今回は希代ちゃんの卍解お披露目回です。
次話は来週日曜日を予定していますが、もしかしたら再来週に延期するかもしれません。
その時は私生活が忙しいんだなと思っていただければと。
早朝。
二番隊、隊舎。室内訓練場。
そこでは二番隊副隊長の大前田希代が正座をし、その前に『千重垣』を置き、目を瞑り、刃禅を行なっていた。
大前田家の庭を模した希代の精神世界で、本日もニコニコ元気に市松人形サイズのお姫様が言い放つ。
『希代、遊びませんか?』
そんな千重垣に希代は少し不貞腐れながら呟く。
「千重垣様、またですか?……いつになったら御卍解様の修行をしてくれるのですか?希代は拗ねてしまいます」
『卍解もう使えますわよ』
「ああ、なるほど。今日は御卍解様で遊ぶ………はい?」
『使えますわよ。卍解』
「…………」
『希代?』
「希代は知りませんよ!?」
『自身の事ですのに。マヌケですわね!』
千重垣がさらっと卍解を習得していることを教えてきた。希代にとっては寝耳に水で慌て出す。……千重垣の言う通り自身のことなのに本当に気付いていなかったらしい。
「で、では! いつから使えたのでございますか!?」
『さあ?』
「また『さあ?』ですの!?」
『気付いたら』
「気付いたら!?」
『希代が私を「千重垣」と呼んだ辺りでは、もう』
「…………」
『どうしましたの?』
「…………希代が?」
『ええ』
「千重垣様を?」
『ええ』
「呼び捨てに?」
『ええ』
「そんな御無礼を!?」
『そこですの!?』
希代は卍解習得より千重垣を呼び捨てにしてしまった事実にショックを受ける。
「申し訳ございません千重垣様ぁ!!」
『だから様はいりませんわぁ!!』
ダッダッダッダッダッダッダッダッ
ダンッ
「ソ、砕蜂様!大変です!」
「希代、お前が足音を出すなど珍しいな」
希代が執務室へと勢いよく入室すると、室内でお茶を飲んでいた砕蜂が珍しく騒がしい音を立てる希代に視線を向ける。
(……ん?霊圧が乱れている。……卍解習得の予兆か?)
「砕蜂様!希代は千重垣様を呼び捨てにしてしまいました!」
「……ん?」
「それから、御卍解様も習得していたとのことです!!」
「…………」
砕蜂が希代の言葉にしばし無言になってから、ポツリと呟く。
「……希代」
「はい!」
「別に『御』も『様』も必要ないと思うが?」
「ですが御卍解様です!」
「…………そうか」
午後。本日出勤している二番隊の隊士達は急務がある者以外全て野外訓練場に集められていた。そんな隊士達の前に立った砕蜂がいつもの声量でありながら全ての者に聴こえるように凛とした声で話す。
「今朝方、我が隊の副隊長、大前田希代が卍解を習得した」
「「「「「おお〜!」」」」」
「卍解の詳細を聞き、広域展開型であることが分かった為、今回の訓練の内容を変更する」
「「「「「…………あっ(察し)」」」」」
「訓練内容は単純。時間まで戦闘継続可能であること。………無様は晒すなよ?」
「「「「「………………」」」」」
砕蜂の言葉により一瞬で隊士達の目から光が消える。それでも一言も驚愕の声を上げる者が一人もいないのは流石は隠密機動なだけはある。……が、静かなのは音だけで雰囲気は阿鼻叫喚であり、多くの者が目で会話をしだす。
(おい!大前田副隊長の卍解の詳細知ってるヤツいるか!?)
(いるわけ無いだろ!今朝方習得したって言ってただろうが!!)
(……取り敢えず、始解ってどんな能力だったっけ?)
(確か、小さな鉄球を複数生成して、その鉄球から遠隔で縛道を放つか、その鉄球の中に縛道を籠めて爆弾のようにするかだったはず)
(なら、卍解はその上位互換と見るべきか)
(もしかしたら、鉄球が大きくなるのかも知れない)
(いや、砕蜂隊長が広域展開型と言っていたから小さな鉄球の生成速度が上がったんじゃないのか?)
隊士達があれこれ目で会話していると砕蜂が希代に卍解をするように言う。
「希代。始めろ」
「はい!」
希代は砕蜂に返事をして小刀型の千重垣を鞘から音も無く引き抜く。そして――
『御卍解様』
(((((………ちょっと待って)))))
希代の解号に全ての隊士が心の中でツッコんだ。が、隊士達の心の声虚しく希代の霊圧が上がって行く。
『千重垣』
希代が名を呼ぶと同時に小刀型の千重垣が煌びやかな小槌へと変化する。それを見ていた隊士達がまたもや目で会話をする。
(え?待って。御卍解様で卍解できるの?)
(そこに持っていかれるなよ!?できてるんだからそれよりも能力を見極めろよ!!)
(……形は始解と同じか。なら、能力拡張と見て良いだろう)
(問題は、大きくなるか、多くなるか、だな)
隊士達が能力を見極めようと希代を凝視する。希代はその場で上に跳び千重垣を頭上に掲げ、勢いよく振り下ろした。
ボンッ
すると、千重垣の先端からコミカルな爆発音と共に長径10メートルはあるかという巨大な棘付き鉄球が現れた。
(((((………デカッ)))))
出現した鉄球のあまりの大きさに唖然とする隊士達。
(………大きくなるのが正解か?)
(……しかし、このあとあの鉄球をどうするんだ?)
(あの鉄球のトゲの先端から縛道が放たれるとか……)
(いや、アレが転がってきて、触れると縛道が発動するのかもしれん)
(……破道が発動する可能性は?)
(((((それは無い)))))
(俺も同じ考えだが根拠は?)
(((((大前田副隊長だから)))))
(同じだな!)
そんな会話を隊士達がしていると鉄球が風船のように割れた。
パンッ
「「「「「………え?」」」」」
余りにも唐突だった為に今迄無言だった隊士達の口から唖然とした声が漏れる。
そして、割れた鉄球の中からゴルフボールサイズの小さな鉄球が無数に出て来て、天へと昇っていき、あっという間に鉄球で曇天が作り上げられた。
「「「「「…………あっ(察し)」」」」」
「……希代、内訳を説明してやれ」
「はい!」
砕蜂に言われて、希代が元気よく説明する。
「六十番台が4割、七十番台が3割5分、八十番台が5分、ハズレが2割です!」
隊士達は希代の言葉を直ぐ様理解し、顔を青ざめさせていく。そんな中、砕蜂が言い放つ。
「もう一度言うぞ。貴様ら、無様は晒すなよ?」
砕蜂が不適な笑みを浮かべながら言い終わると同時に空の曇天が泣き始めた。