それでもなお、その日常から逃れることは出来ない。
そう思っていたのは、もしかしたら思い込みでしかなかったかもしれない。
日常は歩んだ軌跡こそが日常となる。
それを知る事ができたのは僥倖だったのだろう。
ある日出逢った変わったねこに導かれる、変わった日常。
そんな数奇な日常が綴られる。
(投稿テストに書いたものです。気が向いたら続きを書くかもしれません。)
自分しか読まないと思っているので雑です
ねこちゃんかわいいね
ねこちゃん、確かにかわいいね。
そうきみは言った。
あれは、本心だったのだろうか。
それとも私を喜ばせるための言葉だったのだろうか。
今となってはわからない。
それでも未だ忘れられない言葉なのは確かだ。
特段何かあるわけでもないただただ平凡な日だった。
いつものように出かけ、いつものように帰るだけの日常。
何かを期待することにも飽き、誰かに期待されることにも退屈していた。
ただ過ぎ去るだけの、同じ景色に流れる同じ時間に嫌気が差していた。
そんな日に、ふと声を掛けられた。
ちくわ大明神。
ちくわ大明神……?
一体それは、何の意味がある言葉だったのだろうか。
ちくわ、そして、大明神。
ちくわを祀っているのか、ちくわを祀る神なのか。
ありえない単語の接続に、非日常を感じた。
感情でも、理性でも、意味のない言葉だということはわかっている。
それでも、この灰色の景色を終わらせるには、この言葉を追う以外にはないと、直感的に理解していた。否、理解してしまった。
それ故に、その言葉を発した人物を見ざるを得なかった。
そうして、言葉を奪われた。
なんて、なんて、可愛らしいんだ。
つぶらな瞳に、長いまつげ。はにかんだような笑顔とも見て取れる曖昧な表情。
首をかしげるさまには、えも言えない感情を誘われた。
言葉をなくして数瞬、色が溢れた景色に見を任せ、こう言葉を空へ乗せた。
ねこちゃん、いいですね。
その人は曖昧な顔をしていた。それでも、その人に抱かれたねこちゃんは、こころなしか満足げだった。
突然に話しかけられたことで、向こうは驚いていたのだろう。
唐突な会話を詫び、言葉を紡ぐ。
なぜねこを抱いているのですか?ちくわ大明神とは?
そう問えば、返ってきたのは至極簡単なことだった。
ねこちゃんの名はちくわ大明神であり、曰く脱走をしていたらしい。
妙な名付けもあったものだと思いつつ、それでも問わずにはいられない。
どこに住んでいるんですか?また会いに行ってもいいですか?
その言葉に驚きつつ、しばし悩んだ末にこう返された。
たまにならば……ただ、私も心の準備が……。
誤解をされていることに直ちに気付き、ねこに会いに行きたいことを伝える。
私は、不思議な名をもつ不思議なねこに惹かれただけだった。
相手の目が死んだように見えたのは、それを伝えたの同時だったかもしれない。
それ以降、曖昧な返答しかしなくなってしまった。
名前を聞いても、多分ちくわです、いい毛並みですねと言っても、心ここになく、そうですね、としか言わない。
何故だろうかと思いつつ、再度声を掛ける。
ねこちゃん、かわいいですね。
そうして返ってきたのは、感情のない、ただの同意、ねこちゃん、たしかに可愛いですね。だった。
今から思えば、中々に心無いことをしてしまったと思う。
それでも、あの時の自分には、あれ以上の会話はできなかっただろう。
そう思い返すも、それとなく罪悪感を感じる。
後で謝罪をしよう。覚えてはいないかもしれないが。
そんなことを思いつつ、ソファーへ向かう。
おかしさを秘める、日常に流れ込んだ非日常。
それが、私とあの人との出会いだった……