「おのれ…………憎しや」
無限に等しい永い時間。
無限に等しい広大な空間。
全てを熱する灼熱の光と全てが凍てつく闇。
その宇宙という地獄の中に恨み続ける鬼の魂が存在していた。
その鬼が遠くで見つめていたのは彼らの夢の跡とでもいうべき要塞だった巨大な屑鉄。
そこから怨念のこもった呪詛の言葉をひたすら投げかけていた。
そして、その鬼へ手を差し伸ばした者も…………
流竜馬がまず目を開けて見えた景色は遥か遠くの真下に広がる雲と海だった。
「ぶはっ!」
知数の新型機のテストのためにいつものパイロットスーツとは異なり、安全性を重視したためにまるで鎧の上に更に鎧を着たようなパイロットスーツはずんぐりむっくりとした姿をし、とても重い上に息苦しい。あまりの息苦しさにそのヘルメットを竜馬が取り外し、機体のモニターを確認し、一度ゆっくり瞬きをしてから見つめなおした。
「一体何だ? これは?」
流竜馬はその時混乱していた。
先日、早乙女研究所は百鬼帝国らしき敵から攻撃を受けて、これを今使っているゲッターで撃退することに成功した。その時、戦ったブライからは「悲劇」とゲッターは称された。
未完成でかかわらずに真ゲッターは広島、長崎に落とされた原子爆弾やそれをはるかに上回る水爆などの核兵器を超える脅威になると言っていた。それでも、宇宙の塵へと散ったはずのブライと百鬼獣を蘇生して研究所へ送り込んだ新たな敵がいる以上は対抗するためにも新しい力である真ゲッターを手放すことはできずにいた。
そのために竜馬が先ほどまでその真ゲッターをより完全なものにするためのテストをしていた。テストは少々の違和感があったものの真ゲッター自身は好調ですさまじい性能をはじき出していた。だが、そのテストの最中に操縦不能状態に陥り加速を続けて光速さに近づきそうな速度の中で竜馬の目の前が一瞬真っ白になったとおもったら海上一万メートルにいた。
気絶している間に安全装置によって自動操縦機能が働いてゆっくり地上へと落ちていったのかもしれないが海の上にいたことが問題ではなかった。目の前にあったのは海上には軍艦が数隻、その軍艦は黒い無数の飛翔体から攻撃を受け、そして、真ゲッターも攻撃を受けていた。
「百鬼帝国の残党か! おい、博士! 隼人! 応答しろ! おい誰か! こちら早乙女研所属のゲッターロボ」
早乙女研究所、海上の軍艦へ、いろいろな回線を用いても通信を試みるが虚しく応答はない。真ゲッターの通信機器が壊れているのか、妨害電波が出ているのかは分からないが今はどこにも通信することができないことだけは確かである。
今はテスト中で戦闘のために出てきたわけでないため、本来ならば研究所に帰還するべきなのかもしれないが、目の前の戦闘を放置すれば海上の軍艦は増していく。竜馬の性分ではこのような状況ではここは多少の違反であろうと動くことを考えた。
「ここはやるしかないのか……」
敵の大きさは二メートルから数メートル程度しかなく、五十メートルを超える真ゲッターからすればピンポン球サイズなのだが敵は空を埋め尽くすような規模、バカバカしくなるほどに数が多い。
一々、それらを一体一体を相手にするような細かい作業をするようなことをしていたら、時間がいくらあっても足りない。その間にも海上の軍艦の被害が取り返しの付かないことになるかもしれないということは竜馬にも分かった。
そのことから、まとめて倒すことが一番だと竜馬は考える、真ゲッターの兵装の中でそれに適しているのはゲッタービームであった。この機体のゲッタービームの射程上にあるものは戦闘機だろうが、戦艦だろうが、山だろうが、全てを軽く吹き飛ばしかねない破壊力があり、熱量や射程もそれ相応のものがあるために味方への被害に気を使う必要がある。
人間が多数乗っているであろう、軍艦を巻き込まないようにするには真ゲッターは高度をある程度の高さにまで落とさないといけない。
「ゲッタートマホーク!」
真ゲッターは大斧を肩から取り出して盾にしながら降下する。
その速度は一瞬にして音速という壁を遥かに超え超音速の世界へと到達し、それすらもすぐに凌駕した。
