ゲッターロボ対ストライクウィッチーズ   作:座椅子崩壊

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三話

「どうして、こうなったのだろう」

 

 少女は呟いた。

 そう思わざるを得なかった。

 燃える森と赤い灼熱の大地、赤黒い炎と黒煙を上げて警報がけたたましく鳴り続ける基地。

 オペレーション・マルスを終えて数日。多くの者が再編成、帰国などでこの基地から離れていった。

それでも、十分の数の戦力がまだこの基地には滞在していた。

彼女達もその中の一つで陸戦戦力であるがもしもの時のためにきていたのだが。

結局はもしもの時のことは起こらずに結局武勲を立てられずにそのまま別の戦場にいくだけの無駄足か、戦わずにすんだ幸運を喜べいいのか、無駄飯ぐらいしてしまった事実に落胆すればいいのか迷っていた最中にいきなりの敵の強襲しかも相手は空を飛べないタイプで何もせずに帰るということをはなさそうであった。

 彼女たちは歩行脚という戦車を模したような陸戦向けのストライカーユニットを使用している。高速で空を舞ように戦う戦闘機を模したような飛行脚は戦場の花型と思われているが、この歩行脚も負けてはいない。

 歩行脚は泥臭い印象があったりして地味に見られる、たしかに飛行脚と比べると遅い。しかし。空を飛ばない分搭載できる装備や魔力に余裕が有るために火力や頑強さでは圧倒的に勝っている。

 そして、彼女は長く戦い続けていて今年で十八になり、戦闘経験もベテランということを否定するものがいないぐらい多く積んでいる。所属している隊の仲間も彼女に負けないほどの人材である。決して、自分たちは空の魔女に引けをとらないと自負し、どんな相手にも負けないという信念もある。

 

 だが、目の前の状況は、この化け物は何だ。

 自分たちの攻撃がまるで風に吹かれた埃が当たった程度。

 後に続いた各国の陸戦魔女の攻撃も砂をかけられた程度。

 更に加えられた戦車の集中砲火も水鉄砲をうたれた程度。

 その他にも高射砲、突撃砲などの火力も集まり山さえも削られてなくなるような砲撃の雨が続く。

 しかし、それさえも気に留めることなく無視して、基地に向かって直接ビームを放つ

 そのビームの内一発が自分たちの近くも舐めるように過ぎ去る

 直撃するどころか数メートル以内のものは蒸発し消滅、それを免れても融解か炭化をおこし原型をとどめていない。地面が気化爆発を起こし戦車すら吹き飛び、裏返っているものさえある。すぐ近くに見える地面が抉られ変色しガラス化さえしている。

 その光景に思わず後退った彼女の背中に硬い何かがぶつかる。それは転倒した戦車だった。

 自分たちはシールドに守られていたから大丈夫だったが彼らは大丈夫だろうか?

 戦車が動かないのはなぜだろう?

 びっくりしているだけだろうか?

 気絶しているだけだろうか?

 もしかして、熱と衝撃で……………………………………

 

 思わず空を見上げると地面と木々と鉄ともはや何が何だか分からない物が焼け焦げる嫌な匂いと煤と煙で空が汚れその前に佇む化け物。

 涙が目元から溢れ、武器を握る手から力が抜けて落としてしまった。

 

 こんなことなら、手柄を欲張らずに「なにか起こらないかな」とか思うのではなかった。

 こんなことなら、久しぶりに再会出来た故郷の幼なじみに思いを伝えておくべきだった。

 こんなことなら、魔女にならなければ、魔力がなければ。

 

 だが、そんな彼女をまるで眼中にないかのように彼女の頭上をまたいでいく。

 まるで、ゴミですらないような扱い。

 それは彼女に冷静さを取戻させと同時に心の中を奮い立たせた。

 

「ああ、畜生」

 

