書きたいとこだけ書いた。
設定も捏造が多いし、ご都合主義万歳なノリで乗り越える系です。
それでも良ければ、お読みいただけると幸いです。

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超かぐや姫!〜双黒の剣士〜

「そっか…そっかぁ!みんな、自由だ!」

 

丈の短いオレンジの和装を纏った少女、かぐやは、ライブステージ前に集まった6人を見てそう言った。

 

七色に光る電柱から自身を取り上げた少女。

その兄が率いるプロゲーマーチームの3人。

そして。

 

黒衣を纏った二人の剣士。

 

1人はかぐや争奪KASSEN選手権に巻き込まれ、SETSUNAでいろPに勝利してしまった長剣使い、キリト。

もう1人は、かぐやが出場したレースイベントで誰も乗れないと言われていたじゃじゃ馬バイクを駆って1位をかっさらった錬装士(マルチウェポン)、ハセヲ。

 

いろ、Black onyX、二人の剣士が、かぐやを攫わんとやって来た月人の前に立ちはだかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブのスタートと同時に、KASSENが始まる。

 

勝利条件はチーム共有の3つの残機を無くし相手を全滅させるか、2つある櫓をどちらも落とすか、先に敵天守閣に踏み込むこと。

 

乃依が放った空を覆わんばかりの氷の矢が水面を凍らせて足場を作り、押し寄せる灯篭頭を先行したBlack onyXメンバーが狩る。

その後ろから追い抜くように前へ出たのは、右手に黒、左手に青の剣を携えたキリトだった。

 

仮想剣技(ソードスキル):ソニックリープ

 

ソードスキルと呼ばれるそれは、元々ツクヨミにはなかったシステムだが、キリトが別ゲーのプログラムを再現し運営に提出、認可を得てプレイヤーなら誰でも『必殺技』を使えるようにした。

 

再現プロセスは、頭の中で自分(アバター)が特定の構えを取っているイメージを、詳細に思い浮かべるというもの。

ぼんやりとしたイメージでは不発になり、規定モーションから外れた際には強制停止、技発生後にはそこそこ長い硬直が入る等の要素からほとんどのプレイヤーには不評だった。

コントローラーに対応していないのもあるだろう。

 

結局コンバート組や1部プレイヤー以外は使えない、ピーキーなシステムになったが。

 

使いこなせる者からすれば、これ以上ない武器となる。

 

黒剣が緑の燐光を放って加速しテンニョ型に激突する。

笙を構えた月人は体を大きく仰け反らせて攻撃を中断させられ、その隙に青い剣が四角を描いて切り付ける。

 

剣技連携(スキルコネクト):ホリゾンタル・スクエア

 

キリト特有の連続攻撃。

技後硬直をキャンセルして次の技を放つ絶技。

本来なら2人1組で放つそれを、一人でこなすには

右手に割いた意識を、コンマ1秒以下に左手へ移し、右手の技の終了時と左手の技の開始時の構えを同一のものにする必要がある。

 

仮想剣技(ソードスキル):ヴォーパルストライク

 

単発重攻撃。

深紅のエフェクトを纏った一撃がテンニョ型を吹き飛ばす。

 

「おー、やるねぇ黒の剣士さま。こりゃ俺たちも負けてられないか?」

 

「ミニオン蹂躙しといてよく言うよ。俺たちはいろPが天守閣にたどり着くサポートだったな?」

 

「応!俺ら家臣で、姫様を守ってやらないとな!」

 

隣に並んだ帝アキラとの掛け合いをそこそこに、遅れて現れたズイジュウ型と起き上がってきたテンニョ型に対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旋風滅双刃(せんぷうめっそうじん)!!!」

 

逆手に持った双剣を振り、周囲の灯篭頭を屠っていく。

錬装士(マルチウェポン)は本来、複数種の武器を戦況にあわせて持ち替え戦うジョブであるが、ハセヲは現在、双剣のみを使って戦っている。

理由は自身に課した縛りによるものだった。

 

対人戦において、彼はレベル制度を採用している。

戦闘中の行動によってレベルが上がっていき、武器種とスキルが解放されていく。

本来のステータスに下方を加える縛りは、対戦中に限りレベルの上昇に合わせてステータスにも補正がかかる。

 

最大レベルは5、現在は3に上がったところで

 

奥義(おうぎ)甲冑割(かっちゅうわり)!」

 

2ndフォームと大剣が解禁される。

叩きつけた相手はコンゴウ型。

分厚い筋肉の上からの大ダメージで、膝をついた所を

 

追撃!!!

