武蔵転生記   作:masasoukoku

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第八十回 【弟子になってあげるわ】

寺子屋から少し離れた広場。

 

武蔵は子どもたちが書いた文字を眺めながら、一人うなずいていた。

 

「ほう。」

 

「みな上達が早いの。」

 

その様子を、少し離れた木陰から睨んでいる者がいた。

 

ナーベラル・ガンマである。

 

「……。」

 

じーっ。

 

視線の先には武蔵。

 

さらにその隣では、クレマンティーヌが子どもたちと笑っている。

 

「先生ー!」

 

「次はこれ教えて!」

 

「はいはい。」

 

笑顔で答えるクレマンティーヌ。

 

武蔵も穏やかにその様子を見守っている。

 

ナーベの眉がぴくりと動いた。

 

「……なによ。」

 

「……あの変態。」

 

「クレマンなんかと仲良くしちゃって。」

 

ぼそりと漏らす。

 

その横でルプスレギナがにやにや笑っていた。

 

「ナーちゃん。」

 

「そろそろ任務するっす。」

 

「任務?」

 

「武技っす。」

 

「あ。」

 

そうだった。

 

アインズ様から命じられた任務。

 

武技を覚えてこい

 

ナーベは腕を組んだ。

 

「そうだったわね。」

 

ルプスはさらに悪い笑みを浮かべる。

 

「教えてもらう時は。」

 

「クレマンみたいに密着するっす。」

 

「え?」

 

「腕組んで。」

 

「『武蔵さん(マイダーリン)♡』って。」

 

「絶対覚えが早いっす。」

 

「な、何言ってるのよ!」

 

ナーベの顔が一瞬で真っ赤になる。

 

「そんな変態みたいなこと!」

 

「私がするわけないでしょ!」

 

「おや?」

 

「クレマンはしてたっすよ?」

 

「ぐ……。」

 

言い返せない。

 

「武蔵、嫌がってなかったっす。」

 

「むしろ普通だったっす。」

 

「そ、それは!」

 

「武蔵が変態だから!」

 

「変態同士だからよ!」

 

ルプスは肩を震わせて笑う。

 

「じゃあ普通に頼めばいいっす。」

 

「それが一番っす。」

 

「そ、そうね。」

 

「任務なんだから。」

 

「任務。」

 

「仕事。」

 

「そう。」

 

「仕事。」

 

何度も自分に言い聞かせる。

 

大きく深呼吸した。

 

そして武蔵の方へ歩き出す。

 

ルプスは後ろからこっそり親指を立てた。

 

(いけいけっす。)

 

ナーベは武蔵の前で立ち止まる。

 

「……。」

 

「……。」

 

武蔵が顔を上げる。

 

「なんじゃ。」

 

「ナーベ。」

 

「…………。」

 

ナーベは何度も口を開いては閉じる。

 

(言え。)

 

(任務。)

 

(これは任務。)

 

(任務だから。)

 

意を決した。

 

「あ、あの……。」

 

武蔵は首をかしげる。

 

「なんじゃ。」

 

「変態。」

 

「またそれか。」

 

武蔵は苦笑する。

 

ナーベは顔を真っ赤にしながら叫んだ。

 

「ぶ、武技を教えなさい!」

 

広場が静まり返る。

 

子どもたちまでこちらを見る。

 

クレマンティーヌも目を丸くした。

 

「え?」

 

武蔵は少し考えてから頷く。

 

「おお。」

 

「それならよい。」

 

「教えよう。」

 

あまりにもあっさりした返事だった。

 

ナーベは拍子抜けする。

 

「……え?」

 

「本当に?」

 

「うむ。」

 

「わしも武技を人に教えるのは初めてじゃ。」

 

「共に修業じゃな。」

 

そう言って笑う武蔵。

 

ナーベは少しだけ表情を緩める。

 

「そ、そう。」

 

「よろしく……。」

 

後ろではルプスレギナが頭を抱えていた。

 

(違うっす。)

 

(もっとこう。)

 

(腕を組むとか。)

 

(密着するとか。)

 

(見せ場が欲しかったっす!)

