大きな広間と言える場所で、いつの間にか横たわっていた身体を起こして周囲を確認すると、見知らぬ顔や、何処かで見たことあるような顔をした人達が私と同じく、周囲を確認しながら戸惑っている姿が見えた。
広間の隅に居た私の横に居る人は、ONE PIECEのカタクリに似ていたが普通の口で、身長は2メートル位だったが、黒い着流しを着用していたな。
「眼鏡をしていないのび太くん?」
此方の容姿がのび太くんに似ていると知っている様子を見せた着流しの男性は、ドラえもんについて知っているみたいではあるが、私はのび太くん本人という訳ではないので訂正しておくとしよう。
「私はのび太くんではないですね。モビタ・モビというパチモノみたいな名前ではありますが」
「そうなんですか、ああ、失礼、申し遅れました。ワタシの名前は常無剣心です」
「常無さんは、もしかして日本の方だったりしますか?」
「そうですよ、日本で生まれ育って、今は中学校で教師をしています」
「先生をやっていらっしゃるんですね。此方は、どう説明をすればいいのかで、少し困っています」
ファンタジーな世界でダンジョン潜ったりして冒険者やってました、と素直に説明して信じてもらえるかどうかが解らないので、口ごもる私に「言いにくいなら言わなくても大丈夫ですよ」と言ってくれた常無さん。
そんな会話をしている私と常無さんに近付いてきたのは、紫色でモジャモジャな頭髪をした男性と、ジョジョの若い頃のジョセフに似ている男性だったが、モジャモジャな方がイズミで、ジョセフに似ているのがントムという名前で間違いないそうだ。
「この広間に集められてる奴等に話を聞いてみたけどさ、寝て起きたらこの広間だったてのはどいつも同じだったね」
レイトン教授みたいな声で、そう言ってきたイズミさん。
「気付いたらこの広間で寝てたってのは全員同じだが、それ以外にも共通点はありそうだぜ」
注意深く観察していたントムさんは、全員の共通点に感付いているらしい。
「それはこの広間に居る全員が、もしかしたら転生者かもしれないといったところですか?」
「モビタくんは察しがいいな。個人的にはポイント高いぜ」
私の言葉に頷いていたントムさんも転生者であることは否定しなかったので、やはりこの広間には転生者が集められていたようだ。
とりあえず自己紹介がてらに、日本から異世界に転生した転生者であることを明かした私達だったが、常無さんだけ少し特殊で、現代日本からワノ国に転生してから、また別の世界の日本に転生していたらしく、多重転生者ということになる常無さん。
ちなみに常無さんが最初に生きていた現代日本にはONE PIECEとブリーチとヒロアカの漫画やアニメが存在していなかったみたいだった。
こうして4人で集まって話していると必ずしも同じ日本から転生した訳ではないと気付くことができたが、それはそれとして、他の面々にも話を聞いておきたいところではある。
金髪で体格のいい男性と黒髪で体格がいい男性に、描くとするなら絵柄がドラゴンボールみたいになる黒髪の男性の3人が、何処からか取り出した酒とつまみで酒盛りしているところに話しかけにいこうとした私を引き止めた常無さん。
「未成年に見えるモビタくんを、あそこに行かせるのは気が引けます。ワタシが話を聞いてきますよ」
常無さんはそう言うと「お楽しみのところ失礼します。少々話を伺っても構いませんか?」と酒盛りしている3人に話しかけていた。
その後、しばらく話していた常無さんが戻ってきたが、どうやら金髪で体格がいい男性はジーン・グライペル、黒髪で体格がいい男性は姫島仁、絵で描くとドラゴンボールみたいな絵柄になりそうな男性は向田瀬流彦という名前であるみたいだ。
向田さんが持っている異能であるネットスーパーが此処でも使えるかどうかの確認も兼ねて、料金代わりの気を消費して酒とつまみを出してみたようだが、美味そうな酒とつまみに釣られて近付いてきたジーンさんと姫島さんにも向田さんは快く酒とつまみを提供し、3人で酒盛りをしていたそうだが、見知らぬ場所で酒盛りが出来る程に肝が座っているあの3人は、随分と強そうではある。
この広間に居る全員が何かしらの技能を持っているのは間違いなさそうだが、むやみやたらに暴れるような存在が、この場には居なくて良かったのかもしれない。
とりあえず全員の名前と顔を覚えた私達4人は、大きな広間があるこの家を探索してみることにしたが、かなり大きな家であるのは間違いなく、誰かが住んでいるという生活感はないが、生活に必要なものは大体揃っており、無いのは食料品位だったな。
「立派な冷蔵庫はあるのに中身が空っぽって悲しくなるぜ」
