◇剣咲刀華の視点◇
「ふわぁぁー、美味しい~~~!」
佐々木さんが美味しそうに食べている。
しばらく、迷宮で人間的な食事を取れなかった彼女のために、冒険者の町には似つかないおしゃれなカフェに入ったが正解だったようだ。
糖蜜のかかったアップルパイを幸せそうにほおばる彼女を見てそう思った。
私はルーシーさんと佐々木さんと一緒に町に買い物に来ていた。
ラミアに生まれ、これまで人間と交流してこなかった佐々木さんに、この世界の常識を教えるようにマコトくんに頼まれたからだ。
それ以外にも、私が彼女に聞きたいことがあったのだが。
それはルーシーさんも佐々木さんもだろうな。
彼女は肝心のお金の使い方は相場はすぐに飲み込み、どんな商品があるのかも覚えてしまった。
そうして私たちは休憩のためにここで食事をしているのだった。
「アヤってホントに美味しそうに食べるわよね」
「だって、美味しいんだもん。前までは生の魚とかカエルをかじってたんだよ」
「そ、そう」
「………私のも食べますか?」
「いいの!?ありがとう!!」
彼女の話があまりにも哀れでパスタを差し出してしまった。
それも彼女はとても大事そうに美味しそうに食べた。
まあ、気持ちは分かるよ。佐々木さん。
久しぶりに食べるちゃんとした食事って美味しくてビックリするよね。
私は前世から病院の薄い味付けの食だったし、この世界に来て最初は剣だったから食事を取れなかったんだ。
この体を手に入れて最初に食べた大将の串焼きは今でも思い出せるくらい衝撃的だった。
久しぶりの味に私は涙を流して、周りを慌てさせてしまったのも仕方ない。
彼女の姿を観察する。
(かわいい子だな.....)
ルーシーさんのように美人系ではなくかわいい系。快活そうな様子で、彼女の今の表情もあって、その魅力が存分に引き出されている。
人を魅了して食らうというラミアだからだろうか?その容姿にはどことなく非人間的な可愛さがあった。
この子がゴールドランクのニナさんや私を装備したマコトくんよりも強いんだよね………
とても、そうとは思えないよ。
「ねえ、今朝は何をしていたの?」
ルーシーさんが彼女に世間話をふる。話の場をあっためて知りたいことを聞くためだろう。
「えっとね、高月くんが大迷宮に行くからお弁当作ってたの」
「えっ?」
「そ、そんなことを……」
何それ!そんなことしてたんですか!
それは盲点だった。それなら、一緒に食事も取れてかつ彼の好みを聞くことのできる手段だというのに。
ルーシーさんもその手があったわねと言っている。
「へ、へぇ………ところでまことって何が好きなの?」
「うーん、高月くんはジャンクフードが好きだから、味が濃いものが好きだけど……。冒険者って栄養が偏るって聞いたから野菜多めのサンドウィッチを渡したよ。」
「………」
彼の生活バランスまで考えて........!
私たち二人が彼女の女子力の高さと自分たちの低さに戦慄しながらも、会話が進む。
「高月くんって、学校だと全然友達を作る気がなくって。私、最初話しかけるとき緊張したなぁ」
「高月くんの部屋に、初めて入った時、ビックリしたよー。何にも物がないんだもん!昔から使わないものは、売っちゃうか、捨てちゃうんだよねー」
「高月くんって、昔からクールだったけど、こっちに来て更にカッコよくなってたなぁ。『明鏡止水』スキルだっけ?私も欲しいなぁ。」
彼女から出てくるのは、高月くん、高月くん、高月くん、高月くん。
ルーシーさんが「昔のマコトくんってどんなだったの?」って振ってからずっとこの調子である。
(この子、マコトくんのこと好きすぎやしないだろうか)
ルーシーさんのようなムーブを前の世界でもしていたなら、こうなるのも仕方ないかもしれない。
