勇者ロトの弟にチート持ちで転生したけど、異世界のダンジョンに転移したのは間違っているだろうか:Re 作:醜い蛭子
第01話 転移 ─オラリオ─
ゼウス1世から聞かされた世界滅亡までのタイムリミットは俺が24歳の誕生日を迎えるまで。
それだけ聞けば随分と余裕があるように感じられるかもしれないが、【ギスヴァーグ】の居場所は分かっておらず世界を隅々まで探すとなると時間は寧ろ足りないくらいだ。
自身の鍛錬も含めて準備は十二分にしなければならないものの、世界を探索する期間も考慮しておかなければならない。
ちょうど16歳の誕生日を迎える頃には父さんとの修行も一段落すると共に、アリアハン周辺に出没する【スライム】や【おおがらす】ではレベル上げに必要な経験値も頭打ちになっていた。
そしてこの世界では念じる事で自身の魂と身体に刻まれた成長の証を確認する事が可能で、それによれば現在の俺のステイタスは……。
レベル:39
ちから:4799
みのまもり:4920
すばやさ:4339
きようさ:4920
かしこさ:4456
うんのよさ:3684
HP:6359
MP:5353
加護:【
スキルP:138P
スキル:【勇者】38P
【剣神】40P
【竜闘気】60P
ドラクエじゃなくてFFかよ!と思わずツッコミを入れたくなる数値であるが、このステイタスは何も転生者である俺に限られたバグという訳では無い。
ゼニス1世が言っていたように俺が転生したのは良く知るドラクエとは似て非なる世界であるようで、これもその一例として具体的に言えばレベルが上がるにつれて各ステイタスの上昇率も比例して増加していくのだ。
加えてレベル20を境に10刻みでレベルが上がる毎にステイタスが爆発的に増加し、俺も既に2回の飛躍を経て現在のステイタスへと達している。
父さん曰くレベル20に達した者は人間の枠を超えた存在であり、例えモンスターとの戦いを生業とする者でもその境地まで辿り着く事は非常に稀という話だった。
実際に城の兵士でもレベル20まで到達している者は一人もおらず、ダーマ神殿で転職が可能となるのがレベル20である事も何か関係があるのかもしれない。
ちなみに父さんはレベルが50を超えており、年齢的に身体が衰え始めた今でも模擬戦では全く歯が立たない状態であった。
それとついでという訳ではないがドラクエⅢから地続きの世界と言えるものの数値として確認できるステイタスは【たいりょく】から【きようさ】に置き換わっている。
またゼニス1世が言っていた転生者の特権として俺はドラクエⅧ以降の作品でシステムとして存在していた【スキル】を成長の度合いに応じて自分の意思で獲得する事が可能となっていた。
俺が可能なスキルの系統は三種類で【勇者】【剣神】【竜闘気】。
詳しい事は省くが【勇者】はロトシリーズに限らず他ナンバリングにおける勇者に纏わる呪文や特技、【剣神】は文字通り剣を使った特技の数々、【竜闘気】はドラゴンクエストのメディアミックスの代表作とも言える【ダイの大冒険】に登場した【竜の騎士】に倣った力を習得出来るのだ。
そして仲間の潜在能力を限界以上に引き出す術というのが俺以外にも【スキル】の習得を可能とする事であり、旅に同行する事になったセレネ以外にも留守の間に何か起こった時に備えて父さんとアイリーンにスキルを発現させていた。
こうして【スキル】を発現した者は俺も含めて新たに特殊な効果を秘めた【加護】を授かる事になり、例えば俺の【
とまぁこんな具合に十分とは言えずとも俺は着実に成長していたものの、やはり【ギスヴァーグ】を見つけられぬまま気付いた時には手遅れでしたでは洒落にならない。
『ユグノア流剣術』の修行も終えた今、これから先は旅を通じてレベルも上げていけば良いとアリアハンを出立する事を決めたのだが……。
(どうしてこうなった!?)
