ピーターが暮らすボロアパート、その薄暗い玄関前の廊下をうろうろとうろうろと、何度も往復しているネッドの姿が浮かんできたので。
書く予定のなかった2話目が産まれました!
デップーのメタ乱入があって、始めて成り立つ裏話です!
【第2話】◆ Aパート:すべての始まり(ルートA:メタ乱入)
(画面が暗転し、軽快なアメコミ調のBGMと共に、ポップなフォントで字幕が踊る)
『――1話の数日前。とある別のアース(世界線)にて』
映画『デッドプール&ウルヴァリン』の激闘を終え、TVA(時変管理庁)からくすねたデバイスをいじってマルチバースを監視・・・ザッピングしていたデッドプール(ウェイド・ウィルソン)。
彼はたまたまアース616のモニターを目撃し、あまりの鬱展開にポップコーンをひっくり返していた。
ウェイド:「おいおいおいマーベル上層部ゥ! ティーンエイジャーのピーターに背負わせる業(カルマ)じゃないだろ!重すぎだろが! 誰もあいつを覚えてない? ボロアパートで一人で寂しくスープすすらせて、ローガン以上の鬱映画にする気か!? こんなのオレちゃんが許さねえ!」
最愛のポップアイコンであるスパイダーマンの危機に、オレちゃんの手が勝手に動く。
TVAのポータルを無理やりこじ開け、空間の裂け目からピーターのボロアパートのクローゼットへとダイレクトに突っ込んだ。
『第1話、デッドプールの親切心(ありがたハタ迷惑)な一日が終わった、その日の夜』
ピーターの静かな部屋、その隅にある古ぼけたクローゼットのドアが、内側から勢いよく蹴破られた。
ウェイド:「サプライーーーズ!! オレちゃん、今一度見参!」
ピーター:「うわあああ!? 誰だ?!不法侵入だぞ! ……って、デップー?!今度はナニ?!なんでクローゼットから出てくるんだよ! 普通に驚くだろ!」
クローゼットから突然、ガタイのいい赤と黒の大男がポーズを決めて飛び出してきたのだ。心臓が止まるかと思ったピーターは、全力で壁際、というか天井近くまで飛び退きながら叫ぶ。
ウェイド:「いやいや、映画の演出としてはこれが100点満点だろ? 玄関から普通に入ってきたら地味じゃん。それよりスパイディー、オレちゃんさっきTVAのデバイスでマルチバースをザッピング……監視してたんだけどさ。チミがボロアパートで一人ぼっちで泣きながら不味いスープすすってた世界線を見ちゃってさぁ。マーベル上層部の鬱展開にオレちゃんブチギレたわけ」
ピーター:「何の話をしてるんだよ……。僕は今、泣いてないし、さっき食べたスープも普通に(インスタントだけど)美味かったよ。今日はもう寝る所なんだから帰ってくれ」
ウェイド:「ノンノン、帰らない! チミには今、必要なのは『友人』だ!前を向いて、起ち上がるため。胃袋と懐を暖めるべきなんだよ!そのための『やり直しのキッカケ』が若者には必要なんだよ。……よし決めた。まず懐を暖める為にパーカー社の設立だ!必要な書類一式、オレちゃんが集めくる!」
ピーター:「は? 会社? ちょっと待て、勝手に話を進めるな――!」
ウェイド:「じゃ、そういうことで! 尺が足りねえから行ってくる!」
ピーターが止める間もなく、ウェイドは「ポンッ」と軽い電子音と共に再び時空の彼方へ消え去ってしまった。
静まり返った部屋。
壊されたクローゼットの扉と、完全に置いてきぼりにされたピーターだけが残される。
ピーター:「……なんなんだ、あのめちゃくちゃな人は……。明日、真っ先にこの部屋の警備体制(セキュリティ)を見直そう……」
頭を抱え、自室の防犯対策に深く意識を馳せるピーターの姿で、このドタバタの一幕は幕を閉じるのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
<そしてウェイドは、集めた書類を抱え、時間を少し巻き戻して『第1話の昼間』へと突用(エントリー)したのだ!飯を一緒に食べるために!
