᴗ⁠-⁠)⁠✧

 

「ノォォォォオ!!!!!」

 

「お…親方〜〜〜!!!」

 

 そんなティオナの無邪気で、それでいて悲惨な事実を前にゴブニュファミリアの親方は気絶してしまった。

 

 そんな中、アイズは一人の…いや、一柱の神の下へと向かった。

 ゴブニュファミリアの主神 ゴブニュの所である。

 

「何の用だ?」

 

「剣の整備を頼みに来ました」

 

 そのアイズの一言にゴブニュは手を差し出し、アイズの愛剣であるデスペレートを受け取った。

 その刀身を引き抜き、ゴブニュはアイズに向かって一言言った。

 

「これは…、相当無茶な使い方をした用だな?刃がやけに劣化しているが、何を斬った?」

 

「何でも溶かす溶解液を吐くモンスターとその溶解液を沢山…」

 

 その一言にゴブニュは呆れながらも剣を研ぐ準備を始める、砥石を置いて、剣を研磨し始める。

 そんな中、ゴブニュはアイズのほうを見るでもなく、アイズに一言言った。

 

不壊属性(デュランダル)は壊れずとも劣化はする、戻すには相当な時間がかかる、代剣を出してやる、暫くはそれを使え」

 

「………」

 

「半端な剣ではどうせすぐに壊す、大人しく受け取っておけ」

 

 そう言うとゴブニュは剣が何本も入った樽の中から一本剣を見繕い、抜き取ってアイズに渡した。

 

「振ってみろ」

 

 そう言うとアイズは剣を構えその刀身を抜刀し一振り、風を斬る音と共にその細剣の刀身が露わになった。

 それを見てゴブニュは眉間にシワを寄せる。

 

「やはり無駄な(りき)みが多いな、もう一度剣筋から鍛え直せ、でなければ剣ではなく、お前が先に壊れるぞ」

 

 分かってる、だけどそれでも強くならなきゃならない。

 

「はい…分かりました」

 

 そう言ってアイズは工房を後にした、そこに映る都市の景色はやっぱりいつも通りの白黒の世界、何も感じないし何もない、ただそこにあるだけだった。

 

 何も変わらない…、君が…ベルが居たらもっと違ったかな?もしかして変わらない?それは…少し嫌だな。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

「ダンジョン遠征ご苦労さん!!!それじゃ〜皆、乾杯や〜!!!」

 

「「「「「乾杯〜!!!」」」」」

 

 各々が手に持っていたグラスの中身を呷る、ロキはガレスと共に酒飲の見比べ、ティオネはフィンを酔わせて何かを企んでいた、それを横目で見ながらベートは苦笑していた。

 アイズやレフィーヤは仲良く宴を満喫し、リヴェリアはそんな団員達に目を配りながらも静かに酒を飲む。

 各々が様々な料理を食べながら、今回の遠征の事についての思いを馳せる。

 皆がダンジョンでの鬱憤を晴らす中、一人の武人は早々に外で空を見上げていた。

 そんな所に一人の妖精が話しかけてくる、若葉色の制服を身に纏い、金髪の髪を後ろで纏めたポニーテールに、こちらを見つめる瞳の色は空色。

 

「リューさん、どうかしたんですか?」

 

「いえ、クラネルさんが早々に外に行くところを見て、何かあったのかなっと思いまして」

 

「すみません…、俺はあんまりああ言う空気は苦手でして、静かな方が好きな立ちでして」

 

 冒険者は大抵が騒ぐのが好きな無礼者というイメージがあるが、それもまた一部の人、だがベルの様に完全に静か方が好きな人間も珍しい。

 

「そうですか…、すみません、嫌な記憶を思い出しましてね」

 

「嫌な記憶?」

 

「はい…、暗黒期に…『死の七日間』と言われた時、あの【静寂(せいじゃく)】のアルフィアを討った時の…あの洗礼を思い出しましてね、あれは心を折られた…」

 

「そうなんですね、そんな事が…(アルフィアお義母さんの洗礼とか、どんだけキツいんだよ、リューさん達ドンマイ(キラーン))」

 

「ん?今馬鹿にしましたか?言っておきますけどあれは本当にキツかったんですよ!!」

 

「は…はい、リューさんも…その…声を荒げるときがあるんですね…」

 

