ポンコツな神様「憧れの中世ファンタジーな世界を作りたい!」
作った世界「だが断る」

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ポンコツ神様の観察日記

「うーん……中世ファンタジー世界、完成!」

 

神様のミルフィアは胸を張った。

ふわふわした雲の上の神殿から、出来たばかりの世界を覗き込む。

 

「人間、エルフ、魔物、ダンジョン……うんうん、完璧!」

 

完璧ではなかった。

 

 

 

 

 

 

「さてさて、冒険者さんたちは宝箱を開けて喜んでるかな〜?」

 

ミルフィアがダンジョンを覗く。

そこではゴブリンが宝箱を開けていた。

 

「ゴブッ!」

 

中から出てきた鉄の剣を装備するゴブリン。

 

「え?」

 

さらに隣ではオークが宝箱から鎧を取り出している。

その奥ではドラゴンが宝箱から出た指輪を前足にはめていた。

 

「え?」

 

ミルフィアは設定書をめくった。

 

『宝箱:ダンジョン内にランダム配置』

 

「うん」

 

『誰でも開けられる』

 

「……あっ」

 

ゴブリンたちが新装備で盛り上がっている。

 

「やったー! レア装備だー!」

「ちがうちがうちがう!!」

 

ミルフィアは頭を抱えた。

 

「それ冒険者さん用なの!!」

 

数年後。

冒険者ギルド。

 

「最近のゴブリン、なんか伝説の剣持ってません?」

 

「オークキングが不死鳥の鎧を装備してたんですが」

 

「ドラゴンが透明化してました」

 

「ごめんねぇぇぇ!!」

 

ミルフィアは泣いた。

でも人間たちは、

 

「モンスターを倒して装備を奪えばいい」

 

という結論に至り、

 

「お、ボスがレア装備を落としたぜ!」

 

と喜んでいた。

 

「適応力どうなってるの!?」

 

 

 

 

 

 

ある日、ミルフィアは街道を眺めていた。

 

「今日も平和だなぁ」

 

商人たちが荷車を押していた。

その横で馬が歩いていた。

 

「うん」

 

冒険者も徒歩だった。

横で馬が歩いていた。

 

「うん?」

 

騎士団も徒歩。

横で馬が走っていた。

 

「……ん?」

 

王様の行列も徒歩。

横で白馬がついてきていた。

 

「なんで誰も乗らないの!?」

 

設定書を確認。

 

『馬:移動速度が速い』

 

「うん」

 

『人間:馬を飼育できる』

 

「うん」

 

『騎乗』

 

「……書いてない!!」

「書き忘れたぁぁ!!」

 

人間たちは馬を、

 

「一緒に旅をする友達」

 

として認識していた。

 

「いや乗ってよ!!」

 

商人に神託を送る。

 

『その動物、背中に乗れるよ』

 

商人

 

「神のお告げだ!」

 

翌日。

荷車が馬の背中に乗せられていた。

 

「そうじゃない!!」

 

さらに翌日。

人間全員が馬の上に荷車を積んで押していた。

 

「なんで押すの!?」

「馬さん重そうだから」

「優しいの方向性がおかしいよ!」

 

結局、千年経っても誰も馬に乗らなかった。

 

「かわいいからまあいっか……」

 

馬たちも嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

 

冒険者たちがスライムと戦っている。

 

「効かない!」

「剣が通らない!」

「どうする!?」

 

ミルフィアはニヤニヤする。

 

「ふふーん。スライムの弱点は斬撃!」

 

……のはずだった。

設定書。

『弱点:刺激』

 

「……刺激?」

「刺激!?」

 

冒険者が叫ぶ。

 

「熱湯だ!」

 

効かない。

 

「電撃だ!」

 

効かない。

すると新人冒険者の少女が、

 

「スライムさん、すごくきれいな色ですね」

 

と言った。

ぽよん。

スライムが赤くなる。

 

「え?」

「形もかわいいです!」

 

ぷるぷる。

 

「いつも頑張ってますね!」

 

スライム。

 

「ぽよ〜♡」

 

しゅわぁ……

消滅。

 

「消えたぁ!?」

 

ミルフィアも消えそうになった。

 

「精神的な刺激だったの!?」

 

以来、スライム討伐は、

 

「褒め殺し」

 

になった。

ベテラン冒険者は皆、

 

「今日も元気だね!」

「触り心地最高!」

「君しか勝たん!」

 

と優しく声をかける。

スライムたちは幸せそうに昇天していく。

 

「なんなのこの世界……」

 

 

 

 

 

 

魔王軍との最終決戦。

勇者アルドが聖剣を抜く。

 

「魔を断つ剣よ!」

 

ズバァッ!!

隣の魔法使いのローブが切れた。

 

「寒っ!?」

「え?」

 

魔導書が真っ二つ。

 

「ちょっとぉ!?」

 

魔法の杖も切断。

 

「やめてぇ!?」

 

魔王は無傷。

 

「え?」

 

ミルフィアが設定を確認する。

 

『魔を断つ』

 

「うん」

 

『魔とは?』

 

「書いてない!!」

 

結果。

魔力を含むもの全部を切る剣になっていた。

 

「なんで魔王だけ無事なの!?」

 

魔王

 

「余は筋肉で戦っているからな」

「脳筋だったぁ!!」

 

勇者一行は会議した。

 

「魔法使いは帰ろう」

「はい……」

 

そして勇者と魔王は普通に剣で殴り合った。

 

「なんで王道展開になってるの!?」

 

 

 

 

 

 

「そういえば人間たち、仲良くしてるかな?」

 

ミルフィアは王都を見下ろした。

旅人が門番に話しかける。

 

「ヤッホ!」

 

門番

 

「モッホ?」

 

旅人

 

「ペペ?」

 

門番

 

「ニャ?」

「え?」

 

隣町なのに通じてない。

設定書。

 

『言語:各地方で適当に』

 

「やっちゃったぁ!!」

 

しかし人間たちは諦めなかった。

身振り手振り。

絵。

踊り。

変顔。

なんとか意思疎通している。

 

そして数百年後。

世界共通語が完成した。

 

「すごーい!」

 

人類って偉い!

感動するミルフィア。

ところが。

その共通語の元になったのは。

冒険者がスライムを褒める時に使っていた言葉だった。

 

「ポヨポヨ!」

「ポヨ!」

「ポヨポヨポヨ!」

 

世界会議。

国王たち。

 

「ポヨポヨ!」

「ポヨ!」

「ポヨ〜!」

「なんでぇぇぇ!?」

 

今日もミルフィアは雲の上で頭を抱える。

 

「もっとちゃんと作ればよかった……」

 

でも。

楽しそうに暮らす人々。

幸せそうな馬。

装備を自慢するゴブリン。 

褒められて成仏するスライム。

魔王と筋トレする勇者。

 

「……まあ、みんな笑ってるし、ヨシ!」

 

そんなポンコツな神様は、今日も世界を観察している。

 

「次は季節の設定を確認しようかな!」

 

その瞬間。

世界は春から突然冬になった。

 

「あっ。」

 

住民たち。

 

「今年も来たか」

「慣れた」

「雪見桜だー!」

「適応力が怖いよぉ!!」

 

ミルフィアは今日も元気である。


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