白銀の英雄譚   作:アウストラロピテクス

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第3話

Lv.7級の穢れた精霊を撃破した合同遠征隊は、その後も大きな被害を出すことなく遠征を完遂した。数日後――。オラリオへ帰還した遠征隊を迎えたのは、市民たちの盛大な歓声だった。

 

「ロキ・ファミリア万歳!」

「剣姫だ!」

「白銀の守護者ベル・クラネルだぞ!」

 

大通りは人で埋め尽くされていた。ベルは照れ臭そうに頭を掻く。その隣ではアミッドがいつものように澄ました顔をしていたが、しっかりとベルの袖を掴んでいた。

 

「アミッド?」

「離れると人波に流されますので」

「いや、僕たちなら大丈夫だと思うけど……」

「流されますので」

 

有無を言わせない。ベルは苦笑するしかなかった。

 

その日の夜。遠征成功を祝う盛大な打ち上げが開催された。会場はロキ・ファミリア御用達の大酒場。フィンやガレス、ティオナ、ティオネ、ベート、リヴェリアまで参加している。

 

「かんぱーい!」

 

ティオナの音頭で宴会が始まった。料理が並び、酒樽が次々と空いていく。ベルは未成年なので果実水を飲んでいた。シルヴァも特製の巨大肉を幸せそうに頬張っている。

 

「キュウ~♪」

「あはは、良かったね」

 

ベルが笑っていると、隣から声がした。

 

「ベル」

 

アミッドだった。頬がほんのり赤い。

 

「あれ? アミッド、お酒飲んだの?」

「少しだけです」

 

少しだけ。そう言ったが、テーブルにはすでに空になった酒杯が三つほど並んでいる。ベルの嫌な予感がした。

 

一時間後。

 

「ベルぅ……」

「アミッド?」

「ベルぅぅ……」

 

完全に出来上がっていた。普段の凛々しい聖女の姿はどこにもない。ベルの腕に抱きつきながら甘える銀髪の美女。周囲の視線が痛い。

 

「お、おいベル」

ベートが引きつった顔で言う。

「その女神官、壊れてねぇか?」

「ぼ、僕に言われても!」

「ベルは私のです……」

「アミッド!?」

 

周囲が静まり返る。フィンは吹き出しそうになりながら顔を逸らした。ティオナは腹を抱えて笑っている。リヴェリアは額を押さえていた。

 

「ベルは私の騎士です……」

「アミッド、みんな見てるから!」

「見せつけています」

「見せつけちゃダメだから!」

 

しかし酔ったアミッドは止まらない。

 

「アイズさんもティオナさんも近づきすぎです……」

「まだ言ってるの!?」

 

アイズは不思議そうに首を傾げた。ティオナは爆笑している。

 

やがてアミッドはベルの肩に頭を預けた。

 

「ベル……」

「うん?」

「すきです……」

 

ベルは果実水を吹きそうになった。

 

「すきです……」

 

そして、そのまま。

 

すぅ……。

 

完全に寝てしまった。

 

酒場が静まり返る。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

ベルは真っ赤になった。

 

フィンが肩を叩く。

 

「頑張れ」

「何をですか!?」

「人生を」

「意味が分かりません!」

 

その頃にはアミッドは完全に夢の中だった。結局、ベルは彼女を連れて帰ることになった。

 

「えっと……失礼します」

 

そっと身体を持ち上げる。お姫様抱っこ。アミッドの華奢な身体は驚くほど軽かった。

 

「おおー!」

「本当に抱えた!」

「ベル、男前!」

 

ティオナたちが囃し立てる。ベルは恥ずかしさで死にそうだった。

 

酒場を出る。夜のオラリオ。月明かりが石畳を照らしていた。アミッドはベルの胸に顔を埋めたまま眠っている。時折、

 

「ベル……」

 

小さく名前を呼ぶ。そのたびにベルの心臓が跳ねた。

 

「本当にもう……」

 

苦笑しながら歩く。だが悪い気はしなかった。自分を心配し続けてくれた人。いつも支えてくれる人。誰よりも大切な人。自然と抱く腕に力が入る。

 

すると眠っているはずのアミッドが小さく呟いた。

 

「……だいすきです」

 

ベルの顔が一瞬で真っ赤になる。

 

「ね、寝言だよね……!?」

 

答える人はいない。

 

後ろを歩くシルヴァだけが、

 

「キュ~♪」

 

と面白そうに鳴いていた。

 

その夜。ディアンケヒト・ファミリアの聖女は幸せそうな笑顔で眠り続け、ベルは部屋へ送り届けるまで一度も顔の熱が下がらなかったのだった。

 

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