STARWARS――銀河の悪意を纏う薔薇   作:鉅鹿

8 / 8
8話 砂塵の逆転、開戦の号砲

バルコニーに吹き荒れる赤と紫の火花。激しい剣戟の中で、メイス・ウィンドゥは冷徹に戦況を分析していた。

 

目の前の狂咲する少女――ドラヴェナの『ジュヨー』は、底知れぬフォースに裏打ちされ、付け入る隙がない。このままバルコニーという狭い足場で戦い続ければ、背後の分離主義者達の防衛網を切り崩す前に、こちらの形勢が不利になる。

 

ウィンドゥは一瞬の隙を突き、紫の光刃を大きく払うと、そのまま後方へと跳躍。バルコニーから遙か下の闘技場へと鮮やかに降り立っていった。

 

「あら、逃げますの!? 実に無様ですわね、ツルピカおじ様!」

 

ドラヴェナが勝ち誇った声をあげるのと同時に、闘技場の各ゲートから地響きを立てて、無数のB1、B2バトル・ドロイドの大軍が入場を開始した。

 

闘技場を埋め尽くす鉄の波。200人のジェダイ達は背中を合わせ、必死に応戦する。が、圧倒的な「数の暴力」を前に次々と光刃を消され、バタバタと砂の上に倒れていく。

 

その凄惨な乱戦の最中だった。アリーナへ降りたウィンドゥが、生き残っていた猛獣リークの執拗な突進を受け、体勢を崩した拍子にライトセーバーを手放してしまった。光刃を失い、砂にまみれるジェダイの最高幹部。バルコニーからそれを見ていたジャンゴ・フェットの目が、ギラリと光った。

 

「――仕留めるか」

 

ジェダイの首を、あるいはその象徴たる武器を手に入れんと、ジャンゴは背中のジェットパックを爆音とともに点火。一気にアリーナへと急降下していった。しかし銀河一の賞金稼ぎの計算を上回る速さで、ウィンドゥはフォースを使い、手放したライトセーバーを瞬時に手元へと呼び戻した。

 

更に最悪なことに、興奮したリークが横からジャンゴへと激突。その牙がジャンゴの背中を強打し、ジェットパックが火花を散らして完全に故障してしまった。推進力を失い、砂地へと転がるジャンゴ。ライトセーバーを構えたウィンドゥの冷徹な視線が、確実に彼へと定められる。

 

(しまっ――)

 

ジャンゴが死を覚悟した、その刹那。

 

「――私の猟犬を、勝手に殺そうとするんじゃありませんよ!」

 

バルコニーから放たれた、ドラヴェナの強大なフォースの奔流が、ジャンゴの身体を包み込んだ。彼女は目に見えぬ力でジャンゴの巨体を強引に持ち上げると、ウィンドゥの刃が届くより早く、凄まじい速度で特等席へと引き戻したのだ。

 

バルコニーの床にドサリと不時着し、危機を脱したジャンゴ。彼は荒い息を吐きながらヘルメットを脱いだ。その顔には冷や汗が浮かんでいる。

 

「……ふぅ。命拾いした。ありがとよ、お嬢ちゃん。借りができちまったな」

 

「大したことありませんわ! 貴方にはまだ、デス・ウォッチとの橋渡し役という重大な仕事が残っていますの。こんな場所で犬死されては困りますのよ!」

 

ドラヴェナがツンと顔を背けた時、これまで父親の背後に隠れて完全に気配を消していた少年ボバ・フェットが、震える声を絞り出すようにして一歩前に踏み出した。

 

「……ありがとう、お姉ちゃん。父さんを助けてくれて」

 

人との関わり合いに慣れていない少年なりの、必死の感謝。だがドラヴェナは相変わらず傲慢に、鼻で笑ってみせた。

 

「フン、だから大したことありませんと言っているでしょう。そんなに私に感謝したいなら、もっと面白い絶叫でも聞かせてちょうだいな」

 

