シンフォギア装者たちの奇妙な冒険 作:黄金の石
俺が二課と協力関係になってから二年が経とうとしている。
俺の介入で変わったことはあった。
一年前の事にはなるが、立花響は父親と仲良くしているところを見た。
風鳴翼も防人という部分は残っているが、剣ではなく天羽奏の片翼として心は傷付いてはいない。
そして奏が生きているから二課の戦力も上がっている。
……天羽奏といえば、生き残ったこの世界ではリディアンを卒業後は大学に通っている。
前にノイズをぶっ殺した後のことを聞いたときに少し考えているようだったが、そういう道を選んだらしい。
同時に、悪いこともあった。
ほぼ全盛期レベルに回復したとはいえ、ツヴァイウィングの地位は原作よりも下がってしまった。
石を投げられるのは当然としても、そのファンだという人間にも被害が及び、ある家族は家を燃やされたという報道もあった。
ツヴァイウィングも移動用の車を爆発させられたり、学校にいる時に襲うようなバカがいたり、執拗に枕を持ちかけられたりと散々あったみたいだが、本当にまあここまで回復するのに時間はかかった。
風鳴八紘の手も借りはした。
シンフォギアを使う者たちがマスゴミに四六時中付きまとわれて動きを制限されるわけにはいかない。
そういう意味では彼らの行動は少し遅かったといえるかもしれない。
そして、シュトロハイムらしき人物のことだが……これは未だに何も分かっていない。
俺にとって最も警戒するべき不安要素だが、国が回収したものがどこに消えたのか。
……フィーネが関わっていると思いたいが、それならそれでシュトロハイムは転生者ではないかシンフォギアを知らない人物となってしまう。
知っていて今のあいつに加担しようとは思わないだろ普通は。
ただ、万が一にも原作の事件全てを救済するつもりならそれは俺の敵だ。
シェム・ハを必ず立花響を成長させたうえで復活させて倒さなければならない。
ここで阻止してしまえば、今が良くても数年後の未来で同じことが起きた時に、あいつを攻略できるとは限らない。
「よ、今日は早かったな」
「寄るな。お前たちのスキャンダルほど洒落にならんものはない」
「相変わらずだなあ……二課に裏切り者がいたとしても、向こうだって馬鹿じゃないのは分かってるだろ?」
俺の前で姉面をする天羽奏に少しだけむずかゆく感じる。
歳は同じだというのに、どうもこの人は俺を世話の焼ける弟のように扱う。
……シンフォギアほど対ノイズに関しては強く出れないが、それなりに長く共闘しているというのに。
「……スケアリーモンスターズを使っている間は臭いに敏感になる。だが、それでも今の今まで敵を見つけることが出来ていない」
「やっぱり、そう簡単にはボロを出さないか……というか臭いの話は初めて知ったんだけど」
「教えていなかったからな。俺は信頼する人間以外に教えるつもりはない」
「へいへい、いつもの話…………ん?それってあたしのことは信頼したってことか?」
「時間だ。お前の片翼が待っているんだろ」
「……へへ、分かってるよ!」
……やっぱり悪い女だよ、この槍。
そんな気持ちを抱えて司令部に入ろうとした時だった。
……ノイズ出現のアラートが鳴ったのは。
「ノイズか!?」
急いで集まると弦十郎さんが信じられないものを見たように奏を見た。
……来てしまったか。
「奏!どうしてここにいるの!?」
「はぁ?元々これからの話をしようって言ってたじゃないか」
「……確認だけど、ガングニールはちゃんとあるわよね?」
「無くすかよ!……こんな時に皆何を言ってんだ!?」
無理もない。
死んでしまった本来の世界ですら全員が困惑していた。
俺もモニターを見る。
……初見なら困惑していただろうな。
「……ガングニールの反応、だと?」
「──なんだって?」
ようやく天羽奏もその異変に気付く。
《二つ目のガングニール》という異常事態に。
「どういう事だ……!?ガングニールはここにある!!」
「櫻井女史!」
「……分からないわ。いくら内部に裏切り者がいたとしても、この技術だけはそう簡単に盗めないようにしてあるもの」
フィーネの顔になり、驚く姿を見逃さない。
やはり、彼女が立花響を利用しようと考えたのはこの時からか。
いくら彼女でもそこまでは計算に入れられるはずがない。
「チッ!なんにしてもノイズがいるなら動く!そしてそのガングニールが俺たちの敵なら倒す!やることは単純だ!!」
俺に続くように二人も走り出し、出る準備を急ぐ。
ここまでは原作通りだが、天羽奏が死んでいない以上、風鳴翼となにより天羽奏がどう動くか分からない。
その場で殺し合いになるようなら、止めるしかない。
全員が無言のままにバイクを走らせる。
教えられたルートを最速で、最短で、真っ直ぐに。
「……ノイズを発見!スケアリーモンスターズ!」
臭いは……二つ。立花響と一般人。
近くに生命体がいないためスケアリーモンスターだけでの攻撃は難しいか。
「おいそこの女!大丈夫か!」
「え?……あの時の恐竜!!?」
「貴様は……とにかくそこの子供は俺に触れないようにしておけよ!」
この二年で気付いたことの一つ。
スケアリーモンスターズの恐竜化はシンフォギア装者には効かない。
……というよりも、聖遺物の力で守られていると考えるべきか。
聖人の遺体と同じ役割を聖遺物が担っている。
二課の人間なら全員知っていることだ。
「天羽奏!風鳴翼!」
歌が聞こえる。
これは……君ト云ウ音奏デ尽キルマデか。
「え……えぇ!?ツヴァイウィング!?」
「貴様、その力のことを何も知らないのか?」
「そ、そんなこと言われても……」
「……ノイズを倒すまでその力を維持し続けろ。そうすればそいつを守ることが出来る」
未だに立花響を抱きかかえながら前線を離脱した。
ノイズがいないことを確認し、スケアリーモンスターズも解除する。
「あの!中にツヴァイウィングの二人が!」
「……二年前と違い天羽奏も万全の状態だ。すぐに終わる」
「二年前……やっぱり、あの時助けてくれた……あれ?前にどこかで……」
「CDショップで会ったことがある。こんな事になるとも思っていなかったから初対面として振舞ったがな」
なにやら騒ぐ立花響を無視し、二課に連絡を入れる。
「こちらディオ。ガングニールを使ったのは二年前に天羽奏が助けた少女だ」
『こちらでも確認が取れた。問題はいつどこでガングニールを手にしたかだが……』
「どちらにしてもこいつは連行するだろ?車は」
『もうすぐ到着するはずだ』
「了解した」
さあて、どう出るのか。
博打のような気持ちで二人の帰りを待った。