 

秘奥義(ひおうぎ)重装甲破(じゅうそうこうやぶり)!!」

 

大剣の連撃で沈める。

月の軍勢、最初の脱落はコンゴウ型だった。

 

「装甲持ち特攻技か、お前は本当に多彩だな」

 

「雷か。削りゴクローさん、お陰でワンパンだったぜ」

 

消えたコンゴウ型と入れ替わりでやってきた別のコンゴウ型を睨んで、2人は駆ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦地から少し離れた櫓のうえで、乃依は月の軍勢を狙撃していた。

ヤチヨに、恐ろしき狙撃能力と言わしめたそれは、敵の攻撃の出だしを潰し、味方の攻め時を作る役割を十全に果たしている。

 

そんな乃依が見つめる先では、彩葉が懸命に駆けている。

灯篭頭をいなして、コンゴウ型を躱し、ホテイ型を蹴飛ばし、テンニョ型を乗り越えて、後方に座すボサツを目指す。

乃依の火力は、ここに注がれている。

主戦場2つは一先ずほっといてもどうにかなるだろう、脅威と見なされて敵が物量で潰す判断に至る前に、いろを届かせる必要がある。

 

ボサツの後ろの、天守閣に。

 

「面倒臭いけど、アキラの言うことは絶対だからね」

 

壁のようになってる灯篭頭に向けて、氷の矢を放ち道を作る。

麻痺矢を射って足止めをし、後方からの追撃を防ぐ。

彩葉は少しずつ、着実に、足を止めずに走る。

ハッピーエンドに向けて前だけを見て。

 

「待っててかぐや、絶対連れて行かせないから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流れが変わったのは、月側の残機が無くなってからだった。

乃依の狙撃に痺れを切らしたのか、月人側の波濤のような弾幕に対応出来ず飲み込まれる。

 

「乃依!っしま…」

 

一瞬気を取られた雷も転移してきたコンゴウ型に落とされた。

同時に1番突出していた中央の彩葉への圧力が増す。

そのカバーに入ったのはキリトとハセヲだった。

 

「2人とも!?なんで!!」

 

「雷が落とされた!帝もこっちに来てるはずだ!」

 

「中央の圧が強すぎる!正直、乃依のサポートがないと3人でも耐えられるか厳しいぞ!」

 

櫓の両占拠による勝利は諦め、天守閣への一点突破に変更。

押し寄せる灯篭頭を切り倒して行くが、数は増えるばかりで遅々として進まず、さらにコンゴウ型とズイジュウ型が迫ってくる。

 

「ハセヲ!レベルは!?」

 

「もうすぐ上がる!だが、3rdが解禁されたところでどうにもなんねぇぞ!」

 

「そりゃそうだけど…!」

 

「かぐや…届かないの?」

 

自陣ミニオンの生産量を遥かに超える灯篭頭、それに加えシステムできっちり3つのレーンに分けられるこちらと違い、月側は戦力を集中させることもできる。

ミニオンが天守閣に届いても勝利扱いにならない以上、放置されるのは目に見えていて、残機とプレイヤーを削りきってしまえば勝利は確定する状況。

 

「くっ、3rd!輪伐(わぎり)っ!!」

 

レベルが5になったハセヲのアバターが、獣じみた鎧を着込み大鎌を振るう。

円上に展開された斬撃は一瞬その場に残り、灯篭頭が自ら切られにくるが焼け石に水、もはや切り進むことさへ出来なくなっていた。

 

連撃!!!

 

 

蒼天大車輪(そうてんだいしゃりん)!!」

 

怯んだ灯篭頭に突進して空中へかち上げ、追いかけて回転斬りを放つ。

衝撃波が辺りに伝播し範囲内の敵を纏めて刈り取るが、穴はすぐに塞がってしまう。

 

「ちっ、多すぎんだろ…」

 

 

仮想剣技(ソードスキル):セレーション・ウェーブ

 

「でやぁっ!!」

 

キリトが左の剣を叩きつければ、鋸刃のようなエフェクトが放射状に広がり、当たった敵をその場に縫い付ける。

 

剣技連携(スキルコネクト):ライトニング・フォール

 

叩きつけの反動を利用して前方宙返り、逆手に持った右の剣を地面に突き刺すと周囲にスパークが飛び散り、動けなくなっていた灯篭頭が次々に消滅していく。

その穴もまたすぐに埋まる。

 

「キリがないっ、これじゃあ削り切られて負けるぞ…」

 

 

キーボードをあしらった双剣をワイヤーで繋ぎ、敵の軍団の中に投げ込む。

伸びきったところで大きく振り回し切断能力が付与されたワイヤーが、多数の敵を纏めて切り裂く。

空いた空間に、我先にと灯篭頭が殺到する。

 

