「いやおかしいだろ!」
ごもっとも、俺もそう思う。でも悲しいかな、俺の横に居るのは公式チートキャラのラインハルト。常識なんて物は通用しないのである。ちなみに俺は勘で呼んだあとどれくらいで来るのかは何となく分かるが横に来た瞬間は見えなかった。怖いこの人。
「そんな驚かないで。落ち着きなよスバル」
「驚くわ! 現れた瞬間見えなかったし! そもそも少し大きな声で呼んだだけで来れるのおかしいだろ!」
「すまない。少し驚かせてしまったようだね。呼ばれた場所が路地裏だったから何かあったのかと少し焦ってしまったみたいだ。オルティアの友達かな? 僕はラインハルト・ヴァン・アストレア。オルティアの兄だ。もっとも、あまり兄らしい事はしてあげれていないけれどね」
横目でこちらを見ながら少し申し訳なさそうに笑ってくる。いや十分過ぎるけどね? 呼んだら来てくれて頼み事は聞いてくれる。今腰に下げてる剣も十五の誕生日にラインハルトから貰った物だ。
むしろ何か用のある時だけ呼んで何かして貰ってそれ以外の時は一切関わらないようにしてる俺の方が家族として最低だと思う。
……とはいえそのスタンスをやめる。なんて事は申し訳ないが無理だけども……
「えっと、ナツキ・スバルです。妹さんとは先程会ったばかりに命を救って貰った感じで「え? 私達友達じゃないの?」え?」
「はは、是非仲良くしてあげて欲しい。あと、そんなに畏まらなくても良いよ。よろしくスバル」
「あ、ああ。よろしくラインハルト。兄妹揃ってこの距離感、血の繋がり感じるぜ……」
「ちなみにお兄様があの呼び方で気付けるのはお兄様の『縁信の加護』のお陰。私が呼ぼうと思ったらどこに居てもお兄様に伝わるんだって」
「ちょっと怖くないかそれ!?」
ちょっとな訳無いだろ。普通に怖いよ。最初にその加護生えた時ロズワール邸の自室で「お兄様の料理久しぶりに食べたいなー」って呟いた時だったんだぞ。数秒後に急にラインハルトが視界にフェードインしてきて悲鳴でたわ。
ともかく呼んだら毎回来てくれる。呼んだのは数回とは言え今までは来なかった事がない。フェルトを祭り上げ始めたら分からないがフェルトが安全だったら多分来てくれるだろう流石に。
要するに俺はいつでも公式最強存在を呼び出せるチート召喚士なわけだ。まああんま呼ぶつもりはないが。
自己紹介を済ませ軽く話しあっている二人を見る。
今回はこのままだとスバルとラインハルトの初顔合わせが無くなりそうだから呼んだ。けどそりゃあこう出会ったら解決まで一緒に動くよなぁ……どうにかラインハルトだけ別行動にさせれないかな、無理だよなぁ。出来れば長時間一緒に居たくないのだ。自分から呼んでおいて最低だとは思うがマジで。一緒に居てもお互いの為にならない。
「よし、オルティアも聞いてくれ」
スバルの声で思考を止める。どうやら向こうの話は終わったっぽい。
「まず俺は人を探してる。名前は分からないんだが銀髪で紫の瞳、白いローブを着てる。それでその子は徽章を盗まれてる。それを取り返してやりたい。盗んだやつとそれを依頼したやつ。そいつらが取引する場所までは分かってる。ただ依頼したやつが問題だ。そいつは化け物みたいに強い女で最終的に関係者全員殺すつもりだ。俺にはどうにも出来ない、だからお願いだ! 力を貸してくれ!」
ガバッと頭を下げるスバル。真剣さは伝わるが怪しいが過ぎる。知ってる俺は勿論、ラインハルトも嘘を言っていない事を感じ取ってちゃんと聞いていたが普通は何でそれ知ってるんだと疑われて終わりである。まあこれはこの頃のスバルの良さでもあるが。
ラインハルトがこちらを横目で見ている。まあこれくらい情報あればエミリアって分かるよな。軽く頷きを返しスバルに向き直る。
「良いよ。私は手伝ってあげる」
「僕も微力ながら力を貸そう。騎士として見過ごせる事ではないからね」
「ありがとう! それじゃあ」
「その前に、スバルは何でそこまでしてその銀髪の子を助けてあげたいの? 名前も知らないんでしょ?」
申し訳ないがその未熟さは利用させて貰おう。
「助けてくれたんだ。自分だって急いでたのにわざわざ赤の他人の俺の事を。だからその恩返しがしたい」
「んー、了解。徽章が盗まれたのはいつ?」
