Skybound Ace 【Redux】 作:心ここにあらず
ーーバギャァァァァァァァァァァン!!
「「「ぐっ!!」」」
青城が誇る3枚ブロックを吹き飛ばす程のリオのスパイク。成長期ともあり昨年から身長が更に伸び筋肉量が増えた事でスパイクやサーブ…全ての能力が格段に上昇している
「…いやはや、本当にウシワカのようですね。ウチのブロックがまるで機能していない」
「うむ。…なおさらうちで取れなかったのは痛いな」
そう話すのは青城首脳陣の2人…監督である入畑とコーチの溝口である。2人が話す通り、元々青城はリオを第一特待生として勧誘していたのだが断られてしまった。
更に言えば
「何よりも烏野は"彼だけではない"」
ーードパァァァァァァァァァン!!
「しゃあぁぁぁ!!」
入畑がそう話す目の前で烏野の10番、日向翔陽がブロックを掻い潜りストレートのコースにスパイクを打ち切る。
「神凪君も勿論のこと、私は"彼"のことも評価していたのさ。」
「10番、日向君ですね」
「あぁ。決して体格に恵まれているとは言い難い…しかしそれを補って余りある跳躍力と万能力。何より彼は"自分がバレーにおいて不利"な事をよく分かっている」
「…不利…ですか?」
入畑の脳裏に過ぎるは昨年の秋頃…雪ヶ丘へと日向と神凪をスカウトする為に訪れた日のこと。
『ーー私は君のことをそれだけ高く評価している。小柄ながらチーム得点数は神凪君に続く2位。何よりも驚くべきはその"万能性"…』
『…』
『スパイクやサーブは勿論のこと、レシーブやトスにおいても素晴らしい能力を身につけている。私はそこを1番高く評価しているんだよ。』
『…ありがとうございます。』
『是非ウチに来てほしい。』
翔陽は少し考えるような仕草を見せる。
『すいません。凄く嬉しいんですけど…俺…もう決めてるんです』
『…どこか聞いても?』
『はい。…烏野に行きたいんです』
『烏野?…なぜ烏野なんだい?』
そこから翔陽は語りだす。自らの原点…バレーを始めるようになったきっかけをーー
『だから俺は"小さな巨人"になる為に烏野にいきます!』
『…茨の道かも知れないよ?』
『分かっています。バレーにおいて高さや力は確かに重要です。今の俺じゃあどう足掻いても"それ"でリオには勝てない。』
『…』
『でもーー
"道は一つじゃない、正解なんてないんですよ"』
『っ…』
入畑は翔陽から放たれた言いようのないプレッシャーに気後れする。40を超えた大人がまさかこんな歳の離れた…それも小さな少年に気後れするとは思いも寄らなかった。
『どんなに強靭なブロックが現れようとも交わして打ち切ります!そんでスパイクだけじゃない、ブロックにレシーブ、トスもサーブも全部上手くなって俺がエースになります!…それがあの日…"俺が憧れた小さな巨人の姿"だから』
「…本当に惜しい人材を逃したものだな」
「ですねぇ。神凪だけでも強力な武器なのに彼は彼で別ベクトルの強さを持っていますからね」
「…彼が本当に"小さな巨人"と呼ばれる日も近いのかも知れないな」
「え?何か言いましたか?監督」
入畑は神凪だけでなく日向までもがここまで厄介な存在になったことに頭を悩ませる。
「…なんでもない…それに烏野は彼等だけじゃない」
「…はい」
「冷静さは足りないがパワーと気概に溢れる選手の田中くん。若干覇気に欠けるがクレバーなプレーをする月島君。攻守ともにオールラウンダーな動きを見せるキャプテンの澤村君。…そして冷静なトス運びと強力なサーブ…何より」
「…笑っていますね…影山」
2人の目の前には心底楽しそうにトスを上げプレーしている影山の姿。北川第一の頃から知っている2人としては驚きを隠せない。…あの頃は常に眉間にシワを寄せ側から見ても苛立っているのが分かったほどだったはずだ
「…言い方は悪いが、仲間に恵まれたようだな彼は」
「…北川第一では物足りなかったと?」
「…彼レベルだとそう映ってしまったんだろう。北川第一も名門だ。それ相応の実力を持った選手達が揃っているが…彼、影山君は所謂"天才“と言う奴なんだろう」
「及川も言っていましたね。"トスワークなどは既に自分より上手い"かも知れないと」
故に発生してしまった“天才故の飢え"
もっと…まだいけるはずだ…なぜ出来ない…やらない理由がわからない
どこまでも上手くなることに貪欲な影山と平凡な中学生選手達である北川第一のメンバーではあらゆる面で衝突が起き亀裂が発生したと北川第一の監督から聞いていた。
しかし
今影山の近くにいるのは己と同等かそれ以上の才を持ち、尚且つ中学時代に己に敗北を味合わせた影山からすれば自分が越えるべき壁と認識していてもおかしくない。
そして影山はおそらく今楽しくてしょうがない筈だ。自分のトスに要求以上のスパイクで応えてくれるスパイカー達。切磋琢磨し合う本当の仲間と出会えた今、彼の成長は再び加速する。
「「んな!?」」
その時だった。影山がネット際へ滑り込むように入り、二本目のボールへ跳ぶ。
誰もが思っただろう――セットだ。…誰に上げる!!