「金が無いと買い物出来ないけど、どうすんの。この世界の金とか持ってないよ」
冷蔵庫の中身を確認していたントムさんとイズミさんが、そんなことを言っていたりもしたので「食事だけならどうにかできるかもしれません」と言った私は、この世界でも使用可能な魔法を使ってみることにした。
「【出会いと別れ】【様々な大冒険】【これまで僕達が歩んできた道のりを示そう】」
唱えていく魔法の詠唱。
「【時を超えて、世界を超えて】【今ここに僕達は居る】」
それはドラえもんの劇場版に登場したもの限定で、創造が可能な魔法ではあるが、1日には3回だけしか使えない魔法。
「【出会ってきた全てを】【今、創造の力に変えて解き放つ】」
そして創造したものは一定時間で消滅してしまい、大きなものを創造すると相応の精神力を消費するが、テーブルかけ1枚だけなら、そこまで精神力は消費しない。
「【シネマティッククリエイト】」
詠唱を終わらせて唱えた魔法により、創造したのは
魔界大冒険に登場した「北風のテーブルかけ」だ。
ひみつ道具の「グルメテーブルかけ」の魔法道具版と言える「北風のテーブルかけ」は、食べたいものを何でもテーブルかけの上に出せる道具ではあるので、これが問題なく創造できるなら食事はどうにかなるだろう。
「どうぞ、使ってみてください」
「ドラえもんの道具出せるとか、益々のび太くんみたいだけど、おかげで飢え死には避けられそうだね。ありがとモビタくん」
「北風のテーブルかけ」を使えることに素直に喜んでいたイズミさん。
「ドラえもんの道具使えるとかワクワクするな。感謝するぜ、モビタくんと出会えた。これまでの全てに」
「北風のテーブルかけ」で出したサンドイッチを食べながら、何処ぞのハンター協会会長みたいに感謝してきたントムさんは、愉快な人かもしれない。
「とても助かりました。ありがとうございますモビタくん。ワタシの技能は戦闘向きで、狩りでもしなければ食料品を用意するのは難しいんですよ」
焼き魚定食を器用に箸で食べていた常無さんも感謝をしてきたが、確かにONE PIECEの覇気が使えても、食料品を、何もない無から用意するのは不可能だろう。
とりあえずネットスーパーが使える向田さんに、空の冷蔵庫については相談してみることにした私達は、広間に戻ってみたが、3人の酒盛りはまだ続いていたみたいだ。
全員が再び揃ったところで、それぞれの頭上に落ちてきた手紙。
手紙の中身を確認してみると「転生者である君達には、これからこの名探偵コナンの世界で、しばらく暮らしてもらいます。電気代と水道代に税金は此方が支払っておきますが、食料などは自分達でどうにかしてください。ちなみにこの家の現在地は米花町です」とだけ書かれていた。
「電気代と水道代と税金支払わなくてもいいのはありがたいが、米花町かよ」
現在地が米花町と知り、物凄く嫌そうな顔をしていたイズミさん。
「事故物件しかない町、米花町って言われてたような気がするな。住民の沸点低そうで嫌だわ。個人的にポイント低いね」
同じく嫌そうな顔をしていたントムさんも、米花町は嫌だったらしい。
「米花町だと爆弾が畑で採れるんじゃないかとも言われていましたね。そんな町はワタシも普通に嫌ですよ」
嫌そうな顔とまではいかないが苦笑いしていた常無さんも、米花町は普通に嫌みたいだ。
「名探偵コナンだと爆発が名物だよな。実際に遭遇したいとは思わんが」
酒瓶片手にそんなことを言っていたジーンさんは、酒盛りしていた割りには酔っておらず、冷静そうに見えた。
「黒の組織のナンバー2が寿司職人やってること位しか知らねぇな」
なんてことを言いながらジャーキーを噛みちぎっていた姫島さんは、結構名探偵コナンに詳しいのかもしれない。
「名探偵コナンは、京極さんが強いのと、ヤイバの鬼丸と沖田が居ること位しか知らないかな」
出る漫画を間違えているような強者だけ知っている向田さんは、強い相手はちゃんとチェックしているようだ。
「それで、どうしましょうかこれから」
私からの問いかけに頭を悩ませていた全員だったが、常無さんが見聞色の覇気で未来視が可能だと知ると、まずは私が【シネマティッククリエイト】で「取り寄せバッグ」を創造し、この世界の落とし物の小銭を「取り寄せバッグ」で取り寄せて、その数百円の小銭を元手に競馬で、常無さんに頑張ってもらうことになった。
その結果、数百円が数百万円に化けることになり、しばらく食費には困らなくなった私達は、常無さんを拝んでおく。
まあ、なんとか協力すれば、この世界でも生きていけそうだ。
ちなみに競馬場で毛利探偵を常無先生は目撃したようです