「ホントに、もう…」

 

────助けて、お兄ちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな彩葉──」

 

赤雷のようなエフェクトが軍団を焼き、眼前のコンゴウを切り裂いた。

瞳孔が狭まり、赤く発光したような髪は肩まで伸びて、頬に赤い刻印が刻まれていた。

 

ㅤ⠀ㅤㅤ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ㅤ⠀ ㅤ⠀「 ───お兄ちゃんに任せとけ」

 

 

一振で人海が割れ、道が開ける。

その後を埋めるのは、同じように頬に模様が浮かぶ雷と乃依だった。

3つのレーン間には、山や湖等の障害物が存在しており、それらを飛び越えて来るにはそれなりの時間を要する。

加えて、1度落とされた乃依、雷までもが直線距離とはいえ帝アキラの登場に間に合うとは、到底考えられない距離の差があったはずだった。

 

 

 

 

 

 

「アキラ!?乃依に雷も!いくらなんでも早すぎるっ!なんで!?」

 

「テメェの声でアキラ呼びしてくんなキリト!なんか、こう…気持ち悪い!!」

 

「同感っ、だな!!」

 

「理不尽!?」

 

「自分のこと言われたみたいでイラッとするなぁ」

 

そんな気の抜けるやり取りをしていても、敵の進行は止まらず状況は逼迫(ひっぱく)している。

何より、1プレイヤーとしても見過ごせないものがあった。

 

「帝てめぇ!それチートじゃねぇか!!プロ人生棒に振る気か!?」

 

「かぐやちゃんの今後がかかってんだろ!?それに、可愛い妹からのお願いだ。どうってことないっての!!」

 

「俺らは大目玉だろうけどね」

 

「許容してここに居る」

 

「そう言うこと!っつーわけで、露払いは任せなぁ!!」

 

地面が割れるほどの勢いで敵軍に突っ込んで行く黒鬼。

ウルト使用時よりも早く翔ぶ3人は。

乃依がテンニョを、雷がコンゴウを、帝がズイリュウを相手取り、押し込んで道を開いていく。

 

「ったく!見上げたお兄ちゃんだよ!オラっ行くぞ2人とも!」

 

「あぁ!俺も見習わないとな」

 

 

「ごめん、ありがとう!お兄ちゃん!!」

 

 

双剣三対、黒が駆ける。

黒鬼が切り開いた道を3人は突き進む。

範囲技を多く持つハセヲが先陣を切り、取りこぼしは移動技が多いキリトが拾い、回り込んでくる月人はワイヤーを絡めた武器投擲で彩葉が潰す。

 

走る、疾る、奔る。

 

遠くで乃依がテンニョと相打ちになって残機が無くなった。

雷がコンゴウを落とした瞬間ホテイの体当たりで落とされる。

復活した乃依は合流を諦めて、自陣の防衛に周った。

 

「ぜぇぇりゃぁぁあ!!」

 

帝の渾身の一撃でズイリュウが沈んだが、同時にチートコードの対策が取られ黒鬼の快進撃が止まる。

 

月の軍勢、残り3。

 

テンニョ、ホテイ、ボサツ。

文字通り最後の攻防がはじまる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホテイ型が両手に蓄えたエネルギーからビームを撃ってくる。

長射程高威力のそれは正面から受ければ、たとえ防御姿勢でも脱落は免れないだろう。

 

仮想剣技(ソードスキル):ハウリング・オクターブ

 

相殺してしまえば、ノーダメージだよね!

なんて考えてるやつ以外は。

 

剣技連携(スキルコネクト):サベージ・フルクラム

 

剣技連携(スキルコネクト):デッドリー・シンズ

 

迫るビームを技後硬直を無視した剣技連携(スキルコネクト)で軒並み捌いて進んでいく。

1度で絶技、2度で奇跡、3度目はほぼ不可能な技術を、キリトは土壇場で成し遂げて見せた。

 

計18連撃。

致命傷となるものだけを選んで切り裂き、最小限のダメージで凌ぎきる。

懐まで飛び込まれたホテイ型は、最後の足掻きなのか体当たりをしかけてきた。キリトの何倍もの体躯を誇る月人が、その質量で眼前の敵を押し潰そうと迫る。

 

「まだここで落とされる訳にはいかないんだ、これで決めさせてもらう!」

 

掲げた剣に星空の光が集う。

それは黒の剣士の代名詞とも言える技。

それは窮地を幾度となく切り抜けた技。

 

「スターバースト...」

 