 気づけばリューはベルのすぐ近くまで迫っていた、それに気づいたリューは顔を赤らめながら一歩下がる。

 そんなリューを見てベルは笑みを溢す。

 

「何を笑ってるですか?」

 

「いえ、そうですね、その『アルフィア』って人は何か言っていたんですか?」

 

「はい…、英雄の意思を示せと、『正義』を示せと言っていました」

 

「…、そうですか、それで『正義』は見つかりましたか?」

 

「いえ、なので今も旅を続けていたる最中です、いつか正義が何なのかを見つける為に…、クラネルさんの…()()の『正義』とは何ですか?」

 

「俺…ですか…、俺の『正義』は()()()()を守る事です、このファミリアを、そして皆の笑顔をです」

 

 ベルは曇りなき眼で空を見据える、何かに問うように。

 それを見たリューは笑みを溢しながらベルの方を向いて一言。

 

「それは素晴らしいですね、『正義』に正解はない。それも必ず正しい事です、ファミリアを大事にしてあげて下さい」

 

「そうですね、ありがとうございます、そう言えばリューさん達は怪物(フィリア)祭でもまた警備ですか?」

 

「そうですね、例年通りですね、そう言えば今回の遠征は少し帰りが早かったようで…」

 

「そうですね、少しイレギュラーが起きまして…」

 

「そうですか、大丈夫…は要らないですね」

 

「いえ、心配してくれてありがとうございます」

 

 ベルはリューの方を見て微笑みながらお礼を言う、それを聞いたリューも少し口角を上げて微笑みかける。

 

「それにしても…、クラネルさんとはかなり差を上げられましたね、ここに来た時のベルと言ったらもう、あの時はとても可愛かったのに」

 

「いつの話をしてるんですか?俺はもう大人ですよ」

 

「ですが…、そうですね、でも今でも鮮明に思い出せますよ、世界最速でレベル2にランクアップした時、リヴェリア様の背後に隠れながら怯えるようにガネーシャ様の催しを見ているベルを」

 

「それは……、忘れて下さい///」

 

 ベルは頬を赤らめながら恥じらうように言った、それをリューは可愛いものを見るように言う、そして少し名残惜しそうに続ける。

 

「だから…ですね、クラネルさんとは本当に差を上げられてしまいました、本当に…」

 

「それじゃあ…訓練とか…しますか?」

 

「はい?」

 

 ベルは提案した、リューはそれを聞いて少しキョトンとした顔でベルに言う。

 

「ですが…クラネルさんに利があるとは思えないんですが………」

 

「う〜ん…それじゃあ『()()()()()と一緒に居たい』じゃ駄目ですかね?」

 

「え…?えぇ///」

 

 ベルの言葉にリューは思いっきり赤面する、それを見たベルは少し笑いながらリューを見て言う。

 

「ほら!!これで都市の治安にも協力してる事になりますし、そしたら俺もギルドの最重要人物(ブラックリスト)から抜け出せるんじゃあ――」

 

「それは無理でしょう、クラネルさんや猛者(おうじゃ)の場合は存在自体が抑止力ですから、おいそれと都市外にも出せません、ですのでブラックリストから外れるのは無理ですね」

 

「ま…マジか!!」

 

 ベルは少し落ち込んだように言う、リューはそれを見て少し笑みを溢す。

 そうして段々と酒場の方も盛り上がっており、騒がしさを増す。

 リューの方を見ながらベルは思い出したかのように中へと向かう。

 

「そろそろ戻りましょうか、身体も冷えたでしょう?」

 

 ベルはリューの手を引いて酒場に戻る、明るい光を放つ優しい空間へと向かう。

 

 何故だろう、この人には肌を触られても嫌な気がしない、それどころか…温かい、気がする。

 

 

 リューさんは酒場に戻るとミアさんにこってり絞られていました、リューさん…ドンマイ!!

 そして僕は今…またしても取り調べを受けています。

 

「ベル…酒場の店員さんと何を…話していたの?」

 

「別に…なんでもないよ、特にこれといって話すことは…」

 

 そう言い訳するベルの瞳を覗き込むようにアイズは聞く、それをベルは少し眉を引きつらせていた、何故かって、それは…。

 

『私が来た〜、ベルよ行くんじゃ〜!!!そのまま唇を奪ってしまえ〜〜!!!!!!!据え膳食わぬは男の恥だぞ!!!』

 

(黙っちょれい!!!この狒々爺!!少しは自重せい!!)

