シリカに覚悟ガン決めた幼馴染をリンク・スタート!させる話   作:五月雨と狐

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 やぁ久しぶり元気してた?(n'回目)

 

 理由があるんや……怒らんといてくれ!

 フリック入力がきつくて試行錯誤してたらなんとか案を考えついてようやく書けたんや。

 やる気が復活して設定も復旧させたら続かせるぜ!!

 それまでの繋ぎということで。


 ま、やる気なかったらどーしようもないんだけど。


プロローグ?

「せいっ!」                                          

 

 思い切って叫んだ気合の声といっしょに自分の身長と同じくらいの剣が、これまた自分の身長と同じくらいの猪の体を切り裂いた。 しかしまだ体力を削りきってはいないようで、相手はこちらを睨んで突進の体制をとっていた。                                      

 

 あ、終わった〜と一人ならなってしまうが、あいにくこちらには味方がいる。                                                      

 

「シリカッ」                                                         

 

「分かった!」                                                                             

 

 シリカと呼んだ少女――ここに来てまだ2時間もたっていないのでまだ違和感があるが、そう呼んだ少女は猪の背後から、手に持った短剣で猪の体躯を切り裂いた。                      

 

 それでようやく削り切ったのだろう。                                

 

 猪が体をキラキラしたものに変えて消えていった。                        

 

 目に入るのはEXPと書いてあるおそらく経験値。                                  

 

 詳しく何かはわからないが初めてモンスターを倒したのだ、そんなものより喜びが勝った。       

 

「やったねクル!」                                      

 

「うん、倒したぞ!」                                         

 

 やった、やったとハイタッチをする。                                              

 それもひとしきり終わると、なんだか恥ずかしくなったので少し距離を取って話す。            

 

 

「.......そろそろ、あっちに戻る?」                                  

 

 そんな問いに視線だけ端にずらして時間を確認。                            

 

「もうちょっとで5時半だから、そうしないとな」                            

 

 約束の時間は5時半まで。                           

 

 そこまでいったらあっちに帰らないといけない。                                 

 破ったらお父さんも怒るだろうし、なによりピザが食べられなくなる。                     

  

「もうちょっと遊びたかったけど、戻るかぁ」                              

 

 まだ還りたくないらしい眼の前の少女を、相手にバレないように眺める。 それは決して、同じクラスのあいつらみたいな感じではなく―――                   

 

 (金髪青目って、現実とぜんぜん違うなー)                          

 

 眼の前にいるのにまるで別人だ。現実では茶色の髪なのに……                                                                       

 

 なんて、そんなこと思ってるが、そんなの口に出さない。                              

 

 言ったあとが怖いというのもあるが、なによりここはゲームの中、仮想世界?というやつなのだ。 

 

「ソードアート・オンライン」                                     

 

 それが今遊んでいるゲームの名前だ。ナーヴギア?という機械を頭に被ってゲームの中に飛び込む、VRMMO、というもの――らしい。

 

 お父さんが言っていたから、よくわからない。普通のゲームと違うのは自分以外にも人がいるという点だけらしいが。                                                    

 

 ちょっと前にコレを懸賞で当てた眼の前の圭子が羨ましくて、ちょっとお父さんに頼んでみたら運よくそこでお仕事していたらしく、報酬という感じで機械をもらってきてくれた。                    

 

 ゲームソフトのほうは、誕生日プレゼントの前借り、という形で買ってもらった。半年以上先だが。                                                 

 

 どうしても、いっしょに始めようと約束してしまったからだ。                                       

 

 ()()()()、眼の前でステータス画面の外国語にあたまをかしげている幼馴染と。                  

 

 珪子と俺は幼稚園からの友達だった。                                   

 お母さんと珪子のお母さんが友達だったらしく、なんとなくずっと一緒にいた。そして今日も俺の家でゲームが終わったらみんなでピザを食べる予定だ。                                                                     

 

 だから約束の時間までに帰らないと大変なことに―――と考えていたら。珪子―――このゲームではシリカ―――から声をかけられた。                                       

「どうやって帰るんだっけ」                                          「なんかそういうボタンなかった?」                              「英語わかんない」                                     

 