 少しでも、情けないことを考えてしまったことの恥を涙に変えて頭のなかから流し出す。

 それでも、彼女は戦う。

 魔女として、女として、人間として。

 世界のため、尊厳のため、思いのために。

 落とした武器を拾い上げ、自分の魔力を滾らせ、また立ち向かう。

 

 頬を伝わりこぼれ落ちた輝く涙が百熱の戦場の地に一瞬にして人知れず蒸発して消え去ったが彼女は振り向くことなく化け物を睨み戦にまた挑む。

 背後に強烈な突風が吹き、頭上に三つの何かが飛んで行く。

 

 

 

 

 

 

「今度はなんだよ?」

 

 椅子は壁に叩きつけられ倒れ脚が折れていた、机が横に倒れ、壁には顔を出して外が見ることができるほどの穴が空き底を中心にヒビが走っていた、それらは衝撃の凄まじさを示していた。

 竜馬はその衝撃に襲われた際に咄嗟に芳佳に抱きつくように庇っていた。そのため芳佳はほぼ無傷であり、竜馬の鍛えられた太い腕の下から芳佳は心配そうに竜馬を見ている。

 

「大丈夫ですか?」

「これくらいなら大丈夫」

「あっ!」

 

 芳佳が口と目を大きく開けて指を指す。その先には見張りの兵士が顔色を変えてうずくまっていた。衝撃で吹き飛ばされてしまいそのまま叩きつけられてしまった時に負傷したらしい。

 竜馬と芳佳はその見張りの服を脱がす。服の下の体には生々しく破片が突き刺さってできた傷、特に脚を深く負傷してしまったらしく、この敵襲を受けた緊急事態では放置していれば手遅れになりかねない。

 

「今、待ってください」

 

 芳佳をスカーフで見張りの足の血を拭き取り怪我の様子を見る、腫れ上がった足は

どうやら命にはすぐには別状がないにしてもとてもじゃないがとても歩いて移動ができるようではなかった。

「放っていてはいけない」と判断した芳佳はその腫れ上がったに手をあてていた。

 竜馬はその芳佳の不可解行動に当然疑問を持った。

 

「何やってんだ。早くどこかにそいつを…………なんだ?」

 

 芳佳の体が淡く青く光る、それだけではない芳佳の頭に犬のような耳が臀部にもまた、犬のような尾が現れる。その輝きの中、芳佳の手はひときわ輝いていた。だが、竜馬の目はそれ以上に芳佳が手を当てている見張りの傷の部分に目を奪われていた。重症だったはずの傷がみるみるうちに塞がっていくのが見えたからだ。

 軟禁されていたがここに来てから数日経っているために少ないとはいえある程度の情報は集めることができ。そのため、魔法のことをある程度おおまかにわかっていたが、竜馬は自分の目でそれを見るのは初めてであった。

 

「こ、これが魔法か――――」

「ひゃっ!」

 

 最初の衝撃ほどではないにしても大きく建物全体が揺さぶられる。

 

「またか!」

 

 竜馬は最初の衝撃で出来たと思われる顔を出せる程度の穴から外の様子を見る、建物のすぐ近くの地面が抉られ赤くなってその向こう側の景色が熱気で歪んでいる。

 どうやら、ビームか何かが通って行ったのであろう。竜馬もゲッターで何度か似たような光景を作りだした経験からその判断を下す。

 そして、赤熱化し爛れた地面によって歪み煤にまみれた視界の向こうに巨大な怪物が猛り狂っていた。

 

「なんだ? あれは百鬼帝国か! おいゲッターはどこだ?」

「げた? あの機械なら滑走路の近くの大きいハンガーだったと――――えっ!?」

「わかった。なにか飛び立っているところか。行ってくる」

 

 「ふん」っと気負いとともに壁を後ろ回し蹴りを浴びせる。もともとヒビが入っていた壁が積み木のおもちゃのように崩れて大穴が空く。そして、脱がした見張りの上着を手にそのまま外に向かって走りだした。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

 芳佳の制止も耳に留めない入らない、勢いでハンガーへと駆けていく。

 

 

 

