圧縮訓練が始まってしばらく。英霊達の協力により皆は次々と自分の戦闘スタイルや必殺技を開拓していく中、僕は皆と一緒にコスチュームの改良について話していた。
「う~ん、どういう風にしようかなぁ」
「これなら、俺の個性を生かせるかな?」
「なあ、こういうのはどうかな?」
皆思い思いにどんなサポートアイテムが良いのか話し合う。
生まれ持った個性によって得手不得手どころか出来る出来ないが分かれるのだから、いかにそれを補うかが鍵となるから真剣だ。
「そういえばデク君。今日は英霊の人と模擬戦してないけど、どうしたの?」
ここで麗日さんが聞いてきた。
「今、サポート科の所にダ・ヴィンチちゃん達を派遣しててね。制限もあってこれ以上呼べないんだ」
ダ・ヴィンチちゃん達は現代の技術に物凄く興味を持っており、度々外に出てはサポート科の開発工房に入り浸っている。
「ちっ!今日は紫女との勝負はお預けか……」
「お前、まだあの人に勝とうとしてんのかよ……」
「相変わらず執念が凄い」
僕の話を聞いたかっちゃんはスカサハとの勝負が出来ない事を残念がる。今のところ全戦全敗だけど英霊相手にかなり良い所まで行くから凄いんだよね。
「オイラは助かっているけどな。もうあのヤンデレ達に追い掛け回されなくて済むし」
そういえば峰田君は清姫、静謐のハサン、源頼光に不浄の存在として滅されかけてたなぁ。あの時は止めるのに苦労した。
「話は戻して一度サポート科の開発工房に行くのはどうかな?メリッサさんやデイヴィッド博士、それとダ・ヴィンチちゃん達も居るから力になってくれると思うよ」
彼等の力なら皆の個性を最大限に生かしたサポートアイテムを作れるはずだ。
「それもそうだな。良し皆で行ってみるか!」
「開発工房ってどんな所なんだろう?」
「良いサポートアイテムがあると良いなぁ」
そんな感じ僕達は皆でコスチュームの改良をしようとサポート科の開発工房に向かう。
そこでやたらと重厚な扉を開けるとそこには何やらあわただしくしていた。
「どうですかダ・ヴィンチさん!私が作り上げたこのベイビーを!」
「ほう、これはこれは。中々面白い発想をしてるね発目君。なら、ここをこうするとより良くなると思うよ」
「なるほど!今まで考え付きませんでした!早速改良してきます!」
発目さんが開発したアイテムをダ・ヴィンチちゃんに見せて改良点を聞いたり。
「二コラさん。このサポートアイテムの事なんですけど」
「うむ、見せるが良い。……ふむ、この配線をこうすれば問題ない」
「分かりました!」
別の場所ではメリッサが二コラ・テスラに設計図を見せていたり。
「私のこの礼装はこんな風になっていてな……」
「なるほど、そのコスチュームにはそんな機能が……」
「聞けば聞くほど興味深いねぇ。新しいサポートアイテムの参考になりそうだ」
パワーローダー先生とデイヴィッド博士がトーマス・エジソンが身に着けている魔術礼装の事を聞いていたりしていた。
こころなしか皆、とても生き生きとしてサポートアイテムの設計、開発、改良を物凄い勢いで行なっていた。
「あ、イズク!それに皆も!」
「こんにちわ、メリッサさん」
次々とアイテムが作られていく様子を見て皆が呆けているとサポートアイテムの設計をしていたメリッサさんが僕達に気付くと一度作業を中断して駆け寄ってきた。
「今日はどうしたの?」
「うん、コスチュームの改良についてね」
僕達はコスチューム改良について相談するとメリッサたちは即了承して各々の要望を聞いてサポートアイテムの設計、開発を行っていく。途中で発明さんが作り出したサポートアイテムの実験台にされたりもしたけど、皆は新たなサポートアイテムを手にしてより一層訓練に励んだ。
僕のコスチュームもダ・ヴィンチちゃん、ホームズ、メディアなどを筆頭に僕が前世で使っていた魔術礼装をこれでもかと盛り込んでくれた。
まあ、そのせいでかなりの申請書を書いたり、国の審査が長引いたりと色々とあったけどこれである程度のサポートが出来るはずだ。
そんな圧縮訓練の日々は続き、改良したコスチュームの使用感を確かめたり、潰し合いを避けるために試験会場の違うB組の皆と情報交換を兼ねた交流などをして過ごしたり、彼らに英霊達を戦わせたりなどしながら過ごした。
―――