 俺もなんだけど、と思ったが、そういえばお母さんからログアウト、というとこを押せば帰れると聞いていた。ということでさっさとシュピ、という音とともに出した画面でログアウトと書いて有りそうな英語をポチろ。                                              

 

 しかし、そう思って俺も探してみたが、無い。                              

 

「なぁ珪‐――じゃない、シリカ。ログアウトのロってR?」                          「Lじゃなかったけ?でもRでもLでもないよ?」                                    「あれぇ?」

 

 そう言って二人で首を傾げる。 そこからは、「もっと下の方じゃない?」 「いやいや、このステータスの先じゃない?」 と、ああでもないこうでもないと探し続けた。

 

 ログアウトできない。 その事実がだんだん怖くなってくる。 このまま帰れなかったらどうしよう。 怒られる。

  ピザも食べられなくなる。 そんなことを考えているうちに、気付けば二人とももはや半泣きになっていた。

 

  そして、ようやくたどり着いた答えは――

 

「……ひっく。最初の街に戻って、大人の人に聞こう」

 

「……ぐすっ。分かった」

 

  俺も珪子も、まだ目の端に涙を浮かべていた。 怒られるのが怖くて、気付けば手を繋いでいた。

 

 そしてその道中では、どこかの大人の人に手紙を書いてもらおうという話になった。

 

 ログアウトできないのは俺たちのせいじゃない。 それを証明してもらえば大丈夫。 そう提案したのは珪子だった。 それを聞いた俺は、本気で名案だと思った。

 

 そう考えると少し気が楽になり、涙も止まった。 そして落ち着いてみると、手を繋いでいるのがなんだか恥ずかしくなった。 だから俺たちは、どちらからともなく手を離した。                                   

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 とぼとぼ歩きながら、気を紛らわせるようにしりとりをして街に戻っていたら突然大きな鐘の音が聞こえてきた。      

                                             「ひゃ!?」                                            

 

 そんな風に驚いてこちらに飛びついてくる圭子。                            

 

 正直鐘の音よりそっちに驚いた。                                  

 

 それに少し文句を言ってやろうとして、開いた口を俺はおどろくために使った。           

 

 「なんだ!?」                                              

 

 一瞬にして体が青い光に包まれ蒼い膜に覆われてしまった。                           

 

 なんだこれ!?え?まじでなに!?                                         

 そんなこと言いたいのは山々だがこちらしがみついてプルプルしているやつがいるのだ。俺までそうなって怖がらせるわけには行かない。                             

 

 すこしきつく抱きしめてどうにか安心させようとするが―――光が大きく脈打ち、俺はそこで何も見えなくなった。                                             

 

 そして―――気がつくとそこはもうさっきまでいた草原ではなかった。                      

 

「ここは....」                                            「どこ、ここぉ....」                                          

 

 石の床に街に生えている木、ゲームでしか見ない建物、遠くに見える大きい宮殿。 おそらくゲームが始まってすぐにいた街だ。                                                      

 

 でもなんで―――そんな疑問が頭を埋め尽くす。                            

 

陽仁(はるひと)ぉ....大丈夫だよね?」                                     

「.......わかんないけど、周りに沢山人がいるし、多分大丈夫だ」                                                                        

 

 ....今俺が言えるのはコレくらいだ。本当はもっと優しいことを言いたいが、自分でもよくわからない。いま圭子がいるから俺は落ち着いているだけで、一人だったらもっと危なかった。            

 

 しかし、さっきはそう言ってみたが――周りに人がいるからって、どうにかなるわけじゃなさそうだ。                

 さっきまで静かだった周りから、

 

「なにこれ」「帰れるの?」「バグ?」

 

 そんな声が聞こえる。少しずつソレは大きくなって、圭子が周りを怖がってよりこっちに身を寄せた。俺も少し近くに寄って、考え続ける。                                  

 

 そんな時だった。                                       

 

「あっ...上を見ろ!!!」                                    

 

 誰かが、そう叫んだ。                                       

 

 つられて俺も圭子も上を見る。                                    

 

 

 

 

 

 そして、そこにあったのは……、本当に異質な、なんと言っていいかわからないものだった。空が赤と黒の格子模様に包まれていた。                                   

 

