「そんなことがあったんだ。大変だったね」
「ああ、本当に大変だったよ。あれだけのピンチにあったのは久しぶりで、流星街を出て初めて命の危険を感じたよ」
エックスがクロロとルパンと一緒に囚人に変装して軍艦島に侵入してから数時間後。命からがら軍艦島の警備システムから逃げ出してスラムにある拠点に戻ってきたエックスが軍艦島で起こった出来事をシズクに話すと、彼女は相変わらずの無表情でそう言って、エックスはシズクの言葉に何度も深く頷くのであった。
「それにしてもあの軍艦島の『アレ』は何だったんだ? アレが例のナノマシンを使った警備システムじゃねぇのか?」
「俺はそうだと思っていたんだけど、流星君とクロロは違うって言うんだよ。そうだろ?」
軍艦島で襲いかかってきた警備システムについて聞いてくる次元にルパンがエックスとクロロの方を見て答えると、さっきからパソコンで何かを調べていたクロロが返事をする。
「ええ、そうです。アレはズフ国が研究開発した技術でナノマシンと同様の効果を発揮するのは間違いありませんが、アレは『電力等で動くナノサイズの機械』ではなく『オーラで動くナノサイズの物質』です。……これを見てください」
そこまで言うとクロロはパソコンのモニターにある画面を表示させて、拠点にいる全員がクロロの元に集まるとパソコンのモニターを見ると、モニターには何かの金属片が映し出されていた。
「これは?」
「軍艦島でルパンさんが警備システムに攻撃された時にズボンに付着していた金属の粉……警備システムの一部です」
「う……! あ、あれか……」
ルパンの質問にクロロが答えると、ルパンは軍艦島で尻を切り裂かれそうになった時のことを思い出したのか、両手で自分の尻を隠して嫌そうな顔となる。
「それでこれを見てください」
「何だコリャ? 模様か?」
「いや、文字かもしれぬぞ?」
「……これは『神字』ですね」
クロロがパソコンのモニターを指差すと、モニターの中の金属片には模様にも文字にも見えるものが刻まれており、それを見て次元と五右衛門が首を傾げているとエックスが金属片に刻まれているものについて説明する。
「神字は念能力の効果を補助することができる模様でもあり文字でもあって、神字が刻まれているってことはあの警備システムが念能力で動いている何よりの証拠です。……でもそれって、あの警備システムを作っている金属の粒一つ一つにこれと同じ神字が刻まれているってこと?」
「気が遠くなるくらい細かい話だよね。それにしてもズフ国って高い技術力を持っていたって聞いたけど、念能力にも詳しかったんだね?」
エックスの言葉にシズクがそう言うとクロロが一つ頷いてから口を開く。
「そうだな。俺も詳しくは知らないが、ズフ国の南にあるカキン王国には古くから念能力が『呪術』という形で伝わっているという噂話を聞いたことがある。もしかしたらズフ国はそのカキン王国の『呪術』を知って、その原理を自分達の持つ技術に組み込んだのかもしれないな。それでその呪術を組み込んだ技術で作ったのがあの警備システムだとしたら、色々と辻褄が合う」
「……でも、だったら俺達だけだと突破は難しいんじゃないか?」
クロロの言う噂話を元にした推測にエックスは難しい顔をする。
念能力で施された封印などといった仕掛けは、特定の条件を満たさなければ何をしても外すことができない場合が多い。軍艦島の警備システムが念能力によるものであったなら、あの無数に襲いかかってくる紐のようなものを上手く避けて先に進んだとしても、その先にある封印に阻まれてエックス達だけでは打つ手がない可能性が大いにある。
「この場合、軍艦島の警備システムを解除する『鍵』はズフ国の王家の血を引くパニシュそのものだと思うんだけど……」
「パニシュは今、監獄に行っているんだよね?」
「そうなんだよなぁ……」
エックスは軍艦島の警備システムを突破できる可能性があるのはパニシュだけだと予想するのだが、肝心のパニシュは今ある目的のために監獄にいるのだとシズクに言われて、ため息混じりに返事をするのであった。