空に月が二つある。七年前からだ。月の光は「澱」を生み、澱は化け物になる。それでも人間は大したもので、今や世界の終わりは「行政案件」だ。
俺は市役所のハズレ部署・澱対策課の四年目。仕事は怪異への苦情処理——のはずだった。月曜の朝、児童公園で、喋らないはずの怪異が言った。『かえして。あのこを、かえして』。
怪異が探す少女は、今日も普通に学校に通っている。失踪届もない。なのに彼女の周りだけ、計測器が、ありえない数値を示す。
「確かめよう。今そこにいる『彼女』が、本物かどうか」
口の悪い天才祓い師と組んだ地味な公務員が、規制線と書類の山で月に喧嘩を売る。届けたい言葉は三つ。ただいま、おかえり——それから、この街でいちばん正しい、朝の挨拶。
俺は市役所のハズレ部署・澱対策課の四年目。仕事は怪異への苦情処理——のはずだった。月曜の朝、児童公園で、喋らないはずの怪異が言った。『かえして。あのこを、かえして』。
怪異が探す少女は、今日も普通に学校に通っている。失踪届もない。なのに彼女の周りだけ、計測器が、ありえない数値を示す。
「確かめよう。今そこにいる『彼女』が、本物かどうか」
口の悪い天才祓い師と組んだ地味な公務員が、規制線と書類の山で月に喧嘩を売る。届けたい言葉は三つ。ただいま、おかえり——それから、この街でいちばん正しい、朝の挨拶。
| 第一話 澱対策課は今日も定時で帰れない | |
| 第二話 祓い師は領収書を持ってくる | |
| 第三話 ただいまの言えない家 | |
| 第四話 七年前の忘れ物 | |
| 第五話 おかえりと、おはよう | |
| 第六話 白瀬みことは現場に来ない | |
| 第七話 報告書には書けないこと | |
| 第八話 拝み屋の家 | |
| 第九話 川の音だけ、していた | |
| 第十話 七年目の素振り | |
| 第十一話 ちゃんとした店の肉まん |