「一体、何なんだ!? こいつ」

 

 バルクホルンは戸惑っていた。

 いきなり現れた化け物は高さだけでも六十メートル近い上半身は人、下半身は蛇のような形をして頭に角を生やしまるで神話化何かの化け物を彷彿させる。

 それは問題ではない、彼女は以前にはるかに巨大な空母である赤城と融合したウォーロックと戦った経験がある。形もネウロイは様々な形をしているし、ウィッチを模したものもすでにいるのでいまさら、人間や生物に近い形のものが出ても驚くことではない。問題はこちらの攻撃が全く通じないのだ。ネウロイは魔力に帯びた攻撃に弱いはずである。だが全く通用していない。彼女たちの装備は魔力帯びている以外にも高い殺傷力を持っている。

 バルクホルンが持つ銃器も魔力によって筋力が常人より強化される魔女以外には使うことはおろか、重量によってまともに持つことさえ出来ないような兵器なのだ。もちろん、その破壊力は折り紙つきで幾多のネウロイを倒してきた。

 だが、強力であるはずのバルクホルンの重機関銃も豆鉄砲のように虚しく弾かれるか食い込むだけ。さらに破壊力のあるサーニャのフリーガーハマーもまるで火花にあたった程度。せめて、ジェットストライカーの時の装備さえあればという考えも化け物の足元を見れば甘い考えだと目下の現実に一蹴される。

 空戦魔女よりも強力な火力を持てるはずの陸戦魔女達の攻撃も自分たちの攻撃と同様であった。無論、他の戦闘機も戦車も同様に全く通用しない射撃を繰り返していった。

 これだけやっていても化け物にかすり傷を付いているか怪しい程度。

 もちろん、化け物もただ、攻撃を受けるだけではない。

 

「――――ッ!!」

 

 まるで羽虫を払うかのように腕を振う。ただ、何気ないように振るったそれだけ。

 だが、それだけでも発生した強烈な突風により未熟な魔女が撃墜されていく。

 既になんどか光線を放っていて、基地の一部や兵器、そして人間も少なくない数が蒸発している。

 

「…………宮藤」

 

 バルクホルンは後ろの基地に一瞬だけ見る。

 妹分? みたいに思っている芳佳が心配だ。

 芳佳はまだ、出撃をしていない。

 ならば、まだ基地の中にいるはずである。

 奇襲による混乱のせいで出撃が出来ないのかもしれない。

 さらに悪く考えると最初の光線で負傷したのかもしれない。

 もしかしたら…………………………「無事であってくれ」とバルクホルンはとにかく祈るしかなかった。

 

「あぶない!」

 

 誰かが叫んだ、それは予知能力を持つエイラか、指揮しているミーナか、たまたま近くにいただけの誰かそれは突然のことで分からない。

 ただ、自分の後ろをとてつもない速度で何かが駆け抜けていった。その何かは見覚えが少しだけある赤い戦闘機のように見えたが、見えるやいなや、突風に襲われて彼女はバランスを失った。

 姿勢を立て直そうとする彼女の後ろをまた二つの影が通り抜けていき、そして、また同様に突風に襲われバランスをさらに崩した。

 

「みなさん、退いてください! 理由は後で説明しますから」

 

 遅れて通信機から、聞き覚えのない声がした。

「おそい」バランスを崩されて姿勢を整えながら落ちていくバルクホルンは叫んだ

 

 

 

 

 

 

 

「改めて見るが、あんなメカで飛ぶなんて魔法って物理法則もあったもんじゃねぇな」

 

 竜馬は一瞬ですれ違って飛んでいた魔女と呼ばれているらしい少女達を振り返り、そして向き直って敵に睨むように睨む。

 

「百鬼の残党がなぜここまで…………」

 

 怪物――百鬼獣はゲッターを見つけると威嚇するように吠えた。

 咆哮は地上の木々や水辺が震え、あたりを照らす炎が猛り、周りを飛ぶ少女たちが数人吹き飛ばされる。口腔からは狂犬のように湯気を出しながら大量の唾液地面に滴り落ちる。唾液が付いた木々が腐り溶ける。