以前に何度か父さんにロマリアに連れて行って貰った事があり、【旅の扉】を抜けた先の経由地点である【いざないのほこら】の景色はまだ記憶に残っている。
しかし俺達が辿り着いたのは【いざないのほこら】と明らかに違う場所であり、少し開けた広場を囲むように小から中規模の建物が見渡す限り立ち並んでいた。
そして少し離れた場所には天を衝くかのように高く聳え立つ巨塔。
少なくとも俺の知識によればⅪの時代も含めてロトゼタシアにこんな塔が存在する街は存在していない。
何より気に掛かるのは日もまだ高い時間であるに拘らず、これだけ建物が並んでいるのに人々の喧騒らしい声がまるで聞こえてこない事だ。
だが人の気配が全く感じられないという訳ではなく、まばらに確認できる人影も何やら極力目立たぬように息を潜めているように見えた。
何やらこの街が異常な空気に包まれている事をヒシヒシと肌で感じさせられる。
「何だか変わった場所に出てしまったわね」
そして俺が内心で慌てふためている一方で、セレネは少なくとも表面上は落ち着き払っている。
セレネも昔一緒にロマリアに行った事があるので違う場所で出てしまった事は気付いている筈だが、冷静な面持ちなまま周囲の様子を見渡していた。
「それでこれからどうしましょうか?」
「こんな訳の分からない状況なのに、お前は随分冷静なんだな?」
「だってアナタが聞かせてくれた話に出てきた魔法使いの師匠だって言ってたじゃない?魔法使いは常に冷静でいなくちゃならないって」
この魔法使いの師匠というのは言わずもがな【ダイの大冒険】に登場した大魔導士マトリフの事だ。
今でこそ性格も落ち着いてクールな印象が強いセレネだが、昔はお転婆で英雄譚が何よりも好きな活発な少女であった。
しかし子供達に語って聞かせるような物語は数が限られており、そこで俺は前世の知識にある漫画や小説の話をセレネに披露していたのである。
元ネタの人気を考えればセレネが気に入るのも当然で昔は何度も話をせがまれたものだが、思えばこうして一緒に旅に出る程に俺達が親しくなったのもそれが切っ掛けだった。
すっかり
それに加えて俺の力が齎した【加護】と【スキル】も相まって、危険な旅と分かっていても同行を拒めない程の実力者にまでセレネは成長を遂げていた。
幼馴染として長い付き合いの中で培われてきた阿吽の呼吸と常に冷静沈着を心掛けて状況分析が可能なパーティーのブレーン、俺にとってセレネは何者にも代え難い唯一無二の仲間と言えるだろう。
「何だか妙に不穏な雰囲気が漂ってる気がするけど、ひとまず此処が何処かだけは確かめておかないと」
「そうだな」
しかしセレネに倣って俺も落ち着くよう努めながらも、【ギスヴァーグ】の力を知る身としては焦りを禁じ得なかった。
ドラクエのスピンオフであるモンスターズの中でも異色の作品と言える【キャラバンハート】に登場した【ギスヴァーグ】はキーファやフォズを未来のロトゼタシアに呼び寄せたように異世界へ干渉する力を持っていたのだ。
今回の転移が【ギスヴァーグ】の力によるものなら、事態は想像よりも遥かに深刻かもしれない。
とにかく今はセレネの言う通り現状を確認しなければならないと、周囲の中から適当に話を聞く人間を見繕おうとしたそのその時だった。
辺りに響き渡る振動を伴うような轟音と共に、少し離れた場所から火の手が上がったのが確認できる。
つい先程までとはまた異なる明らかな異常事態を前に俺とセレネが身構える中、僅かに確認出来た人影もそそくさと建物の中に隠れてしまった。
「……折角だし、先にあっちの方へ行ってみましょうか?」
「折角って何だよ?」
今や戸惑いよりも完全に好奇心が勝っている事を隠し切れないセレネの声音に呆れながらも、この街の事を知る為にはその方が確実だと俺の直感が告げていた。
しかし見た感じ火元へ辿り着くには建物が連なってかなり入り組んでいるようで、道なりに進んでいては却って遠回りになりかねない。
そんな時に便利なのは……。
「「【トベルーラ】!!」」
同時に呪文を唱えると同時に俺達の身体が重力を脱ぎ捨てたかのように宙に浮く。
自由自在に空を飛ぶことが可能となる【ルーラ】の亜種である【トベルーラ】の呪文。
本来なら【ダイの大冒険】に登場したこの呪文を普通の方法で習得する手段はないものの、俺は【竜闘気】セレネは【大魔導士】のスキルによって使用が可能となっていた。
そして宙に浮いた事で広がった視野に映る街並みは想像を遥かに超えて規模が大きい。
先程から見えていた巨塔を中心に街は東西南北へ円形に広がり、街自体が高い壁によって取り囲まれている。
正しく要塞都市そのものである様相はこの街が何かしらの危険を孕んでいる証明であり、否応に嫌な予感を覚えてしまう。
それと同時に何やら妙な既視感のような感覚が湧き上がるが、それについて深く考える間もなく目的地の火災現場へと辿り着いた。
「戦闘が起こってる?」
よほど火の手が強かったのか火事元である建物の天井は既に幾らか焼け落ちており、立ち込める煙の合間から何か工作機械のようなものが確認出来る。
恐らく工場か何かなのだろうが、建物の規模や機械製生産が行われているとなるとアリアハンと比べてこの街の文明が発達しているのは間違いなさそうだ。
更にその隙間を縫うようにして建物内を駆け巡る複数の人影と、今では俺にとっても馴染みとなった金属と金属がぶつかり合う剣戟の音が鳴り響く。
すると唐突に一陣の風が吹き抜け、ほんの僅かな時間だが煙が晴れて建物内の様子がクリアになった。
そして丁度そのタイミングで視界に入った剣を振るう二人の人物を見て俺は思わず息を呑んだ。
(くそっ、やっぱり異世界!?それも『オラリオ』なんて世界観も糞もありゃしねぇぞ!!)