はぁ~、難儀な人を好きになってしまいました。
私は
◇ルーシー・J・ウォーカーの視点◇
落ち着いた人だな。
私がトーカと初めて話したときの印象はそうだった。
巨神様が出たダンジョン。
彼女は私たちを逃がすためにマコトと二人?で殿を務めた。
そうして、巨神様が敵じゃないと分かって、それで彼女の正体もバレて。
トーカと一緒に過ごしてきて気づいたのは彼女がマコトのことが好きだということだった。
冒険に出るときは、彼といつも一緒。
時々、ギルドのホールで彼を目で追っていることがある。
マコトが一人で冒険に出かけると、誰とも知れず「.......早く、帰ってきませんかね」とつぶやく。
いや、あんた。どんだけ好きなのよ。
私は、
トーカは、アヤが「トーカちゃんはどうして高月くんと仲良くなったの?」と聞いて、始まった話をしていた。
「彼は暗い森の奥で魔物から隠れていた私を見つけて町に連れて行ってくれたんです。見ず知らずの初対面の私を信頼して私を運んでくれたんです」
「世間知らずの私がしつこく質問しても嫌な顔せずに答えてくれるんです。普通はうんざりするほどの質問をしてしまったのに……」
「困っている人がいたら何も言わずに助けてあげるんです。毎日途切れさせることなく魔法の修行をするほど努力家ですし」
うわ~。トーカってばアヤに負けないくらいマコトのことが好きじゃない。
はぁ、どうしようかしらね。
◇佐々木あやの視点◇
(美味しい~~~)
あたたかいパスタにふかふかのパン、サクサクのアップルパイ、最後には甘いミルクティー。
(幸せ~。こんな美味しいものを食べられるなんて、生きていて良かった~)
前まで食べていた生の魔物肉にはもう戻れない。なんでラミアには料理文化がないのか。こんなに美味しいものを作れるのに。
家族が死んで一人ぼっちになって、復讐のためだけに生きいた時には、暗くて食事なんかは栄養取れればいいみたいな感じだったからね。
高月くん、カッコよくなってたな~~。
前も落ち着いていたけど、今は『明鏡止水』スキル?でさらにクールになっていた。でも、時々、前の無邪気さが顔をのぞかせてそれがギャップでさらに魅力的に感じるようになっていた。
まあ、だからなのか........
(女の子二人と冒険しているなんてね……)
しかも、美人。
一人は紅い髪に瞳の耳のとがっている女の子。
ファンタジーで良く聞くエルフという人種で、前の世界では見たことないくらいとっても美人。
露出も多くてとってもスタイルがいい。
もう一人は白紙に緑がかった黒目の女の子。
私と同じ異世界人で、何か剣に変身していたけど、実は剣の姿が真の姿らしい。
どこか、はかなげな空気を纏っていてそれが彼女の美貌を引き立たせている。
そして、
(はぁ~、前の世界では全然人気なかったのに)
高月くんは人と関わらないから親しい人は私や藤原くんぐらいだったのに、こっちの世界に来てからモテモテになってしまっていた。
二人はどっちか高月くんと付き合っているんだろうか?
最初はただのパーティーの仲間。しかし、毎日冒険に行くうちに距離が縮まっていき、そして……
「好きです、高月くん!」
「俺も好きだよ」
そうして二人は抱き合ってキスをして終了。
(うわ~、変なこと考えちゃった)
でも、そんなのは嫌だ。
二人はいい人だ。初めて会ってからの謝罪や慰め、今日の私への親切を見ればそんなことは分かり切っている。
だけど、
私が一番、彼のことを思ってきた時間が長いのだ。
一人ボッチになってしまった私が再開した愛しい人。
絶対、渡すもんか!!
◇高月マコトの視点◇
「くしゅん」
くしゃみが出た。誰か俺の噂をしているんだろうか?
