転生した先は少し不思議な世界でした。   作:ひみつ道具職人

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のび太の恐竜、完

 

「子ども浅知恵にしては頑張ったと褒めてあげよう」

 

「それでどうだい?話す気になったかな?」

 

 

 鉄格子の向こう側からにやけた顔で、そう脅すように言ってくる黒マスクの男。あたりを見回すと、暗闇でよく見えないが、壁一面無機質なコンクリートで作られているようだ。立ち上がろうとすると、手足がうまく開かずこけてしまう。身体を観察してみると、手足に光るリングのような枷が付いているようだ。

 

 

「何度も言ってるだろ。お前たちに言うことなんか1つもない!」

 

「残念だよ。我々は君をどうこうするつもりはないというのに。素直に吐けば、すぐにでも解放してあげるよ」

 

「1度殺そうとして置いて、ずいぶん都合よく言い分が変わるな」

 

「そんなこともあったかな?だとしたら申し訳けなかったね」

 

 

 そう言いながら、鉄格子のロックを解除し中に入ってくる恐竜ハンター。手には見たこともない銃型の道具を持っている。

 

 

「まあ、素直に吐かないというなら仕方ない。身体の方に聞くしかないな」

 

 そういって銃口を向けてくる黒マスク。

 

 

「これはね、撃った相手に精神的な苦痛を自由に味合わせることができるんだ。身体的な外傷はなしにね。死ぬことは決してなく、苦痛だけが与えられる。便利だろう?子守り用ロボットが持っている安物とはわけが違うぞ」

 

「さて、君の場合はどこまで耐えられるか。見ものだね」

 

 

 ちっ、未来の道具なら自白させる物なんていくらでもあるだろうに、趣味の悪い奴だ。それにしても、まだか。もう結構時間が経ってるはずなんだが…。

 早く来てくれ、さすがにい拷問されるのは嫌だしキツイ。中身大人といっても一般人だぞ。軍人だったりら社会の人間じゃないんだ。はっきり言って、耐えられる自身はない。というか十中八九無理だ。

 

 

「ッーー。たとえ拷問されようが、ピー助のことは何も話さない。時間の無駄だ」

 

 

 だがこいつの前で弱音は吐きたくない。

 そう吐き捨てた俺に対して、黒マスクは滑稽だとでもいうように、突然笑い始めた。

 

「フっフっフ。君、何か勘違いしているね」

 

「?何を言っている?お前はピー助を狙ってーー」

 

「確かにそうだが、今私が言っているのはーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間前…

 

 

 

「さて、もう恐竜ハンターの基地は目前だ。そこで作戦を再確認しておこう」

 

 

 現在、俺たち6人は白亜紀の、それも恐竜ハンターの基地の近くにいる。ちなみにやつらがいる可能性が一番高い日本の近くの基地だ。ここまで来るのにタケコプターなどの目立つ移動手段は使っていない。やつらに先に補足される可能性がある以上、使えないのだ。そのため歩いてきたのだが、やはりみんな結構疲弊している。当然だ、道が舗装されていないうえ、恐竜ハンター抜きでも命の危険が付きまとう時代でもある。むしろこうして5人無事にたどり着けた時点で賞賛に値するだろう。

 

「まず、あえて俺1人がやつらの基地の周りに姿を現す。そうすれば十中八九バレるだろう。そうしてやつらからすればそうして基地に入った段階でタイムパトロールが基地内に入れるようタイムホールを開くための装置を起動する。みんな恐竜ハンターが外に出てきた際の逮捕を手伝ってくれ」

 

 

「それはわかってるけどよ。あえて姿をさらす必要があるのかよ?まして1人だけなんて…」

 

「私もそう思うわ。私たち全員で行くべきよ。守さんが危険だわ」

 

「それに、やつらがいる基地までわかってるならタイムパトロールの艦隊に襲撃を掛けてもらうとかできないの?」

 

 ジャイアンとしずかちゃん、のび太からからそのような意見が出てくる。確かにこの作戦では危険度が高いのは圧倒的に俺だ。そこが2人、いやみんなは心配なんだろう。

 だがこれは俺がやらなければいけない。というより、俺以外の人にやらせたくない。これは俺が介入した結果起きたことなんだ。その尻拭いを他の人にやらせた結果、命を落とすなんてことになったら俺は責任持てない。俺が死ぬより、他の皆が死ぬ方が怖いのだ。それに他の5人には役割もある。

