「我が夫よ。起きなさい」
微睡みの中で凛とした声が僕の耳に響く。
その声に導かれて目を開けると懐かしい面々が僕の顔を覗き込んでいた。
「目が覚めましたね。我が夫よ」
いつの間にか僕の枕を退かして膝枕している【モルガン・ル・フェ】
「おはようございます。マスター」
そんなモルガンに付き従う【妖精騎士ガウェイン】こと【バーゲスト】
「早く起きないと遅れるぜ。マスター」
僕のベットに腰掛けながらニヤニヤと笑みを浮かべる【妖精騎士トリスタン】こと【バーヴァン・シー】
「おはよう。マスター」
いつの間にかベットの中に潜り込んでいた【妖精騎士ランスロット】こと【メリュジーヌ】
「ちょ!?メリュジーヌ!なんてうらやま――じゃなくてマスターが起きれないでしょ!」
そんなメリュジーヌを見て何かを誤魔化す様に注意する【アルトリア・キャスター】
かつてブリテン異聞帯で戦った者たちが僕の部屋で好き勝手にやっていた。
僕がさりげなく戻るよう促すが誰一人として戻らず、仕方なく彼女達を連れて一階に向かう。
「「天誅―――!!」」
一階に降りるとでモルガン達に囲まれた僕を見た峰田君と上鳴君が襲い掛かってきたがバーゲストとメリュジーヌが返り討ち(死なない程度)にした。
「おはようございます、先輩。モルガンさん、アルトリア・キャスターさん、妖精騎士の皆さん」
と、ここでマシュが参戦。僕とモルガン達に挨拶を交わす。けどその笑顔に威圧感を感じるのは何故だろうか?
そしてモルガン達も笑顔で返事をするが目が笑っていなかった。
「皆さん、先輩の部屋に居たんですか?迷惑ですよ?」
「我が夫の傍に居るのが妻である私の役目です」
どうしよう。ヤバイことが起こりそう。心なしか火花が散っている気がするよ。
「緑谷が物凄い美人に囲まれている……」
「あの人たちもマシュと同じ英霊なのかな?」
「……ハーレムだな」
「何か一触即発の気配を感じるが大丈夫なのか?」
「……怖い」
「恋愛系の漫画やアニメで良くある展開だ」
男子陣営が巻き込まれたくないのか少し離れた所に避難していた。
気持ちは分かるけど協力して欲しかったなぁ。
「これは、女の闘いの予感!」
「修羅場だ!修羅場だ!」
「この戦い、見過ごせない!」
「お、おおおお夫!?夫ととおととお夫おとおと!?」
「ちょ、お茶子ちゃん!?バグっているわ!?」
「しっかりして!?」
女子の方は僕達の様子を見て何故かワクワクしていた。
その後、何とかこの場を収めた僕達はバーゲストが作ってくれた朝食を食べた後、校舎へ向かう。
後、関係ない事だけど八百万さんとバーゲストの声が同じだったことに皆が驚いていた。
―――
それぞれ席につき相澤先生の言葉を待つ。
夏休み中での残りの日程を簡単に説明した後、本題である仮免取得についてだ。
「ヒーロー免許ってのは人命に直接係わる責任重大な資格だ。当然取得の為の試験はとても厳しい、仮免とはいえどその合格率は例年5割を切る」
例年5割か、恐らく毎年決まった人数を合格させるのではなく、基準を満たした者を合格させる方式なのだろう。
それにヴィラン連合の件もあるから、今年は更に厳しくなるだろうな。
「そこで今日から君らには一人最低でも一つ二つ、必殺技を作ってもらう!!」
相澤先生がそう言うと扉からミッドナイト、エクトプラズム、セメントスの3人の先生が入ってきた。
「学校っぽくてそれでいて、ヒーローっぽいのキタァア!!」
必殺技という言葉に皆はテンションが上がって沸き立ち叫び、そして相澤先生の睨みで一瞬で鎮静化される。
「必殺!コレスナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」
「その身に染みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」
「技は己を象徴する!今日日、必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」
「詳しい話は実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え体育館γへ集合だ」
相澤先生の言われた通り、コスチュームに着替えて名称がヤバイ体育館γへ集合するとそこで先生方の説明や質問などを終えると早速訓練を開始――
「ああ、緑谷とキリエライトはもう既に必殺技があるから別の訓練をしてもらう」
――しようとしたところで相澤先生からストップがかかりました。
まあ、僕とマシュは宝具があるからこの訓練は意味がないからね。
「緑谷、お前は神野の闘いで英霊を召喚できるようになったんだってな?その英霊を何人まで出せる?」
「そうですね。平常時ならマシュを入れて六人まで、戦闘時は三人が限界です」
「そうか。ならお前は林間合宿と同じ訓練内容でその英霊とキリエライトで戦闘訓練をしてもらおうか」
「あ、はい。分かりました」
やばい、難易度が更に上がっちゃった。英霊三人との模擬戦はガチで死ぬ。
ただでさえ他の皆も僕の訓練内容を聞いて青ざめていたし。
「えっと……頑張りましょう!先輩!」
声が上ずっているよマシュ。とりあえず相手はあの人たちが良いかな?
「来てくれ。スカサハ!スカサハ=スカディ!」
僕はその名を呼ぶと召喚陣から二人の女性が現れた。
「私を呼んだか。マスター」
まずはケルト神話・アルスターサイクルにおける伝説の戦士。
あの【アイルランドの光の御子】の異名を持つ英雄、クー・フーリンの師匠。
「ふむ、まさか私も呼ぶとはな」
もう一人は北欧異聞帯を統治する氷雪の女王にして、北欧神話における山の女神。
北欧神話における山の女神”スカディ”が影の国の女王”スカサハ”の性質を取り込んだ、習合神とでも言うべき存在。英霊と神霊の霊基が混ざりあったハイ・サーヴァント。
そんな彼女達を召喚した僕は相澤先生に伝えられた訓練の説明をすると二人は了承する。
「良いだろう。みっちり扱いてやるぞ、マスター」
「マスターの頼みであれば従おう」
こうして、僕VSマシュ、スカサハ、スカサハ=スカディによる模擬戦が始まった。
僕は五分ごとに英霊を変えながら三人に挑んでいるが全く歯が立たない。
マシュによる鉄壁の防御、スカサハの鋭い槍の一撃、スカサハ=スカディの原初のルーンによる補助、それらが完璧なタイミングで行使してくるので、中々隙が見つからない。
A組の皆は僕が追い詰められている様子を見て言葉を失い、その苛烈な攻防に顔を青ざめさせていた。
途中、相澤先生の思い付きで僕の休憩中にマシュ、スカサハ、スカサハ=スカディと一対一で模擬戦することを提案し、かっちゃんや轟君といった興味ある人が参加。
案の定軽く叩きのめされたが、かっちゃんの勝利への渇望と強い目にスカサハはとても気に入ってしまい。以降は暇なときは彼を鍛えるようになった。
そんな出来事もありながらヒーロー仮免許取得試験までの日々は過ぎていくのであった。