 

「ベル…、はぐらかすのは…駄目だよ」

 

(ぐぬぬ、これでは答えぬわけには…だが!!!ここで屈するのは漢の恥だ!!!)

 

――『ベルよ、ベルよ…聞くのじゃベルよ』

 

(その声は?!お祖父ちゃん!!!何でここに?)

 

――『ベルよ、男は女の尻に敷かれるのが本望なのじゃよ、だから女には逆らうな…、いや本当にマジで』

 

 お祖父ちゃん、最後に嫌な記憶が蘇ってるじゃん、ヘラ叔母さんのヤンデレに蹂躙された日々が。

 そんな事を夢想するベルも、そろそろ現実と向き合わやければならない。

 

「ベル…答えて」

 

「そうですよベルさん!!答えて下さい!」

 

 アイズにレフィーヤが加わり、もうベルは限界である、そんな中、ベルは一人の灰狼に助けを求める。

 

(ベート助けて!!!)

 

(は?!俺が?)

 

 ベートは「仕方ねぇ、大人の力を見せてやる」とでも言わんばかりに立ち上がり、アイズ達に話しかける。

 

「おい!アイズ、何話してやがんだ?」

 

「ベートさんには…関係ない、これはベルと私の問題…」

 

 「え?私は」と置いてけぼりのレフィーヤを横目にベルは苦笑、少しは話題がそれたかと思うもすぐに引き戻される、それを見たベートは「奥の手だ!!」とでも言わんばかりにベルに質問を投げつける。

 

「ベル!!お前の女のタイプは何だ!!」

 

「え…俺の…?」

 

(ベル!!ここでアイズの特徴を答えてやれば良いんだ!!!)

 

 ベートには多少の女への心得があった、そんなベートの真意を…この鈍感ポンコツ糞兎は理解できなかった。

 

(僕の…タイプ…、は?!そうか!!!!シンプルで良いんだ!?)

 

「ベルは…どんな人が…良いの?」

 

 これ来た〜、アイズが食いついてる!!!ナイスベート、始めてベートに感謝したよ!!!後は上手く濁しながら答えれば良い、簡単なお仕事だぜ!!!

 

「俺の好みは―――

 

「うん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――金髪、長髪、そしてエルフじゃ!!!」

 

 

「え?」

 

 え?私の聞き間違い?金髪…長髪…うん、ここまでは良い。

 あれ?可笑しいな、やっぱり私の聞き間違い?

 

「ベル…、もう一回言って…」

 

「はい?だから金髪――」

 

(うん、ここは良い)

 

「――長髪――」

 

(うんうん…なんだ、やっぱり聞き間違いだったか、次は人間(ヒューマン)とかかな?)

 

 アイズの心はルンルンだった、アイズの中にいるチビアイズ達も兎の縫いぐるみを持ってはしゃいでいた。

 だが…、そんなに現実は甘くないのである。

 

「――エルフ……「グフッ!!!」ってアイズ!?どうしたの?」

 

 刹那、アイズが吐血した、それを見た一柱の神は瞠目しながらも…すぐに笑いを堪えた。

 そのやり取りを厨房より見ていた一人のドワーフは「何やってんだいあいつは」と思いながら一人のエルフに目をやる。

 それを聞いた一人の灰狼は絶句した、「何お前『分かった』見たいな顔してんだ!!全然分かってねぇじゃねぇか!!!」と今にも声が出そうな所を(すんで)で飲み込む。

 一人の天真爛漫なアマゾネスは「あちゃ~、やっちゃったねアルゴノゥト君!!ドンマイ」と言って目を他の方に無理やり向けて現実を全力逃避した、アイズの泣きそうな姿を見ないためである。

 一人のハイエルフはそれ見て「そこで気の利いた事を言えないのがお前の悪い所であり、本当の事をはっきりと言えるのはお前の美徳だな」と思いながら酒を口に含む。

 

 そして…、一人の山吹色のエルフは思った。

 

(山吹色…ほぼ金髪!!ほどけば長髪ですし!!エルフは…大丈夫ですね!!)

 

 一人のホールスタッフは思った。

 

(ベルさんは…そういう人が好きなんですか…、もうツーンです!!!)