正面の敵は大斧で弾き飛ばされて空気ごと切断、あるいは粉砕される。真ゲッターの周りを覆う空気赤く焼けた壁となり、それに触れた敵は蒸発あるいは潰され、横を通り過ぎるだけでも敵は嵐のような衝撃波で粉々になる。
敵の大部分より高度を低くなったところで竜馬は高度を充分に落としと判断し真ゲッターは下降を止める。
降下を止めたと同時にゲッターの腹部が緑色の放電を繰り返しながら徐々に赤色に輝く、目標は敵の群れのど真ん中。出力は出せる分だけのありったけ。
「ゲッタービーム!」
真ゲッターの腹部から赤色の光が敵の群れの真ん中へと照射される。
光は雲を散らし、群れの命中したところを中心に敵が爆発を繰り返す。直接、照射されていない部分ですらすさまじい熱量が約百メートル半径を焼きつくされ、敵の砕けた破片が燃焼し、空が緑色の閃光で輝き。
「まだだ!!」
真ゲッターは体をひねる。それによりゲッタービームは右へ、左へ、上へ、下へと薙ぎ払うように照射をされる。空中の爆発が増えるたびに敵が見る見るうちに数を減らしていく。
照射が二十秒続いたところでゲッタービームが徐々に細くなりやがて消滅した。
空に敵が残っているが、先ほどのゲッタービームによって大部分がいなくなり点々といるような状態にまでなっており軍艦から砲撃がそれを漏らさないように潰していた。
軍艦から何かが発進したのが竜馬に見えた。艦載機だろうかと竜馬は思ったがそれにしては小さすぎる。
確認するためにもう一度目を凝らして見た。
「うん?」
目玉にゴミが入ったのだろうと判断して竜馬は目をこすった。
真ゲッターのカメラでそれを拡大して竜馬はもう一度確認した。
「うん?」
竜馬は自分の頬をおもいっきり摘んだ。テストや気絶や戦闘などが重なったから昔、頭の中がチカチカして目の中で虫が飛んでいるようなものを見るということがあると格闘技の師である父から教えられたことを思い出していた。
竜馬がそれを確かめるかのように一度目を閉じ、深呼吸してからもう一度モニターを見た。
「なんだ? ありゃあ?」
先ほど軍艦から艦載機のように飛んでいったのは人間。それも竜馬と同じの年頃からかなり年下まで多くの人間の少女であった。足のおかしな機械で飛んでいるだろう。
その機械を使うためか下半身の露出が多く、状況が状況ならば竜馬は鼻血を出していたかもしれないが、今の竜馬にはさらに混乱させられるものでしかなかった。
竜馬はこの後迷いながらもコクピットを開いて飛んでいる少女を介して軍艦にコンタクトを取った。たまたま、その少女達の中に日本語が通じる者がいたのは竜馬にとっても相手にとっても幸いであったのだろう。だが、それでも警戒をされて基地へと連れて行かれた。竜馬に対する対応も乱暴ではなく、腫れ物を触るかのように乱暴のことをしていなかったために竜馬も抵抗はしなかった。
それは竜馬自身が何かの勘違いか自分がなんらかの問題行為をしたか、研究所からの命令無視したことによる警戒や拘束で早乙女研究所にすぐに話しが通って開放されるだろうと考えていたからであった。確かに早乙女研究上とゲッターロボの活躍を相手が知っている前提なら正しい判断だったのかもしれない。
だが、相手がゲッターロボと早乙女研究所どころか日本という国さえを知らない、そもそも、竜馬がいた世界とは異なるゲッターすら存在していない世界だということを竜馬は知る由もなかった。
そして限りなく遠くの世界の一人の女性へと話は移る。
その女性はあるものと一緒にこの世界に来てしまった異邦人。
戦いと世界を超えたことで力を使い果たし衰弱し深い眠りの世界の中にいた。
ただ、その疲れも少し癒え、時刻は昼に近づき気温が上がり心地よい陽気が女性の眠る部屋に満たされる。
「う……ん」
女性、坂本美緒は痛む体の節々の痛みとともに目を覚まさした。
だが、不思議と目覚めは良かった。心の中は何かをやりきった感じに溢れていたからだ。
ご覧いただきまして誠にありがとうございます。
時系列の補足ですが
ストライクウィッチーズ側はアニメ二期の最終話途中から
ゲッター側は真ゲッター中盤ぐらいから
という感じになっています。