はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません   作:何を書けばいいんだ

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最終回 再会の約束

「はーい、マユで~す! 今日はお兄ちゃんとルナの姉御と一緒にオーブに来てま~す」

「いぇ~い!」

「姉御ってなによ……」

 

 私はお兄ちゃんに買ってもらったスマホで二人を撮影しながら言った、今日はオーブの建国記念日でお祭りをやっている、なので遊びに来たってわけだ。

 ファウンデーション事変からそれなりの月日が経った、すったもんだあったもののようやく世界も落ち着いてきたよ。

 

 アコードの演説と戦略兵器乱れ撃ちのせいで各国の反コーディネーター運動こそ活発になっているけど、根本的にリソースが不足していてテロ活動も散発的になっている。 

 せいぜいが小銃と爆発物を利用したテロ行為、ひどいものではダガーやジンを組み立てての破壊活動などがあるけど、それだって単機でのものでミケール大佐がやっていた部隊規模のものと比べるとやはり状況は改善に向かっていると考えられる。

 

 一時期はオルフェの演説に当てられてデスティニープランの是非について世間で大激論が巻き起こったりもしたらしいが、あのラクス・クラインが彼を名指しにして討伐したということもあってか変な神格化をされるわけでもなくデュランダル議長の思想に影響された一人の若者ぐらいの扱いに収まったと聞いている。

 当のラクスさんとついでに准将も行方知れずになってるけど世の中はそこまで深掘りして調べようとしないのでそちらも騒ぎにはなっていない。

 

 あれだけのことをしでかしたのにも関わらず、結局ファウンデーション……いやアコードたちの遺せたものはただよくわからない連中が戦って英雄に敗けたという実に表面的な事実だけだ。

 少なくとも世間はアコードたちが戦った理由なんかよりも、彼らが齎した被害からの復興やそこに掛かるお金や時間という即物的なものにしか目を向けていない。

 やはり暴力で思想を流布するというのは難しいってことなのかな。

 でもこちらとしては後に尾を引くようなことをせずに死んでくれたのはある意味ありがたかったり。

 

 しかしそれとは別に燻っている火種はある、首都をレクイエムで焼かれたユーラシア連邦とかね。

 あの日以降国際情勢も大きく変わった、やり方はともかくファウンデーションへの奇襲攻撃で勝利を収めたオーブに艦隊を失いつつも同じく戦った大西洋連邦は大きく発言力を増した一方プラントは逆に苦しい立場に追いやられた。

 あの事変で起きた責任問題はとりあえずファウンデーションに押し付けて有耶無耶にしとけって感じになってたけどプラントに関しては言い逃れできない失点が一つ。

 

 そう、レクイエムの管理だね。

 ザフトのクーデターはまだ内乱の範疇で済むし自前の戦力で鎮圧したから自分で尻拭いしたと言えるけど、封印されているはずのレクイエムが発射可能になっていた上に他国に発射されてしまったというのは現政権の明確は責任問題となる。

 特にそれで大被害を受けたユーラシアはプラントを激詰めしてかなーり関係が悪化している。

 

 オーブと大西洋で宥めているけど、それはそれとしてプラントの力が弱まった方が好都合な大西洋はあんまり真面目にプラントの肩を持たずにコウモリ外交をやっている。

 オーブの方は真面目に鎮静化を図ってるけど……デストロイの投入とそれに伴う生体CPUの運用疑惑がね……オーブ国籍の志願兵が乗っていたと一貫して強弁してるけどちょっと苦しいかな~?