 

 そしてなにか書いているが‐――読めない。                                       

 

 しかし、周りが落ち着き始めていることから、なにかの問題があってそれが解決したのだと勝手に決めつける。                                          

 

「大丈夫そうだぞ、シリカ。たぶんもうちょっとで帰れる」                            さっきまで本名呼びをしてしまっていたが、安心したことでようやくシリカ呼びにできる。

 

「ほんと?...ありがとク」                                  

 

 おそらクル、そう言うはずだったシリカの口が急に動かなくなった。                    

 

 シリカの視線は、まだ空を見ている。                                

 

 そして俺も、ソレに気づいた。                                    

 

 

 

 

 赤と黒に覆い隠された空の真ん中に、赤い液体が滴った―――かに思えば姿を変えた。          

 

 

 出てきたのは、とても大きい紅いフードのついたマントのような服をきた巨大な人の姿だった。                                      

 

 いや、人ではない。                                          

 だって―――――。                                      

 

 

「顔が、ない?」                                           

 

 シリカがそう、呟く。                                          

 

 視線の先にあるソレには顔がなかった。                               

 それに少し、怖いと感じる。                                      

 

 気づけば、どちらかからかは分からないが肩が触れるほど近くに寄っていた。                             

 

「陽仁.....」                                               そう呼ばれる。でも何を求められているかわかるが。口に何も出せない。

 

 そして、また視線の先で変化があった。                                 

 

 なにもなかったはずの場所に、白い手が浮きより人の姿に近づいた。なんなんだ、本当。                                       

 

 そして、周囲のざわめきがどんどんどんどんどんどん大きくなったとき、ソレは喋り始めた。    

 

『私の世界へようこそ』                                                  

 

 私の、世界?                                           

 

 どういうことだ、そう思った瞬間、まだソレは喋り続けた。                      

 

『私の名前は茅場晶彦、この世界をコントロールできる唯一の人間だ』        

 

 かやばあきひこ?                                         

 誰だよそれ。                                        

 

「...このゲームを、つくった人だ」                                          

 

 圭子のつぶやきが耳に入った。                                    

 

「そう、なのか?」                                          

 

 自然と口に出てしまう疑問。                                   

 

 それに圭子は、すこし恐怖をにじませて返した。                          

 

「うん。パパが、そういうふうに言ってた。すごいプログラムを組んだ人なんだって」           

 

「....ありがと」                                          

 

 なら話は簡単だ。                                         

 きっと帰れないことを謝るか、サプライズのためにこんなことになっているのだ。          

 

 そんなことを、俺も信じたかった。                                   

 

 だが、そんな期待はすぐに裏切られた                                             

 

『プレイヤー諸君はすでにメインメニューからログアウトボタンが消えていることに気づいていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す、これは不具合ではなく《ソードアート・オンライン》の本来の仕様である』                                     

 

「しようじゃ、ない?」                                     

 

 口からこぼれる、絶望を含んだ声。                                   

 

 『諸君はこの城のいただきを極めるまで、自発的にログアウトすることは出来ない』          

 

 ―――もうことばは出なかった。                                

 

 ただ、怖くて、恐れがあった。                                     すぐ近くの温かさにも気づかないほどに寒かった。                                    

 

 『また外部の人間による、ナーヴギアの停止あるいは解除もありえない。それがもし試みられた場合――――』                                                

 

 聞きたくないと思った。                                                                                                

 どうしようもなく、不安にかられたから。                                                

 わずかな言葉の間にすら、恐怖を覚える。                                    

 

 『ナーヴギアの信号素子が発する高出力のマイクロウェーブが、諸君らの脳を破壊し生命活動を停止させる』                                          

 

 俺は、その言葉を聞いて数秒間心がここにはないかのように、放心してしまった。            

 次に湧き上がってくるのは、疑問と少しの恐怖。                            

 

 「.....そんなこと、できるわけない」                                       

 

 ナーヴギアはゲーム機だ。                                    

 ゲームは遊び、楽しいこと。                                       

 

 茅場晶彦のその後の声なんか、聞こえなかった。                              

 

 

 

 

 聞きたくなかった。                                          

 

 

 