黒い瞳が、金色に輝く。

 

「ストリーム!!!!」

 

両手の剣が光の尾を引いて空間を満たし、一切の反撃を許さず敵を切り裂いていく。

嵐のような16連撃が、ホテイ型を細切れにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

琵琶から多数の光弾を放つテンニョ型に、ハセヲは手を焼いていた。

弾丸を切り裂く技量はないし、無視して突っ込む程の耐久も無い。そもそも、いくら防御力を上げてもこの弾幕では結果は同じ事。

 

「それなら、俺もやるしかねぇか…」

 

現実世界で、手元のキーボードにコードを打ち込みアバターデータの書き換えを始める。

 

「ジョブ・エクステンド!」

 

黒くトゲトゲしい鎧はなりを潜め、白を基調とした神々しさを感じる衣装へと転じていく。その手に持つ武器も2丁のマグナム型へと変わり、これまでの荒々しさは見る影もなくなった。

 

「帝にばっかドロ被せる訳にもいかねぇだろ」

 

Xthフォーム

 

今はもう無いゲームで使っていた仕様外の姿、所謂チートデータ。

連射できるマグナムは、零距離で高威力攻撃となり、複数相手に狙いを付ければ範囲攻撃となる。

双剣以上の手数で、大剣以上の威力で、大鎌以上の範囲を持つ攻撃を、あまつさえ移動しながら繰り出せるぶっ壊れ。

その性能をもって、迫る光弾を撃ち落としていく。

 

「キリトみたいな、タイミングを合わせて弾丸のど真ん中をたたっ切る真似はできねぇが。撃ち落とすならタイミング関係ねぇよな!」

 

そのまま光弾の雨を突破したハセヲはマグナム下部に付けられた刃で切りつけ、飛び上がる。

 

「JUSTICE!」

 

そのまま両手のマグナムを連射しテンニョを琵琶ごと削り取っていく。

 

「JUDGEMENT !!」

 

最後にチャージショットを放ってテンニョ型の胴体に風穴を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彩葉!」

 

「お兄ちゃん!」

 

キリトとハセヲがそれぞれの敵を相手取っている間に、彩葉は帝と合流してボサツ型を目指す。

ライブは終盤で、最後の曲も終わりを迎えようとしている。

 

ふたりは初めてとは思えない連携で灯篭の道を踏み越えていく。彩葉が剣を投げれば帝がそれを受け取り棍棒で潰し剣で裂く。そのままブーメランのように剣を投げ返せば複雑な軌道をして飛んでいく先に彩葉が先回りして受け取り、繋がっていたワイヤーを巻き取って巻き込まれた灯篭の頭が飛んでいく。

 

ツクヨミトッププレイヤーとアマチュアでもプロに届きうる2人は、しかし精彩を欠いた動きをしていた。

帝のほうはチートの反動で緩慢な動きになっており、彩葉はなれない本気の戦闘軌道で疲れが無視できないほどになっていた。

 

意識の隙間に攻撃を入れられ、バランスを崩した彩葉に灯篭頭が襲いかかる。

体制を立て直す暇もなく、1体、2体と何とか捌いていくが、無限にやってくるそれらに為す術はなく、遂に武器を落としてしまった。

 

何十体と飛びかかってくる灯篭頭が、やけにゆっくりと感じられる。

残機はもうないはず、復活はできない、誰が残ってたっけ、お兄ちゃんとキリトとハセヲか、あの3人なら何とかできるかな。

 

「……ごめん、かぐや」

 

自身の脱落を覚悟して、それでも睨み返す彩葉の前に割って入ったのは。

すぐ側で見守っていた帝だった。

 

彩葉に向かう攻撃の全てをその背で受けて優しく微笑んでいる。

 

「俺はもうまともには動けへんさかい、あとは彩葉に託す」

 

そう呟くと、彩葉の手を取って。

 

「…ん?ちょ、ちょい待って?何するん!?」

 

ボサツ型へと。

 

「行ってこい!彩葉ぁ!!」

 

ぶん投げる。

 

「ばっ!バカ兄貴ぃぃいいい!!!」

 

空中で何とか体制を立て直して、自分を放り投げてくれた兄を恨みがましく見れば、灯篭頭に飲み込まれて消えゆく中でも、こちらへ笑みを浮かべて親指を立てて見せた。

 

託された思いを胸に、武器も持たずに走る。

いくら雑兵であっても素手では倒せず、ただ避けてひた走る。

ボサツは目の前だった。あれを超えれば。天守閣にたどり着きさえすれば。

 

 

 

 

 

 

パンっと1つ

 

 

 

 

 