 

「メカザウルスに近い感じがするな」

 

 百鬼獣は自ら口中に手を押しこむと手品のように棒状のものが現れそれを強引に引っ張り上げる。緑色の体液と涎にまみれた棒状のものは取り出し終えた途端に槍へと形を変え、その穂先をゲッターに向ける。

 

「こっちも行くぜ!」

 

 ゲッターの肩から棒状のものが飛び出す。

 これもまた長くゲッターの体長に近い長さでどこに収容していたのかとこの光景を見ていた者は思う。その棒状のものから布状の何かがくるまっており、旗のように広がる。

 ――――――――だが、これは旗ではない。

 

「ゲッタートマホーク!」

 

 もはや、ゲッターの大きさと比べてもハルバードと言ってもいい武器を構えて百鬼獣に向ける。

 それと、同時に百鬼獣は口から濃い緑色の火球を吐き出す。

 

「ゲッターをなめるな!」

 

 トマホークでその火球を斬り裂く同時に火球は破裂し炎と煙にゲッターは包まれる。だが、ゲッターに目立った損傷はなくそれどころか斧を振り下げたまますかさずに進んでいた、今度はトマホークを振り上げるが百鬼獣はすかさず槍を振り上げぶつかり合う。

 巨大な斧と槍から爆発のような火の粉と黒い雨の鉄粉が飛び、衝撃が森や建物を揺らし、周りに飛んでいた物体を吹き飛ばした。

 そして、百鬼獣は反動を利用して距離を開けなおす。

 逃すまいとゲッターは空いている左手を敵に向ける、真ゲッターの腕に集まったエネルギーが煌々と輝く針のようなビームを発射。 それを迎撃戦と敵は火球を連続的に放つ。 火球はビームとぶつかると炸裂し生じた複数の爆発と爆炎でビームを減衰される。

 その轟音を合図に百鬼獣は体液をあたりにまき散らしながら更に距離を開ける。

 だが、百鬼獣は着地と同時にトマホークと打ち合った槍は砕け、その域尾で右肩はちぎれかけ、防ぎきれなかったビームで左わき腹には小さくない風穴が開いており、距離を開けるために支払った代償は大きさを物語っていた。

 

「そろそろ、終わりが近そうだな。それに――――早めに終わらせたほうがいいみたいだな」

 

 後ろを見ると先ほどまでいた基地がある。黒煙が上がっているが、三分の二はまだ無事で、相当な数の人間まだ残されているはずだ。直前まで話していた宮藤芳佳もまだ取り残されているかもしれない。そう考えるとこれ以上被害を出すのはできるだけ避けたいところである。後ろに下がれば、それだけ戦闘に巻き込むことになり、攻撃を避ければまた攻撃をうけるかもしれない。

 

「おっなんだ?」

 

 ゲッターに気を囚われていた敵の目に弾丸と砲弾が当たり爆炎が昇る。

 その射線の元には飛んでいる魔女とは履帯が付いた別の形機械を脚に装備した魔女が数人、小隊規模の地上にいる魔女彼女たちが攻撃したもので、その魔女たちは百鬼獣を睨みまだ攻撃を目へ続ける。

 彼女たちの攻撃は大したダメージがあったわけではないのだが、ほんの少し、だが確実に意識がゲッターから逸れた。竜馬はそれを見逃さずに一気にゲッターを詰め寄せる。真ゲッターはトマホークを構えながら前腕部に付けられている刃物、レザーを展開する。

 

「くらえ!」

 

 ただ、ゲッターは百鬼獣とすれ違っただけ。普通の人間の目にはそう見えるであろう。

 だが、歴戦の強者や魔女の目にはトマホークとレザーによって暴力的な刃の嵐溶かしたゲッターが百鬼獣を切り裂いたのが見えた。体中に切り傷が走り百鬼獣の喉元を切り裂き、百鬼獣は文字通り首の皮一枚つながった状態となり。

