https://syosetu.org/novel/373103/)の外伝です。

真実への扉が 開く時、業界の闇が暴かれる……!?

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この物語は全てフィクションです。


第1話

2022年3月末

 

東京の片隅、かつての輝きを失った株式会社ZIZAIの本社ビルは、まるで忘れ去られた遺跡のように静まり返っていた。

かつてVTuber業界の先駆者として名を馳せたこの場所も、今や薄暗い影に覆われ、過去の栄光は色褪せたポスターにだけ残されていた。

壁に飾られたミライアカリの笑顔は、まるで遠い夢の欠片のようだ。

彼女は「VTuber四天王」の一角として君臨した存在だったが、その光はもう届かない。ZIZAIはDMMグループの傘下に収まり、VTuber事業からの撤退を宣言。

アミューズメント事業へと舵を切ったその決断は、社内に冷たい風を吹き荒らした。

誰もが息を潜め、嵐が過ぎ去るのを待つばかりだ。

冷え切った会議室。アイリスディーナ・ベルンハルト会長は、重い沈黙の中で立ち尽くしていた。

彼女の瞳には、かつて情熱を注いだ夢が砕け散る光景が映り、胸を締め付けるような痛みが走る。

「これが…私の夢の終わりなのか?」

その声は震え、涙が滲む。

育て上げたVTuberたちへの愛と、裏切られたような失望が心を引き裂いていた。

「ミライアカリを、皆をこんな形で失うなんて…許せない。」

だが、その叫びは虚しく虚空に消えた。

白鳥聡の冷徹な判断が、ZIZAIを新たな道へと導いていた。

そこには、かつて敵対していたハインツ・アクスマンとミヒャエル・ゾーネが復職し、VTuber事業の終焉を冷淡に受け入れ、新たなビジネスチャンスに目を光らせていた。

「アイリスディーナ、感情に流されるな」

アクスマンは冷笑を浮かべ、書類の山を前に腕を組んだ。

「アクスマン…貴様!」

アイリスディーナは彼を睨みつけたが、返ってきたのは嘲笑だけだった。

「VTuberなんて所詮、流行りものだ。我々はもっと大きなゲームに賭けるべきだ。ミライアカリの版権?バンダイナムコに売ればいい金になる。業界がどうなろうが、私には関係ないよ」

「関係ないだと?」

彼女は拳を握りしめ、声を荒げた。

「貴様等には、彼女たちの夢やファンの想いがわからないのか!?」

ミヒャエルは静かに、しかし冷たく答えた。

「ビジネスは感情ではありません。現実を見てください。ZIZAIはもうVTuberで食っていく気はない。あなたも、過去にしがみつくのはやめたら如何です?」

アイリスディーナの心は孤立無援だった。

彼女はZIZAIを去り、元CEO・塚原氏の誘いを受け、株式会社MEDIXの会長に就任した。

だが、胸には失われた夢の欠片が重くのしかかり、夜毎に彼女を苛むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、エイレーンは別の戦場で喘いでいた。

NEOENTUMを退職し、個人事務所を立ち上げた彼女だったが、かつての栄光は遠い過去のもの。

日常は灰色の霧に包まれ、希望の光は見えない。

2021年3月、H.LIVEの社長に就任した彼女は、年収10億円という眩い成功を掴み、業界の頂点に立ったかに見えた。

だが、その裏では欲望のままに散財する日々が続いていた。

豪邸、別荘、クルーザー、果ては超音速旅客機コンコルド――。気づけば、彼女の生活は困窮の淵に立たされていた。

薄暗い部屋で、エイレーンは独り呟いた。

心は、かつての仲間――萌実やエトラ、ヨメミとの絆を思い出すたびに、虚無感に苛まれていた。

「私が…こんな目に遭うなんて…」

彼女の手には、ミライアカリと共にした動画のデータが握られていた。

画面に映るアカリの笑顔が、彼女の心に鋭い痛みを突き刺す。

「アカリさん…あなたまで失ってしまった…」

そんな折、中国籍の男性、クリス・チンピンが現れた。彼はエイレーンに囁いた。「H.LIVEを俺に任せろ。金の問題は解決してやる。」

生活苦に喘ぐエイレーンに選択肢はなかった。

彼女はH.LIVEをクリスに売却し、すべてが手から滑り落ちていくのを感じた。

絶望の底に沈む彼女の声は、力なく響いた。

「これで…終わりなの?」

涙が頬を伝い、彼女の夢と仲間たちは遠く霞んでいった。

エイレーン学園もまた、2022年3月20日に全メンバーが卒業し、散り散りになった。

最後の配信では、運営との連絡途絶や企画の中止がファンの心をざわつかせ、虚しい余韻だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2023年3月24日、VTuber業界に激震が走った。