「今日、多分一、二時間前だと思う」
「盗んだ人と依頼人、取引場所は?」
「盗んだのはフェルトっていう金髪の女の子で依頼人はエルザって黒髪の女だ。取引場所は貧民街の盗品蔵って所だ」
「じゃあ、その短時間でどうやってそこまで詳細に調べたの?」
「え……?」
「ごめん、スバルが嘘を言ってないのは分かるよ。でも盗まれてから一、二時間にしては余りにも分かってる情報が多過ぎる。盗んだ側がわざと嘘の情報流してるんじゃないかとすら思うくらい。だから安定を取らせて? スバルには私がついていくからお兄様は先に貧民街以外の王都全体の見回りをお願い。それでスバルの探してる子とかフェルトやエルザってやつを探して」
「僕は構わないけど……」
ラインハルトは少し悲しそうに、申し訳無さそうに苦笑した。……ほんとごめん。
「……いや、分かった。力を貸してくれるだけで大助かりだ。でもラインハルト! 呼ばれたらすぐに来れるようにだけはしといてくれ!」
「勿論。オルティア、危なくなったらすぐに呼ぶんだよ」
「子供扱いやめてよー」
ていうかスバルの俺への信用が低いな。戦ってもないしラインハルトみたいな異常さ見せた訳でも無いし仕方ないか。
「それじゃあ行動しよっか! お兄様、私達の方に何か起こる前に全部解決しちゃっても良いからね!」
まあ、流石に無理だろうが。
「すげぇ見られてるな……」
「まあ服の生地とかで良いところの人間って分かるだろうしねー」
ラインハルトと別れて場所は貧民街、見た目だけで金持ちだって分かる俺は針のような視線に刺されまくりである。平民、貧民、貴族、全員から過度な視線を向けられるのはある種の才能だろう。マジで要らねー。
ていうか服とかも全部レムに任せてるせいで今日スカートだ。この後ほぼ間違い無く戦うのに何やってんだ俺……まあエルザなら大丈夫か。
「あ、そうだスバル。さっきは強めに色々言っちゃってごめんね」
「いや、実際怪しいし疑う気持ちも分かる。さっきも言ったけど力を貸してくれるだけで大助かりだ」
実際は全く疑って無いんだが……まあ、いっか。
「まあもしこっちにちゃんとエルザが居て危なくなってもどうせお呼べば兄様来てくれるしね」
「そう言えば何かの加護でオルティアが呼んだのが分かるって言ってたよな。その加護って言うのは?」
「ほんとに世間知らずだねスバルは。加護っていうのは、なんて言えば良いかな。基本的には生まれる時にたまに持ってる人がいる凄い力みたいな? お兄様はいつの間にかどんどん新しい加護増えてるけど」
「は? 生まれつきのものなんじゃねぇの?」
「だから基本的にはなんだって。で、お兄様は基本から外れてるから必要な加護が勝手に増えていく。世界に愛されてるからね」
「……もしかして世界で一番強いって結構マジ?」
「だから贔屓目無しにって言ったじゃん」
「いや盛ってるとしか思えないだろ!」
「あはは、確かに」
実際そういう反応見たくて言ったし。
「オルティアは加護持ってるのか?」
「ん? あるよー、『死神の加護』」
「ぶっっそうな名前だな、おい!」
「実際物騒だよ。私が付けた傷はどんな薬とか魔法を使っても治らなくなるの」
「こっわ……そんなもの持ってるのに剣下げてるのかよお前」
「まあ距離離れれば効果弱まったりするし、そもそも制御出来るからね。運良く『死神の加護』に詳しい人が──あれ? ま、いっか。とりあえず二歳くらいの頃に教えて貰ってそれからずっと意識してるから」
「それでも俺だったらちょっとの事でも何かするの怖くて一歩も外出なくなりそうだ……」
「あはは、慣れだよ慣れ。ずっと持ってるとあんま気にしなくなるから」
などと雑談しながら歩いているとアニメで見た建物。盗品蔵! 聖地巡礼みたいでちょっとテンション上がるな!
とか考えるのは流石にか。
「まあとりあえず入ろっか」
ノック、返事無し。ノックノック、返事無し。
「誰か居るー? 早く開けてくれないと今から扉壊すよー。勿論弁償はしないからねー」
「ちょっ!? オルティア!?」
「さーん! にーい!」
「バカもん! 合言葉も知らない癖に野蛮な事だけ言いおって!何の用じゃ!?」
よーし頑張りますか! あ、でもまだ時間あるし先にミルクでも貰おうかな。