わたしのはなむこさん。   作:たけのこ教徒

15 / 15
第15話

 

 オレの部屋で、三人――正確には二人と一匹で、さっきの事について話し合っていた。

 さっきの事。

 つまり、オレが銃を出した事だ。

 

「で、あれは何なんだ?」

 

 店長の奥さんにもらったピザ風ホットサンドを一口かじりながら、オレはミィルに聞いた。

 ちなみに、半分はすでにミィルに狙われている。

 

「アレはショーゴの能力よ」

 

 ミィルはベッドの上にちょこんと座り、妙に真面目な顔で言った。

 

「ショーゴの心の奥底にある“想い”が形になったもの。潜在意識の具現化、と言い換えてもいいかしら」

「潜在意識の、具現化?」

 

「ええ。無意識に抱いていた憧憬や願望……“こうなりたい”とか“こうありたい”っていう想いが形になったものよ」

 ミィルは尻尾を揺らす。

 

「心当たりはない?」

「憧憬や願望……想い、ねえ」

 

 言われて、少し考える。

 思い当たるものはあった。

 小さい頃から、アクション映画や特撮が好きだった。

 二丁拳銃で敵を撃ち抜く主人公。

 華麗に立ち回るヒーロー。

 子どもの頃は、そういう姿に普通に憧れていた。

 身体を鍛え始めたのも、そういう影響が少しはある。

 

「……それで、二丁拳銃か」

 

 ぽつりと呟く。

 

「まあ、納得できない事もないな」

「レイチェルの能力も同じよ」

 

 ミィルがレイチェルを見る。

 

「うん」

 

 レイチェルは小さく頷き、そっと右手を前に出した。

 淡い光が集まる。

 そこに現れたのは細身の剣。レイピアだった。

 

「わたしは、小さい頃に読んだ物語の主人公に憧れたの」

 

 レイチェルは鞘を優しく撫でながら言う。

 

「少し弱気だけど、マスクをかぶって、剣一本で街の問題を解決していく人で……怖くても逃げなくて、誰かのために前へ進む主人公だった」

 

 その声は、少しだけ照れくさそうで。

 でも、とても大事なものを話すみたいだった。

 

「わたしも、そんなふうに困難に立ち向かえる勇気がある人になりたいって、ずっと思ってた」

「……なるほどな」

 

 レイチェルらしいと思った。

 派手に暴れるんじゃなくて。

 誰かを守るために前へ出る。

 だから、レイピアなのかもしれない。

 

「その能力ってのは、みんな武器になるのか?」

「いいえ」

 

 ミィルは首を振った。

 

「武器以外にも、何かを作る力だったり、守る力だったり、治す力だったり、本当に色々よ。人の想いはそれぞれだから、私でも全部は分からないわ」

 

「ほうん……」

 

 オレは自分の両手を見る。

 もう銃はない。

 けど、まだ感触は残っていた。

 重さ。冷たさ。反動。

 

「じゃあ、なんでオレはその能力が使えるんだ?」

「それは分からないわよ」

 

 ミィルはあっさり言った。

 

「こっちの世界には魔法とかないんでしょ?」

「ないな。創作の中だけの産物だ」

 

 少し考えてから続ける。

 

「……まあ、オレがこうして能力に目覚めたから、実はあったんじゃないかって気もしてきたけどな」

「その可能性もゼロではないわね」

「マジかよ」

 

 否定してほしかった。

 

 ◇◆◇

 

「あの影さ」

 

 ふと思い出して、オレは口を開いた。

 

「ん?」

 

 レイチェルがこちらを見る。

 

「あいつ、最後に何か言ってた」

「何て?」

「はっきり聞き取れたわけじゃないんだけど」

 

 頭の奥に残っている声を探る。

 低くて、歪んでいて。

 でも確かに、言葉だった。

 

「……花婿、って聞こえた気がした」

 

 部屋が静かになった。

 レイチェルが瞬きをする。

 ミィルだけが、ぴたりと動きを止めた。

 

「それに」

 

 オレは続ける。

 

「あの影、よく見たら……ヴェールを纏った花嫁みたいにも見えた」

 

「……」

 

 ミィルの耳がぴくりと動く。

 表情から、笑みが消えた。

 

「どうした?」

 

「……もしかしたら」

 

 小さく呟く。

 

「心当たりがあるの?」

 

 レイチェルが聞く。

 ミィルはすぐには答えなかった。

 少し考え込み。

 それから、小さく息を吐いた。

 

「……その前に」

「?」

「あなたたちに話さなきゃいけない事があるわ」

 

 その声は、いつもの軽い調子ではなかった。

 オレも、レイチェルも。

 自然と姿勢を正した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~(作者:水瓶シロン)(オリジナル現代/恋愛)

「ぎゅって、して……?」▼「構ってくれないと闇落ちしちゃうよ……?」▼ 高校入学を機に一人暮らしを始めた『御守望』は、青春を勉強とバイトに費やすような限界貧乏生活を送っていた。▼ 幼くして両親を失っている望が頼れる人は、田舎に住む祖父母くらいだが、なるべく負担は掛けたくない。▼ そのため、睡眠時間を犠牲にして死に物狂いで勉強することによって好成績を維持し、入…


総合評価:4724/評価:8.71/連載:89話/更新日時:2026年07月03日(金) 12:07 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>