 とりあえず首都を焼かれて早々勢いで報復からの開戦とは流石にならないだろうとは思いつつもユーラシア内部のブルーコスモス思想の盛り上がりもあってか一触即発の状況だ。

 

 まったく、元凶を倒せば丸く収まって終わりと行かないのは実に面倒である。

 けれどそういう事情があってかなくてか、一つだけ朗報が。

 それはコンパスの活動が再開されたことだよ、准将も総裁も消息不明な上にファウンデーションの一件でケチが付いてるコンパスだけど事態の鎮圧に対して即応性の高い少数精鋭戦力の有効性が認められて復活と相成った。

 

 とはいえ、丸っきり元通りとはいかない。

 エルドアでの戦いで少数だった故にファウンデーションの蜂起を抑えきれなかったという点が問題視され組織の改革が成されることになった。

 単純に人員が増えたし轟沈したアークエンジェルの代わりに大西洋から艦艇が回され陸海空宙の戦力が増強された。

 ただどれもこれも老朽艦で禊ぎの意味も込めてコンパスの軍費の大半を負担することになったプラントに維持費を押し付け、レクイエム攻略で喪失した艦隊の再建費用を捻出しようという意図を隠そうともしていないけどね。

 

 内部も綱紀粛正が進んでよりお役所的になったよ、これを柔軟性が失われたとみるか堅実になったと見るかは人によりけりだろうけど現場としては戦力が増えるからOKです。

 仲間が増えて嬉しい限りだよ、ちなみに組織改革の過程で違法な未成年労働が摘発され私は無事解雇となった、そんなー。

 

 しかし、これもいい機会かもしれない。

 最後の戦いのあと私は入院していた、危ないお薬を使ってたから経過観察も兼ねてね。

 ああいう薬は人体の活性を維持する医薬品という方向でも研究が進められているし、デュランダル議長のブルーコスモスに関する暴露とプラントとの技術協力でそういう知見も深まったからかオーブでも日進月歩の勢いで新薬が開発されている。

 ただ本場の方が一日の長があるのか、オーブの抑制剤の効きはイマイチだったね、アスランにくっついて直接オーブまで帰ったけどしばらく病院のベッドが動けなくなっちゃったよ。

 

 でもまぁ後遺症があるわけでもなく、アマギさんに面倒を見てもらいながらのんびりやっていた。

 そこで時間があったから物のついでに精神的なアレコレについてカウンセリングを受けたのだ、結果としてはコンバットハイ……一種の戦闘中毒だと診断された。

 戦いに伴う高揚感、具体的にはアドレナリンなどの脳内麻薬の分泌に伴う快楽に依存している状態って感じかな。

 私の場合は外科手術でいじられてるせいで常人とは神経伝達物質の分泌量自体が結構違うから、戦うことそれ自体が麻薬などの摂取に近しい状態になってるらしい。 

 

 これの治療法はざっくり言うと日常に適応すること、依存症なんだからとにかく戦場から離れてそれを当たり前の状態にするしかないって言う薬物依存の治療とまんま同じことをやらないといけないみたい。

 だからここでコンパスを追い出されたのは渡りに船ってこと、幸いオーブの国籍は戻ったしカガリ様から慰謝料代わりにまとまった額の現金をもらったから当分は凌げるしね。

 問題はその後……。

 

「どうしたのマユ? 眉間に皺が寄ってるわよ」

「えっ?」

 

 ルナの姉御に見咎められてしまった。

 うーん、でも先行き不安がぬぐえなくてね~。

 

「ここまで色々あったしね。考えなきゃいけないことも多いのかもしれないけど今日ぐらいは楽しんだら? シンみたいにね」

「ん? どうしたんだルナ。もしかしてルナも焼きトウモロコシ食いたいのか?」

 

 確かになぁ、お兄ちゃんだってアレコレ引きずっているけどパッとみ能天気なバカをやれている、この切り替えは私も見習うべきだろう。

 ただ今私を悩ませているのは世界の平和だとか政治情勢なんてものではなく至極個人的な事情、自分の将来についてでこれに関しては出来るだけ早く決めた方がいいんだよねぇ。

 

