願いが叶わなかった私は、お茶屋さんを営んでいます。   作:如月雪見

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前回、朱鷺のメグミと子猿のアキラを新たな家族として迎えました。
朽木家の義父子の関係は改善されたらしいです。
生まれた赤ちゃんはとても可愛い女の子でした。






里央と要の認識
ー:ヒナタ/陽(八咫烏)
=:ミヅキ/瑞(鳳凰)
†:メグミ/慧(朱鷺)
Θ:アキラ/覚(小猿)
↑子猿だと思ってたら、既に成猿だった
△:ヒカル/煌(鷲)←NEW



瀕死の雛を拾い、弟子が出来ました。

 

 

天気が良いからと、天体観測がてら月光浴をしに要兄と出掛けた。

その帰りに、弱々しい雛の鳴き声が聞こえた。

この【世界】に来てからの雛との遭遇率の高さにちょっと驚いている。

 

「…で、何の雛なんだ?」

「…多分、鷲…だと思う…白くてふわふわで…きっと、兄弟間での生存競争に負けたんだと思うよ」

 

鷲は一度に2個産卵して、ほんの2~3日とは言え先に生まれた子が成長が早い分有利で、後に生まれた子は高い確率で巣から追い出されてそのまま死ぬ事が多い。

凄くシビアな子育てをする鳥だった筈だ。

 

前世でたくさん読んだ図鑑とメグミの知識を頼りに、何とか手当てをして、食事を与えた。

雛の生命力のおかげで何とか一命を取り留める事が出来た。

 

「何とかなって良かったな」

「うん」

△たすけてくれてありがとう

「どう致しまして。君の名前は?」

△ないよ?あのこにはついてたけど、われにはめもくれなかったし

「そっか…」

…後に生まれた時点で、そういう扱いなんだ

「う~ん…じゃあ、煌/ヒカルはどうかな?」

…これからの鳥生が煌めいたものであるようにって願いを込めて

△ヒカル…うん!われはいまからヒカルとなのるぞ!

「気に入ってくれたみたいで何よりだよ。みんなも宜しくね」

ーうん!

=宜しくね、ヒカル!

†良い名だ。その名に恥じぬ者となれ

Θオイラは鳥じゃないけど、仲良くしてくれな!

△うん!

 

また家族が増えた。

 

「…ならば、止まり木の数を増やした方が良いな」

「あ…そうだね。ヒカルは絶対大きくなるし」

 

 

 

翌朝、凄く凄く懐かしい夢を見たのと、お店がお休みな事、そして時灘さんが甥っ子を連れて泊まりに来たのも相まって、1日掛かりである食べ物を作り上げた。

ちなみに、歌匡姉は仕事帰りに来てくれた。

 

「出来た~!!」

「…小麦粉と米麹でこんな料理が出来るなんて、思いもしなかったわ」

「…私も初めて見る料理だな」

「やっぱり、里央姉は凄いね!」

「良い匂いだな。とても美味しそうだ」

「早速、試食しましょうか。ほ~ら、みんなも食べよ~!」

ーうわぁ~

=美味しそう!

†ふむ…

Θデカい饅頭だ~!

△…まんじゅう?はじめてみた

「これはあんパンだよ。こっちの黒ごまが乗ってる方がこしあんね」

 

もぐもぐ…

 

「ほぅ…饅頭と違って、少しぱさついているが…悪くはないな」

「お茶とも良く合ってて…きっと、お客様も気に入るわ」

「こしあん美味し~!」

「…粒あんの方がより食べ応えがあるな、うん」

「…うん、この味!ちょっと硬いパン生地にしっとりあんこが口の中でいい感じに混ざって…我ながら良い出来!」

ーうまぁ~

=本当、甘くて美味し~!

†流石は里央、美味だ

Θうめぇ…もぅひと切れ食べたい!

