授業中、明石くんがシューズを脱いで足をぶらぶらさせ始めた。
横目で、彼の足元を見てしまう。黒い靴下に包まれた、明石くんの足。
前後にぶらぶらと揺らされる足。女を誘い込むかのような淫猥な動き。
エロっ……。
触りたいなあ……。
すると、授業が終わってすぐ、明石くんがこっちを向いた。
「風右木さん、僕の足見すぎ~(笑)♡」
「なっ!? み、見てませんがっ!?」
「授業中に何考えてるの~?(笑)♡ すけべ~(笑)♡」
「違いますっ! そんなこと考えてませんっ!」
私が強く反論すると――明石くんは九十度向き直り、私の方へ体を向けてきた。そして、目の前で足をぶらぶら揺らし始める。
うわ、エッッッッロ。
「ほら見てるじゃん(笑)♡ 興味津々じゃん(笑)♡」
「違うんです違うんです違うんですっ!」
こんなの見ちゃうに決まってるでしょうが!
エロいんだから!!!!!!
「風紀を乱すな~とか言ってるくせに、自分は授業中エロいこと考えっぱなしの思春期真っ盛りピンク頭なんだね?(笑)♡」
「ぐうッ……!!!!!!!!!!!」
「足好きなの?(笑)♡」
「す、好きじゃありません」
明石くんが目を細めた。嗜虐的な眼差しで、私を見ている。
「風右木さん、体こっち向けてよ」
「……こうですか?」
なんだか嫌な予感がしつつも、私は言われるがまま明石くんの方へ体を向ける。
次の瞬間――明石くんが、私の足へ足を乗せてきた。
「なっ……!?!?!?!?!?!?」
じわっとした熱を感じる。男の、足の温度だ。
エッッッッッッッッッッッッッッッッロ。
「風右木さん、うれしそ~(笑)♡」
「う、嬉しくなんて……! 早くどけてください……!」
「え~?(笑)♡」
明石くんの足が、私の足をすりすりと撫でてくる。その感触がエロすぎて、体が昂っていく。
さすっさすっ♡と、靴下の擦れ合う音が聞こえる。
「はあっ……はあっ……! ふぅ~ッ……ふぅ~ッ……!」
私は気付けば興奮し、夢中になって、その光景を見ていることしかできなかった。
「うわ、顔こわ~(笑)♡ 興奮しすぎ~(笑)♡」
「こ、興奮なんてしてないッ……!」
「まあ、喉仏と比べたらだいぶ理解できるよ(笑)♡ オトコの足エロいもんね?(笑)♡」
エロすぎる。
エロすぎるエロすぎるエロすぎる。
明石くんは、私に足を重ねたまま、ぐっぐっと体重を乗せてきた。男の子の重みと、温かい足裏の温度を感じる。
踏まれて、足蹴にされてるのに、それでも嬉しさを感じてしまう。
駄目だ、口角上がるな……! 喜ぶな私……!
「風右木さん、踏まれてるのに興奮しちゃうのキモ~(笑)♡」
「だから興奮なんてしてないッ……!」
「ざこざこざぁ~こ(笑)♡」
「ふっ……ぐうぅッ……!」
「ざこ処女(笑)♡」
明石くんと目が合う。圧倒的格下の弱者を見る目。どこか愉しそうで、妖しげな眼差し。
笑われている。手玉に取られて、処女をいじられている。
悔しい。悔しい。悔しい。
ぐつぐつと性欲が煮えたぎっていく。身体が熱くて爆発しそう。
ちくしょうッ……!
このオスガキ分からせたいッ……!
