今回も駄文です。
母に手を引かれながら、俯いて木の葉の街を歩く。
既に買い物は終えており、家に帰るところであった。
今は罪悪感を感じている場合じゃない。もう一手打てる策はないかと悶々と考える。
なんで自分はもっと早く動かなかったんだろう、そうすれば、もっとまともな策を打てたはずなのに。
自分の間抜けさには嫌気が差す。
今日という日まで、私はずっとイタチとサスケとの日常にばかり気を取られていた。九尾事件のことを忘れて呆けたように過ごし、当日になってようやく思い出したのだ。
もっと早く思い出していれば、里に来ていた自来也をナルトが生まれる日まで引き留めることが出来たかもしれないのに。
といっても、自来也がいたところで結果が変わる可能性は低い、とも思う。いたところでオビトの神威に対処してナルトを奪われる前に保護することも難しいはずだ。期待するとしたらクシナが九尾を抜かれる前に助けることが出来る可能性があるということと九尾が復活した後の被害を抑えられる可能性があるということだ。
だからといって、もう何もかも遅いんだよなぁ。
たらればばかりを考えても意味がない。
頭を振るって間に合わない考えを振り払う。
ふと見えた先が気になって視線がそこに釘付けになった。
あれは……カカシ、先生?
そこは木の葉の墓地であった。中央の奥に大きい慰霊碑が鎮座しており、その前には暗部服に身を包む銀髪の青年が佇んでいた。
私は足を止めた。それにつられて母も足を止め、私が見ている方を見た。
「イナホ、ここは墓地なのよ」
気になる?と母は私の顔を覗き込んできた。私はその言葉に頷いた。
別に墓地が気になったわけではない。カカシらしき青年が気になったのだ。
カカシ先生なら、どうにかなるかな?
仮面の男、もといオビトとカカシは因縁のある相手だ、最終的にオビトを光堕ちさせたのがナルトだとしても、カカシの存在があったからこその改心であったはずだ。
カカシ先生をクシナさんの出産場所に向かわせたら何とかなるかな?
そこまで考えてこの案は上手くいかないのではないかと不安になってくる。
原作でのカカシは仮面の男と相対してもオビトだとは気づかなかった。事前に知らせない限り向かってもらったところで意味がない、むしろ相手の感情を逆撫でしかねない。本来よりも里への被害が大きくなる可能性がある。
どうしよう……一か八かで伝えてみようかな?でも証拠がないし……。
どうすればいいのかと思考が目まぐるしく動く。
頭が痛くなってきた……。
遠くで佇むカカシらしき人物を見つめながら頭を抱える。
するとその銀色が視界から掻き消えた、のと同時に身体が宙に浮いた。
え、なになになに?
困惑し自分を抱える人を見ると見たことがないほど険しい顔をした母であった。その母は私を通り越した先を見ていた。恐る恐る母の見ている方に顔を向けるとそこにはカカシが立っていた。
「……俺に、何か用なの?」
なんか、すっごく不機嫌?私が見すぎた、せい……かな、これは。
流石は天才忍者カカシ先生といったところだろうか、こんな離れた位置の視線に気づくのかと感嘆の声を漏らす。
「ええっと、そのぉ……見ててごめんなさい」
「ふぅん、謝れるなんて偉いじゃない、で、何か用?」
考え、まだまとまってないのに……。
カカシに詰め寄られ、母に抱えられたままもじもじとし出す。その私の様子に警戒を解いたのか、はたまた私の反応に何かを感じたのか母は微笑みながら私を地面に降ろした。
「ふふふ、ごめんなさいね、ええーと」
「はたけカカシです。あなたは確かうちはの」
「ええ、警備部隊隊長フガクの妻のミコトです」
母の服の裾を掴み、知識にあるより若い姿のカカシを見上げる。
私の視線に気づいたのか、私の存在を思い出し母との談笑を切り上げると視線を私に向けてきた。
「へぇ、君があのフガクさんの娘さんね」
「……はい、さっきは、気を悪くさせてしまっていたらごめんなさい」
「いいよ、別にそこまで目くじらを立てるものでもないしね」
カカシは私の頭をひと撫ですると母に別れを告げて立ち去ろうと背を向けた。
このままじゃ、どっかに行っちゃう!まだ何も伝えてないのにっ。
慌てて歩き出していたカカシの足に飛びつく。まさかそんなことをするとは思っていなかったのだろう、カカシは目を皿のように開き、足に引っ付く私を見下ろした。
なんでもいいから会話を引き延ばさないと。
「あのね、カカシお兄さん、今日の夜って何か任務入ってるの?」
警戒心のない、誰彼構わず懐く子どもを演じながら引き攣る頬を誤魔化すように満面の笑みでカカシを見上げる。後ろで母が「あらあら」と微笑ましいと言わんばかりの喜色を孕んだ声を出しているのを聞かなかったことにして足に抱きつく力を強める。
カカシは私ぐらいの幼い子どもに懐かれたことがないのだろう、どうしたらいいのか分からないといった様子で少しの間、視線を彷徨わせるがすぐに興味を失ったように溜め息を吐く。
これはまずい……何とかして興味を持ってもらわないとこのままドロンされちゃう。
「君には関係ないでしょ、ほら離して」
「カカシお兄さんには、大事なモノはある?」
私の苦し紛れの質問に、カカシは訝しんだ目をした。
引き留めるのは成功した、けど……完全に不審者、新興宗教の勧誘かな?
冷や汗をかきながらカカシの言葉を待つと根負けしたのか躊躇いながら口を開いた。
「……あるよ」
カカシは私の肩越しに何かを思い出すように遠くを見つめる。
見てるのは、私じゃない……背中の家紋だ。
きっとうちはの家紋を見て、オビトを思い出したのだろうと当たりを付ける。
「ねぇ、カカシさん、大事なら火影様に頼みに行った方がいいですよ」
私を見つめたまま押し黙ったカカシの手を引っ掴み、言外にしゃがんでほしいと伝えるとカカシは私に顔を近づけるように腰を折った。それでも高い位置に耳があり、仕方なく背伸びをしてカカシの耳元で囁くように話す。
「今思い浮かべた人が本当に大事なら後悔しないためにも今日の夜、四代目様の所に行って下さい、今、仮面の男を止められるのはあなただけなんですから」
その言葉を聞くとカカシは目を鋭くし、私の様子を窺うように目を覗き込んできた。その恐ろしい視線に腰が引けてたじろいだ。
ビビっちゃダメ、ここで引いたら話を聞いてくれなくなっちゃう。
「先ほど、クシナさんにも伝えました。仮面の男はクシナさんにとっても四代目様にとっても、そしてあなたにとっても大事な人のはずです。だから気づいてあげてください」
竦む足で一歩踏み込んだ。カカシの顔に近づきその冷たい目を睨み返す。そして、言い終わると同時にカカシから離れ母の方に駆け戻り、その足に飛びついた。
「じゃあ、またね、カカシお兄さん」
カカシに別れを告げ手を振り終えると、母の手を引き足早にその場を離れる。
数歩歩いて振り返るとカカシはまだその場に佇んでおり、私を睨んでいた。
読んでくださってありがとうございました。
来週は投稿できるか分からないです。