ミライアカリが自身のXで、3月31日をもって引退を発表したのだ。

「VTuber四天王」として、キズナアイや電脳少女シロと共に業界を牽引してきた彼女の決断は、ホロライブの白銀ノエルをはじめ、多くのVTuberに深い影を落とした。

「アカリちゃん…どうして…」

ノエルは引退配信を見ながら涙を流した。

「あなたは私の憧れだったのに…」

ミライアカリの引退の裏には、バンダイナムコ傘下のGOOM STUDIOとの軋轢があった。2020年9月、彼女は新モデルを公開しGOOM STUDIOに移籍したが、「企画に参加できない」「台本通りに動かされる」といった制約に縛られ、自由を奪われていた。

元ホロライブの桐生ココとのコラボ配信で、彼女はこう漏らしていた。

「バスクとジャミトフの支配下じゃ、自由に動けないよ…。アカリのやりたいこと、全部台本に縛られてる。」

バスク郷田とジャミトフ西村――GOOM STUDIOの運営陣の名は、彼女の心に重くのしかかり、価値観のズレは必然の結果として引退へと導いた。

業界は一つの時代を失い、静かな喪失感に包まれた

 

ミライアカリの引退を皮切りに、エイレーンファミリーは次々と悲劇に見舞われた。

絆は音を立てて崩れ、かつての笑顔は遠い記憶となった。

エトラは2023年4月1日、あおぎり高校に一時加入し、2024年3月26日に正式加入を果たした。

彼女は力強く語った。

「このままじゃ、チャンネルを大きくできない。サポートが欲しかったし、モチベーションを保ちたかったの。」

エトラの瞳には、過去の影を振り払う決意が宿っていた。

「リィズさんに言われたの。『動画を作る時、声をかけるから好きにやってて』って。でも、1年以上待っても何も変わらなかった。だから、あおぎりに飛び込んだの。」

萌実もまた、2024年3月26日にあおぎり高校に加入。

「嫁ノ萌実」から「萌実」に改名し、低く大人っぽい声で新たな挑戦を続けていた。

「あおぎり高校のスタジオで、もっと大きなことができるって信じてる。」

だが、ヨメミ、シフィール・エシラー、ディスコルディア・ロースターの運命は過酷だった。

ヨメミは2019年2月以降動画投稿が途絶え、2021年以降Xの更新も停止。2022年にはチャンネルが乗っ取られ、BANされた。

シフィールは2022年3月10日、ディスコルディアは2025年1月7日に捜索が打ち切られ、死亡扱いとなった。

彼女たちの消息は、深い闇に閉ざされたままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2022年5月末、NEOENTUM社長室。

 

重厚な木製デスクに差し込む陽光が、部屋を柔らかく照らしていた。

ベイレーンは革張りの椅子にゆったりと腰かけ、書類を手にしていたが、突然の来訪者に視線を上げた。

「何だ、萌実? 直接オイラのところに来るなんて珍しいお」彼女の声は軽やかだが、鋭い眼光は来訪者の意図を探っていた。

萌実は緊張した面持ちで一歩踏み出した。

「ベイレーン、エイレーンの身に何があったの?」

彼女の声は震え、瞳には不安と決意が混在していた。

ベイレーンは一瞬言葉を失い、書類をデスクに置いた。

「…その話をするって事は、萌実はもう知ってしまったんだな」

萌実は拳を握りしめ、感情を抑えながら言った。

「エトラにはこの事は絶対に言わないで。彼女、まだこれから活躍するのにエイレーンの事を知ったら…」

ベイレーンは深く息を吐き、椅子にもたれかかった。

「――――分かったお。お前も知ってると思うが、エイレーンはクリス・チンピンって言う中国籍の男性に騙されたんだお。彼奴はオイラ達に何も話さず、自分で解決しようとしてるお。命を削ってまでもだ」

萌実は唇を噛み、視線を床に落とした。

「萌実、どうすればいいか分からないよ…」

ベイレーンは窓の外を眺めながら続けた。

「萌実のTwitterアカウントで、リィズは恐らく関与は否定するだろうな。彼女はシュタージ出身だから、過去の出来事を繰り返したくないと思ってるお」

萌実は小さく頷いた。

「確かに今のところ、萌実やエトラは何も影響ないけど…」

ベイレーンは振り返り、彼女を真っ直ぐに見つめた。

「エイレーンはエイレーンなりで何か理由があるかもしれない。ベノ、エトラ、あおぎりのメンバー達や他のVTuber―――オイラも。彼奴を止められるのは、萌実、お前しかいないお」

萌実の瞳が揺れ、すぐに強い光を宿した。

「……エイレーンは今どこにいるの?」

ベイレーンは静かに答えた。

「富士の樹海に行くって言ってただお…」

その言葉を聞いた瞬間、萌実は一瞬も躊躇せず、ドアへと駆け出した。

彼女の足音が廊下に響き、部屋は再び静寂に包まれた。

ベイレーンは窓辺に立ち、空を見上げながら呟いた。

「……ま、仮に自殺しても不死スキルあるから意味ないだお」

 