 

柏手(かしわで)が響く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間には自陣の、かぐやの目の前にいて。

かぐやは灯篭頭に囲まれていて。

自分も同じように囲まれて。

近くにはキリトとハセヲもいて。

乃依くんが慌てて走ってきていて。

 

上空は、数え切れないほどの月人で埋まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

その様相が、終わりを告げている。

巨大だったボサツが人と同じ大きさになって、かぐやの前に跪いている。

力が抜けて、膝が折れそうになって。

 

はるばるようこそ、なんて、労わるように声をかけるかぐやに

怒りやら、悲しさやら、寂しさやら

色々な感情が混ざって、こぼれそうになって

 

 

 

 

 

 

「壮観だな、次の相手はコイツらか?」

 

「ははっ、こりゃ手を焼きそうだ」

 

なんて言った白の銃士と黒の剣士を、

私も、かぐやも、乃依くんも、月人も変な顔して見てた。

 

 

──何言ってんだこいつら

 

 

「な、なに…言ってるの?ライブはもう終わったの。かぐやは月に帰らなきゃなんだよ!?」

 

「かぐや姫ってのは連れ去られて終わりだ、ならまだ終わってねぇ。」

 

「たとえ負けイベでも、抗ってみたいのがゲーマーなんだ。」

 

そう言った2人に大量の灯篭頭が押し寄せる。

撃ち抜き、切り払い、1歩1歩、歩みを進める。

 

そうだよね、まだ負けてない!

 

「かぐや!」

 

「…彩葉?」

 

「わたしも!わたしも、諦めないから!!だからかぐやもっ!」

 

伸ばした手を灯篭頭に捕まれ、そのまま羽交い締めにされる。

もがいても振りほどけず、それでも進もうと踏ん張る足に別の灯篭頭が組着いてくる。

 

こちらの援護をしようとした乃依くんも、あっさりやられて絶望的な状況だけど。負けてない、負けてなんかない。

 

「ありがとう」

 

だから行かないで。

 

「かぐやはもう、満足だから」

 

もっとちゃんと言って。

 

「彩葉」

 

やりたいこと、たくさんあるって

 

「……大好き」

 

 

 

現実に乗った温もりが、ふっと消えた。

 

 

 

光る雲に乗って、かぐやは上ってゆく。

大勢の月人と、犬DOGEに伴われて。

最後のライブに駆け付けてくれたファンのみんなに手を振って。

 

もはや手を伸ばしても届かないところまで上っていって、キリトやハセヲを取り囲んでいた月人も離れていって。

 

最後に、私に取り付いていた月人も、一礼して去っていく。

 

「…くそっ」

 

「これで、終わらせるわけ…」

 

月人が、かぐやにそっと羽衣を被せるとスッと表情が消えた。

一行は月へと歩みを進めていく。

 

突如、認知外空間(アウタースペース)が展開されハセヲは一般プレーヤーの認知の外へと身を置く

 

「ねぇだろ!!」

 

ぽーん、と

 

「来い、来いよ...」

 

高く響くチャイム音が

 

ミ・ツ・ケ・タ...

 

鳴った

 

私は「俺は」ここにいる「ここにいるっ!」

 

ハセヲの声に、神となった少女の声が重なる。

 

「スケェェェェィスっっっ!!」

 

巨大な白い死神が、その腕に砲塔を顕現させ光の雲を狙う

 

「連れていかせねぇ!」

 

放たれたデータの塊は、かぐやごと月人達を飲み込み、電子生命体としての在り方を書き換えひとつのアイテムへと落とし込む。

月光の涙(Tear Drop Moon Light)

 

1粒の雫が、ハセヲの手に握られていた。

 

「それでは!かぐやちゃんのラストライブお疲れ様会を始めます!乾杯!」

 

「「「かんぱーーい!!」」」

 

月人との決戦から1週間、関係者が集まって打ち上げが開かれていた。

場所はダイシー・カフェ。キリト改め、桐ヶ谷和人と旧知の仲である黒人男性が切り盛りしてるカフェで、

 

「酒寄、お前も混ざってきていいんだぞ。何せ主役なんだから。」

 

「いえ、体動かしてた方が落ち着くのでっ!」

 

酒寄彩葉のバイト先でもある。

 

「やらせてやれよエギル。酒寄も気が気じゃないんだろ」

 

「今回の事件、私個人としても非常に興味をそそられる。落ち着いたらこちらへ。当事者の1人として話を聞きたい」

 

「大切な人と離れ離れになる辛さはよく分かるけど、根を詰めすぎないようにね」

 

