フラグマン製機体に!!!勝ちたい!!!!!! 作:雨傘なななな
■【神機工】ノーイ・デクステル
「会話相手欲しいなぁ」
唐突だが、会話相手が欲しいのでAI開発に着手しようかなと思う。
超級職の獲得により、装備制限の緩和やスキル付与精度、レベル上げなど、できることの幅が大幅に広がった。
そのため現在も進行形で【片目鬼の金床】をフル稼働させ思いつくままに機体を作成しているのだが、僕が会話したい時に会話をし、会話したくない時に黙っていてくれる相手が欲しくなってきたというわけだ。
「私がいますわよ!」
「そういうことじゃなくて」
「クラウディアに不満……? がおー」
うーんいっつもいるなコイツラ。
ちなみに【変装王】トミル・L・ロングランとの約束の日までは後2日だ。
【片目鬼の金床】作成からそのまま10時間ほど睡眠を取り、起きると同時に真横にいた約2名を無視して機体作成に取り組み始めた。
「今は何を作っていますの?」
「………………………武器」
「心底答える気がないパターンですわね……」
ソレ、正解です。
ちなみに今作っているのはスラスターユニットである。単体で動作し、本体のマジンギアの戦闘を補助する意図がある。
さっきまでは【獄炎獣 ヘルウォルフ】っていう【獄炎炉 ヘルフレイム】の支援機を作成してた。
炎熱耐性を付与した上で、ある程度行動パターンを設定しておくことでラジコン的に使用する子機としての活用を想定している。
スラスターユニットはともかく、こっちは現段階では微妙だね。やっぱ自己判断AIを積む必要がある。問題はそんなもんはないってことだけど。
「うーむ」
思考そのままにクラウディアと怪獣にコーヒーとケーキを出し、助手兼会話相手を想定して作成するAIの作成手段を検討していく。
映画なんかだとさらっと作るもんだからあんまし作り方の参考にならないんだよね。
現実のAI作成も時間をかけて行動を打ち込んでいく感じになるし……その線で行くとして……うーむ。
「用途としては、ある程度の受け答え、自動操縦系機体の制御/操作、制作補助……」
くっ、そっち系のエンブリオが発現してくれても良かったんだけどな……。
「機械屋、何の話?」
がおー、と怪獣が吠えながら聞いてくる。
「んー、補助AI搭載難度が高いって話。僕が戦え、って言ったらある程度最適解を辿って敵と戦ってくれるぐらいまで育てるのにどんだけの時間がかかるか分からないんだよ。僕って機械とか精密作業の専門家であって発明の専門家でもコンピューターの専門家でもないからさ」
「長い。4単語で言ってくれないと暴れちゃう」
「AI、作る、難しい。」
「OK、私じゃどうにもなんないね」
知ってた。
速攻諦めてケーキを食い始めた怪獣から目を離し、一応説明は理解しているだろう大天才クラウディアに目を向ける。
「…………そんな期待を込めた目をされても、私が作ってもノーイ君と同じくらいの日数がかかりますの!」
マジかよ。戦闘系の超級職かつ皇族としての責務を果たしながら僕と同じくらいの日数でできるのか。大天才どころじゃないな。
「一応、そういったエンブリオを持つマスターを当たってみましょうか?」
「……………………!」
な、なやむ。めちゃくちゃ魅力的な提案ではある。本当に、びっくりするぐらい。
デザインを定期的にタイク・ロビンソンに委託していることから分かる通り、僕は別に機械作成の全部を自分でやりたいって性質ではない、ないが……!