 後頭部と背中とくっ付くようにぶら下がっている。

 あちらこちらに破片や部品が弾き飛ばされ木や地面を粉砕し小規模なクレーターを作る。

 周りを飛んでいた少女たちも回避するなり、シールドでその破片を弾いていた。

 だが、百鬼獣はまだ、生きている。崩壊しそうな体で真ゲッターに怨念の力だけでも抱きつく。

 

「道連れにする気か? 甘え」

 

 ゲッターは一回り大きいはずの百鬼獣の太い腕を腕力だけで押しのけ。

 腕を持ったまま腹に右足で押すと、百鬼獣の腕が肉と骨が軋む音を出し、引きちぎれる。

 そのまま、バランスを崩して膝をついた百鬼獣をゲッターは見下ろす。

 

「トドメだ!」

 

 正拳が百鬼獣の胸に舌から突き刺さり、その衝撃により百鬼獣は胸と背中に通じる大穴を開けながら吹っ飛ぶ。その勢いは凄まじく地上から数百、千メートルの高さまで到達してもまだまた勢いがとまらない。

 ゲッターの腹部が割れそこから緑色の放電をバチバチと鳴らしながら、ビーム発振器が露出する。

 

「ゲッタービーム!!」

 

 先ほどまでゲッターのビームの数倍は太いビームが空中の百機獣に照射。

 一瞬で空気が熱されて暴風を生み出し、地面や木々を揺らし、空の黒煙を散らせながらビームは百鬼獣を飲み込む一瞬だけ黒い影が見えるがそれも消え去る。

 それは百鬼獣が瞬時に跡形もなく蒸発し今度こそ完全に倒されたことを証明していた。

 

「こいつらは本当に百鬼帝国の残党なだけなんだろうか?」

 

 竜馬はゲッターの足元で細動している百機獣の残った残骸を踏み抜きつぶやいた。

 

「ん?」

 

 モニターに一人の少女が映っていた、先ほどの百鬼獣にやられたのかは分からないがその少女は少しふらついている。自分の命を守るためもあるがこの基地の人達を助けるためにゲッターで出撃したのからこのまま目の前で墜落されても目覚めが悪い。竜馬は急いでコクピットハッチを開ける。

 

「大丈夫か? …………ん? なにいってんだ? 英語かドイツ語かイタリア語か?」

 

 「逃げ出していたのか?」と半ば世界共通語になっている彼女はブリタニア語、竜馬の世界で言う英語で言っていた。だが、竜馬も学校の教育はもちろん、ゲッターパイロットになった後にも他国と関わるかもしれないからということで英語を学んだことはあるのだがかなりぎこちないしゃべり方しかできず、聞き取るのも同レベルである。

 だから、急に英語で言われたそれは彼女の言葉は竜馬にはわからなかった。

 彼女はその返事と共に竜馬の腕を掴んだ。それは目の前の少女からは、予想もできない怪力が込められていた。竜馬は格闘家として様々な相手と戦い、さらにゲッターロボのパイロットとして怪物と呼ばれるようなものと戦ってきていた。

 その経験から目の前の少女の力の力は明らかに現実離れしていることを悟る。と、その経験は同時に少女の警戒はこちらに対して敵意よりも恐怖などの物が混じっていることに気づかせた。

 

「これも、魔法かよ。安心しろ。何もしねえよ」

 

 ゲッターにトマホークを格納し、方角は基地へと、高度は木々に当たらない程度の地上すれすれを飛行しながらゆっくりと向かっていく。基地が近づくたびに少女の表情に少し安心が見えてくるのが竜馬は感じた。

 

「基地に戻るぞ……って、おい!」

 

 握っていた手から力が失せ、少女が気を失い竜馬にもたれかかった。極度の疲労のためか、どこか体を痛めていたのかは詳しくは判断できないが、命には別状はないことは武道家やこれまでの戦いによる経験によって判断できた。