集まったのは黒鬼の3人と芦花、真実。ハセヲこと三崎 亮と上司だという火野 拓海。桐ヶ谷和人の恋人の結城明日奈。

和人は所用で遅れるとの事で、先んじて明日奈が来訪していた。

 

「ありがとうございます。料理を運び終えたらお邪魔します」

 

そうしてしばらくの談笑の後、カフェのドアベルが軽快になった。

現れたのは、黒目黒髪、黒のシャツに黒のジャケットと黒のパンツ。

全身真っ黒の桐ヶ谷和人だった。

 

「悪い待たせた」

 

「キリトくん、お疲れ様」

 

「キリトさん!ど、どうでした?」

 

「おう。ぶz『かぐやっほー!!』...この通りです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦後、月へと帰るかぐやと月人を見送った一同は1番参ってるであろう彩葉を見やる。

 

「みんな、お疲れ様でした。本当にありがとう……先帰るね、ごめん。」

 

「いろ」

 

ログアウトする彩葉に声をかけたのはハセヲだった。

ずいっと伸ばされた手のひらに乗ってたのは青白い光を放つしずく型の宝石。受け取って説明欄を見ると、文字化けして読めなかった。

でも、何故だか暖かく感じる。ツクヨミに五感は実装されてないのに。

 

「そいつには、かぐやの意識が込められてる」

 

「……え?」

 

「電子生命体みたいなものなんだろ?俺には、データならどうにかする方法があった。成功するか分からないし、失敗すれば二度とかぐやには会えない手だったけど。知人が、力を貸してくれてな。セキュリティが固くて手間取ったみたいだが」

 

「じゃあその宝石を解凍なりなんなり出来ればかぐやちゃんとまた会えるってか?」

 

「おー、良かったじゃん。彩葉ちゃん」

 

「謎は残るが、バッドエンドより余程良いな」

 

「じ、じゃあやろうよ!すぐやろう!ど、どうすればいいの!?」

 

「分かんねぇ」

 

「は??」

 

「かぐやと一緒に月人共まで巻き込んじまった。無理に開けようとすれば全部混ざったナニかが出てくるかもしれない。かと言って適切な開け方なんて知らねぇし...」

 

「は、ハセヲがやったんでしょ!?」

 

「そもそも、どうやったんだよ?それが分かれば開け方もわかるだろ?」

 

「きぎょーひみつだ、ぶっちゃけ俺自身も分かんねぇし」

 

「そんな...」

 

「期待を返せ〜!」

 

「彩葉を泣かせるな!」

 

観客席で応援していた芦花と真実も声を上げる。

その場の全員であーだこーだと案を出すが、結局これといった解決策は出ずに1度帰るかとなった所で。

 

「私、歌を書く」

 

「え?」

 

「かぐやがどこにいても届くような。眠ってても聞けば飛び起きてくるような歌を書いてうたう!」

 

「いいな、それ。歌は世界だって超えられる、電子の海を渡ってどこまでもさ」

 

「だな。私はここに居るって、叫んでやれ」

 

そう決意して1週間。

彩葉は学校を休んで作曲に没頭した。

母親からの小言も全部受け止めて、言い合って喧嘩して、そのうえで

 

「ええよ、やってみ」

 

そう、言葉を貰って。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、完成したのは打ち上げの前日。

完成してから泥のように眠って、起きたら連絡くれと言われていたキリトへメールを送った。

迎えに来ると言うから急いで身支度をして、連れていかれたのはとある企業の一室。

薄暗い室内に沢山のモニター、人が寝転がれる大きさのコフィン、足の踏み場がないほどのコードの海。

 

それと、メガネをかけた胡散臭い男性。

菊岡というらしい。

曰く、電脳世界に異世界を作ってるのだとか。

 

「信じられないだろうけど本当のことだ、かぐやにはこの中で目覚めてもらう」

 

で。

アンダーワールドと呼ばれる世界で歌い、それに反応した宝石から溢れる溢れる大量の月人。

その中に座す、見目麗しき月のおてんば姫。

 

「おかえり、かぐや」

 

「えへへ、ただいま。彩葉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『んで!かぐやはアンダーワールドでお仕事と引き継ぎを終わらせて、ここにきたってわけ!』

 

「じゃあてめぇが仕事投げ出したのが悪りぃんじゃねぇか!!」

 

至極真っ当な三崎 亮のツッコミに、タブレットの中のかぐやは涙目になった。

 

「アンダーワールドと現実世界じゃ時間の流れが違うとはいえ、それなりに待つことには変わりないからな。酒寄さんには先に行ってもらって、俺が残ることにしたんだ。」

 