**1
翌日の休み時間。
「風右木さんって、僕の二の腕触りたいんだよね?」
「っ!? な、なんですかいきなり」
「だってほら」
僕はスマホを取り出し、風右木さんのツイートを表示した。
『隣の席の男子、二の腕エロすぎる。男子の二の腕と胸板って同じ硬さらしいけど、触って確認してみたい』
「や、やめてください!!!」
風右木さんはたちまち赤面する。自分の恥部を晒されるのは、精神的にきついものがあるのだろう。
「触りたいんでしょ? いいよ、触って」
「……本当に?」
「うん」
僕はワイシャツをめくって、触りやすいように二の腕を露出させる。
風右木さんは信じられないものを見るように、二の腕を見つめていたが、やがて――おそるおそる手を伸ばしてくる。
彼女の手が、僕の二の腕に触れた。
「わ、すご……」
風右木さんは僕の二の腕を撫でて、揉んで、感触を楽しむ。だらしなく鼻の下を伸ばしていて、幸せそうな表情だ。
「嬉しいですけど、二の腕だけ触っても胸の硬さと同じか分かりません……」
「そうだね」
「…………」
風右木さんが、無言のまま僕をじっと見つめる。胸も触らせてください、とでも言いたげな眼差しだった。
「流石に胸はダメだよ」
「わ、分かっています」
と言いつつも、風右木さんはちょっと残念そうな顔をしていた。
「風右木さん、人生で一回も男のおっぱい触れずに死んでいくんだろうね(笑)♡」
「勝手に決めつけないでください!」
風右木さんはすごく嫌そうな顔になった。
たぶん、彼女自身もそうなる確率が高いことは理解しているのだろう。
男女比1:7。男と性交渉の機会があるのは、ごく一部の女だけだ。真面目で優等生な風右木さんが、この先男性を手に入れるのは、きっと難しい。
「風右木さんは、一生処女だよ(笑)♡」
「ぐうッ……!!!!!!」
風右木さんの顔が屈辱で歪む。一生処女、という言葉が効くのだろう。怒りと悲しみの入り混じる壮絶な顔つきだ。
可愛いなあ……風右木さん。
僕は彼女の耳へキスするかのような距離まで近づき――吐息とともに囁く。
「可哀想な風右木さん(笑)♡ これからもいっぱい処女いじってあげるよ(笑)♡」
びくん、と彼女の体が震える。
絶望。屈辱。羞恥。憤怒。莫大な負の感情が集合した、凄絶な形相だった。
**2
一生処女、という言葉に胸を抉られ、その後の授業が頭に入ってこなくなった。憤死しそうなくらいの怒りで頭が埋め尽くされていて、何も手につかない。
分からせたい。
性欲が爆発しそう。
いい加減ガマンの限界だ。
明石くんをめちゃくちゃにしたい。ベッドの上で欲望をぶつけたい。
悔しいのに、彼の体には興奮してしまう。その矛盾を自分の中で上手く消化できず、苦しい。
明石くんを分からせることができれば、全部解消されるのに。
そんなチャンス、来る訳ないか……。
*
「風右木さんの家で勉強会やらない?」
「えっ、わっ、私の家でですか?」
期末テストが近付いてきたある日、突然明石くんからそう誘われた。
「うん。風右木さんいつも学年一位だから、勉強教えてほしいなって」
「いいですよ。ぜひ来てください」
「やった、ありがとう風右木さん♡」
明石くんは嬉しそうに笑った。
でも、なんで私なんだろう。明石くんは友達も多いし、一緒に勉強をする相手なんていっぱいいるはずなのに。
――我が家に来た。
自分の部屋に明石くんを招き入れる。彼は部屋に入るなり驚いていた。
「物少なっ! 風右木さんミニマリストってやつなの?」
「そういうつもりはありませんが、必要のないものは置いていません」
私の部屋に男子がいる……。うわ、すご……。夢みたい……。
「では、勉強を始めましょう」
ラグの上に座り、ローテーブルを挟んで勉強を始める。真面目に勉強会をしていたが――しばらくすると、突然明石くんが私の隣へやってきた。
「な、なんですか」
さすっさすっ♡と、彼が私の手の甲を撫でてきた。
それだけで、異性との接触が嬉しくて、心臓が跳ね出す。だめだ、こんなことで嬉しくなるな私……!
「風右木さん顔あか~い(笑)♡ 処女すぎ~(笑)♡」
「赤くないですっ……!」
「えいっ」
明石くんが、私の手を握り――指と指を搦め、恋人繋ぎをしてきた。
男の子の、やわらかい手のひら。温かい体温。
うわ、うわうわ……!!!!!
「ぶふっ!(笑)♡ 顔真っ赤~(笑)♡ 処女さんかわいい~(笑)♡」
だめだだめだだめだ!
口角上げるな喜ぶな私!!!