 

 

「それは無理だ。さっきも言ったように、他の皆には別でやってもらうことがある。それに、みんなが一緒にいたら作戦が機能しない。それにやつらはピー助を狙ってる以上、その情報を握ってる俺をすぐに始末することはないだろう」

 

「それと、やつらは基地の周り半径数百キロにわたってタイムロックを掛けていて、時間移動ができないようにしてるんだ。だからタイムパトロールが来れないんだよ。もし仮にそのエリアの外側からタイムパトロールが侵入したら、基地に着くころにはもぬけの殻だ」

 

 ドラえもんが俺に続いてそう説明してくれる。タイムロックを掛けている範囲が広いのは、基地の位置を特定させないためだろう。狭い範囲にのみ掛けていたならば、そこのエリアに基地があると言っているようなものだ。それを避けるためだろう。

 そう、俺の単独行動は基地に入るために必要なのだ。そもそもあの基地は忍び込むことができない。映画ではドラえもんとのび太が潜入していたが、この世界ではピー助を捕まえようとする際にタイムパトロールと派手にやり合っているため、恐竜ハンター側の警戒度が上がっているのだ。警備も厳重になっており、忍び込むことができない。だから基地に入るにはあえて捕まるしかないのだ。それもやつらを油断させるために1人で。

 

 

「俺が作戦を開始すると同時に、5人に姿を変えたコピーロボットが各地の基地に潜入しようとして捕まる。俺と一緒に行動したらその作戦が瓦解するんだから、行くのは俺1人だ」

 

「でも…」

 

 

 そう、各地の基地でも同じように他の5人に姿を変えたコピーロボットが捕まる手はずになっているのだ。さすがに俺1人で他の皆がいなければ、あちらも罠だと警戒するだろう。そのため同時潜入という体を繕う必要がある。俺の役割もコピーロボットさせればいいと思うかもしれないが、もし仮に全部がコピーロボットだとバレてしまえば、2度とこの作戦は使えなくなる。たとえ他がコピーロボットどとバレたとしても、俺が本物ならば情報を引き出すためしばらく基地内に置いておくだろう。タイムパトロールが通るためのタイムホールを開けるには時間がかかる。すぐにコピーロボットだとバレてしまえばこの作戦は機能しない。それゆえの俺本体による潜入だ。

 

 

「そうだよ。タイムパトロールの人と話し合って決めたんならこの作戦が一番だよ」

 

「でも、恐竜ハンターは私たちが基地に潜入しようとすることを不自然に思わないかしら」

 

 

 そう不安をこぼすしずかちゃん。確かに考えればそうだろう。タイムパトロールは公的な治安維持組織だ。そんな組織が関係者だとしても素人の小学生を囮捜査に使うのは不自然かもしれない。

 …だがそれは組織に対してある種の信頼性あっての話だ。タイムパトロールはどうしようもなくなった時に限り、民間人を操作に利用することがある。実際にドラえもんの作中でも、日本誕生でのび太を利用してギガゾンビの居所を突き止めようとしている描写があった。実際にタイムパトロールの人に聞いても、一般人に協力してもらったことが何度かあるらしい。…この場合、それが都合よく働いてるから文句は言えないが、一般人を使わないと実行犯を逮捕できないタイムパトロールの不甲斐なさ悲しみを覚えざるを得ない。

 まあとにかく、そのような過去の事例から、俺たち6人が出張ることはそこまで不自然に思われない可能性が高い。

 

 

「タイムパトロールの過去の経歴を考えると、そこまで不自然でもないよ。まあ絶対とは言い切れないけど」

 

「なら…」

 

「でもドラえもんの道具も通用しない以上、この方法しかない。それにこの膠着状態が続けば、しびれを切らしたやつらがピー助の家族の首長竜を絶滅させるなり人質にするといった出る可能性もある。悠長にしてられないんだ」

 

「そうだよしずかちゃん。できるだけ早く恐竜ハンターを何とかしないと、歴史にどんな影響が出るかわからない。この状況じゃこうするしかない」

 