 現在オーブ国民の私だけど当然のことながらお兄ちゃんはプラント国民である。

 だから今のところはお兄ちゃんの住まいに転がり込んでいるけど、在留期間が切れたらオーブに強制送還されてしまうのである。

 こちとら未成年、親族がいるならそっちと一緒に生きていくのが道理ってもんだけどお兄ちゃんは既にプラントで立場を築いて生活している、つまり身軽とはいえない状態ってわけだ。

 なら私の方が正式にプラントへと移住してそっちで籍を持つのが正道と言える、しかしそれにはちょっとした問題があるんだ。

 

 ……自慢じゃないが私の学歴は小学校中退である、それもオーブの教育課程で。

 そしてプラントの成人年齢は15歳、教育課程だってコーディネーター基準のものだ。

 これでどうやって就職して生活するんだって話だよ。

 戦争でひたすらに青春を浪費し続けた私は就職戦争という別次元の戦いでは圧倒的弱者、そりゃあ軍では仕事に必要な数学的な知識だったり機械工学についてちょっと齧ったりはしたけどもそんなん焼け石に水でしょ、だって相手は空の化け物よ?

 

 そういうわけでお兄ちゃんにくっついてプラントに行ってもあっちのハイレベルな社会についていく自信がないのだ。

 まぁ一応なんかザフトがね、クーデターの時に宇宙軍がごっそり消えたみたいでね、定員不足に喘いでるみたいだからそこならいけそうって話はあるらしい。

 でも戦いから離れようって矢先に軍に入隊ってのはどうなのよって話じゃんね。

 しかも私は定員不足の原因に一枚噛んでるのに……さすがにここで人手不足のおかげで楽に入隊できてラッキーと言えるほど私の面は厚くないよ。

 

 その点オーブはまだ希望がある。

 出遅れてこそいるもののモラトリアムが長い分追いつく余地もあるし、後ろ暗い話だがエリカさんやカガリ様とのコネをこねこねすれば何かしらのお仕事を斡旋してもらえるかもしれないからね。

 ただその場合はどっかの施設か何かで暮らすことになるだろうなぁ~、せっかくお兄ちゃんがいるのに離れ離れってのもちょっとって感じ。

 まさにあちらを立てればこちらが立たず、順風満帆とはいかないものである。

 頭を捻れどもこれより良いアイデアも浮かばないのでこの二択を決断しなくちゃならない、ちなみにお兄ちゃん曰く「マユが決めたことなら俺は何だって応援するからな!」だってさ、そうやって丸投げされるのも困りものなんだけど。

 

「お? どうしたマユ。どっか行きたいのか?」

「ちょっと一人で行きたいところがあるんだ。お兄ちゃんと姉御はここらへんでのんびりしててよ」

「え~、せっかく三人で来たのにな~」

「いいからいいから。ここはお二人で仲をね……いい感じにさ……?」

 

 ま、これはクイズみたいに正解と不正解があるわけじゃない、どっちに進んでも得られるものがある岐路だ、とりあえず一つ一つやれることを片付けていこう。

 

 というわけでここからは個人行動である。

 丁度いいタイミングだったとはいえ私はオーブに遊びに来ただけではないのだ。

 そうして一人寂しく訪れたのがオノゴロ島、モルゲンレーテの工廠などがある場所で沿岸部には戦没者慰霊公園が設置されている、私はそこに用があるんだよね。

 

 首都のあるヤラファス島と比べてここは静かだ。

 オノゴロは軍事の中枢……都市圏と比べたら人の往来も少ないのも当然だろう。

 まして今日はハレの日で、そんな日にこういう物寂しい場所を訪れる人もそうそういないってことかな。

 でも誰もいないってことはないようだ、ちょうど慰霊碑に花を供えているやたらとベルトの付いたダッサイ服を着た青年が一人。

 

「これが慰霊碑ですか」

「君は……!」

 