 

 一人の剣姫は絶句した、そして何も目に入らなかった。

 

(金髪…長髪…エルフ………エルフ………エルフ…やっぱり聞き間違いじゃ…なかった)

 

 そして一人の妖精は…そう!!全ての条件を完全にコンプリートしている妖精は頬を赤らめながら絶句。

 

(クラネルさん!?駄目です!!!まだ夜の森で誓い合ってすらないのに!!!っていうかそこじゃあありません!!!)

 

 一人の白髪の人間(ヒューマン)は思った。

 

(これはやらかした…、何かは知らんがやらかしたな)

 

『今回は…儂も助言できんかったのぉ』

 

(一体何が駄目だったんだ?)

 

 全てである、全て間違えたのである、故に一人の人間は…その黒い風を表に出した。

 

「ベルが…ベルガ居ナインジャ私モウ…生キテイケナイ」

 

  黒い風が酒場を飲み込もうとした、それを見た団員は絶句、ロキは酔いつぶれたフィンを叩き起こし、フィンは酔いが覚めきらぬまままた机に突っ伏す。

 

「何やってるんやフィン!!!」

 

 ロキの絶叫、リヴェリアの取り乱す姿、そのハイエルフの姿を見て取り乱すエルフ達。

 一人の灰狼は目を見開いた、何故ならアイズが見据えていたのは眼の前のベートだったからである。

 

(俺…?!何でだよ!!)

 

「そもそも…ベートさんが言わなければ…よかった」

 

「はぁ?!俺か!!!」

 

 ベートは目を見開いた、アイズは今にも黒の爆風(テンペスト)しそうな勢いだった。

 それを見ていたドワーフの男は「何事じゃ?!またベルがやらかしおったか?!」と事態を見て一瞬で判断する。

 アマゾネスの姉妹は「ヤバい!!このままじゃあ辺り一帯が吹き飛ぶ」と思いアイズを止める為に立ち上がる。

 アイズの隣にいる山吹色のエルフは…「えへぇ〜、駄目ですよ〜そんな〜」などとポンコツエルフを全開にしていた。

 恐らくだがエルフは優秀になればなるほどポンコツになるのではなかろうか。

 

「ア…アイズ…アイズさん?どうかしたの?」

 

「ベルハ…私…イラナイ?」

 

「何言ってんだよ、そんな理由(わけ)ないだろ、大事だよ、とても大事だよ(皆と同じくらいね)」

 

 ここで敢えて本心を言わないのは流石ゼウスの生き残り、勘だけは良いのである。

 だが、それでもアイズの黒い風は収まらない、それを見たベルはアイズの後頭部に手を回し、自身の胸に抱き寄せる。

 

「べ…ベル?!//どうしたの?!」

 

「何って、そんなの俺が聞きたいよ…はぁ〜」

 

 ベルが抱き寄せた事でアイズの黒い風はその勢いを失う、それを終始見ていた金髪のエルフは「私…この後剣姫に殺されるじゃあ」と思い絶句する。

 

 そんなアクシデントはあった物の宴自体は楽しく終わった、あの後からアイズはベルの左腕を掴んで離さなかった、これについてハイエルフは「今回は赦してやれ、でなければ次は本当にお前が殺されるぞ」と言い、ベルは引き攣った笑みでそれを受け入れることで。

 ベートはあの後ベルに怒鳴り、アイズにしっかり制裁(テンペスト)を喰らい無事撃沈、おいたわしや。

 アマゾネスの姉は「哀れなり白兎」と言い、アマゾネスの妹は「良かったねアイズ!!!」と言った。

 

 

「ありがとうなミア母ちゃ〜ん!!」

 

「フン!!次面倒を起こしたら出禁だよ」

 

 それにアイズは沈黙、ベルの左腕に抱きつきながらも「ごめんなさい」をした、それを見てベルは「次は気を付けようね!」などと(のたま)う。

 「いや、貴様のせいじゃ!!!」と全員がその心中に思っていた。

 そしてベルは最後に酒場の店員さんに礼をいう。

 

「ありがとうございました、皆さん!!」

 

「フン!!また来るニャ、白髪頭、そしたらシルもリューも喜ぶニャ!!」

 

「また来てね少年君!!」

 

