ある日、オラリオの街でそれは売られていた。ありふれた紙に、ごく普通の方法で作られた二冊の本だった。
なんら特別な物ではない本ではあるが、その表紙に描かれている絵とタイトルが道ゆく人の足を止めて手に取らせる。
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ~ロキファミリア』
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ~フレイヤファミリア』
それぞれの表紙には、今話題の白兎の脚《ラビットフット》とサブタイトルにあるファミリアの主神が並んで座っている様子が描かれている。好奇心旺盛な神はもちろん、なぜ話題の冒険者が別のファミリアの主神と並んでいるのか、その理由が気になって仕方ない民衆は思わず足を止める。そんな興味本位から、並べられた本を一冊ずつ手に取って買っていく。
そして、本が売れ始めて2日、3日と経つうちに、みんながその本の話ばかりするようになる。
「いや~、やっぱりベル君がファミリアに入るきっかけが良かったのはロキファミリアの
「いやいや、フレイヤファミリアに入るきっかけとなった豊穣の女主人の店員に導かれたルートも捨てがたいよ」
道行く人や酒場で神様や一般人が口にするのは例の本の内容だった。
その内容は、もしもベル・クラネルが別のファミリアに拾われていたらというIFストーリーが綴られた物語だ。
ありえない話だが、もし本当にそうなっていたらこんな風になっていただろうという内容に誰もが引き込まれる。
そうして噂は噂を呼び、一躍有名になったこの本だが、その筆者は不明。仕入れた本屋の主人も様々なルートを通ってきた為に、詳細は分からないと言っている。
だが、それでも売れているなら問題ないと判断して販売している。
そんな本が英雄譚好きのアマゾネスの手に渡るのも時間の問題であり、ダンジョン帰りに店頭に並んでいたその本を手に取るのは必然であった。
「なにこれ?アルゴノゥト君と……ロキ?」
表紙に描かれたベルと自分の主神に惹かれて、その本を手に取った。高まる気持ちを抑えつつホームの自室へ戻り、さっそく夢中で読み始めた。
もしロキファミリアに入っていたなら、ベートが師となり、アイズやレフィーヤ、自分やティオネと共にダンジョンへ潜り、影に潜む闇派閥との激闘を繰り広げながら成長していくベルの姿が描かれていた。
さらに、その時のベルのヒロインはレフィーヤで、互いに初々しいくっつくかどうかの関係を周囲に見せつけ、「お前ら、もう付き合っちゃえよ!」的な展開に、ティオナは夢中で読みふけっていた。
それから2~3時間後、レフィーヤのもとにティオナが突撃してきたのは言うまでもない。
誰かこういうの書いて……!!!