やがて、闘技場の中央で生き残ったジェダイは、わずか20人足らずにまで数を減らしていた。完全に包囲され、絶体絶命。それを見下ろすドゥークー伯爵は勝利を確信し、ドロイド達に一時武器を下げるよう命令した。そしてアリーナの中心に立つウィンドゥへ向けて、威厳に満ちた声を響かせる。

 

「マスター・ウィンドゥ! 降伏したまえ! これ以上、無益な血を流す必要はない!」

 

だが紫の刃を構えたウィンドゥの眼眸に、屈服の二文字はなかった。

 

「断る! 我々は人質になる気はない、伯爵!」

 

交渉は決裂した。ドゥークーが処刑の再開を命じようとした、まさにその時――。地鳴りのような重低音が、ジオノーシスの赤茶けた天空から響き渡った。

 

見上げれば、雲を割って急速に降下してくる5隻の巨大なガンシップ。それらは凄まじい速度でアリーナの上空へ展開すると、搭載されたレーザー砲塔を一斉に掃射。凄まじい光線と爆鳴が走り、包囲していたバトル・ドロイド達を一瞬にして木っ端微塵に破壊していった。

 

凄まじい砂煙を上げてアリーナへ着陸するガンシップ。そのハッチから飛び出してきたのは、一糸乱れぬ動きでブラスターを構える兵士達だった。彼らが身に纏う白い装甲服――それは、今隣にいるジャンゴ・フェットのマンダロア・アーマーに酷似していた。ドラヴェナは、想定外の事態に琥珀色の瞳を見開いた。

 

「……な、なんですの、あれは!? 一体どこからあんな軍隊が……!」

 

「――あれが、俺のクローンさ」

 

ジャンゴが、感情の読めない声でポツリと呟いた。ドラヴェナの脳内は、未だかつてない混乱に叩き落とされていた。

 

カミーノでクローンを製造しているという話は聞いていた。だが何故ジャンゴの遺伝子から作られた軍隊が、独立星系連合ではなく、ジェダイを助けるためにカミーノから現れたのか。しかしジャンゴはそれ以上の説明を拒むように、ヘルメットを被り直した。

 

「じゃあな、ドゥークー。お前との仕事はこれまでだ。……安心しな、秘密は守る。俺は余計な政治の争い事に巻き込まれたくないんでな。ボバ、行くぞ」

 

「あぁ。今までご苦労だったな、ジャンゴ。息災でな」

 

ドゥークーは裏切られたとも怒っているとも取れない、静かな声で傭兵の離脱を認めた。

 

「ちょっと待ちやがれですわ、ジャンゴ!」

 

混乱するドラヴェナが声を荒らげる。ジャンゴは去り際に彼女の方に向き直り、口を開いた。

 

「嬢ちゃんとの取引は生きてるぜ。さっき命を救ってもらった恩もある。……デス・ウォッチの件は、また後で連絡する。死ぬんじゃねえぞ」

 

それだけを言い残し、ジャンゴはボバを連れて、混乱するバルコニーから煙のように去っていった。だが、ドラヴェナはジャンゴを追いかける気にはなれなかった。

 

今、彼女の天才的な脳細胞を支配していたのは、凄まじい速度でドロイド軍を蹂躙していく、あの白い装甲の兵士達――クローン・トルーパーの脅威だった。

 

(もし……もしも、あの兵士達が、数十万、数百万規模の大軍であったなら……?)