 『しかし、残念なことに213名のプレイヤーがすでにアインクラッド及び現実世界から永久退場している』                  

                                                                                                             

 ―――213名のプレイヤーが退場。                                   

 

 そんなのありえるわけない。                                                                                                                                                                  

 

 それは、つまり、213人の人がもう死んでしまったということで。背中に薄ら寒いものが走る。                                               

 

 瞬間、となりにいた圭子から、細い悲鳴が上がった。                       

 

「なんで、なんでそんなことするの...」                                     

 

 俺には、どうにもできない。                                  

 

 ただ、今は倒れそうな圭子を支えるだけで頭を一杯にしたかった。                                           だが、それを茅場晶彦は許してくれるはずもなく。                          

 

『―――諸君らには、安心してゲームの攻略に、勤しんでほしい』                       

 

 攻、略?                                                

 なぜそんなことを。                                           

 

 そんな漠然とした思いの俺に、どこからか叫ばれた誰かの言葉が深く刺さった。           

 

「こんなの、もうゲームでもなんでもないだろうが!!」                                               

 

 それに、返したかのように、空に浮かぶローブ男は応えた。                         

 

『《ソードアート・オンライン》はすでに君たちにとってもう一つの現実である存在だ。今後ゲームにおいて、すべての蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがなくなったその瞬間』                     

 

 ―――――いやだ。                                              

 ―――――――――やめてくれ。                                  

 

『諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される』

 

「ッあ.......」 

 

                                                

 

 声にならない声が漏れる。                                           

 

 くだらない、ばかみたいだ。そんな風に笑い飛ばせたらどれだけ良かったか。そして、考えがまとまらない頭では、一つの絶望に近い予想が立てられていた。               

 

 余計なことを考えて、気を紛らわせたかっただけかもしれない。                  

 

 ―――この世界で、ゲームクリアとは。                                  

 

 さっき城の頂を極めるまで、茅場晶彦はそんなことを言っていた。                    

 極めるとは、おそらく城を登り切ること。                                                                                                                                      

 

 つまりそれは――――――――。                               

 

『諸君らが解放されるには、たった一つ。最上層、第百層までたどり着きそこにいる最終ボスを倒せば良い』                                              

 

 そうしたら、その時点で生存しているプレイヤー全員を現実に返すことを誓おう。                  

 

 

 

 

 茅場は、そう続けた。                                                

 

 予想通りで、外れてほしかった予測。                                  ほんの三時間ちょっと前までは、俺は圭子といっしょに家でトランプをしていたはずだ。                  

 

 

 5時半までね、と言われたから、ピザまでの時間を圭子といっしょにソードアート・オンラインで潰そうって。そんな話をしていて。                                                

 

「はは、は」                                                 

 

 そんな乾いた笑いがこぼれてしまう。                               

 

 不安と恐怖感。                                                                                                                                                      

 

 それでもなおも茅場晶彦は続けた。                                   

 

 

 『それでは最後に諸君にとってこの世界が唯一の現実である証拠をみせよう。アイテムストレージを開いてくれたまえ。』                                                 

 

 俺はその声にすぐさま続いた。なにか、否定できるものは無いかと。                                                

 

 おそらく持っているアイテムが乗っている場所。                              

 

 そこにある物をタップする。出てきたのは―――                                 

 

                                      

 

「手鏡..?」                                 

 

 なんだこれ、そんな風に思いながら手鏡を実体化させる。                         

 

 たちまち現れる小さな鏡。                                      

 

 そこに映っていたのは、灰色の髪と青い目をした少年だった。

 

 俺よりずっと年上に見える。

 

 

 高校生くらいだろうか。―――それが、この世界での俺の体だった。                                                                 

 

 なぜ手鏡、という疑問を抱き隣にいる圭子を眺める。                              

 

 そちらも同じようにこちらを見てきていた。                                    

 現実離れした金髪青目の美少女。まぁこちらが言えるようなことじゃないな。

 なんて、思っていた。      

 

 

 思えていたのだ。                                           

 

 

 その数秒後向き合っていた圭子を白い光が包んだ。                              

 

「圭ッ!?」                                                 

 

 なにが起きたかわからず名前を読んだ俺も光に包まれてしまった                                        

 

