転生者がガチの偉業を達成すること   作:アロンソ卿

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これも、またどこかで描きたかったものの1つ。これはあくまで魔女になりたい主人公の話だから。


ガチの火

 急だが、前世の世界を思い出してみる。当然ながらこのハイ・ファンタジーとも呼べる世界とはまるで異なる通念、常識が根底にあった訳だが、しかしそれでも魔法魔術というのはあった訳だ。

 

 前世における魔法魔術とは何か、幸田露伴の魔法修行者でも読めば、その一端には触れることができるだろう。冒頭には数字遊びの1つである魔方陣も取り上げられている。

 

 どれをどこまで魔法魔術などと扱うのは難しかろう。【まじ】という共通する読みには悪いことなどという意味がある。しかし悪いことなど、時代によって変わるものではないか。

 

 例えば読み書き。古く前世の中世ヨーロッパ、識字率が低調な農村でただ1人だけが読み書きをできたとする。その人が契約書など書いた日には、もうやりたい放題できることは想像に難くない。ならば読み書きも魔法魔術としてよいだろう。

 

 そういう場合、読み書きは神聖なもので神父だけが読み書きをできるとすれば、それは宗教ともつながりを持つ。聖職者が魔術を使えるのは、どこか自然なイメージだろう。

 

 読み書きが魔法であれば、ずいぶん多くの魔法魔術がこれを要素に持つことになる。そのようにして、魔法魔術は系統樹のようなものを描けるはずだ。

 

 先ほど取り上げた魔方陣も、読み方が魔法陣と同じだから、やはり魔法魔術としては同じ系統として良いだろう。

 

 そしてこの魔法魔術の考え方は世界にすらよらない可能性がある。だってこの世界だって、『神聖文字』の読み書きが完璧にできますという奴がいたら、神々にも人類にも良からぬことを考えているのかと、警戒されたりして当たり前である。

 

 私はまあ……、魔女を目指してますから。

 

 と、少し話はそれたが、読み書きすらも魔法魔術なのであれば、魔法魔術というのは、科学、文化、宗教及び社会等と密接に関わっている。

 

 もっと言えば、魔法魔術はそれらと発端を同じくするはずだ。

 

 だから、大元の、魔法魔術の系統樹を遡った頂点に存在する唯一は、科学、文化、宗教及び社会等の発生を見れば、そこにある。

 

 ──────

 

 私はまず地面に木の棒でバケツくらいの正方形を描いた。その四方に石を並べ、間に細長い直方体の木の棒を渡す。

 

 今度は同じような木の棒を円の中心に立て、それを支柱にテントを張るように、四方の石と中心の木の棒の先端を結ぶように木の棒を立てかける。

 

 最後に細い木の枝を幾何学模様を描くように、支柱の先端やその根元に置いた。

 

 次に、別に用意した小さな藁の上で2つの石をかち合わせる。何度かやると火花が藁に落ち、火種ができた。

 

 私はそれを両手で抱え、膝をついて天に祈るように口元へ近づけた。

 

「おお、火の神よ。我らに火を与えたまえ」

 

 息を吹くのではだめなのだ。ただ神への祈りを呟き続けるだけ。その呟きから僅かに漏れる吐息で火を煽らなければ、それは科学、文化、宗教との発生と同期しない。

 

「おお、火の神よ。我らに火を与えたまえ」

 

 そして、天へ祈りを捧げるその姿勢の、手の中に火が生まれた。その火を絶やさぬようにゆっくりと丁寧に、図面に起こせば魔法陣となるように組まれた焚き火に移す。

 

 そうして生まれた火の下に、人々は集い、火を生み出したものを長とする社会が、そこに生まれたのだ。

 

 ここに、全ての端となる魔法魔術の火が生まれた。

 

 私はその煌々と燃える火を絶やさぬように、追加の薪を焚べた。

 

「……うーん生み出したはいいものの……」

 

 その焚き火を前に腕を組み、再びうーんと唸る。ただの焚き火と言われればそうであるが、しかしまだ誰にも見せたことのないその火は、ただの火と『ヒトの原初の火』ともどちらとも言えない状態なのだ。

 

 もしヒトの原初の火ならば、この火は神々の物語でも眷属の物語でもない。扱えるのは、神の力もなく、ステイタスも無いものでなくてはならない。

 

 そんな存在に心当たりがあった私は、その火を移した松明と、ノリで製作した無重力(に近い極低重力)合金を土産に、アポを取ってもらうべく、主神ロキを訪ねた。

 

 ロキはクソデカため息を吐きながら、「なんでウチが頭抱えてんねんやろ」と嘆きつつ、アポイントメントを取ってくれた。そう、神ヘファイストスとの。

 

 ──────

 

 合金を土産に、火を渡した、その先のことを私は理解していない、そういう体である。バイトで来ていた神ヘスティアが合流し、その瞳が火を捉えた瞬間の変化を察した神々が私を閉め出して意思疎通を始めた。

 

 そこまで行動が早かったのは、神ヘファイストスも確信が待てないだけで、それをロキも察したからだろう。

 

 神聖文字を理解する私にとって、それは無意味だったのだが、再びこちらを見たロキが再びため息を吐いたことから、もう諦められているらしい。

 

 そうして談合の後、私は火をこれ以上広めないこと、合金を提供することを条件に、神ヘファイストスが自ら手掛けた武器をロキ・ファミリアに融通してもらえることになった。




幸田露伴の魔法修行者はいいぞ

荒俣宏の帝都物語もいいぞ

ロードダンセイニの魔法使いの弟子(原題:掃除女の影)もいいぞ
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