胃袋も暖めろ!って言ったろ?腹減って冷えた体じゃ、碌な考えが浮かばないからな!
ピーターにとっては『ハタ迷惑な一日』の後にクローゼットから現れたように見えたが、ウェイドにとっては『クローゼットから飛び出した後、時間を遡って1話の昼間に会いに行った』のだ。
――お節介な悪友のタイムマジック。しかし、彼の仕事はそれだけでは終わらなかった)
言ったろ?スパイディに必要なのは『友達』だって!>
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
◆ Bパート:マルチバースの友情と、帰ってきた足音
場所は変わり、アース616とは異なる、どこか別の世界のニューヨーク。
スターク・インダストリーズの厳重なデータサーバー室に潜入していたデッドプールは、何故かここで大量の「ピーター・パーカー社設立用」の書類を出力して、もうブリーフケーフ内へ書類を入れていた。
「よしよし、これで書類はコンプリート……って、おっと?」
背後でパチパチと火花を散らすセキュリティパネル。その前に、見覚えのある少しふくよかな少年が、様々なドローン軍団とそのコントロールデバイスを手に立ち塞がっていた。
この世界のスパイダーマンの相棒(サイドキッカー)――そう大人になったネッド・リーズである!
ネッド:「動くな! お前は誰だ!? スパイダーマンのデータを盗もうとするなんて、新手のヴィランか!?」
ウェイド:「おッ、椅子の男(Guy in the chair)じゃん! 本物だ、生ネッドだ! 映画よりちょっと肌ツヤいいね!」
ネッド:「ええっ、椅子の男!? なんでそのコードネームを知って……いや、誤魔化されるなネッド、こいつは危険だ!」
ネッドは怯えながらも、親友(スパイダーマン)の秘密を守るために、ドローン軍団に防御体制を敷きながら、必死にキーボードを叩き、部屋のロックを強行しようとする。その「相棒としての覚悟」を見たウェイドは、いつになく真面目なトーンで両手を挙げた。
ウェイド:「待て待てマテマテ!、落ち着け少年! オレちゃんはヴィランじゃない。むしろチミの相棒の……別の世界の、スパイディの大親友(自称)さ。そっちの世界じゃさ、スパイディはみんなに存在を忘れられて、一人ぼっちで泣いてるんだよ。だからオレちゃん、スパイディのために『やり直しのキッカケ』を集めてるわけ」
ウェイドが抱えた書類の束には、確かに『ピーター・パーカー』の文字と、彼の生活を保証するための正規の手続きがびっしりと並んでいた。ネッドはデバイスを構えたまま、目を見開く。
ネッド:「……彼が、一人ぼっち? 誰も彼を覚えていない世界があるのか?」
ウェイド:「そうさ。切ねえだろ? オレにもさ、似たような経験があるんだ。世界に置いていかれそうになって、でも泥臭く足掻いて、最高の仲間と出会ってさ……だから、あいつの気持ちがちょっと分かる。だからオレは、どんな世界でもスパイディの友人なのさ」
ネッドはしばらくウェイドと書類を交互に見つめている。
ネッド:「じゃ、君がスパイダーマンの友人だと言う証拠を見せてくれよ」
と、拳を突き出す。
デップーは同時に不敵な笑みを浮かべ、拳を突き返す。
グーとグーを合わせ、パチンと弾いて、最後は胸を叩く――お互いがスパイダーマンの大切な相棒であることを確かめ合う、国境(アース)を越えた友情のハンドシェイクだった。
ネッド:「……僕が、スパイダーマンの友達じゃない世界なんて、あるわけない」
ウェイド:「だろ?」
ネッド:「お互い『何処の世界でも』、僕たちはスパイダーマンの友達だろ!?」
ウェイド:「……クソ、お前最高に良い奴だな! 泣かせんなよ!」
お互いの目には、強い意志が宿っている。
ウェイド:「ありがとな、椅子の男。この書類、ありがたく貰っていくぜ」
ネッド:「その世界の僕にも、よろしく伝えてよ!」
お互いに腕を上げ、サムズアップ。
お別れのハンドシェイク!