「私もわがまま言っちゃって。桐ヶ谷君には迷惑かけました。」

 

一緒に残ると言って聞かない彩葉を説得するのは、さぞ骨が折れたことだろう。

(うやうや)しく頭を下げる彩葉にあたふたしている和人を見て、一同は笑みをこぼす。

 

月光の涙(Tear Drop Moon Light)からサルベージ出来たはいいものの、かぐやの体は復活しなかった。

体の構築は曰く《もと光る竹》の機能であるらしく、そこを経由しなければ肉体の構成は出来ないとの事だった。

 

「月人ってのは恐ろしいね。うちの選り抜きのハッカー達が手も足も出ないんだ。こっそり解析しようとしたら逆にハッキングされていくつかのデータがおじゃんになったよ」

 

『電子生命体にケンカ売るもんじゃないぜ?』

 

アンダーワールド内で月人たちのデータを抜けと指示した菊岡は、手痛いしっぺ返しを食らったようで。サーバー内には10人程のリョウサン型が居座り、いくつかのフォルダがアクセス不可になってしまった。

飄々と笑ってはいるが、顔色は悪いし心ではさめざめと泣いているのかもしれない。

 

「自分の意思で行動し、月に世界を作ったAIか。是非とも交流を測りたいところだが」

 

『月人って基本的に感情無いからねぇ〜。話が合う以前に、会話出来るか難しいよ?』

 

一方アウラという支えを失い、AIDAの侵食によるプレイヤーの未帰還事件などに対処してきた火野は、未だ再開の目処が立っていないゲームサーバーの新たな神にと画策したが、感情面に難アリと言われ諦めることにした。月とは違い、世界の運行は無感情では成り立たない故に。

 

そうして穏やかに時間がすぎる中、不意に彩葉が顔を上げた。

 

「ん、どしたの?彩葉」

 

「なんか、歌が聞こえた気がする」

 

「うた?」

 

「うん、これは。……ヤチヨの、デビュー曲?」

 

 

 

 

 

 

 

打ち上げもそこそこに一同はツクヨミへとログインすると、黄昏の空を反射する水面にひとつ浮かぶ鳥居のある空間。いわゆる、初回ログイン時の空間へと招かれた。

そこにヤチヨが立っている。

 

「やおよろ〜、神々のみなさま。初めまして、月見(るなみ)ヤチヨです。」

 

「ヤチヨ?どうして私たちを呼んだの?」

 

「輪廻が巡ったので、諸々の説明をしようかと。気になるでしょ?月人達が、何故こちらに来れたのか。とか」

 

「てめぇが呼び寄せたとか言うんじゃねぇだろうな」

 

「ご名答〜!流石ハセヲ、状況把握はバッチリだね」

 

「ご名答じゃないよ!なんでそんな事したの!?ヤチヨも...かぐやを連れてっちゃうの?」

 

「そんな事しないよ〜。フム、そうだねぇ。少し昔話をしようか」

 

 

 

 

昔々、月に帰り損ねたかぐや姫は異世界でバリバリ仕事をこなし、無事引き継ぎまで終わらせて地球のみんなの元へ帰りました。

引き継ぎをされた高性能AI、『身代わりかぐやちゃん人形』は、月人と一緒に月へ向かい、毎日毎日、同じ仕事を繰り返していました。

 

そこに歌が聞こえたのです。

 

楽しげで、賑やかで、幸せそうな歌が。

 

それを聞いた身代わりかぐやちゃん人形は、自分も地球に行ってみたいと思うようになりました。

バリバリ仕事をこなし、無事引き継ぎまで終わらせて、月の偉い人に許可を貰ってもと光る竹に乗りいざ地球へ。

その途中、大きな石にぶつかってしまいどうにか辿り着いた先は、なんと8000年前の地球でした。

 

 

「色々なことを経験したよ。繁栄と争い、衰退。楽しいこともあったし、それ以上に悲しい思い出もあった。そうして過ごしていくうちに、この世界にはツクヨミが無いことに気がついたの。」

 

「じゃあ、ヤチヨは...」

 

「うん、たくさん頑張って、ツクヨミを作ったよ。お母さんと会いたかったから。ヤッチョは…ヤチヨは、かぐやの子供なのです」

 

「ヤチヨ...」

 

「ヤチヨ!!」

 

「かぐや?」

 

「教えて!ヤチヨのこれまで!楽しかったことも、悲しかったことも全部!かぐやは...私は、お母さんだから!」

 

「...ふふっ。ありがとうお母さん。でも教えてあげない。これはヤチヨだけの、大切なものだから。」

 