迷いながらもガレージ奥に置いてあったAIモドキを取り出し、机の上に置いて起動する。
『ハロー、私はノーイ様の補助AI、トゥルーです』
「ハロー。トゥルー、電気を消せ」
『かしこまりました。電気を消します』
ガレージのいくつかの電荷製品はこのトゥルーに紐付けてある。
各操作は設定されたキーワードを検知すると、設定された文書読み上げの後その設定された行動を行うと言った形式だ。
「トゥルー、電気を付けろ」
『かしこまりました。電気を付けます』
「ここまでだ。今の僕にできていることは」
クラウディアに現状の性能を見せつつ、それを踏まえた改善案を模索する。
全行動にキーワードを設定するわけには……いかない。
こういうことがあればこういうことをする、そういう設定をひたすら追加し、類似例への対処能力を追加し、さらには自分でも未知の事象への対応模索が行えるようにしていく必要があるのだ。
「トゥルー、お腹が空きました」
クラウディアも僕の意図を察してか、トゥルーの性能確認をするらしい。
『──────────』
ま、お腹が空きましたは設定したキーワードにないんだけども。
「……トゥルー、お腹が空きました」
『──────────キーワードの入力まで待機しています』
「なるほど。電気を付けてください」
『かしこまりました。電気を付けます』
電気は既に点灯しているため、付けろと言っているのにガレージの電気が消える。
うむ。当然だが操作とキーワードをひも付けているだけであるため、トゥルーは現在電気が付いているか消えているかを判別できていない。
「…………結論から言いますわね?」
「うん」
「ノーイ君にAIを作成する才能はありませんわね。諦めてそういった事が得意なマスターを探しましょう」
「おっけー」
クラウディアが言うのであればきっとそうなのだろう。
このガレージは見ての通り三人〜五人の人間が機械作成などを行っていてもかなり余裕がある程度には広めに作ってある。
タイク・ロビンソンともう一人AI担当のマスター三人のメンバーでマジンギア作成チームにするとしよう。
「手始めにタイクさん勧誘するかぁ」
「私は国のリストを洗ってみますわね。人格に希望はありまして?」
「良い奴」
「分かりましたわー!」
「ぐっばい機械屋。」
「じゃあな怪獣」
クラウディアが大袈裟に手を振って皇王宮に帰り、怪獣が中指?を立てて帰っていった。
僕も彼女らへのお返しに片手を大袈裟に振って、片手の中指を立てておいた。
◆
さて。
クラウディアが来る少し前に、今日からリアルでの丸一日ログインできないらしいエルブレイン君が置いていった【極炎炉 ヘルフレイム】の改装作業に入ろうと思う。
クラウディアをもてなしつつも解体作業を行なっていたため、既にブラッシュアップの準備は完了している。
念願の超級職、【神機工】に就職し、作業補助を行なっていた【精密作業補助機体:Mark III】が【片目鬼の金床】にグレードアップしたことにより、今の僕にできることの範囲は格段に広くなっている。
「【神の武器に銘を与える】」
エンブリオの起動と奥義《マシン・ヴィジョン》の起動により、機械を作るためだけに在る義眼が光を纏った。
超級職を獲得したことでできるようになった数多くのことの一つ。ヘルフレイムの強化について、方向性は既に定めている。
「追加だ。《権能付与》起動」
【片目鬼の金床】の第二スキルにより、装備スキルを付与するためのウィンドウが開かれる。
「……………このスキル、毎回現実味がないな」
今回はただのブラッシュアップ。
機体の各部位についてより精密に、より頑丈に、より高出力に稼働できるようするためだけの改良行為だ。
ヘルフレイムの今後の追加機能について、エルブレイン君とムスペル曰くより高い出力を求めているようだ。
……これは、もちろん今ある最大の出力であることを理解しているが、という内容の過剰に丁寧な前置きの後ようやく引き出したものだが。
実際に、ヘルフレイム内に積まれている火力発魔式動力炉には当時僕に出来た最大限の精度が実装されている。だが、それを持ってしても今の僕からすれば無駄が多いと言えてしまう。
それらの前提を踏まえ、【片目鬼の金床】に意識を戻す。
どう操作するのか思考するだけで、《マシン・ヴィジョン》はその行動が齎す結果を観測させてくれる。
だが、
「今ならば……」
出力は増大させられる。
また、機体操作の反映精度を高めることも可能だろう。
第一スキルの倍率も上がる。より高い出力とより高い硬度を実現することで、エルブレイン君の戦闘能力は大きく改善されるだろう。
だが、
「今の僕ならば……」
言葉に釣られるように、機体作成に慣れ親しんだ脳と指はもう一つの可能性へと進んでいく。
「………第二スキルの設定も可能だ。」
そう、言い切れる。
今手元にある素材を少し使うが、当初の【極炎炉 ヘルフレイム】の作成に伴い妥協を重ねてしまった部分だ。火力発魔式動力炉による出力増強だけでも足ると、そう自分に言い聞かせてしまった部分だ。
だが、
「そう、だが、その設定でこの機体は間違いなく装備制限500を超過してしまう」
より良い素材を使っても、より高い技術を使っても、超えられない壁がその1レベルには存在するのだ。