「ポンッ」と軽い電子音が響き、赤と黒の背中は時空の彼方へ消え去った。
『アース616(元の世界)――』
場所は、MIT(マサチューセッツ工科大学)
時間は、ピーターの授業にデップーが乱入して大騒ぎをした後。
キャンパスのベンチで、熱心にノートPCを叩いていたネッド・リーズの前に、突然、大量のポップコーンの紙袋と、ブリーフケースを持った赤と黒の男がドサリと座った。
ネッド:「うわっ!? ……なんだ?!お前!」
ウェイド:「よぉ! 久しぶり……でもないか、こっちの世界じゃ初めましてだな、椅子の男(Guy in the chair)!」
ネッド:「え……? い、椅子の男って、なんでその言葉を……」
ネッドの心臓が跳ね上がる。それは、失われた記憶の奥底、なぜか胸が締め付けられるほどに懐かしい「大切な誰か」との合言葉。
ウェイド:「スパイディとの調子はどうだい?」
ネッド:「スパイディ……? スパイダーマンのことですか? いや、僕はただの学生で、彼とは何の関係も……」
ウェイド:「関係は大アリさ、マイ・フレンド。俺はデッドプール!いいか、このアパートの住所だ。今すぐ行きな。あいつには、世界で一番頼れる『椅子の男』が必要なんだよ」
ウェイドはネッドのノートPCの上に、手書きのメモをパチンと貼り付けた。
ネッド:「……『椅子の男』……」
呆然とするネッドの前に、ウェイドがニヤリと笑って、すっと右の拳を突き出す。
ウェイド:「じゃあな、椅子の男。――ほら、最後の仕上げだ」
ネッド:「え? ……あ、いや……」
困惑しながらも、ネッドは吸い寄せられるように自分の拳を突き出した。
グーとグーを合わせ、パチンと弾いて、最後は胸を叩く――。
初めて会ったはずの怪しい男と、寸分の狂いもなく完璧にシンクロした、国境(アース)を越えた友情のハンドシェイク。
ネッド:「う、嘘だろ……? なんで僕、この動きを知って……」
ウェイド:「お前が言ったろ? 椅子の男がスパイダーマンの友達じゃない世界なんて、あるわけねぇんだよ」
男は「じゃあな! 映画の尺が足りねえからオレちゃんはこれで!」と言い残し、ポップコーンを齧りながら人混みへと消えていった。
残されたネッドは、胸のざわつきを抑えきれず、メモに書かれた住所をじっと見つめていた――。
◆ エンディング映像(ミッドクレジット風)
場所は、ピーターが暮らすボロアパートの、薄暗い玄関前の廊下。
そこには、見覚えのある少年――ネッド・リーズが、おそるおそる佇んでいた。
ネッドはひどく緊張した様子で、手元のスマホと部屋のドア番号を何度も見比べながら、ぶつぶつと小さな独り言を呟いている。
ネッド:「ええっと……ここ、だよな? 住所は合ってるはず。いやでも待てよ、あのMITに現れた、めちゃくちゃ怪しい顔の男の言葉を信じて良かったのか?『スパイダーマンが椅子の男を求めている』って……いやいや、ホントかなぁ!?」
ネッドは自分の頭を抱え、廊下をうろうろとうろうろと、何度も往復した。
ネッド:「デッドプールとか名乗ってたあの人、何処まで信用していいんだか。ってか、そもそも本当に此処にあの高名なスパイダーマンが居るのかな? 僕、もしかして新手の質の悪いドッキリに引っかかってない?……あー、ダメだ、心臓がバクバクする……」
不安に怯え、今にも逃げ出しそうになりながらも、ネッドは意を決して、ごくりと唾を飲み込んだ。
角ばった指先を震わせながら、ピーターの部屋のチャイムのボタンに手を伸ばす。
ピンポーン――。
静かな廊下にチャイムの音が響き渡り、ネッドがぎゅっと目を瞑ったところで。
(プツン、と映像が途切れるように、フェーズアウト)
「Spider-Man Will Return.」
(スパイダーマンは、帰ってくる。)
(完)
秋のスパイダーマンの映画、楽しみにしています!