すぐさま煙にまた隠れてしまったが、俺が見たのは確かに二人の少女だった。
一人は赤い髪をポニーテールに束ね、もう一人は金色の長髪に耳の尖った少女──エルフだ。
ロトゼタシアにもエルフが存在するらしいが、俺はまだ直接顔を合わせた事はない。
それはともかく俺がこの二人を見てここが異世界だと判断した理由、それは少女達のことを前世の知識で知っていたからだ。
アリーゼ・ローヴェルとリュー・リオン。
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』というライトノベル並びにその外伝に二人は登場しており、物語そのものに大きな痕跡を残すことになる重要人物だ。
(この二人が一緒に行動してるって事は、よりにもよって『暗黒期』か)
だとすれば街の様子も頷ける。
『ダンまち』は天界から降り立った神達によって『
しかしその神々が必ずしも善良とは限らず、
元々シビアな世界観である『ダンまち』の中でも『暗黒期』が語られる物語の悪辣さは群を抜いており、正直俺も読み流しただけでお腹いっぱいだった。
「さっき見えたのってエルフよね?これからどうするの?」
ロトゼタシアどころかドラゴンクエストとも何の縁もない筈の『オラリオ』に跳ばされたのが【ギスヴァーグ】の力によるものなのか、そして帰る手段はあるのか、帰れなかった場合は世界がどうなってしまうのか、考えなければならない事は山積みだ。
しかし答えが簡単に見つかりそうにない事だけは明白で、今は何か行動を起こすのにあれこれ悩んでいても仕方ない。
そして幸か不幸か俺はこれからこの街で起きるかもしれない悲劇を食い止める事が可能な情報を持っており、後やるべき事は己の心に従うことだけだった。
「そりゃカワイ子ちゃんを助けて、そのまま良い仲になるのが冒険の醍醐味だからな。あの子達の加勢に行くぞ!」
「動機が不純な上に私には何もメリットが感じられないのだけれど?それに今はあの子達が誰と戦ってるのか、そもそもどっちが悪者かも分からないし」
「そこはケースバイケースで!」
「……仕方ないわね。それに火事に取り残されている人がいるかもしれないし、とにかくもう少し詳しく情報を得る為にも下に降りましょう。【フバーハ】!」
セレネが呪文を唱えると温かな光が俺達のことを包み込む。
ゲームのシステム上では息の攻撃を軽減する【フバーハ】の呪文だが、実際の効力としては急激な温度変化を防ぐ魔法の衣を対象に纏わせる呪文だ。
つまりこういう火事だけでなく極寒の地に赴く際などにも役立つ有用な呪文である。
何だかんだ律儀に付き合ってくれるセレネを伴って、未だ燃え盛る建物の中へと降り立つのだった。
参考までにステイタス計算式
ちから:=ROUNDDOWN(1.2*レベル^2+25*レベル-1.2+1000*MAX(ROUNDDOWN(0.1*レベル-1,0),0),0)
みのまもり:=ROUNDDOWN(1.1*レベル^2+32*レベル-1.1+1000*MAX(ROUNDDOWN(0.1*レベル-1,0),0),0)
すばやさ:=ROUNDDOWN(1*レベル^2+21*レベル-1+1000*MAX(ROUNDDOWN(0.1*レベル-1,0),0),0)
きようさ:=ROUNDDOWN(1.1*レベル^2+32*レベル-1.1+1000*MAX(ROUNDDOWN(0.1*レベル-1,0),0),0)
かしこさ:=ROUNDDOWN(1*レベル^2+24*レベル-1+1000*MAX(ROUNDDOWN(0.1*レベル-1,0),0),0)
うんのよさ:=ROUNDDOWN(0.8*レベル^2+12*レベル-0.8+1000*MAX(ROUNDDOWN(0.1*レベル-1,0),0),0)
HP:=ROUNDDOWN(1.2*レベル^2+65*レベル-1.2+1000*MAX(ROUNDDOWN(0.1*レベル-1,0),0),0)
MP:=ROUNDDOWN(1*レベル^2+47*レベル-1+1000*MAX(ROUNDDOWN(0.1*レベル-1,0),0),0)