 

 

青木ヶ原樹海。

 

鬱蒼とした木々が陽光を遮り、地面にまだらな影を落としていた。

エイレーンは古木の前に立ち、震える手でロープを幹に結びつけた。

彼女の瞳は虚ろで、心は深い闇に沈んでいた。

「こんなおどおどするくらいなら、死んだ方がマシ…何もかにも全て失ってしまった…」

ロープを首にかけようとしたその瞬間、背後から鋭い叫び声が響いた。

「ッ!!?? エイレーンッ!!!!」

萌実だった。彼女は息を切らし、木々の間を突き進むように走ってきた。

目には涙が溢れ、エイレーンを強く引き寄せ、ロープから引きずり出した。

「この馬鹿! 何考えてるのよ! 死ぬ気ッ!?」

エイレーンは抵抗する力もなく、地面に座り込んだ。

「萌実さん…どうせ私なんて、業界のお荷物ですよ…もう、終わりにしたい…」

萌実は膝をつき、エイレーンの肩を強く掴んだ。

「アンタはお荷物なんかじゃない!」

エイレーンは自嘲するように笑った。

「お荷物ですよ…もう、業界の居場所は何処にも…ない……というかなんで止めたんですか?」

萌実は一瞬言葉に詰まった。

「え?」

「私なんかどうでもいいのに…」

エイレーンは目を伏せ、声に憤りが滲んだ。

「どうせ萌実さんは私のこと軽蔑してますよね? 私があの男にH.LIVEを売却しなかったら」

萌実は首を振った。

「…でもそれって理由があったんでしょ?」

エイレーンは唇を噛み、過去の記憶が溢れ出した。

「…ケフィリアさん達を救いたかった。私のために優しく接して…明るく振る舞ってた彼女達を…それなのにあの男は…彼女達の笑顔を壊したんだ。許せなかったんですよ…しかもまともに給料支払わないなんて、挙げ句の果てに暴言吐かれて…」

萌実は静かに耳を傾けた。

「そう…だったんだ…」

エイレーンは拳を握り、声を震わせた。

「ずっと頑張ってきたんだ…ッ。私が出来ることは全部! あんな思いしてまで……それなのに…それなのに…クリスは……ッ」

萌実は優しく名を呼んだ。

「……エイレーン」

エイレーンは嗚咽に変わった。

「私は馬鹿だ! 事務所を…H.LIVEを手放さなかったら…私は…」

萌実は力強く言った。

「そんなことはないよ」

「余計な事ばかりして…もう何もかも、私のやった事は全部無駄だったんだ!」

エイレーンは叫び、涙が頬を伝った。

「無駄なんかじゃない! 絶対にッ!!」

萌実は叫び返した。

「―――知った風な事言わないで! 何もかも残らなかったんですよ!! 私は、死ぬしか…ないんだ…!」

その瞬間、萌実の手がエイレーンの頬を鋭く叩いた。

パンッと乾いた音が樹海に響いた。

「萌実がいる!! アンタは萌実を作った功労者なんだよ!萌実じゃダメなの!!?」

彼女の声は震え、熱を帯びていた。

「アンタの野望と夢はまだ終わってない! 絶対諦めないで! またいつもみたいに萌実を弄ってよ…お願いだから、簡単に死ぬなんて二度と言わないで!」

エイレーンは呆然と萌実を見つめ、瞳に涙が溢れた。

「うぅ…う…うああああああああああああああああああ」

彼女は地面に崩れ落ち、号泣した。

萌実はそっと彼女を抱きしめ、背中をさすった。

樹海の静寂の中で、二人の絆が再び結ばれた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ、2024年3月1日。

エイレーンは再起を賭け、クラウドファンディングを開始した。

能登半島地震の被災者支援を念頭に、自身のチャンネルを再出発させるためのプロジェクトだった。

彼女の瞳には、かつての絶望はなく、新たな決意が宿っていた。

3月25日、エイレーンは動画を公開し、クリス・チンピンを訴えることを宣言した。

クリスは過激な発言を繰り返していたが、エイレーンは恐れなかった。

「私は負けない。」

カメラに向かって、彼女は力強く言った。

「私の夢、仲間たちとの絆を取り戻すために、戦い続けるよ。」

ミライアカリの引退、エイレーン学園の解散、ヨメミやシフィールたちの失踪――VTuber業界は深い傷を負っていた。

しかし、エイレーンの心には、萌実の言葉が今もなお灯りをともしていた。

「アンタの夢はまだ終わってないよ。」

その言葉を胸に、エイレーンは新たな一歩を踏み出した。

蒼き清浄なる世界を目指し、彼女の戦いは始まったばかりだった。

 


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