彼は薄く目を細め、私の内心を見抜いているかのように微笑む。そして、私の耳に唇を近づけてきて――。
「風右木さんのざぁ~~~~~こ(笑)♡」
「ッ……!!!!!」
私は懸命に性欲を抑えながら、彼を睨む。
「私が明石くんのことをどういう目で見てるか、知ってますよね? いつ襲われるか分からないのに、怖くないんですか?」
「怖くないよ~(笑)♡ だって風右木さん処女だし(笑)♡」
マジで襲ってやろうか。
いや、駄目だ。落ち着こう。そんなことをしたら、強
このオスガキを分からせたいという思いはあるが、私の一生を代償として支払うのは重すぎる。
「それとも、恋人でもないのにえっちしちゃう?(笑)♡」
「!?!?!?!?!?!?!?」
明石くんが私の目を見つめながら、そういって笑った。蠱惑的で、煽情的で、抗いがたい誘惑だった。
したい。
めちゃくちゃしたい。
でも、こんな見え見えの冗談を真に受けるほど愚かではない。
「しません。そもそも恋人でもないのに性交渉をするのは不健全です。きちんと段階を踏んでからでないと」
「真面目すぎ~」
「明石くんが軽薄すぎるんですよ」
「でも僕恋人いたことないし性経験もないよ」
「えっ!?!?!?」
「部活忙しくてさ。でもそろそろ恋愛もしてみたいな~って思ってたところなんだ」
「え、意外です……遊んでそうな見た目なのに」
結構、衝撃だった。絶対に元カノがいると思っていたし、非童貞だと思っていた。
なんだか、急に明石くんを身近に感じてしまう。
「ねえ、ほんとにしちゃう?」
男の気まぐれ、というものがあると聞いたことがある。
男はまれに、一生男子とS○Xするチャンスのなさそうな女子に、一度限りの戯れでその機会を恵んであげることがあるらしい。
男女比1:7の世界では、そういう一回限りのワンチャンを夢見る女は非常に多い。
ある地域の学校において、処女卒業率が五割を超えるというデータがある。その理由は、性に奔放な一部の男子が、遊び感覚でヤラせてあげているからだ。この一部の男子の気まぐれが、処女卒業率の平均値を壊す傾向にある。
そういう一回限りのチャンスが、私にも回ってきたのだ。
「風右木さんの処女、貰ってあげるよ」
それを聞いた瞬間、私は明石くんを押し倒していた。
彼は目を見開き、私を見ている。その表情に、処女をからかうオスガキの余裕はなかった。
「言質、取りましたから。やっぱり嫌だって言っても許しませんからね」
「え、ちょっ、風右木さん、目怖いよ……?」
もうガマンできない。
明石くんとS○Xしたい。
このオスガキを、めちゃくちゃに分からせたい。
毎日処女をバカにされ続けて、我慢の限界だ。思う存分、鬱憤をぶつけてやる。私には、その権利があるはずだ。
*
私と彼は、ベッドの上で並んで寝転がっている。私が彼に腕枕をしてあげている形だ。
「気持ちよかったですね、
「
行為中、無意識に下の名前で呼び合っていた。
冷静になると少し気恥ずかしくて違和感はあるけど、流れのまま下の名前で呼び続けることにする。
「ずっと喘いでましたけど、流石に感じすぎじゃないですか?」
「うるさいっ!!!」
至上の快楽だった。毎日処女をいじられ、からかわれ、煽られ続けてきた分、その復讐を果たした瞬間の気持ちよさは最上級だった。
とても心が満たされている。性行為の余韻もあって、心地よい感覚だった。
「順序が逆だとは思うのですが――好きです。付き合ってください、開くん」
「う、うん……よろこんで」
開くんは、そういって嬉しそうに笑った。恋する男の子の、まぶしい笑顔だった。
彼氏、できちゃった。
一生処女のまま終わると思ってたのに。
すごい。なんだか、私の人生じゃないみたいだ。
だって、つい最近まで、私は隣の席に座っているだけの人間だった。開くんの足や二の腕をこっそり見ることしかできない人間だった。
スクールカースト最上位の陽キャ男子と、勉強しか取り柄のない私。決して、交わることはないと思っていた。
それが、性的な目で見ていたことがバレた――という意味不明なきっかけで距離が近付き、ここまで来れてしまった。
「よろしくね、吹雪」
「よ、よろしくお願いします、開くん」
開くんの名前を呼ぶ度、心が幸せで満たされる。彼氏がいるって、こんなに幸せなんだ……。
「でも、吹雪がちゃんと人間でよかったよ」
「……どういう意味ですか?」
「吹雪、勉強ばっかりで、楽しいことなんにもない人生なんだろうなあって思ってたから」
「酷すぎませんか!?!?!?」
私だって人間だ。勉強するだけの機械ではない。ちゃんと感情があるのだ。
すると――開くんが私の頭を撫でてきた。
「な、なんで撫でるんですか」
「吹雪が可愛いから」
「な、なんですかそれ」
気恥ずかしい。心の中の柔らかいところを触られているような気分だった。
私は起き上がり、彼の上へ跨る。
「元気になったので、二回戦行きたいです」
「えっ」
私が開くんの胸へ手を伸ばそうとすると、彼は慌てて両腕を交差させてガードした。
「隠しちゃ駄目ですよ。もう、全部私のものなんですから」
無理やり腕を掴んで、彼のおっぱいを露わにする。今の彼は、身動きを封じられ、今から食べられることしかできない俎上の男だ。
「ちょっ、まって、僕もうだめっ――」
「お仕置きの時間です。風紀を乱すスケベなカラダは、私が取り締まってあげます」