△ぱん?ぁんこ?はじめてたべた。おいしぃ

 

みんなに大好評で何よりだ。

これなら、新商品としてお店でお出ししても大丈夫だろう。

 

 

 

あんパンを新商品として出して早々、予想外の事が起きた。

 

「僕を弟子にしてくれ!」

「え、えぇ…?」

「ちょっと、何を言って…」

「姉さんは黙ってて!頼む!僕にこのあんぱんの作り方を教えてくれ!」

 

歌匡姉の教え子だという女性が、弟さんを連れてお店に来た。

〈お茶屋・おはし〉の評判は以前から知っていたが、両親から流魂街に行く事を反対された為、歌匡姉に頼み込んで一筆書いて貰い、綱彌代夫人からの紹介状をいただいたのだからと説得して漸く許可が降りたのだとか。

 

…貴族の生まれなら、瀞霊廷から出た事なんて無いんだろうな

…って事は、ご両親にとってそれだけお2人が大切だって事だよね

 

念願の〈お茶屋・おはし〉のお菓子を食べられると、意気揚々と来たまでは良かった。

要兄の淹れた焙じ茶と焼き立てのあんパンを食べた弟さんが目を輝かせたかと思いきや、他のお客様の対応をしていた私に土下座して弟子にしてくれと懇願して来た。

 

…いや、無理だよ

 

どう見ても私(実年齢は疾うの昔に3桁、外見は18歳前後)よりも年下で、しかも貴族の子どもを弟子に出来る訳が無い。

 

「…折角の申し出ですが、ご両親の承諾も無しに弟子には出来ません」

「な、ならば説得する!それで許可が出たら弟子にしてくれ!この通りだ!」

 

余りにも必死なその姿に私達は根負けして、ご両親の許可を正式に得られれば試用期間を設ける約束をした。

 

…まぁ、どう考えても不可能でしょ

…だって、嫡男って事は跡取りでしょ?

…許可なんて貰える訳無いよ

 

 

 

3日後、彼はご両親の承諾書を手にやって来た。

 

…嘘でしょ?何で?

 

お目付役らしきご老人からご両親の手紙を預かって来たと、渡して来た。

その内容は…

〖徹底的にしごいてくれて構わない。どうにかして弟子入りを諦めさせて欲しい〗

的な事が書いてあった。

 

…多分、言い出したら聞かない子なんだろうな

…だから手っ取り早くお茶屋の現実を見せて、家に帰らせろ。と

 

「…何卒、お願いします。坊ちゃまの為にも」

 

確約は出来ないが、弟子入りを諦めて欲しいのは同じ気持ちである事は伝えた。

 

そして、彼の弟子入りする為の試用期間が始まった。

 

 

 

彼の華奢な身体では3日と保たず、直ぐに音を上げると思っていたのだが、私達の予想を遙かに上回って、試用期間中しっかりと雑用をこなした。

 

…見た目に反して、凄い根性の子だわ

 

「あ、あの坊ちゃまが…」

「言っただろう爺、僕は絶対にこの〈お茶屋・おはし〉に弟子入りすると!」

 

定期連絡の内容に驚愕したご両親は、彼の本気を知って、とうとう弟子入りを認めた。

 

「改めて宜しくお願いします!」

 

…此方ももう腹をくくるしか無いみたい

 

こうして彼、痣城双也君の弟子入りを受け入れた。

 

 

 

 

 

 

あれから数年が経った。

今では雑用だけでなく、材料の下準備に畑仕事も任せられるようになった。

どうやら彼は筋肉が付きにくい体質らしく、細いままだが力仕事もしっかりこなせるようになった。

接客はまだまだだが。

 

「双也!」

「あ、姉さん…と父上、母上」

 

ある日、無事に死神になったお姉さんがご両親を連れてやって来た。

何だかんだ息子が心配なご家族は、こうやって不定期的に来店しては様子を窺って行く。

そして彼が正式な弟子となってからも、日々努力している事を、様子を窺いに来る度に報せていた。

 

「双也はどうですか?」

「お預かりした日から変わらず、どんな事にもめげずに挑戦し、努力していますよ」

「えぇ、此方の煎茶は彼が淹れたものですし」

「「あら」」

「ほぅ…」

 

息子の成長を喜び、家族水入らずの時間を過ごしていただいた。

 

 

 

そろそろご家族が帰る時間になったところでとんでもない事が起きた。

 

突然、瀞霊廷のお役人達とやらが入って来て、痣城本家にとある犯罪の主犯容疑があるとかで、ご両親は勿論、姉弟も捕らえられた。

 