 

「むっ! これは!!」

 

 竜馬の視線は少女に奪われていた。

 彼女は西洋人である。もちろん、竜馬は西洋人を見たことがないわけではないが見慣れているわけではない。だが、そんな竜馬の目で見ても彼女は間違いなく美少女、もしかしたら年齢は美女と言ったほうがいいのかもしれないが、かなりの美人であることは確かだ。

 そんな美人の下半身が…………………………………………………………

 そういえば、芳佳も少し似たような格好をしていたが、水泳の授業か、もしかしたらパイロットスーツの上になにか着ているだけかと思っていたのだが。この少女の下半身は間違いなく――――

 

「あっ」

 

 鼻血がぽたりと膝元に垂れて正気に戻り、鼻を擦って血を拭う。

 同時に周りにさらに他の誰かが近づいてきているのを感じ取っていた。

 

 

 だが、流竜馬は知らない、遥かな時空でさらなる悪意が牙を剥いていることを――――

 

 

 

 

 

 

 

 何も存在するはずのない、何も存在してはいけないまるで死の世界に唯一浮かんでいる存在があった。

 ――――兵どもが夢の跡、そんな言葉が浮かぶかつて地球侵略の夢に敗れて砕けた百鬼帝国要塞の一部それが、悪の根城だ。悪鬼達は何者のを侵入を拒む時空という壁を超えそこからその手に世界を掴み取ろうとのばそうとしていた。

 

「そうか……やられてしまったか」

 

 そう呟く小柄の老人の目の前には闇を煌々と紅い光で照らしている宝石があった。

 その紅い宝石の前には大柄の男と小柄の車いすの老人が佇んでいた。

 

「ですが、面白いサンプルをいろいろ回収できました」

 

 大柄な男――――マクドナルドは不気味に微笑んだ。その背後には人が二、三人分入るようなコンテナがあり、中で何かが蠢くような音がしていた。

 そして、小柄な老人――グラーもマクドナルドとそのコンテナを見た後で邪悪に微笑む。

 そのほほ笑みは部屋の中央で特殊な処理を施された怪しく赤く輝く宝石に向けられていた。

 

「どうやら、あの世界の人類にもいくらか解析ができているようです」

「ほー。だが、あの世界の技術レベルでは参考にできるのか?」

 

 グラーは顎をさすりながら、宝石を一瞥する。たしかに、あの世界の技術レベルは独自のものがあるが基礎を考えると高くなく、かつて侵略しようとしていた世界のほうが数十年先にあり、グラー達は更にその先に行っている。

 だが、目の前の宝石に関わるある技術においてはグラーたちにはまだ発見したばかりで基礎もほぼない。基礎があることによる独特の発想や基礎から一歩進んだ応用などは一から研究するのには時間がかかることが予想される。数秒目を軽く瞑ってマクドナルドを見つめなおす。

 

「…………まあ、データはデータ。あったほうがいい」

「ちょうどくすぶっている奴らもいるようで…………」

「そういう人間ほどつけ込みやすい…………」

「ええ、一人目は終わりました。そいつから元に…………」

「仕事が速い…………偉大なるあの方もお喜びになっているだろう」

 

 彼らの口元が歪む。鋭利な刃のような牙が露出し、その姿は地獄に住み人間の悲鳴と怨念を好む醜悪な悪鬼という言葉がふさわしい。

 

「百鬼ブゥラァァァァッイ!」

 

 地獄の悪鬼たちの今は亡きかつての君主の名を叫んだ。

 だが、その叫びに応えるものはいない。

 虚しく赤く輝く部屋に響き渡った。

 

 世界はまだ気づいていない、睨む悪鬼な眼差しを――――

 




腕からビームはマイナーですがゲームゲッターロボ大決戦のネタを挟まさせていただきました。
そのゲームでしか使えないのにマップ兵器バンザイなゲーム仕様なため…………


次回からちょっとしばらくは坂本さんとむこうの世界のターン
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