「次こそはその尻を触らせて貰うニャ!!」

 

「いつでもお手伝いに来てくださいね〜!待ってますからね、ベルさん!!」

 

「こっちはいつでも歓迎するよ!!そんときゃしっかり働きな!!」

 

 ベルはそんな彼女達の激励に「はい!絶対にお手伝いしに来ます」と元気よく言った。

 「あっ!!」とベルが思い立ち止まる、それにアイズは少しびっくりしながら止まる。

 そしてベルは酒場の方へと向き、更に爆弾発言をする。

 

「リューさん!!()()()()()()の時に!!そちらの本拠地(ホーム)に行くので、()()しといて下さいね!!」

 

「はい、分かりました、それで……ってクラネルさん?!」

 

「はい…、なにか?」

 

 この糞兎は知らない、だが金髪の妖精には見えた、その兎の隣で今にも泣きそうな顔をする少女の顔を。

 それを見てベルはキョトンとして、ロキは「はぁ〜」とした顔をする、そしてリヴェリアは「もう知らん」と匙を投げる、ベートは「次こそ俺に飛び火すんなよ」と心の中で思いながら集団の先頭へと逃げる。

 

 アイズは泣いていた、そもそもベルとお出かけするのですらそんなに無いのに、それに稽古なんてベルは一度もアイズに

つけたことはなかった。

 いつも「アイズのと俺のは違うしな」と言ってはぐらかされていた、それにアイズは「他の人もそうだし、仕方ないか」と半ば諦めていた。

 そんな中、同じ前衛の片手剣で、同じ金髪、長髪で、しかもエルフとか言うベル君好みドストライクな人が、というか他派閥の人に稽古なんてと思っていた。

 

(なんで!!あの人は一体ベルのなんなの?!ズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルい)

 

 まるで子供のように駄々を…いや、子供でももう少し聞き分けがある。

 そんな子供顔負けな駄々を捏ねながらアイズはベルにしがみつく。

 それに見たベルは「どうしたの?」といった顔でアイズの事を見る。

 

「ベルは…やっぱり…私を…」

 

「くどいぞアイズ!!さっきも言ったが俺はアイズを大事に思ってるぞ(妹の様に)!!!それじゃあ駄目か?」

 

「んな?!///………駄目じゃ……ない」

 

「なら良かった、じゃあねリューさん!!!シンさん!!!皆さん!!!」

 

 そうして僕らの遠征は本当の意味で終わった、僕はその後、ホームで酷い拷問を受けることとなるのは、また次の僕に任せるか!!!!




 今回はここまで!!!

 そう言えばベル君の強さについて語ってなかった気がするのでここで一部紹介!!!
 ベル君は基本的にオッタルさんには弱いです、元の体格差や何より『獸化(じゅうか)』がベル君とは致命的に相性が悪いですね。
 ですがレオンには強いです!!一撃の『斬光(ざんこう)』の威力(レオンは『残光(ざんこう)』)がベル君の方が高いのと、【強化円卓(ブレンズ・オブ・ラウンド)】がベル君とは相性が良いです、一瞬でMAXまで行くオッタルの『獸化(じゅうか)』とは違い段階を踏むので、その間に普通に倒せます。

 ベル君は『走』『攻』『守』で言う所の『走』『攻』特化です、オッタルは言わずもがな『攻』『守』特化、レオンは『走』『攻』『守』全てが満遍なく高い、という訳ですが、正直誰が誰と戦っても勝敗は五分五分です、これは最初の出だしが優勢か劣勢かぐらいの差です、全然そこから逆転できるだけの度量と技量は持っているので、誰が勝っても不思議じゃありません、ただ一番技量が高いのはベル君です!!!流石アルフィアの息子「理論上出来るなら出来るのと同義!!!」というだけはありますね。
 それに一対一で全てのプライドを捨てたベル君なら多分勝てます、それくらいエグいスキル効果があるので(ベートのトラウマ牙(ハティ)見たいな感じ)。

 それでは次回まで!!お楽しみに、今語ったのはベル君の強さのほんの一部です、全部を語るのはアステリオス戦ぐらいですね。今回は長くなってしまいましたが、呼んでくれて嬉しいです。

 それでは次回『ベル君()()!!!!』、それではデュエルスタンバイ!!!

 次回『女は怖いよどこまでも』
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