「これで、ギアスの能力はわかったか?」
「いやまあわかったけど、ゼロのギアスは1回しか効かないって言ってなかったかい?」
朝比奈の疑問に、ルルーシュが悪い顔をした。
「その1回で、合い言葉の後の命令を聞けと命令すればいい。見ていろ」
ルルーシュが、ヴィレッタの前に立った。
「コード、ギアス。命令解除と言うまで、俺の命令を聞け」
ヴィレッタの目から、ハイライトが消えた。
「右手上げて、左足上げて。右手下げないで、左手上げて」
ヴィレッタが言われた通りに動く。
「シャルルのモノマネをしろ」
「人ワァー、生まれながらにィー、平等ではなァーいィ!」
ちなみにリヴァルたちが証拠として見たのはこっちである。
「芸人のモノマネもさせるか?」
「いや、もういいよ……」
「では、命令解除」
「ハッ、私は何を!?」
ヴィレッタが混乱して、あたふたする。
「確かに強力な力ですね」
かぐやの言葉に、桐原が頷いた。
「そうじゃな。だが、使い方も難しい」
桐原の言葉をルルーシュが引き継いだ。
「ギアスの命令で傀儡にすると、自発的なことができなくて対応力が無くなる。なんでもかんでも傀儡にすれば良いというわけではない」
単一の命令なら兎も角、傀儡にされるほどの命令なら一目でわかるので、藤堂たちも安心だろう。
「しかし、流石に惨いのではないか? 敵とはいえ……」
千葉の言葉に、ルルーシュは肩を竦めた。
「そうは言っても、ギアスを得た直後に出会ったのがヴィレッタだ。新宿事変の真っ最中だったのだから、生き残る為に必要だった」
「それに、そんなに悪くないはずだ。ヴィレッタの望みは出世だ。このままいけば、ブリタニアは俺に負けて今の地位に意味は無くなる。その前に、黒の騎士団という勝ち馬に乗れたんだ。悪くないだろう」
負けることなど微塵も考えていないルルーシュの発言に、千葉は口を噤んだ。
「ヴィレッタはギアスのことは隠して、軍でスパイをしていた重要な味方として他の団員には報告する。将来的に、まともなブリタニア軍人を引き抜く際の良いモデルケースになる」
ヴィレッタは庶民の出なので、悪くはない。あと、ルルーシュが個人的に好みだったので、どうしても手元に置きたかったのもある。扇にはもったいないよ。
「ヴィレッタ。真面目に黒の騎士団で働けば、戦後は貴族だ」
ルルーシュの言葉に、ヴィレッタは猜疑に満ちた目で睨み付ける。
「そんなこと言って、どこかで捨て駒にするんだろう!」
まあ、当然の反応である。
「そもそもゼロにそんな権限があるわけ……」
ルルーシュの正体を知らないヴィレッタに、ルルーシュが正体を明かした。
「なっ、つまりこれは御家騒動!?」
端から見たらそうだね。
「取り敢えず、話はこんなところか。明日には大宦官に会いに行く。準備をしておけ」
ルルーシュは言うだけ言って、部屋を出た。残された面子は顔を見合わせた。
「相変わらず言葉足らずというか。気の使い方がヘタクソというか」
リヴァルが、手を頭の後ろで組んだ。
「やっぱり、後は私たちで好きに話し合えってことぉ?」
今まで黙って聞いていたラクシャータの言葉に、リヴァルは頷いた。
「こんな衝撃の事実の連発の後に、普通に仕事に戻れは無理でしょ」
「ま、ギアスには驚いたけど。私の仕事は変わんないからね。あんたたちはどうすんの?」
ラクシャータからの視線を受けて、藤堂は1歩前に出た。
「驚きの連続ではあったが、私の気持ちに変わりはない。ゼロに、ルルーシュについていく」
藤堂の言葉に、四聖剣も頷いた。
「黙っていてもおかしくないことを教えられたのだ。ゼロからの信頼の証だろう。ギアスについても、他にも使い手がいる以上、知れて良かった」
卜部の言葉に、皆が頷いた。
「取り敢えず、私たちも仕事に戻ろう。……彼女は」
藤堂がヴィレッタを見た。
「こいつは、後でルルーシュのところへ連れていく」
C.C.の言葉に、ヴィレッタがビクッとなった。
「バックボーンや今後の仕事の擦り合わせがあるからな」
C.C.が魔女のような笑みを浮かべた。誤解されそうな表情を浮かべるあたり、どこかの魔王にそっくりである。
◆◆◆
「ほぉー、お主がゼロか」
朱禁城にて、ルルーシュは大宦官と面会をしていた。大宦官は強欲なので、利益を供与できる風に装えば会うのは簡単だった。
そして、会ってしまえばどうとでもなる。
「貴様たちは、今後天子様に従え!」
ルルーシュのギアスにより、大宦官は傀儡となった。
「これが、ギアス!」
面会に立ち会っていたシンクーが驚愕した。事前に悪徳役人でデモンストレーションを済ませていたとはいえ、衝撃的なことだ。
「大宦官は今まで散々国を、民を食い物にしてきたんだ。これからは、全てを国に、民に捧げてもらう」
大宦官のようなクズならば、ルルーシュもギアスで操っても良心が微塵も痛まない。そして、まわりからの反発もない。
「ゼロ、君のお陰で革命で流れる血は、かなり少なくなるだろう。しかし、その力は危険だ」
シンクーは感謝しつつも、ルルーシュに脅威を感じずにはいられない。中華連邦ほどの大国の中枢が、一瞬にして掌握されたのだ。大宦官の服従先が天子でなければ、自分の命を捨ててもルルーシュを殺していたところだ。
「わかってはいるが、これが一番早い。モタモタしていたら、ブリタニアに介入される」
「それはわかっている。だから、約束を違えるなよ。私は、君に感謝していたいのだ」
シンクーもルルーシュに感謝はしている。ただ、譲れないものがあるだけだ。
「わかっている。目指すは、超合集国だ」
ルルーシュが目指すのは、原作通り超合集国を作り、そこに自分が皇帝になったブリタニアを参加させることだ。
◆◆◆
「天子様、長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません」
シンクーが天子を外へと連れ出した。
それをルルーシュたちや、シンクーの部下が見ている。
「ううん、そんなことない! シンクー、私はこれからも……」
嬉し涙を浮かべながら、言葉が出ない天子に代わってルルーシュがシンクーに声をかけた。
「シンクー、君はもう前線には出るな」
「何を言う! 大宦官は退けたが、まだ中華連邦は纏まっていない。それにブリタニアの脅威もある!」
ルルーシュは、意味ありげに天子を見た。
「君は病を患っている。何も自ら寿命を削ることはあるまい」
「天子様、外には出られましたが、その隣にシンクーがいなくても良いのですか?」
ルルーシュの言葉を聞いて、天子は涙目でシンクーの手を握った。
「外に出られても、あなたがいなきゃ! 私は、あなたと!」
これにはシンクーも敵わない。
「シンクー、君は戦略家としても優秀だ。今後はそちらで励みたまえ」
「……わかった」
ルルーシュの沙汰は、黒の騎士団の女性連中には好評のようだ。かぐやは目を輝かせているし、千葉やカレンも笑顔だ。
これで、原作よりも早く、原作よりも丸く中華連邦は治まった。後は、中華連邦を基盤に進めるだけだ。原作の改変を。
タイマーストップ。良いタイムが出ましたね。
くくく、ここまではチャート通り。後はイレギュラーさえ無ければ。