黄泉の行人。ダンジョンに行く。   作:かまくら御前

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 今日中に投稿できました。
 今回は少し先の未来、イザナミ様とのデート回!ちなみに、泉は前世を含めて一回もデートをしたことがありません。
 イザナミ様は、イザナギしか夫がいた事がなく恋愛をしたことがありません。つまり!

 泉:恋愛弱者(ナチュラルボーン女たらし)
 イザナミ様:恋愛弱者(生娘と同レベル)

 という事になります。それを踏まえて、見ていただければ。


幕間:デートをしよう

 

  「デートをするぞ、泉よ」

 

 大抗争が終わり、オラリオに平和が訪れた。民衆は笑い、冒険者はいつも通りにダンジョンに潜る。俺も早朝、ダンジョンに潜ろうとイザナミ様に声をかけるとそんな解が返ってきた。

  

  「デート?それってあれか?男女の好き同士が同じ時を過ごす事か」

 

  「そうじゃ。わしらは両思いじゃろう?」

 

 まあ、確かに。俺はイザナミ様のことを好きと言ったな。

 

  「じゃが、今までは暗黒期真っ只中。そんな呑気なことは出来なかった。しかし!平和になった今、わしらを妨げる障害はない!」

 

 なんか...テンションが高いな。今日何かあ...

 

  「そうか...俺とイザナミ様が会ってもう2年が経ったのか...」

 

 そうだったなと、遅れて気づきイザナミ様の顔を見る、むすっと表現できるようなすごい不貞腐れた顔をしていた。

 

  「...やっと気づきおったか。バカモノめ」

 

  「すまん...」

 

 うっ...視線が痛い。俺に100パーの落ち度があるから尚更。

 

  「今日のデート。泉がエスコートするんじゃ、それで許してやろう...」

 

  「はい。精一杯務めさせて頂だきます...」

 

  「うむ。では行くぞ」

 

 でも、そうか...イザナミ様とのデートか。──楽しみだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「おっちゃん。ジャガ丸くん2つ」

 

  「あいよ、少し待ってな」

 

 少し時間が経ちお昼前。俺とイザナミ様は、オラリオの街を二人で歩いていた。平和になったオラリオを、来た頃を懐かしみながら。そうして、ある程度歩いて着いた場所が、このジャガ丸くんを売っている露店。

 

  「思えば...こうやってイザナミ様と一緒に街を歩くことなんて、オラリオに来た初日だけだったな」

 

  「そうじゃな。泉は“誓い“を果たすために、毎日遅くまでダンジョンに籠もっておったからの。そんな暇なぞなかったわけじゃ」

 

 ぐ...!こ、言葉が痛い...心なしか今日のイザナミ様はトゲが鋭いな。せっかくのデートだってのに、こんな感じじゃイザナミ様も嫌だろう。何か、イザナミ様の機嫌を直せる機会があれば...

 

  「ほれ、坊主。出来たぞ。ジャガ丸くん、プレーン味2つ。80ヴァリスだ」

 

 そう思っていると、どうやらジャガ丸くんが出来上がったらしい。80ヴァリスを店主に渡し、またオラリオを歩いていく。

 そうだ...!そして妙案を思いつく。

 

  「イザナミ様」

 

  「ん?何じゃ」

 

  「あーんだ」

 

 自分が持っていたジャガ丸くんを、イザナミ様の口元まで持っていく。

 

  「泉...!?お主、なんとレベルの高い事を...」

 

  「何だ?嫌か?ならいいんだが...」

 

 むぅ、いい案だと思ったが。駄目だったか。

 

  「い、嫌とは言っておらぬじゃろう...!」

 

  「そうか?」

 

 何だ、嫌じゃなかったのか。なら...