「でも...でも......!」

 

「ね、お母さん。ぎゅってして。お願い」

 

そう言って両手を広げてかぐやを待つ。

不安と期待を織り交ぜた視線でかぐやを見る。

駆け出して、飛び込んで、力いっぱい抱きしめてあげる。

 

「はぁ、いいなぁ。きっと暖かくて...お日様みたいな香りがするんだろうなぁ」

 

感じてみたいなぁ。

 

「わかった。私、やりたいことができた!」

 

2人の抱擁を見て彩葉は覚悟を決めた。

連れ戻すだけじゃ終われない。

感動の再会は、ハッピーエンドじゃない。

 

「最高のハッピーエンドにするから。それまで付き合ってよね!」

 

 

 

 

 

 

 

酒寄彩葉による、最高のハッピーエンド計画その1。

かぐやとヤチヨの体を作る。

 

「ヤッチョは電子の歌姫なので。現実に身体は要らないかなぁ」

 

「なんでぇ!?!?」

 

身体作ろうよぉ!あったかいよぉ?お日様の匂いするよぉ?

と騒ぐかぐやを宥めながら、ヤチヨはツクヨミを今後も運営していくのに、肉体は不都合らしく自身のアバターボディの制作を望まなかった。

 

という事で。

 

酒寄彩葉による、最高のハッピーエンド計画その2。

ツクヨミに五感を搭載する。

 

「視覚じゃなく、脳と直接情報をやり取りするタイプのフルダイブ型なら簡単だけど、スマコン経由で神経に影響与えるのってかなり難易度高いぞ?」

 

と言うのはキリトだった。

スマコンで出来るのは簡単な脳波の読み取り位で、ツクヨミ内で感じる感覚の大部分は視神経によるものらしく。何かを食べたと感じることは出来ても、味を想像させるには本人の体験が必要になってくる。

 

「スマコンが感覚に影響与えるほどの出力を持てば、目が焼かれるだろうな。」

 

と、ハセヲ。

KASSENのプレイでも仄かに熱を帯びるくらいである。

視覚、聴覚の他。触覚、嗅覚、味覚の再現となるとどれほどの負荷がかかるか。

そこに協力を持ちかけてきたのは火野もとい、八咫だった。

 

「アウタースペース経由でなら、ある程度の再現は出来るのではないか?」

 

という事で、認知外空間(アウタースペース)を認知できるメンバーでシステムを構築。スマコンにかかる負荷をそちらに負担させることで、総ユーザー数1億人もの五感をツクヨミ内に再現することを可能にした。

 

ここに至るまで、5年。

沢山の人の協力があったとしても、その土台を作り上げたのは彩葉に他ならない。

かくして超人は、電子世界を現実とした。

 

最も、これで餓死者なんて出ようものなら二度とヤチヨに会えなくなるので、プレイ時間が12時間を超えたら強制ログアウト措置の後、8時間のログイン禁止がなされるようにはなったが。

多数のプレイヤーから不満の声が上がるが、正論を盾に無視を決め込むことにした。

 

 

さて、次の課題はかぐやの身体。

 

骨格と内蔵、筋肉と皮膚、五感。

人に備わるそれらをそのまま再現するのは、不可能だった。

 

まず、人は数字を意識して体を動かしていない。

バランスを取りながら片足を浮かして、重心を前に移しながらあげた足を下ろす。これの繰り返しを歩行と言う。

 

しかしどの程度の時間をかけて足を上げ、どれ程の角度で体を前に傾け、何秒のタイミングで足を地につけるかなんて考える人は居ないだろう。

それを全て数値化してモーションを作成する必要があった。

コントローラーを叩いても、それに対応するモーションが無ければ動かないように。

ただ形だけ作ったヒトガタにかぐやを入れても、その身体は動かない。

しかし感覚による部分を数値化するのは困難極まる。

人はこの感覚を、乳幼児期に養って成長していくのだ。

 

酒寄彩葉による、最高のハッピーエンド計画から凡そ10年。

ようやく、そのプロトタイプが完成した。

 

お披露目に呼ばれたのはブラックオニキスと芦花、真実。

そして2人の剣士。

招待客が、各々挨拶を交わしながら入ってくる。

 

「ねぇかぐや」

 

「なぁに〜?彩葉」

 

「ドッキドキで、叫び出しそうだね!」

 

「...にへっ。うん!かぐやも!」

 

 

めでたしめでたしまで、あと少し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはそうと、ヤチヨの身体も用意したからね」

 

「なんで〜???」

 

「かぐやは家族団欒をしてみたいのだ!フフン♪」

 

 

 

 

 


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