 ……一秒―――二秒。                                             

 

 そうすると視界がもとに戻ってきて。                                                                                   

 

 そこにあったのは見慣れた佳子の顔だった。

                                                                    .......()()()()?                                             

 

 おかしい。さっきまであったのは圭子ではなくシリカの顔であったはずだ。だが眼の前にあるのは、茶色いツインテールに同じく茶色の瞳をした現実の圭子の顔。                  

 

 さっきのシリカから身長も縮んでいるし、なんでか俺の身長まで低く感じ――。                    

 

 「陽仁だ......」                                         

 

 そう言った圭子の顔は、泣きそうになっていた。                                   

 

 圭子のその言葉で、顔で自分の身に、なにが起こったのか俺は理解してしまった。急いで自分の顔を確認する。                                   

 

そこにあったのは。

                                            ―――少し長めの黒髪に、茶色の垂れ目。12歳、現実の俺の顔だった。                  

 

「えっ..わた、し?」                                                                                               

 

 同じように圭子も気づいたのだろう。                                      

 

 顔が、いや顔だけじゃない。体も、声だって現実の自分のものになっている。なんで、いや、そんなことは分かっている。                                    

 

 茅場はさっき。                                          

 

『この世界が唯一の現実』と言っていた。                                 

 

 

 現実に、自分のものじゃない体は必要ない。                                         

 HPも体も、命すら。                                              

 

 失えば、無くなる現実に、この世界は成ったのだ。                          

 

 

「なんで.....?」                                        

 

 静かで、隣りにいる俺にしか聞こえないような細い声。                          

 

 圭子が、誰に聞くわけでもないのにそう呟いた。                                                              

 

 俺には答えられない。                               

 

 俺には。                                            

 

「少し待ってろ、たぶんそれも教えてくれる」                                      

 

 視線は上に。                                         

 

 茅場晶彦がそこにいる。                                         

 

 そして茅場晶彦は俺の予想を裏切らなかった。                         

 

「諸君らは、なぜ、と思っているだろう。なぜ私は‐――茅場晶彦はこんなことをしたのか。大規模なテロ?君たちを人質に取った身代金目的の誘拐?」                              

 

 

 

 

 その言葉に、さきほどまで感じられなかった茅場晶彦本人の感情を感じた‐―気がする。憧れに、にたような。                                                                             

 

 そんなことが、あっていいはずがないのに。                                

 

『私の目的はそのどれでもない。なぜなら...今この状況こそが私にとっての最終的な目標だからだ。この世界を生み出し、鑑賞するためだけに私は、ナーヴギアをSAOを生み出した』               

 

 そして少し間をおいて。                                         

 

 そのご発せられた言葉には、茅場晶彦の感情はなかった。                         

 

 

 「....以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終える。プレイヤー諸君の‐――健闘を祈る」    

 

                                   

 

 その言葉を最後に巨大なローブはさらに上空へと浮かんでいき、空に広がる赤と黒の模様に溶けていった。さいごの波紋が消えたときそこには、最初から何もなかったかのように赤い、夕焼けが広がっていた。                                                                                                                      

 

 街からは音楽の授業で聞いたヨーロッパ風の曲が流れている。                          

 

 きっと、世界が始まったのだろう。                            

 

 ソードアート・オンラインという世界が。                                              

 

 そして‐‐‐‐――この時点で、おそらく理解が追いついたのか、周囲にいた人、茅場の言う通りなら一万人弱が、あるべき反応を見せた。                                 

 

 圧倒的な声量と怒りや絶望の悲鳴や怒号が放たれたのだ。                        

 

「嘘だろ......なんだこれ、嘘だろ!!」                                 

 

「ふざけるな、出せよ!!!ここから出せよ!!!」                       

 

「こんなの困る!!これから約束があるのよ!!」                          

 

「嫌ぁぁぁぁ!!帰して!!帰してよぉぉぉぉ!!!!」                          

 

 怒鳴り声、泣き声。                                         

 

 そんなものじゃ表現できない絶望がこの広場一体を包みこんだかに思える。 そして、その絶望は例外無く俺も感じていて。                              

 

「ッあ......!」                                            

 