リオも日向も既に助走へ入り、青城のブロッカーも左右のスパイカーへ意識を向ける。ブロッカーである岩泉達もまた、トスコースを読むべく一歩距離を取った。
しかし――
影山は空中でボールを両手に収めようとする"仕草"のまま、一瞬だけ身体を反転させる。
「……っ!?」
その動きに金田一の瞳が見開かれる。セットモーションから…その形を最後の最後まで崩さない…しかし
次の瞬間ーー
影山の右腕が鞭のようにしなり、ネット際から鋭く振り抜かれた。
「ツーだァ!!」
叫び声が上がった時には、既に遅い。
ーーーバギャァァァァァァァン!!!
叩き込まれた一撃は、ブロックが完成するよりも速く青城コートへ突き刺さる。
「「んな!?」」
ブロッカー含め誰も反応できなかった。最後まで”セット”にしか見えなかったのだ。影山は着地すると、静かに息を吐く。その横では日向が思わず笑い、
「影山このやろう!!」
神凪も「今のは俺でも読めなかったわ」と肩をすくめる。入畑は腕を組んだまま、小さく息を漏らした。
「……今のは技術だけではない。ブロッカーだけでなく、レシーバーの重心移動まで計算に入れたプレーだな。」
溝口が頷く。
「トスという”セッターの常識”を逆手に取った……影山君だからこそ成立する二段攻撃ですね。」
入畑は苦笑する。
「神凪君と日向君という強力なスパイカーがいるからこそ、相手は最後までセットを疑えない。その一瞬の迷いを、影山は一切逃さない。…天才は足を止めない…か」
コート中央で影山はネット越しに金田一を見据える。その瞳には挑発でも慢心でもない。ただ、自分がまた一歩、“セッター”として進化したという確かな自信だけが宿っていた。
◆
「認めよう」
「「「…っ」」」
「烏野は強い。…少なくとも今のお前達より」
入畑は第一セットが終わりインターバル第二セットまでのインターバル間、集まった選手たちへと声をかける。
「この結果だ。キャプテンだとかセッターがいないだとか今更言い訳を並べたところで向こうの強さには関係ない。」
「「「っ…」」」
悔しさからか不甲斐無さからか選手たちは皆下唇を噛み締めるように顔を顰める
「"だからこそ"…向こうの強さを認めた上で対策を教えよう。良いか?今から烏野は白鳥沢クラスの敵だと認識しなさい。ポジション的にも個性的にもこれ程の対白鳥沢の練習相手はいないぞ?」
そう入畑が溢した瞬間…いや…"白鳥沢"の名が出た辺りか?2、3年…特に3年生の目付きが変わる。先ほどまでの反省の色に染まった瞳ではない。闘争心に溢れた瞳へと変貌を遂げている。
反対に1年生…金田一や国見はその様子に訳もわからずただ疑問符を浮かべていた。
「あ〜りゃりゃ。」
「「「っ!?及川!」」」「「及川さん!!」」
「やっぱリオ君やチビちゃん、ついでにトビオまでいると流石にウチでも不利かぁ。…早めに来てよかった」
現れたのは及川徹その人である。
「準備は出来ているのか?」
「3分ください。必ず"今の"最大値まで持って行きます」
この男の影響は計り知れない。人体で言う心臓。オーケストラで例えるなら指揮者…それほどこの男の影響は大きい。
そしてそれに烏野サイドも気づく。
「…翔陽、影山」
「ん?」「あ?」
「見ろ…出てくるぞ。…あの人が」
「っ!及川さん!?怪我明けじゃあ…」「うぉぉぉ!生であの人のバレー見れんのか!」
影山は及川さんと同中で1年の頃に体感してるんだったな。翔陽は俺が及川さんを探っている時に一緒に動画やら何やらで見ていたからプレーは見たことある。
「どうしたんだお前ら??ありゃ、やけに盛り上がってんな向こうのコート」
向こうの異変に気づいた田中さんを含めたチームメイト達が耳を傾けてくる。
「「「きゃぁぁぁ!!及川さ〜ん!!」」」
若い女性達の黄色い声援が響き渡る。視線の先にはアップを始めた及川さんだ。
『皆さん。あの優男誰ですか?僕凄く不快です』
「「あはは…」」
女子に熱視線を送られている及川に対して田中さんは激怒しているようだ。ただでさえヤンキー顔なのに今はもっと迫力がやばい
「及川さんです。超攻撃型セッターで攻撃もチームトップクラスだと思います…あと凄い性格が悪いです」
最後のは私怨だろ。まぁあの人のバレー選手としての実力は俺も認めているところ。
「追記させて貰うとサーブも半端ないです。威力はほぼ俺と同等…制球に関しては向こうが上手です。」
「あの殺人サーブよりも!?」