 そう言ってしずかちゃんを説得するドラえもん。そうだ、事態は一刻を争う。もし恐竜ハンターがそのような強行にでれば、事は俺たちの周りだけで収まらない。最悪人類の歴史そのものに影響が出かねない。

 

「これはピー助のためだ。ピー助が白亜紀の海に安心して帰れるように」

 

「……わかったわ。他に代案も浮かばないし、ピー助ちゃんのためにも」

 

 どうやらしずかちゃんは納得してくれたようだ。あとはジャイアンだけだが…

 

「ジャイアンもそれでいいか?」

 

「オレは構わねえよ。ただいざとなったら、折をぶっ壊すでいいんだな?」

 

「ああ、そうしてくれ。きっとそれが有効なはずだ」

 

 今ジャイアンが言っているのはもう1つの作戦のことだ。一応この作戦がうまくいかなかったときのためのサブプランといったところだが、おそらく使うことになると考えている。腐っても相手はプロだ。タイムパトロールの協力があるとはいえ、素人の俺が考えたこの穴だらけの作戦と演技で欺けるとは思っていない。だからこそのサブプランだ。というかメインの作戦がこのサブプランを隠すためのカムフラージュといえるかもしれない。

 

 

「それじゃあ行ってくるよ。ドラえもん、あとは任せる」

 

「うん、健闘を祈る」

 

 そういってドラえもんたちと別れる。いざというときの指揮はドラえもんに任せてある。それにこの場にはいないが、あの5人には常にタイムパトロールの監視がついてる。いざとなったら守ってくれるだろう。あちらは心配いらない。それに…

 

「のび太!」

 

「ん?」

 

「そっちもがんばれよ」

 

「わかってるよ、ピー助のためだ!」

 

 我らが主人公は、銃の腕前においては最強だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今私が言っているのは、君が何を企んでここに来たのかということだ」

 

「ッーーー」

 

「そもそもタイムパトロールに保護された君たちが、そのあと我々の前にのこのこ現れるのがどうも不自然だからねえ」

 

 

 …やっぱりバレてるか。だが恐竜ハンターもこの作戦の穴を自慢げに話すばかりで、もう1つの作戦に気づいた様子はない。俺が小学生だからと、大した作戦など実行できない、子どもの浅知恵ではここまでが限界だと嘲笑っているのだろう。

 だがそれでいい、そうやって束の間の優越感に浸ってくれればそれだけ目が曇る。

 

 

「ーーーおっと、少々おしゃべりが過ぎたかな。子ども相手に大人げなかったね」

 

「…そういうの好きそうな面してるけどな」

 

「おや、見抜かれてしまったか。ふっふっふ、私もまだまだ未熟だね、子どもに嗜好がバレてしまうとは。ーーーそれとも、ポケットに入れてるおもちゃがバレるまでの時間稼ぎかな?」

 

 ッタイムホールを開けるための転送装置のことまでバレてるか…。だがもう1つの作戦のことまでバレた様子はない。ならば問題はない。

 

 

「基地内ならタイムホールが開けるというところに感づいたまではよかったが、所詮はお子様だな」

 

「そうかもな。ならそっちはそのお子様以下の知能ってことか?」

 

「…この期に及んで減らず口を。そこまで苦痛を味わいたいのならお望み通りーーー」

 

 

 そういって恐竜ハンターが引き金を引こうとした瞬間、基地全体を揺らすような轟音が響いた。

 ッ来た!

 

「なんだ。何が起こった!」

 

 そう言って取り乱している恐竜ハンター。少ししたら、下っ端と思わしき隊員が血相を変えた表情で走ってきた。

 

「大変です。恐竜の群れが基地を襲撃してきて…」

 

「なにッ!?」

 

 そう恐竜ハンターが慌てふためく傍で、俺は作戦成功を確信し笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!よかった無事だったーー」

 

「まったくだぜ!1人でかっこつけやがってよ」

 

 そういってタイムパトロールに保護された俺に駆け寄ってくる皆。この様子から察するに、もう1つの作戦はうまくいったようだな。

 あの後、恐竜の群れが基地を襲い、それに乗じたタイムパトロールの隊員たちがあっという間に基地内を制圧して見せたのだ。そう中で俺は保護され、こうして安全な場所まで送り届けられた。

 

 