「エルブレイン君であれば、いつかはと思うが……」
僕の期待を、彼の【極炎炉 ヘルフレイム】に搭載させてしまうのは身勝手なのではないかと冷静な部分が囁いている。
一旦今回のブラッシュアップの肝となる部分への思考を打ち切り、《権能付与》による操作を続けていく。
AI研究の副産物として、通常のマジンギアの装備スキルである《モーター・スラッシュ》のような単調な攻撃スキルの付与についても知識を得ることができている。
つまり、数秒の行動を固定する代わりに火力や起動力を上昇させるのだ。
鉈持ちの【悪魔王】とエルブレイン君の戦闘を観測できたことで、若干ではあるが求めている道も以前よりはっきりした。
「突進スキルの設定……これは上級の範囲でも可能だ。」
一時的に進行方向を固定し、ブレーキを取っ払う代わりに背部ブースターの出力を増加させる。
少しだけ細部を変更することで、ムスペルの【炎熱強化】を乗せられるようにすれば二段階の急加速を行えることになる。
「この方針ならリソースとの食い合せが悪くならない、と」
ここ以外にもいくつかの改善案はある。
《マシン・ヴィジョン》の燃費との兼ね合いから一旦作成作業を止め、MPの回復を待ちながら設計図を練り直し、それらの改善案を探っていく。
「…………………あっ」
全力で頭を回していたわけではない。
だが、ここまでの積み重ねと、視界に映ったMP回復ポーションは、脳がショートしてしまうのではないかというほどの衝撃をノーイ・デクステルに与えた。
「見つけた」
──────設計図を先程までとは比べ物にもならない速度で確認する最中、彼は自身が追いかけ続けている名前と功績しか知らないフラグマンという老人の背中を幻視した。
◆
完成した【極炎炉 ヘルフレイム】と試作の補助機体である【極炎獣 ヘルウォルフ】をエルブレイン君に納品する日が来た。
同時に、【変装王】ポール・L・ロングランとの契約による活動開始日の当日でもある。
「というわけで、新機能も上手く取り付けました。納品しますね」
一通り説明を終えて、エルブレイン君とムスペル君に整備と改良を終えたヘルフレイムの入った〈ガレージ〉を手渡した。
「まじか……」
「やるね、ノーイ!」
「でしょう……!」
驚愕したまま脳がフリーズしてしまったエルブレイン君にふふん、とドヤ顔をしつつも、今回の改良で得た知識と経験について思考を巡らせる。
元々構想にあった機体についてもほとんど完成と言っても良いレベルとなっている。
リルはすごい勢いで減っていくが、ポールの件が片付いた後にでも数件の依頼を受ければ取り戻せるだろう。
……特にこの皇国には超級職持ちの生産職に機体製作依頼をしたい人なんて無数にいるだろうし。
「要件は終わりましたか?」
「……うん」
朝早くに訪ねてきて、この納品を待ち侘びていたポールがコチラを見つめている。
「じゃ、店に来たお客さんの対応だけ頼んでも?」
「まっかせろーい」
コレはそこそこの金を掛けてシレッと雇ったタイク・ロビンソンことタイクさん。
なにやら〈叡智の三角〉に勧誘されていたようだが(僕もされてるけれど)こちらの方が趣味に合うとかなんとかだそうだ。
「事前に話した通り、俺もノーイについて行くぜ?」
「んん。エルブレイン君が来てくれるのは正直とてもたすかるよ。本当にありがとう」
「…………上級の範囲では戦闘特化の特務兵の相手は難しいかもしれません。戦闘に勝利することが目的ではないことを忘れないでいただければ」
「承知した」「したー! 必殺スキルでぶっとばしちゃうよ!」
してないねムスペル君。
「それと……今ここにはいませんが、一名私の昔馴染みの男に協力を頼んでいます。彼にもお二人の存在は伝えています。上手く連携していただければ」
「了解。名前と特徴は?」
「【巡回王】ローディン・オルスロット。黒ずくめの軍服に魔銃、特典武具の靴装備をしています」
「…………!」
僕が言えた話じゃあないけれど、【変装王】に【執筆王】、【獣王】、【衝神】、【機械王】、【悪魔王】、さらに追加で【巡回王】だなんて、まさに超級職のバーゲンセールってやつだ。
これだけの超級職がいてなお、ドライフ皇国の国力や技術力は他の国にかなり劣っているというのだから驚きである。
あの大天才クラウディアの一族なんて皆優秀そうだし、もっと上手く国家運営をやれそうな気がするが。
「今回のクエストの目的は【悪魔王】が追っているUBMとの接触阻止、【悪魔王】の討伐、そしてクラウディア様より賜った黒幕に繋がる証拠の確保です」
「黒幕の候補は?」
「……………………第二皇太子、ギルベルトの陣営にて前回の事件に関与した【執筆王】ロスタイム・シンドロームの存在が確認されています。最も怪しいのは彼の陣営でしょうね」
ああ。会食の時に第二皇太子の護衛としていたんだったか。
まさか表に出してくるとは、と協力者であるクラウディアも言っていた。怪獣の方は登場人物が増えすぎて誰が誰だか分からないとかなんとかって目を白黒させていた。
「あるいは……現皇王、ザナファルド・ヴォルフガング・ドライフにも、怪しい点がいくつかあります」
「まじかよ。国家丸ごと敵に回す可能性もあるって話?」
「…………恐らくそうはならないでしょう」
?????