俺の中で目下県内最強セッターは紛れもなくあの人だ。影山もポテンシャルでは負けてないと思うが、トス運びを除いて殆どの能力が影山の上位互換と見ても良い。…これを言うと怒りそうだから黙っておくけど
まぁ、なんにせよこれで県内No.2 青葉城西が完成した。
俺はアンタと戦う為に烏野を選んだんだ
「…はは…滾ってきたぜ」
「っ…」「あん?どうした日向」
野生の本能?でリオから放たれたプレッシャーを感じ取った翔陽は驚いて飛び退いた。
両チームのボルテージが上がる。練習試合と謳われたこの一戦…後に何度も激闘を繰り広げることになる烏野と青城の開戦の合図であった。
◆
「よぉしお前ら…"信じてるよ"」
「「「っ…おう!!!」」」
及川の言葉にメンバーは気を引き締める。ただの言葉、指導者でもプロでもない、言ってしまえばただの高校生が言い放った一言。…しかし及川徹という人間を知る青城メンバーには"それ"が開戦の狼煙となる。
サーブ権は青城サイドから…そしてトップサーバーはーー
「…翔陽、キャプテン」「おう!」「…っ」
烏野サイドの後衛はリオ、翔陽、澤村のローテでありレシーブに最も自信のある布陣である。
そして次の瞬間ーー及川のサーブにより鳴り響いた轟音が体育館に児玉する。
「っ!キャプテン!」
狙われた方角にはキャプテンの澤村。
「っ…んな!」
(曲がった!)
豪速球で放たれたボールは澤村の前で急カーブ、構える箇所より更に左側面へと曲がるボールに澤村もなんとか対応するがボールは腕に当たり会場の二階席まで吹き飛ぶ。
「しゃあ!!」
「ナイサー及川!」「ナイサー!」「及川さん!!」
青葉城西の空気感が完全に反転した。キャプテンの復帰、そして会心のサービスエース…これ以上ない場面を作り出した及川には脱帽である。
「これが及川徹のサーブかぁ!!受けてみてぇ!!」
「んな!次俺に打ってこないかなぁ!!」
「くそっ!俺は後衛じゃねぇからまだ及川さんのサーブには触れねぇ」
烏野サイドはあまりの威力に沈み掛けていた…が若干2名…いや3名あの強サーブを体感してなお心踊る者達がいた。そしてその者達を目撃した者達もまた負けてられないと沈み掛けていた意識を立ち直らせる。
及川の2球目ーーまたもや豪速球で放たれたサーブは烏野サイドへ
「リオ!」
「んぐ!!」
次はサイドで構えるリオの元へ…リオは瞬時に落ちる方角へと確認する。そして勢いよく腕から飛び込み辛うじてボールを拾うことに成功する。
「カバー!!」
しかし上がったボールはラインを超え得点板付近へと…
「おう!!」
リオの声に反応した翔陽がその運動神経でフォローするものの、態勢と位置的に強打やトス運びは出来ず、最後に影山がアンダーで戻すこととなる。
「「チャンスボール!!」」
誰だ、誰に上げる。
「「っ!せーの!!」」
及川のトスはスパイクを待つエース・岩泉へと上がる。
それを見た影山と月島がリードブロックで二枚ブロックを作り防壁する。
しかしーー
「うぉぉぉ!!」
「「っ!?」」
(なっ!さっきより明らかに"高ぇ"!!)
(威力も絶対違うでしょこれ。)
岩泉のスパイクは2枚ブロックを構える2人の手を吹き飛ばし烏野コートへと着弾する。2人は先ほどまでとは明らかに違う打点の位置と威力に驚愕する。
これが及川徹…特に岩泉の場合幼少期からの付き合いと言うこともあり及川以上に岩泉を理解している者はいない。とすれば岩泉が最も得意とする打点、回転…最も輝ける場所へとアシストする能力は及川を持って以外に成し遂げられない阿吽の呼吸。
勿論、岩泉本人も実力者なのは間違いない。名門・青葉城西でエースを張っている実力は伊達ではない。
しかしそこに及川徹のアシストが加わることでエースから県内でも屈指の大エースへと変貌を遂げる。
これが及川徹最大の能力であるとリオは認識している。味方のポテンシャルを己が理解している以上に引き出す正しく"天性の司令塔気質"である。
お分かりだと思いますけどまだ日向達に変人速攻はありません!まだ!ね!
リエーフはどこに進学すべき?
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音駒!音駒以外あり得ない!
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梟谷!木兎とのダブルエース見てみたい!
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井闥山でしょ。