その夜、今日の訓練を終えたA組女子達は寮のリビングで集まっていた。
「うえ~、毎日毎日大変だよ~」
「圧縮訓練は伊達じゃないね~」
圧縮訓練の大変さに項垂れる芦戸と葉隠に何人かは同意を示す。
「ヤオモモは訓練の成果どう?確か緑谷が出した英霊に色々教えてもらっていたよね?」
「ええ、私の個性と似ているというエミヤさんから色々と学ばせてもらいましたわ」
「うちもアマデウスさんやサリエリさんに色々学ぶところがあったしね」
八百万と耳郎は緑谷から自身の個性と似ている英霊を紹介してもらった結果、新たな技を作ることに成功。
今はその技を完璧に仕上げることに集中していた。
「梅雨ちゃんは?」
「私は、アサシンクラスの人から隠密とかを教えてもらったわ」
「そうなんだ!私はハサンさん達から気配の消し方を教わったから、今まで以上に見つかりにくくなったよ!」
葉隠と蛙水は自身の能力を伸ばすためにアサシンクラスの英霊から師事しているらしい。
女子達がお互いの成果を報告する中、麗日は物思いに更けていた。
「お茶子さん?」
「わひゃっ!?」
ここで皆の話を聞いていたマシュがぼうっとしている麗日に手を触れながら声をかけると麗日はびっくりしてしまう。
「お疲れの様ですね、大丈夫ですか?」
「いやいやいや!?疲れてなんか居られへん!まだまだこれから!……のはずなんだけど……何だろうね……最近胸がざわつくのが多くてね……」
「それってあれじゃない?恋ってやつだよ!」
「……へ?」
麗日は芦戸の言った言葉を一瞬理解できず「故意?鯉?濃い?」と繰り返し、やがて「恋」と認識すると顔を赤くする。
「こ、こここ、恋!?知らん知らん!?」
「お相手は緑谷か飯田?一緒に居ることが多いよね?」
「ちゃうわ!ちゃうわ!」
芦戸の追及に恥ずかしさで耐えられなくなった麗日は個性を発動させてそのまま宙に浮いた。
その様子に葉隠と耳郎は興味津々と言った様子で呼びかけるも麗日は頑なに否定する。
「無理に詮索するのは良くないわ」
「ええ。それに明日も早いですし、今日はここまでにしましょう」
「じゃあさ、これで最後!マシュ、聞いても良い?」
「わ、私ですか?」
振られると思っていなかったのか、マシュが目を瞬かせる。
芦戸はニヤニヤしながら畳み掛けた。
「緑谷の事なんだけどさぁ。ぶっちゃけ異性としてどうなの?」
「え、えっと……その……」
マシュはたっぷり間を置いて、頬を赤くしながらも、逃げずに答えた。
「……はい。好きです」
その仕草と声の温度に、同性であるはずの女子たちまで思わず息を呑み、芦戸と葉隠が黄色い歓声を上げ、勢いがさらに増す。
「告白は!?告白しないの?付き合わないの!?」
「透ちゃん。二人の関係よ。あまり部外者が口出しするものじゃないわ」
さすがに行き過ぎたと判断したのか、蛙水が止めに入った。
「ごめんなさい……でも、これだけ!」
葉隠は一拍だけ反省の顔を作る。けれど恋バナに飢えた女子高生はすぐに顔を上げた。
「馴れ初めは!?」
「馴れ初め……ですか……」
芦戸の問にマシュは自分の手を見つめ始めた。
「手を……握ってもらったんです」
「手を?」
「はい。もう全てを諦めかけていた時に、先輩が私の手をぎゅっと握ってくださって……」
マシュは静かに言葉を続ける。
「先輩ご自身も危険な状況なのに、震える手で。それでも『大丈夫だよ』って……」
その時の感触を確かめるみたいに、マシュは指先をそっと握り直した。
その表情は、遠い記憶を抱きしめるみたいに儚く、そして真っ直ぐだった。
「「「…………」」」
「あ、あの……?」
語り終えて我に返ったマシュが、困惑したように周囲を見る。
女性陣が気まずそうに視線を逸らし、ぼそっと言った。
「……なんかごめんなさい。今日はここでお開きにしましょう」
「そうだね」
「うん……」
「え?え……?」
クラスメイトたちが次々と同意していく中、マシュだけが状況を飲み込めず、目をぱちぱちさせる。
そんなマシュに八百万が苦笑しながら、やさしく声をかけた。
「そうですわね。マシュさんも部屋に戻りましょう?明日も早いですし」
「は、はい……」
マシュは最後まで困惑したまま、みんなと一緒に部屋に戻った。
その時、麗日だけは少し羨ましそうにマシュを見ていた。