 

ジェダイの救出は、単なる前哨戦に過ぎない。彼らはこのジオノーシス全土へ向けて、すでに大規模な攻勢をかけてきているのだ。これが意味するのは、ただ一つ。独立星系連合と、銀河共和国の――本物の『戦争』の始まり。

 

しかし、共和国側は完全なる奇襲を仕掛けてきた。今やバルコニーの分離主義者達は悲鳴を上げて逃げ惑い、完全に後手に回っている。

 

加えて、あの空中から現れたガンシップの圧倒的な火力と機動性。ドラヴェナの冷徹な計算が、最悪の答えを弾き出す。あの戦闘艇が数十隻、数百隻と戦場に投入されれば、地上にB1やB2といった鈍重なドロイドを何十万体並べたところで、ただの格好の的に過ぎない。

 

(このジオノーシスの戦い……負けますわ)

 

どれほどフォースが強かろうと、この大軍勢の激突という大津波の前では、個人の力など無力に近い。ドラヴェナの顔からいつもの残忍な笑みが消え、冷徹な戦士の表情へと変わる。彼女は隣のドゥークーへ視線を向けた。

 

「お義父様、ここはもう保ちませんわ。私は一足先に撤退させていただきます」

 

「あぁ、賢明な判断だ。私もすぐにここを離れるとしよう」

 

ドゥークーの言葉を最後まで聞くことなく、ドラヴェナはドレスの裾を翻し、弾かれたように走り出した。目指すは、彼女の忠実な猟犬――メイリスが待つ格納庫。銀河中を巻き込む地獄の業火が、今まさにジオノーシスの砂漠で燃え上がろうとしていた。

 




ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!もし「続きが気になる」「この残忍な少女の今後が見たい」と思っていただけましたら、お気に入り登録や評価をいただけますと、執筆の大きな励みになります!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生して型月版・沖田総司になったけど、労咳を克服したら明神弥彦の母になっていた件 〜るろ剣世界で最強のママやってます〜(作者:だいたい大丈夫)(原作:るろうに剣心)

かつて京都を震撼させた「人斬り抜刀斎」と並び称された、新選組一番隊組長・沖田総司。▼労咳の運命を越え、彼女が手にしたのは平穏な明治の世と、亡き夫が残した一人息子・弥彦だった。▼しかし、その剣はまだ、錆びついてはいない。▼「たまには人を斬っておかないと、腕が鈍るでしょう?」▼昼は息子の教育に頭を悩ませる士族の未亡人。夜は月夜に紛れ、暗殺者として死体の山を築く。…


総合評価:3132/評価:6.78/連載:88話/更新日時:2026年06月07日(日) 22:37 小説情報

はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません(作者:何を書けばいいんだ)(原作:ガンダム)

CE71年、大西洋連合が実施したオーブ解放作戦によって発生した激しい戦闘の最中、マユ・アスカは流れ弾によって吹き飛ばされ絶命したかに思えた。▼だが彼女は死んでいなかった、瀕死の重傷を負いつつも生き残った彼女はブルーコスモスによって加工され、生体CPUメリー・ゴーランドとして生まれ変わったのだ。▼しかし、過去の記憶を抹消された彼女の脳内にはなぜかガンダムSEE…


総合評価:9713/評価:8.7/完結:32話/更新日時:2026年07月07日(火) 12:07 小説情報

鋼は錬金術師(作者:むつきばな)(原作:魔法科高校の劣等生)

▼十三束 鋼。▼いまの俺の名前だ。▼どうやら魔法科高校の劣等生の世界に憑依転生してしまったらしい。▼お兄様がヒャッハーする世界で生きてくとかマジで嫌なんだけど…。▼まぁ、転生してしまったのだから仕方ないか。▼


総合評価:12629/評価:8.12/連載:19話/更新日時:2026年06月30日(火) 00:00 小説情報

魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?(作者:南亭骨帯)(原作:僕のヒーローアカデミア)

▼ この世の中の超常現象の九割以上が『誰かしらの個性だろ』で片付けられてしまう今日この頃。▼ ヒーローを目指す少年、森岸詠士(もりがんえいじ)が発現した個性の名は【魔法】──現代社会に喧嘩を売るような代物だった。▼「炎を操ったり風を吹かせたりもできねぇのに魔法使いなんざ名乗ってたまるかァ!?」▼ ……尚、攻撃魔法は一つもない模様。▼ ※注意!▼ 本作は他作品…


総合評価:14888/評価:8.3/連載:115話/更新日時:2026年07月15日(水) 12:31 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>