現皇王が黒幕としてラインハルト皇太子の命を狙っている可能性があり、それを阻止する立場である以上敵対はほぼ必須だと思うのだが……。
「ザナファルド皇王は今回の件とは関係なく、国家の利益の一切を無視して戦力増強に努めております。」
「戦火を予想している、あるいは求めていると?」
「肯定します。そして怪しい点として……国力の大半を掲げて戦力増強に努めるにしては、成果が少なすぎる」
成果が少ない、と言うには超級職を所有する皇国特務兵の数が多すぎるように思えるのだが……それとは違う意味なのだろうか?
「超級職は、能力のある人間を発掘しただけでしょう。問題は技術力。
私も貴方というマスターの生産者を見て始めて思い至ったコトですが……
今のドライフ皇国には過去に比べて優秀な技術者があまりにも少な過ぎる。
他国の技術躍進を見れば、今の皇国がどれだけ停滞しているかなどいくらでも分かります」
「……Mr.フランクリンとかカリュートは?」
あのモンスター製作と機械製作に特化した準超級の男は、現時点での僕と同程度の能力を……いや、超級職獲得のお陰で機械方面については大きく差をつけられそうだけれども。
「彼らはマスターですから。それに、彼らの作るモンスターはともかく、機械は他国のソレに少し劣ります。Mr.フランクリンについては本分でないのもありますが……」
「………………………なるほど」
ポールの言い分は理解した。
恐らく、マスターは所属国家の技術を元に自分の製作活動を行うため、その元となるドライフ皇国の技術が他国に比べて劣っていると言うのだろう。
つまり……彼らは他国に所属していれば今よりさらに高い性能の機体を作成できていた、と。
「さて改めてまして。ザナファルド皇王は戦力を隠蔽所持している可能性が高く、暗い部分が何かしら今回の件に可能性もある。と言った程度です」
「んん。納得した。本命は第二皇太子ギルベルト、最悪ザナファルド皇王に繋がるレベルの規模の話になり得る、と」
「肯定します」
「で、目的の【悪魔王】はどこに?」
「ローディンが【巡回王】のスキルにより発見しています。」
便利だな【巡回王】。【巡査官】系統の超級職だろうけれど……ま、名前からして追跡や調査に特化したJOBだろうしそのくらいは当然か。
ポールが皇国の地図を開き、現在僕らがいる皇都ヴァンデルヘイムの場所を示し、その後元は湿地だった枯れた土地、〈バーラ平原〉を指した。
「現在地からはかなり離れますが、この〈バーラ平原〉に近い都市」
元は湿地だったと言う〈バーラ平原〉はリソースを供給するセーブポイントから遠いこともあり、時間が経てば経つほど枯れた土地となっているらしい。
ここに住む人間などよっぽどの理由があるか、他の場所では生活できないような犯罪者だとか。
ポールが差し示したのはその〈パーラ平原〉からさらに皇都から遠い方角に位置する小さな都市。
「─────飢饉とモンスター災害により金貨が意味を失った都市〈ゼーヴェン〉です。」
つまるところその座標は、最も人類の滅亡に近い場所を指し示していた。