体調が悪いわけではないし。
俺は隣にいるニナさんに言う。
「すいません、ニナさん。手伝ってもらって」
「いえいえ。ご主人様からは、できるだけ力になるようにと言われてますかラ」
俺たちが今いるのは、大迷宮の中ではなく、外。
ダンジョンの外側から、地底湖の天井を目指している。
メンバーは、ニナさんと俺の二人だけ。
理由は『隠密』を使える面子が2人だけだったからだ。
さーさんは、現在スキルの練習中。
それにパーティーの女性陣は今日、さーさんの勉強のため、買い物に行っている。
大迷宮を3日かけて、マッピングスキルを使ってくまなく探したがハーピーの巣への道は見つからなかった。
ハーピーは、空飛ぶ魔物なので地上からの道は無い可能性が高いと思っていた。
そこで、ダンジョンの外から地底湖の吹き抜けになっている天井部分を探索することにしたのだ。
「木がうっとうしいですね」
ダンジョン外は、うっそうと茂った木々が視界を邪魔する。
「高月様、お気をつけて。ダンジョンの中ではないとはいえ、魔物がいる可能性がありまス」
「敵探知のスキルと、ニナさんの聞き耳スキルがあれば多分、気づかないってことは無いと思いますよ」
ウサギ耳族であるニナさんは、獣族の中でもっとも聴覚に優れているらしい。
「魔物がいますね」
「はい、迂回しましょウ」
余計な戦闘を避けるため、魔物の気配を察知すれば遠回りする。そのため、道中は時間がかかった。
「……」
「……」
草木を分けながら、もくもくと進む。
無言が続く。なんか気まずい。
うーん、何か気の利いたことの一つも言えないのが、つらい。
桜井くんとかだったら、会話に困らないんだろうなぁ。と思っていたら、ニナさんから話題を振られた。
「高月様は、ご主人様と異世界の時からのご友人なんですよネ?」
「そうですよ。といっても前の世界での付き合いは1年くらいですけど」
それにしてはふじやんには、色々世話になっている。
感謝が尽きない。俺にはもったいない友人だ。
「高月様に少々聞きたいことがありまして」
「何ですか?」
ふじやんのことか?
「ご主人様の好みの女性とはどんな人なんでしょうカ?」
そっち系の話題かー。
彼女居ない暦=年齢の俺に聞かれてもさぁ。
しかし、ニナさんにはお世話になっているしな。真摯に対応しよう。
「基本的には、獣耳の女性が好きですよ」
これは本当だ。前の世界からその性癖についてはさんざん教えられたから、間違いない。
今でも『猫耳亭』で飲む時は、獣耳の素晴らしさを100回くらい説法されてるからね。
「それは存じてるんですが……」
ニナさんの長い耳は、しょんぼりと垂れている。
「何か不安なことが?」
「私がいくらモーションをかけても、乗ってくださらないんですヨ」
「……」
「この前は、寝室にかなり際どい格好で行ってみたのですが、手を出してくださらなくて……」
思ったよりアダルトな相談だったよ!
無理だ……俺には、この会話は荷が重い。ふじやん、何で手を出さないんだよ!
ニナさん、可愛いじゃん!
「もしかして、私の気持ちに気づいてないのでしょうか……?」
「いや、それは無いと思いますよ」
100%気づいてるから大丈夫!心読めるからね! 彼。
「かくなるうえは、夜這いするしか……」
「……」
ニナさん、ウサギなのに肉食系女子!
「マッカレンの領主の娘は、ご主人様に気があるようですし……」
「ああ、クリスティアナさんでしたっけ?」
「汚いやつなんですヨ! ご主人様の飛空船の航路を確保するために、色々と要求してきて」
まあ、権力者ってそんなもんだしね。
「今度、ふじやんにさりげなく聞いておきますよ」
「是非!」
この話題が続くのがきつくて、安請け合いしてしまった。良かったのかなぁ。
はぁ~、ルーシー、さーさん、トーカさん。そして元凶のふじやん、俺を助けてください!
そんな会話をしているうちに、目的の場所に近づいてきた。
「マッピングスキルによると、そろそろ地底湖の上あたりですね」
「高月様のマッピングスキルは、相当精度が良いですね。こんなに広大なエリアをカバーできるなんて」
そうなんだ?あまり、意識したことなかった。
これは、『RPGプレイヤー』スキルに内蔵されているものだから、普通のものの性能がどんなものか知らないのだ。
「止まりましょう。ハーピーがいますね」
「ええ、見張りみたいです。3匹いますネ」
敵探知にひっかかったのは2匹までだった。やはり、ニナさんがいてよかった。
しばらく観察していると、見張りらしきハーピーが、穴から出てきたハーピーと交代した。
どうやら、その付近に巣があるので間違いないようだ。
「巣の場所は、ほぼ特定できましたね」
「見張りがやっかいですガ」
「一度、戻りましょう」
ハーピーに気づかれないよう、そっと俺たちは冒険者の町へ戻った。
心情描写、難しい。
トーカちゃん、ルーシー、さーさん、ニナさんの順番で彼女たちの心情を書かせてもらいました。少し時間が掛かりました。
次回、ハーピー戦
すみません、学校がテスト期間のため、また少し更新を休みます。
すぐに戻ってくるつもりですが、帰ってこなかったらエタったものと思ってください。
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なにとぞ、よろしくお願いします