 

ルプスの期待は見事に外れた。

 

一方、クレマンティーヌは腕を組みながら呟く。

 

「……。」

 

「なんか。」

 

「お似合いじゃない、あの二人。」

 

その言葉を聞いたナーベは、また真っ赤になって叫んだ。

 

「ち、違うわよ!!」

 

子どもたちはそのやり取りを見て、一斉に笑い出した。

 

カルネ村には、今日も平和な笑い声が響いていた。

 

-------------------------------------------------------------

カルネ村の外れ。

 

木々に囲まれた広場で、武蔵とナーベは向かい合っていた。

 

少し離れた木陰では、ルプスレギナとクレマンティーヌが興味津々で見守っている。

 

「では武技を教える。」

 

武蔵が静かに言う。

 

ナーベは腕を組み、ふんと鼻を鳴らした。

 

「ええ、教えられてあげるわ。」

 

どこか尊大な態度である。

 

武蔵は苦笑した。

 

「相変わらずじゃの。」

 

そう言うと、じっとナーベの全身を観察する。

 

「ふむ……。」

 

「ナーベ、お主の戦士としての強さなら――」

 

「まずは基礎的な武技じゃな。」

 

「ええー?」

 

ナーベは露骨に嫌そうな顔をした。

 

「アインズ様にお見せするのよ?」

 

「地味な技じゃ困るわ。」

 

武蔵は首を横に振る。

 

「基礎なくして奥義なし。」

 

「今のお主では、まず土台を作ることが先じゃ。」

 

「う……。」

 

その言葉には反論できなかった。

 

「よく見い。」

 

武蔵は静かに息を整える。

 

余計な力を抜き、全身へ意識を巡らせる。

 

「――外皮強化。」

 

体の表面が、淡く光を帯びた。

 

ほんの一瞬。

 

しかし確かに何かが変わった。

 

「ナーベ。」

 

「殴ってみよ。」

 

「本気で?」

 

「構わん。」

 

ナーベは少し構えたあと、

 

「いくわよ!」

 

腹へ向かって鋭い拳を叩き込む。

 

ドンッ!

 

鈍い音が響いた。

 

「……ぐ。」

 

武蔵は一歩も下がらない。

 

逆にナーベが拳を押さえた。

 

「なんなの……これ。」

 

「岩でも殴ったみたい。」

 

武蔵は満足そうに頷く。

 

「これが外皮強化。」

 

「防御力を高める武技じゃ。」

 

「帝国闘技場で戦ったゴ・ギンから学んだ。」

 

ナーベは感心したように拳を見る。

 

「面白いわね。」

 

「次はお主じゃ。」

 

武蔵が言う。

 

「目を閉じよ。」

 

「余計なことは考えるな。」

 

「自分の身体がアダマンタイトになったと思え。」

 

ナーベは目を閉じる。

 

「私は……アダマンタイト。」

 

「私はアダマンタイト。」

 

「私は――」

 

淡い光が身体を包んだ。

 

武蔵の目が細くなる。

 

「ほう。」

 

「会得したかもしれんな。」

 

ナーベは目を開く。

 

「本当?」

 

「確認してみる。」

 

武蔵はナーベの肩を軽く叩き、腕や胸を軽く押して感触を確かめる。

 

「まだ甘いの。」

 

「身体の一部しか硬化しておらん。」

 

「もっと全身を一つと考えるのじゃ。」

 

「そういう確認なら先に言いなさい!」

 

ナーベは顔を赤くしながら武蔵を睨む。

 

「集中を乱されたじゃない!」

 

「はっはっは。」

 

武蔵は悪びれもなく笑った。

 

「もう一度じゃ。」

 

「……もう!」

 

ナーベは拳を握る。

 

「この変態!」

 

勢いよく武蔵の腹へ拳を打ち込んだ。

【挿絵表示】

 

 

ドゴッ!

今度は先ほどより重い衝撃が響く。

 

武蔵の身体がわずかに揺れた。

 

「ほう!」

 

武蔵は目を見開く。

 

「今の拳。」

 

「剛拳になっておる。」

 

ナーベも自分の拳を見つめる。

 

「え?」

 

「まさか……。」

 

武蔵は嬉しそうに笑った。

 

「怒りに任せて放った一撃。」

 

「じゃが、力の伝え方が変わっておる。」

 

「外皮強化の代わりに剛拳をもう会得したようじゃな。」

 

木陰で見ていたルプスレギナが口笛を吹く。

 

「早いっすねぇ。」

 

クレマンティーヌも感心したように頷いた。

 

「さすがナザリックの化け物。」

 

ナーベは照れ隠しに顔を背ける。

 

「ふ、ふん。」

 

「私が優秀だからよ。」

 

武蔵は豪快に笑う。

 

「うむ。」

 

「才能はある。」

 

「だが修業はまだまだこれからじゃ。」

 

「次はもっと難しい武技を教えてやろう。」




外皮強化が集中が乱れたため腕が強化されて結果
剛拳を会得しました
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