 

  「じゃあ、ほら。あーん」

 

 戻したジャガ丸くんを、もう一度イザナミ様の口元まで持っていく。

 

  「あ、あーん...」

 

 もぐもぐと、何時もの凛々しいイザナミ様からは出てこない、可愛い食べ方をしていた。

 

  「もぐ...美味いの。泉に食べさせて貰ったおかげで、もっとの」

 

 口の端に食べカスを残し、笑顔で俺にそう言ってくるイザナミ様。

 

  「それはよかったが、口の端に食べカスが付いてるぞ」

 

 イザナミ様の口の端に付いてる食べカスを指で掬い、自分の口の中に入れる。

  

  「な!?か、間接...キ」

 

 その様子をみたイザナミ様は顔を真っ赤に染め言葉にならない声を発し始めた。

 

  「そ、そんなに驚くことか...?」

 

  「い、いやそうじゃろ!だって、間接キスじゃぞ!?」

 

 ええ...間接キスでそんな驚くのか?イザナミ様、夫がいたろ。生娘じゃないんだから、間接キスくらいで驚き過ぎだろ。

 

  「あう、あ、うぅ」

 

 まあ、慌ててるイザナミ様は可愛いからいいか。

 俺は、イザナミ様が何時もの状態に戻るまでニコニコしながらイザナミ様を見ていた。

 

  「おほん。すまぬ、取り乱した」

 

  「んにゃ、全然大丈夫。それじゃ、次に行くか」

 

 イザナミ様が普段通りに戻ったので、次のデート場所まで行く。

 

  「お次はここ」

 

  「ぬ、ここは。雑貨屋か」

 

 着いた先は雑貨屋。店の中に入っていく。

 

  「ほう...いい品揃えじゃな。どの品も質が高いの」

 

  「そうか?なら良かった」

 

 酒場の薄鈍色の髪をした、ウェイトレスに教えてもらったんだが、神が言うなら相当だな。やっぱアイツ得体がしれね〜

 

  「それで?雑貨屋に来たんじゃ、何か買うのじゃろう?」

 

  「そうだな。俺とイザナミ様が身につけられる、アクセサリー見たいなやつを買おうかと」

 

 そう言うと、イザナミ様は目を丸くした。

 

  「そういう物は興味がないと思っておったが、まさか泉の口からそのような言葉が出てくるとは...」

 

 ...納得いかん。何故そんな評価をされている。俺だってそういう物に興味はあるぞ。

 

  「...とりあえず、何かお揃いにできる物を探そう」

 

 店の中を手分けして探していく。ある程度時間が経つと、イザナミ様の方から声が聞こえてきた。

 

  「泉よ、これなんかどうじゃ」

 

  「ん?どれどれ...」

 

 イザナミ様が指を差した棚にある商品を見てみる。そこには、黒と白の陰陽型のイヤリングだった。

 

  「陰陽型のイヤリングか。極東で作られた物だな」

 

  「どうじゃ?良い物じゃろう」

 

 確かに、このイヤリングには何か惹かれるものがある。

 

  「そうだな、じゃあこれにするか」

 

 イヤリングを手に取り、会計を済ます。

 

  「イザナミ様。どっちを付ける?白と黒」

 

 お店から出て、早速付けようとイザナミ様に聞いてみる。

 

  「わしが黒が良いじゃろう」

 

 確かに、イザナミ様の髪色は白だから黒の方が似合うだろう。

 

  「じゃあ俺が白だな」

 

  「うむ。そうするか」

 

 よし、そうと決まれば...

 

  「イザナミ様、顔をこっちに。俺が付けるよ」

 

  「じゃあ、泉の分はわしが」

 

 イザナミ様の顔がすぐ近くに来る。少し近づけばキスができそうだな。そう思いながらイザナミ様の左耳にイヤリングを付ける。

 

  「よし、付けれたぞ」

 

  「それなら次は、わしの番じゃな」

 

 イザナミ様は俺の右耳にイヤリングを付ける。

 

  「これでオッケーだな。似合ってるぞ滅茶苦茶」

 

 神の美貌に、幻想的な白髪。そこに、黒のイヤリング。似合わない訳がない。様々な人、神を見てきた。だが、俺はイザナミ様以上の人を見たことがない。

 

  「泉も似合っておるぞ」

 

 そう笑いながら、言ってくる。それが嬉しくて、俺も釣られて笑う。ははは、ふふふ、と。

 もし、この光景を見ていた神がいたら、“付き合いたての高校生カップルかよ“と、思うだろう。この二人、どちらとも恋愛初心者である。

 

