【杖と剣の死に戻り】   作:ネシエル

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第三話 魔法属性と実習

 リガーデン魔法学院

魔法世界の中心。塔の真下に建てられた学院にして、

魔法教育の権威の頂点。

 

 全ての魔導士の頂点である。

至高の五杖(マギア・ヴェンテ)に近付く第一歩が

この学園で単位を取り、塔に登る資格を手に入れること。

 

 だが、塔に入る条件はそう簡単ではない。

その道に至ること自体は苦難の道であり、

優秀な魔導士を生み出すために、この学院は決して容赦しない。

 

 

「それでは諸君、

入学して早々だが、魔法属性に対する適正検査を開始する」

 

 入学して間もない生徒には、

入学式の前に授業が開始された。

 担当するのは、魔法科担当のエルワード先生

 

 かつて、至高の五杖(マギア・ヴェンテ)になる一歩手前に至った男だ。

だが、道半ばで挫折し教師になったが、

怖いといろいろ評判が悪い先生だ。

 

 

 魔法とは、全てである。

力とは「魔力」であり、英雄とは「魔導士(メイジ)」である

そして、魔法には個々人に各属性が振り分けられる。

 

 

「炎」「水」「風」「土」「雷」「闇」「光」

合計七属性。

 

 基本的に魔導士が持つ適正属性は一つであり、

二属性以上持つ魔導士は「ムルトス」と呼ばれ重宝されている。

 

 魔法属性を調べるメジャーな方法は、

水晶玉に手をかざすことだ。

 

 ちなみに、エルフィの魔法属性は水だ。

氷は水属性に値する。

 

 

「次はウィルの番よ」

 

「わかった」

 

 ウィルは、水晶玉に手をかざす。

 

 各魔法は各属性に対応する。

氷の魔法なら水属性。

雷の魔法なら雷属性

炎の魔法なら炎属性。

 

 ならば、死に戻りの属性はなに?

時間を巻き戻す特性は、どの七大属性にも適しないと思う。

あったとしても、消去法で闇属性が該当すると思うが・・・

 

 ウィルが考えている隙に水晶玉は、

ウィルの魔法属性を調べ上げた

 

「水・・・」

 

 魔法属性が分かり次第、

直ぐにウィルは次の子に水晶玉を譲り、

その場を後にする

 

『水属性なのか?

てっきり、炎、水、風、土、雷の五属性を内包している闇属性だと思ったのに、

水属性・・・僕の死に戻りは水属性の魔法なのか。

時間は水に属する。うん・・・』

 

 

 その日は、直ぐに寮に戻り、

学院生活の一日目は開始した。

 

 

 

 

 

▲▲▲▲

 洞窟内部。

暗闇の中でウィルを含む複数の生徒が洞窟。

ダンジョンに潜りこむ。

 

 学院生活は過酷だ。

まさか、入学して早々実技。

つまり、殺し合いを学ばされる。

 

 ダンジョンとは、

塔の真下に位置し、モンスターが湧き出る不思議な場所。

ここは魔導士たちにとっての鍛錬をする場であり、

同時に墓場でもある。

 

 最強と謳われる至高の五杖(マギア・ヴェンテ)でさえ、

油断すれば命を落とす場所だ。 

学院側もそれを理解し、優秀な教師を護衛代わりに出している。 

 

 今回は担当するのはワークナ先生。

優しくて、いい先生だと学院では評判だ。

しかし、怒らせると怖い。

 

 

「それでは、総合実習を実施する。

今回のダンジョンの階層は第一階層だが、

決して油断のしないように、わかったか」

 

 

「「「ハイ」」」

 

 

 各班に分かれて、

それぞれ磨き上げた魔法で、

モンスターを次々と倒す。

 

 ウィルも、()()()()()使()()()()()()使()()モンスターを倒すが、

周りの生徒と比べて練度が低いため、後れを取る。

 

 

「やはり、遅い」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そんな無駄な時間に駆られると死んでしまう。

 

 一秒、二秒の隙さえも死に直結する恐怖を知る

ウィルからすれば、実戦で詠唱するのは死とイコールに結ばれる。

 

氷の剣(アイス・ソード)

 

 

 ウィルは無詠唱で氷の剣を作り出し、

周りのモンスターを次々と倒す。

死角からやってくる攻撃も次々と対応する。

 

 サーチの魔法を使うまでもなく、

あらゆる攻撃に対応する。

 

 死に戻りによるループの副作用。

ウィルは誰よりも殺意や死の気配を感じられるからだ。

 

 戦闘して僅か10分。

次々とモンスターを蹂躙する姿に、

生徒をおろか、ワークナ先生も驚かせる。

 

 

『何だ、あの身体能力は?