 このやり場のない怒りを、悲しみ衝動的に吐き出そうと口を開いて。                          

 

 

 叫ぼうとした、そのときだった。                                 

 

「いや、いや、いや.......」                                    

 

 その瞬間俺を、絶望から一歩外に突き出したのは、隣いて、いつのまにか抱きついていた圭子の声だった。                                    

 

 その顔は、涙で歪んでいて。                                       

 声も、うまく聞き取れない。                                       

 

「なんで..こんなことに...?ちょっと前まで楽しく、遊んでて....現実に帰ったら、ママもパパもいて、今日はパーティーだって。言ってて.....」                               

 

「それなのに、こんなことになって..........ねぇ、陽仁、陽仁、陽仁」                     

 

 どんどん強く、抱きしめられる。                                        

 

 それにつれて、声もより悲しみを帯びる。                                                                                                                                                                                                                        

 

 でも、俺はそれを聞いてやけに、冷静だった。頭から冷水をかぶったような。                         

 

「私、私......ママとパパに会いたい。帰りたいよ............」                                    

 

 粒の涙が溢れて、顔を濡らす。                                

 

 「うぁ......」                                                 

 

 そう、言って俺に服に顔を押し付けた。                                  

 

 泣き声が、かすかに聞こえた。                                            

 

 それに、俺は。                                            

 

 

                                                                            

 

 俺は初めて、自分が何を失ったのかを正しく理解した。

 

 

 お父さん。

 

 

 お母さん。

 

 

 今日のピザ。

 

 

 昨日と同じような明日。

 

 

 来週の学校。

 

 

 全部、当たり前に来ると思っていた。

 

 

 けれど。

 

 

 もし。

 

 

 もし本当に茅場晶彦の言ったことが本当なら。

 

 

 もう二度と。

 

 

 帰れないかもしれない。

 

 

 胸の奥が、ぎゅっと潰れた。

 

 

 怖かった。

 

 

 今すぐ泣き出したかった。

 

 

 帰りたかった。

 

 

 お母さんに会いたかった。                                                                                 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺まで泣いたらどうなる。                                           

 

 

 

 

 今、泣いている幼馴染を、誰が守れる?                                                                                                                                                        

 

 

 

 

 ―――――――――だから、俺は。                                                   

 

 

 

 

 

 

「ごめん、シリカ」                                            

 

 

 

 

 そう言って、俺の服に頭をうずめるシリカの頭に手を添えた。                           

 

「はる、ひと?」                                             

 

 ゆっくり、ゆっくり、手を動かす。                                  

 

 頭を撫でる、落ち着けるように、泣かなくてもいいように。                         

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が誘わなければ。

 

 

 今日、シリカは家で家族と笑っていた。

 

 

 俺が誘わなければ。

 

 

 こんな場所に来ることもなかった。                                                   

 

 

「俺がお父さんに頼んだからだ、俺がSAOをしたいっていったからだ、俺がシリカを誘ったからだ」                                            

 

 胸の奥が痛くなった。                                        

 

 どうしようもなく、自分に対して怒りが湧いてきた。                                      

 

 そんな俺からシリカに向けた、謝罪。                                  

 

 

 

 「ごめん、本当にごめん」                                         

 

 

 

 

 

 

 

 こんなことになるなんて思わなかった、そんな言い訳はなんの意味もない。                    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから」

 

俺が誘った責任は、俺が取る。

 

この世界で。

 

おかしくなってしまった《ソードアート・オンライン》で。

 

 

 

 

「俺がシリカを守る」

 

 

 はっきりと言い切った。                                      

 

「守って守って守り抜いて、絶対に現実に戻してみせる」                                 

 

 

 

 

 そのためなら、俺はなんだってしてみせる。                                                                                                 

 

 

「だから、泣かないで」                                        

 

 

 

 

 

 幼馴染の涙を止めるためなら、なんだって。                                                                                          

 

 

 そう、固く決意する。                                                       

 

 

 

 

 

 そのままシリカの頭を撫で続ける俺と、俺に頭をうずめて泣き続けるシリカ。それが、俺達の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分の頬につたる、二筋の涙を無視しながら。





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 それだけで筆者の、やるしかねぇなが復活するんです!!!
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