  「よし、それじゃあ次、行こう」

 

  「うむ。分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「辺りも暗くなってきおったな」

 

 あれから色々なところを回り、時間も、夕暮れ時になって来た。

 

  「もうそろそろ、ご飯を食べる時間だな。イザナミ様、約束している所があるんだがそこでいいか?」

 

 薄鈍色のウェイトレスに、雑貨屋の情報を聞いた対価として、うちに食べに来いと言われてしまった。

 

  「む?わしは泉が決めた場所ならどこでも良いぞ?」

 

  「助かる。じゃあ行くか」

 

 許可を貰い、歩みを進めた先は“豊穣の女主人“。

 

  「着いた。中に入ろう」

 

 店の中に入ると、沢山の人が大声をあげ、賑わいを起こしていた。その中から薄鈍色のウェイトレスがこちらに気づき、小走りで近づいてくる。

 

  「あ!泉さん。来てくれたんですね」

 

  「シル。ああ、約束を破るわけには行かないからな」

 

  「それじゃあ!2名様、カウンターにどうぞ!」

 

 ニコニコと、嬉しそうにシルと言う少女は席まで案内する。カウンターに座り、注文を決めようとしたところ何やら上から声がした。

 

  「アンタがシルが言ってた男かい?うちの娘が世話になったね」

 

 ...何故、L()v().()6()が酒場の店主なんかしている...俺の頭がイカれたか。どうなってんだ。

 

  「ああ、その事は全然いい。それより主人、あなたLv.6だろう。何故、酒場の店主なんかやってる?」

 

 そう言うと、店主は少し驚いた表情を浮かべた。

 

  「アンタ...よくアタシのLvが分かったね」

 

  「ああ、気配が猪に近い感じがした」

 

 流石に死の気配が猪より強かった、なんて言ったら失礼だろう。

 

  「そうだね。理由は簡単だよ、“暗黒期“と呼ばれたオラリオで、笑いながら飯が食える場所を作りたかったのさ」

 

   ──それは...なんて。

 

  「いい理由じゃな」

 

  「だろう?だからアタシは冒険者をやめてこの店を開いたんだ」

 

 “暗黒期“で笑えない人を笑わせる。手段は違えどこれがこの人の“正義“何だろう。

 

  「すまない。変な事を聞いたな。代わりに注文は多くしよう」

 

  「わしも、たらふく食べよう」

 

  「ああ!じゃんじゃん食べな!」

 

   ──こうして夜は冒険者の喧騒とともに過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「デートは楽しかったか?イザナミ様」

 

 豊穣の女主人での食事も終わり。二人はホームまで戻っていく。

 

  「うむ、最高じゃった。最初は記念を忘れておったからどうしてくれようと思ったが...」

 

  「ぐっ...それは本当にすまん」

 

 まだ忘れてなかったか。

 

  「わしも問おう。泉は楽しかったか?」

 

  「ああ、最高だったに決まっている。好きな人と一日を過ごせたんだ」

 

 「なら、良かったのじゃ」と言って赤く染めた顔を横に向ける。

 

  「イザナミ様」

 

  「何じゃ...」

 

  「──また、こうやってデートをしよう」

 

 イザナミ様の想いを知った。2年間、俺はずっとダンジョンに籠もっていた、今思うと酷いことをしているなと、だから失った2年を更に多くの思い出で埋めよう。

 

  「時間は沢山あるんだ、数え切れないくらいの思い出を俺と作ろう」

 

  「ああ...!わしも、泉との思い出を沢山作りたい!」

 

 今日のデートはこれで終わりだ。だから、最後にこの言葉を言おう。

 

 

 

  「好きだ!

 

 

 

   ──誰よりもあなたが。俺に、“生きる“を与えてくれたあなたが、好きだ。

 




 
 陰陽のイヤリングの補足。
 
 陽は白色で、男性を表す。
 陰は黒色で、女性を表す。
 イヤリングやピアスを右耳に付けるのは男性らしさを。
 左耳に付けるのは女性らしさを表しています。
 
 多分...
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