「ちょっ、なっ…」

「ま、待って下さい!」

「我々はお上からの命令に従って動いています。貴方方に我々の役目を止める権利はありません」

 

ピシャリと言い切られ、何も出来ずに彼等を見送る事しか出来なかった。

 

「…双也君」

「瀞霊廷の事は私達には何も解らないからな…彼等の無事を祈るしか無い」

「…そう…だよね」

 

状況が状況だからと、この日は早くお店を閉めた。

 

「はぁ~…ん?…あ、あれ?メグミは?」

「…む?そう言えば…」

「…この状況で何処行ったのよもぅ…」

 

ーちょっとね

=気になる事があるらしいわよ

Θ3日くらい出て来るってさ

△メグミ兄なら大丈夫

 

「う~ん…」

 

…何かこのやり取り、前にもしたような気がする

 

 

 

3日後、スッキリした表情でメグミは帰って来た。

この3日間何処で何をしていたのか聞いたが、

†胸のモヤモヤを晴らして来ただけだ

としか言わないので、問いただすのは諦めた。

 

 

 

彼等が捕らわれて1ヶ月が過ぎた頃、瀞霊廷の司法、四十六室からお役人が来た。

厳正なる調査の結果、痣城本家の罪は貴族の地位剥奪と罰金で雪がれる事になった。

その罰金に双也君が自身の給金をと願い出たらしい。

戸惑いつつも、明細書の写しと共に必要な金額を支払った。

 

 

 

更にその半月後、彼等は無事に戻って来た。

あのお役人が言っていた通り、痣城家はもう貴族ではなく平民となった為、瀞霊廷から追放されたのだとか。

 

「貴族では無くなったけど全然構わないよ。だって、僕は里央さんと要さんの弟子なんだから!」

 

柵が無くなったと笑う双也君に苦笑するご両親、死神を続けられる事になったお姉さんと顔を見合わせて私達も笑った。

 

…双也君もご家族も戻って来れて良かったぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

双也視点。

 

いつも通り部屋で本を読んでいたら、帰省した姉さんに半ば無理矢理流魂街に連れて来られた。

何でも、事実上綱彌代家が後ろ盾になっている〈お茶屋・おはし〉に一緒に行きたいんだとか。

渋々付いて来た店は想像以上の人気ぶりで、客がたくさんいた。

僕は此処で一生忘れられない衝撃を受けた。

…何だ、このあんぱん(こしあん)は!

…是非とも我が家に雇いたい!

しかし、今までどんな勧誘も全て断り、それこそ此処が誰も住めない土地になったとしても、何処にも行く気は無いらしい。

…ならば、残された道はひとつ

弟子にして欲しいと頼み込んだ。

両親の許可を得れば考えてくれるらしい。

帰宅して早々、両親に直談判した。

今までこれと言って何かに一生懸命になった事が無い僕のお願いに、両親は頷いてくれた。

試用期間中の態度次第で正式に弟子入り出来るらしい。

…何としても認めて貰う!

そう意気込んだものの、初日から散々だった。

先ず早起きが出来なくて、畑仕事を終えた2人に起こされた。

開店前の掃除では、水汲みの為にと井戸と店の行き来を2回しただけで息切れして暫くの間動けなくなり、雑巾を真面に絞れない、仕舞いには箒での掃き掃除中に出て来た虫に驚いて転けて足を捻挫した。

…ま、負けるものか

開店中は来客が食べた食器の後片付けを任された。

やはりした事の無い作業で四苦八苦した挙げ句、串を何度も手に刺すわ、皿や湯呑みを割るわで酷い有様だった。

…それでも、絶対にやり遂げてみせる

そんな想いを抱きながらも、物凄い疲労で泥のように眠った。

初日で自分の無力さを痛感し、それでも必死に食らいつき続けた。

その努力の甲斐あって、試用期間を終えて正式に弟子入りを認められた。

…やっと弟子になれた

此処からが本番だと、気を引き締め直して修行に取り組んだ。

あれから数年、厨房で後片付けと下準備の作業だけでなく、お菓子作りとお茶の基本を教えられた。

流石に常連のお客様には僕と要さん、何方が淹れたお茶なのか直ぐに解ってしまうが、反応はだいぶ良くなって来ている。

そんな日々の中、あのあんぱんの作り方を学ぶ日を夢見て働いていたある日、思わぬ事件が起きた。

我が痣城本家が処刑されても可笑しくない程の罪を重ねていたとして、捕らわれたのだ。

僕には何の事だか全く解らなかった。

姉さんも困惑しているし、両親は最初の罪状には心当たりがあるのか黙って項垂れていたが、途中から告げられた罪状に驚愕した表情を浮かべて反論したが聞き入れられなかった。

…どういう事だ?