「いやぁ、この作戦を聞いたときはビビったよね。まさか恐竜をけしかけるっていう原始的な方法だとは」

 

「でも結果的にはうまくいったんだからいいじゃねえか」

 

「いやそうだけどさぁ~…」

 

 そう、俺が考えた作戦とは、桃太郎印のきび団子で恐竜を大量に手なずけて強襲させるというものだった。

 シンプルすぎるだろと言われるかもしれないが、この作戦なら通用するという根拠はあった。というのも、実映画ではこの方法で恐竜ハンターを逮捕まで追い込んでいるのだ。旅路の道中できび団子を食べさせたティラノサウルスが逆転のきっかけになっている。それを参考にしたのだ、それに恐竜ならこの時代のどこに生息していてもおかしくないから、警戒されることなく接近できた。さらにやつらに捕らえられている恐竜も解き放ってやれば、やつらはその対応にも追われ、よりこちらへの対処が難しくなるだろう。そのことをドラえもんたちとタイムパトロールに教えていただが、見事実行してくれたようだ。

 

 

「まあ何はともあれ、これで万事解決。ようやくピー助を白亜紀の海へ返せる」

 

「そうだ、ピー助!」

 

 

 そうやって6人で話していると、髭をはやしたタイムパトロールの長官らしき人が近寄ってきた。

 

「ありがとう。君たち6人には感謝してもしきれないよ」

 

「いえいえ、僕たちも巻き込まれたから手伝っただけでーー」

 

「それでもだよ。…それと、すまなかった。我々の不甲斐なさを君たちに押し付けてしまったね。お詫びといっては何だが、君たちを海まで安全に送り届けることを約束しよう」

 

 

 そういって感謝の言葉を述べる長官らしき人。

 送ってくれるのか。それ自体はありがたいんだけど…

 

「ありがとうございます。それと、捕まっていた恐竜たちはどうなるんですか?」

 

「安心してくれ。我々が責任をもって元の場所と時代に送り届けよう」

 

 

 そう長官の人が言うと、5人は安心したような表情を浮かべる。

 まあ俺としてもよかった。基地内で捕まって連行されてるときに、捕まっていた恐竜たちの様子がチラッと見えたが、その仕打ちはとても見ていられるものじゃなかったからな。

 

 

「よし、これでもう心配事もなくなったし」

 

「いざ白亜紀の日本の海へ!」

 

 

 そうドラえもんとのび太が言うと、隊員に促されるまま、タイムパトロールの船であるタイムマリンに乗り込んでいくドラえもんたち。

 やっぱりそうかぁ~。タイムパトロールの船で行くのか~。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピー助ッ!幸せになるんだぞ!」

 

 

「ぴゅーい!」

 

 

 

 

 

 

 そういって、涙しながらピー助と別れを告げたのび太。それからものび太は涙を流しながらずっと壁の一点を見つめて、心ここにあらずといった顔だ。

 現在、俺たちがいるのはタイムマリンの中だ。タイムホールを通って現代に帰っている最中である。他の4人は泣きこそはしていないが、それぞれ考え込んでいるのか、物思いに耽っている。

 ピー助との別れがあっけなくないかとも思うが、この世界だとのび太以外の3人はそこまでピー助との交流がないためしょうがないと思うしかない。

 そう考えても、やはりファン心理としては、映画の数々の名シーンを潰してしまったことに対して、もったいないという感情も抱いている。特にラストシーンについては非常に残念だった。のび太の恐竜2006では、のび太の部屋のタイムマシンまで歩いていき、自分たちの力でピー助を故郷に送り届けていた。あのシーンがのび太の恐竜における最大の名場面だと思う。そのシーンがなくなってしまったのは非常に惜しかった。とはいっても、この世界ではアメリカから日本まで歩いてきたわけではないのでまた違った場面になるのかもしれないが、結果的には俺が介入したことによって変わってしまったのは確かなのだ。

 

 

「のび太君…」

 

「……」

 

「ピー助はこれからもきっと元気で健やかに暮らしていくさ」

 

「…うん、そうだね。僕がくよくよしてたら、ピー助も悲しむよね」

 

 そういうのび太だが、やはりまだ立ち直り切れていないようだ。当然だろう、のび太にとっては家族同然の存在だったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 




恐竜ハンターが使っている銃型の道具はオリジナルです。
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