 呆気にとられたような様子の彼は一旦おいといて、私は慰霊碑を見下ろす。

 みすぼらしくはないものの、やや簡素とも思える石碑にまあこんなものかという感想を抱いた。

 この場所は一種のお墓のようなもの、戦いの中で散った兵士や民間人……つまり私の両親などが祀られている、中々訪れる機会に恵まれなかったが漸く墓参りに来れたってわけだ。

 

 これでまた一つ片付いた。

 小さなことだけどこういう積み重ねが前に進む力になるってね、心なしか肩が軽くなった気がするよ。

 さて、視線を横に向けたらベルトマンが相変わらず私のことを見ていた、しょうがないなぁ。

 

「ここにはよく来るんですか?」

「えっ、いや、どう……なんだろう」

 

 やることは終わったので気軽に雑談を振ると彼はなんとも話の広がらない返事をしてきた。

 こういうところはナードって感じだね~。

 

「実は私、連合のオーブ侵攻の時に両親を失ったんですよね」

「……ッ」

 

 お互いだんまりというのも寂しいので身の上話でも。

 慰霊碑を見つめながら私はぽつぽつと語る。

 

「その時に私も結構な怪我をしまして。それで長い間オーブから離れることになっていたんですけど、ようやく戻ってこれたってわけです」

「そう……なんだ……」

「はい、色々ありましたけど運に恵まれました。今日は父と母のお墓参りに……それと」

「それと……?」

 

 言葉を切って、私は彼の方に向き直った。

 すると彼はばつが悪そうに顔を背けてしまった、ちょいと湿っぽい話だったかな? でも私はお構いなしに続ける。

 

「ちょっとしたお礼を言いに来たんです。あの日に戦ってくれた人たちに……守ってくれてありがとうって」

「え……?」

 

 まあこんなのはただのお気持ちに過ぎないけどね。

 これでも私はそれなりの戦歴を持っている、つまり有利な戦場も不利な戦場も色々と経験してきているのだ。

 だからこそあの日、この地で戦った兵士たちがどれだけ苦しい状況に置かれていたのかも理解できる。

 そりゃあ結果としてはオーブは陥落して連合の占領下に置かれはしたよ? でも負けたから、守り切れなかったから全て無意味だったなんてことは思わない。

 彼らの覚悟と献身を私は知っているから。

 なので今ここで感謝を述べているってワケだ。

 

「来た理由はそれだけです。じゃあ用も済んだので私はこれで行きますね。では、また……どこかで」

「うん、また……それまで元気で」

 

 これで終わりっと、さ~てお兄ちゃんたちのところに帰ろうか。

 慰霊碑に背を向けて私は来た道を戻る。

 あの二人はどうしているだろうか、私がいなくなっていちゃついてるのか、お兄ちゃんに引っ張られてバカ騒ぎをしているのか。

 ふと遠くに目をやるとベンチに腰掛け黄昏ながら海を眺めている金髪のにーちゃんに青髪のねーちゃんの姿が見えた、お熱いね~。

 お兄ちゃんと姉御も良い年ごろだしああいうね、しっとりとした落ち着いた雰囲気を作ってお付き合いしてくれたら妹としては嬉しい限りなんだけど。

 

 そんなしょうもない願望を抱いていると、背中に潮風が当たってグイっと押され、私はなんとなしに星空を見上げた。

 うん、ただ光る星が見えるだけだ、爆発や核の光は見えない至って平和な空、いいね。

 これからの世界がどうなるかはわからないけれど……きっとなんとかなるでしょ、もう私は一人じゃないんだから。




本作はこれにて完結です。
およそ一か月の間でしたが楽しんでいただけたなら幸いです。
アコードの最後に関しては作者としても悩みましたが、表舞台に残すにはやらかしの大きさと何より思想面が厄介、けれども死なせるとなるとじゃあ主人公はどうなんだとなるので、全てを失った上で命だけが残ったという形でオチをつけた次第です。

最後に、ここまで本作に送られた多くの評価に感想、そして誤字報告に感謝を。
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