訳が解らないまま、牢屋に戻された。

…父上と母上は罪を犯していたのか?

†一部は、な

「…っ!?」

†声を上げるな

いつの間にか、メグミが格子から顔を出していた。

†双也、貴公の祖父が他の上位貴族に唆され、最初に語られた罪を犯した

「…っ」

知らなかった、否、知りたくなかった事実に打ちのめされ、顔を歪めた。

†だが、その後貴公の両親が反論した罪は、全て告訴した分家が犯したものだ

僕は分家の裏切りを知り、目を見開いた。

†これは分家による本家乗っ取りと、他の上位貴族達による財産目当ての茶番だ

怒りで顔を歪める僕に、メグミは今後の事を予言した。

†案ずるな、司法を汚す愚か者共は必ず報いを受ける事となる。必ずな

訝しむ僕に心配する事は何も無いと告げてメグミは飛び去って行った。

3日後、メグミの言う審問(茶番劇)が始まった。

しかし、読み上げられた書類の中身が可笑しな事になっていた。

奴等にとって都合の良い冤罪を確かなものにする筈の証拠が全て、真犯人達が誰かをしっかりと証明するものばかりになっていた。

混乱状態に陥った司法の場は当然ながら中断、再調査が命じられた。

どうやら、用意していた証拠は根回ししなくとも僕達を即処刑に出来るだけの代物だったからか、何も聞かされていない者達が騒いだ為、僕達に罪を押し付けられないと悟った、冤罪を作ろうとした者達の間でトカゲの尻尾切りを誰にするかで揉めたらしい。

結果、僕達本家は多額の罰金と貴族の位を剥奪される事で釈放される事になった。

しかし、全財産を支払っても、罰金に届かないと知り、駄目元で僕の〈お茶屋・おはし〉で働いた給金を差し出したら、どうにか足りたらしく無事に釈放された。

…良かった、これで帰れる

その足で〈お茶屋・おはし〉に向かった。

僕達の身を案じていた里央さんと要さんに、もう貴族ではなくなった事を告げて、両親は流魂街の事を教えて欲しいと頭を下げた。

今日はもう疲れているだろうから、泊まるように要さんが提案してくれた。

…姉さんは死神を続けられるから瀞霊廷の寮に戻れるけど、父上と母上の家は探さないとならないよね

…色々と忙しくなるけど、それらが片付いたらまた頑張らないと

…休んでしまった分を取り戻さなきゃ!

メグミの宣言通りになった事には驚いたが、結果良ければ全て良し、姉さんと両親を僕の部屋に連れて行ってから、着替えていつもの裏方作業に入った。

 

 

 






今度は小説〈Spirits Are Forever With You〉の痣城双也が下りて来たのでそれを書いてみました。


結果、変更点どころじゃなくなりました。

痣城本家の皆様は〈お茶屋・おはし〉と関わり、人生そのものが大きく変わりました。

あんパンの魅力に取り憑かれた双也君、まさかの弟子入りを果たしました。

ヒナタ達から里央と要の家族認定を受けた双也君、必然的にその家族も準家族(親戚)認定に。

そんな彼等が冤罪をかけられた。
ヒナタ達は当然大激怒。
特にその性質上、ブチ切れたメグミが真実を暴露、司法を汚した愚か者共を処刑した。
※里央達は知らないが、この件に関わった愚か者共全員(トカゲの尻尾切りにあった者達以外)がいずれも心疾患で急死した。

平民になった痣城本家の方々は、里央達は勿論、常連さん達の支援で新たな生活の一歩を踏み出しました。

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