転生フロムゲーマー、神ゲーに挑まんとす 作:人外が着ているスーツ
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PN:ヴァルトール
LV:13
JOB:戦士(直剣使い)
素性:流浪の狩人
6,000マーニ
体力:30 魔力:0
スタミナ:30 筋力:40
器用:25 敏捷:15
技量:50 耐久力:1(5)
幸運:10
スキル
・スラッシュLV2
・スラストLV3
・クイックステップLV5
・バックスタブ
・インパクト
・エッジクライム
・インパクトLV2
・インファイトLV4
・スクーピアス
・パリィプロテクト
・ジャストパリィ
・ウォークライ
装備
右:戦士の直剣 左:なし
頭:穴付き鉄バケツ(VIT+4) 胴:無し
腰:無し 足:無し
アクセサリー:首【致命の首巻き】
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うーん圧倒的な筋力と技量、いわゆる上質ビルドになってしまった。やっぱり上質型のパイルハンマーとルドウイークの聖剣を使っていた時のクセかねこれ
体力と耐久はまだまだ渋れる…筈、魔力は今は完全に捨てる、とりあえず全部気合で避けたらええ。そのためのスタミナ。そして殴られる前に殴るための筋肉。
『さて、そろそろ森を抜ける頃だな。』
木々の隙間から、パッと開けた景色が飛び込んできた。
この【跳梁跋扈の森】は、【ファスティア】から【セカンディル】へと続く一本道しか用意されておらず、エリア同士を繋ぐ橋のほかは、すべてが切り立った絶壁になっているようだ。
木漏れ日に慣れていた目が直射日光に馴染むにつれ、ハッキリと開けた視界が捉えたのは、向こう岸へと架かる吊り橋を、完全に塞ぐ形で鎮座する巨大な大蛇の姿だった。
大蛇は鋭い視線をこちらに向け、チロチロと舌を覗かせながらも、微動だにしない。しかし、その瞳には明らかな殺意が宿っている。近づいて橋を渡ろうとすれば、間違いなく戦闘になるだろう。
最初の関門、いわゆるボスが大蛇とは。なんだかんだ蛇やら犬やらザリガニやら生物にフロム民はトラウマが多いのに最初のボスってだけでちょっと身構えてしまう。
まあ最初の関門が
蛇、しかも大蛇となると攻撃方法は……怨霊爆撃、溶岩撒き、略奪の炎――ではなく、普通に噛みつき、捕食、体当たり、あるいは拘束あたりか。
ここで踏みとどまっていても時間を食うだけだ。ササッと倒して街に向かおう。
【推奨人数:3人 / 推奨レベル:10】 ボス【貪食の大蛇】
なんか【貪食】って冠してるんだけど、ドラゴン版いんのかな。確認するためにもコイツを倒さないとな
いや、まあ……そういうセコい勝ち筋を瞬時に模索してしまった自分がいるという悲しさは、一応ある。あるのだ、人間だもの。
だが考えてもみてほしい。森を抜けたこの広場は、戦の舞台にしてはそこまで広くはない。しかもエリアの半分は容赦なく切り立った崖に接している。そんな狭い場所に巨躯の大蛇が居座っているのだ。向こうとしても、巨体をくねらせて大きく動きはするが、地形のせいで派手な大技は出せないはず。
だから……もし不幸にも。そう、本当に不幸な、偶然によって、あの大蛇が下に落ちてしまった場合、一体どうなるのだろうか?
もうね、敵の落下死とか
つまりだ。落ちても仕様だし、落としてしまったとしても、それは立派な戦術であって恥ではないってこと。いいね?
『ばっちこーい! どうした貪食サンよぉ! 俺を貪り喰うんじゃなかったのか!?』
うん、あくまで偶然だ。貪食で強欲な大蛇君が、アドレナリンを出しすぎて勢い余って落ちるだけ。うん、事故事故。てか流石にこうでもしないと崖に近づいてくれない。
「シャアアアア゙アアーーー!!」
度重なる頭部への執拗な攻撃で脳を揺らされ、思考することを放棄したのか。あるいは、角を付きバケツの、首巻き半裸マンに煽り散らされる屈辱に耐えかねたのか。どちらにせよ、限界を迎えた大蛇から、ヤケクソめいた大口を開けた全力の突進が放たれる。
『はーい! 黄泉の道直通、奈落行き渓谷はこちらでーす!【クイックステップ】!』
まるで闘牛。いや、この場合は闘蛇か。まあどっちでもいい。おいおい、その凄まじい質量と慣性なら、そのまま自重で落ちるだろ? いやー、本当に可哀想な偶然だなあ!
ムーングラムも、ヴァルトールも、夜の騎兵も、下に消えていったんだ。なあに、何も恥ずかしがることはないぞ。
「シャアアア……ッ!?」
……あ、コイツ、蛇特有の驚異的な体幹でギリギリ踏みとどまりやがった。
そこまでして生きたいか。しゃあない、親切な俺がちょっとだけ背中を押してあげよう。
『ああ、バンジージャンプがしたかったのか貴公。紐はないが……手伝ってやることは出来るぞ。【バックスタブ】からの――【インパクト】!!』
――CRITICAL!!