魔法による身体強化?

いや、違う。

剣を生み出す以外の魔法をつかった痕跡はない。

それに、あの子。

モンスターに対する全ての攻撃は、最適解に特化している。

ギリギリ、それも常に死とギリギリのラインで戦っている。

怖くないのか』

 

 

▲▲▲

 

 実習が終わったので

ワークナ先生は、教室に生徒たちを集めて、解散する。

そして、個別に呼び出したウィルと一緒に教室に残り、

話をする。

 

 

「ウィル・セルフォルト」

 

「はい、ワークナ先生」

 

「さっきの戦闘は何なのだ。

というか、魔法を使わなかったよね」

 

「魔法を使いましたよ。これ」

 

 ウィルは魔法で生成した、

氷の剣を差し出す。

 

氷の剣(アイス・ソード)か。

初級魔法の白兵魔法。確かに魔法を使っているけど、

遠距離魔法を使って安全に倒すことはできないのか。」

 

「リアーナさんも白兵魔法を使っています。

どうして僕はダメでしょうか」

 

「ウィル。私は別に君を責めているわけではないよ。

ただ、気になっただけ。

それに、リアーナも白兵魔法と遠距離魔法を両立して戦っている。

近付くべき敵は近づいて倒し、毒のある敵には遠距離攻撃で倒す。

まさに、騎士の理想形だ。

だけど、君の戦いは・・・」

 

 

 

 ワークナ先生は一瞬の沈黙を保ち話す。

 

 

 

「君の戦い方は戦士のそれだ。

だけど、致命的なところがある。

魔法を使わないじゃない。ただ・・・」

 

「ただ?」

 

「命を大事にしていない。

まるで、死んでも問題ないように見える」

 

 ワークナ先生はウィルの肩を掴む。

 

「そんな戦い方をすると死ぬぞ」

 

 ウィルは一瞬沈黙する。

 

「・・・わかりました。

今度はもっと遠くから魔法を打って戦います。」

 

「最悪逃げればいい。

逃げるのも一つの勇気だ」

 

「・・・わかりました」

 

 

 ウィルは教室の外に出る。

そして、廊下を歩き、寮に戻る。

 

「あれが噂の平民か」

 

「どんなコネを使ったのだ」

 

「汚らわしい。

なぜエルフィ様はあんなのと付き合うのだ」

 

 

 聞こえている雑音を遮断し

前へ進む。

 

「あいつ、魔法を使わないで、

モンスターを切り殺しただって」

 

「崇高なる魔法を、

道具のように使っているだって。

頭ドワーフかよ。魔法を穢すな」

 

「いや、ドワーフの方がマシだ。

少なくとも魔法を使えないからな」

 

「言えてる」

 

 

「あははははは」

 

 

 そんな嘲笑の連中も、

声はウィルには届かなかった。

 

 ウィルの頭に残ったのは、

ワークナ先生のあの言葉。

 

『最悪逃げればいい。

逃げるのも一つの勇気だ』

 

 ウィルは立ち止まり、

塔を見る。

 

「何も知らないくせに。

遠く戦っても死ぬ、逃げても死ぬ。

どうせ死ぬなら、一矢報いて前へ進んだほうがいいじゃないですか

だって、僕は・・・」

 

 

 逃げることはできないから。

エルフィを見捨てて逃げることはできない。

 

 なぜなら、エルフィは唯一ウィルの価値を認めてくれた存在。

ウィル・セルフォルトを好きになってくれた存在。

 

 何もない僕には、エルフィを死なせるしかない。

エルフィを死なせないためには、

この薄っぺらい搾りかすのような命を燃やすしかない。

 

 

 もっと強くなりたい。

そう誓う少年は、目の前に映る塔の姿を見て、

塔に向かって、掴むように手を伸ばす

 

 全ては約束を果たすために、

・・・最悪の日まで残り一週間

 

 

 

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