「シャ!? シャアアアアアアーーーッ!?」
バックスタブの一度限り補正と、インパクトによる凄まじい衝撃波。そのすべてが乗った最悪のキックが、大蛇の背中(というか尻尾の付け根あたり)を完璧に捉える。
死に物狂いで崖際にへばりついていた大蛇も、流石にこの一撃で完全に体勢を崩した。
なす術もなく、ズズズと音を立てて奈落の底へと滑り落ちていく。
『ハッハッハ! 悪く思うなよお前! 安心しろ、お前が落としたドロップ素材はなァ、余すことなく有効活用してやるからよぉ!! ウヒャヒャヒャヒャッ!』
底の見えない暗黒へと消えていく哀れなボスを見下ろしながら、広場には、およそ純粋なプレイヤーとは言えない狂った笑い声が木霊していた。
『さあてともう、あの蛇は終わりだし! これで一件らぶへ――』
――ベチャリ。
『ぶ、ふぇっ!?』
変な声が出た。間髪入れず、頭上からバケツをひっくり返したような量の、大量のヘドロじみたナニカが降り注ぐ。それが剥き出しの肩を濡らし、足を伝って容赦なく全身へとべっとりと絡みついていく。
生温かく、粘り気のある最悪の不快感が肌を粟立たせ、思わず脳がアラートを鳴らす。
ピコン
『な、なんじゃあこりゃあああ……って、おい嘘だろ!?』
アラームと共に体力が減って、急いで確認する。
自分の体力バーに、禍々しい紫色でポツンと点灯した毒のデバフアイコン。
蛇。毒。そして頭上から降ってきたヘドロみたいなナニカ。
この三つの要素が導き出す答えは一つしかない。
「シャアアアアア!!」
遙か崖下から、勝利を確信していたこちらの鼓膜を破らんばかりの、怨嗟に満ちた咆哮が木霊する。
『おわあああああああああああ仕様のバカ野郎ーーー!!壁作れよお!』
どうやら最後っ屁としての攻撃で、実の方をダイレクトに食らったようだ。しかもご丁寧に毒属性付きである。そうか、落ちる寸前に上空に向けてブチ撒けていやがったのか
あの執念深い”フロムスラング”野郎……!
スリップダメージでじわじわと削れていくHPゲージ。じっとりと全身にまとわりつく気色悪い…ヘドロ。
数秒前の全能感はどこへやら、一瞬で最悪の一人泥仕合に引きずり戻された半裸は、崖下に向かって身を乗り出し、怒髪天を衝く勢いでキレ散らかした。
『テメエ! 落ちてんじゃねえよ! スッキリ死ねよ! 往生際悪くあがいてないで、さっさとこっちに戻ってこい! この【致命の短剣】で頭のてっぺんからケツの穴まで風穴開けてやるからよお! 逃げんなコラァアアア!!』
「シャアア」
『なああにがシャアアだあ!てか早く落ちろ!そっちが死なないと街に行くための橋が封鎖されたままなんだよ!』
ようやく落ちきったのかレベルアップの音と共にドロップ品が出現する。ソレを走りながら回収してとりあえず石門に走らないと!
薬草を食うのにはバケツの下から通すしか無い!走れ!もう見てくれは関係ない!篝火!違う!リスポーン更新出来る場所!
石門を抜け、ようやく次の街に滑り込んだ瞬間、キャラクターの移動速度が一気にガクンと落ちた。
『がっ、あぁ……ッ!?』
忘れていた。素性【流浪の狩人】の固有デバフである【街中での行動にマイナス補正】を!
よりによってこのタイミングで完全に息切れを起こしてゾンビのように弱々しくよろめきながら前進する羽目になる。
「おいおい大丈夫か! 宿屋は先の白い建物だ! 部屋のチェックインは受付で部屋を決めて鍵を貰う必要があるから、死ぬ気で頑張って走れ!」
『貴公……! 助かる……ッ!』
すれ違った見ず知らずのプレイヤーの一人が、親切に叫んで教えてくれる。
っていうか、居るじゃん人! 人いっぱい居るじゃんこの街!!
誉れも見てくれも完全にドブに捨てたけれど、ここで毒死して全ロスするわけにはいかない。とりあえず前へ、前へ走れ!
……っていうか、この酷い服装と、ヘドロで毒に侵されながら必死に走っている姿だけで、周囲のプレイヤーたちが「あ、いつものやつね」みたいに大体察してくれるの何なんだ。もしかしてこの世界、こういう半裸スタイルの変態って割とポピュラーだったりする……?
いや、考えるな! やばい、死ぬ! バケツの隙間に早く薬草を!