スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄 作:魔法史編纂委員会
クィディッチ大会第二戦。対戦カードはスリザリンvsグリフィンドール。
セラフィーナにとってはなにげに初めての対戦相手である。
愛箒のミスティことミスリルアローを片手に、フィールドに整列する。
試合前のキャプテン同士の握手はどちらが相手の右手を粉砕するかのバトルと化していたが、骨折することはなく、選手は箒に跨って飛び立った。大歓声の中、ボールが次々と解き放たれ、最後にスニッチが飛び立って試合開始の笛が鳴った。
◆ ◇ ◆
セラフィーナはゆっくりと旋回して高度を上げ下げしながら試合運びを見つつ
ポッターもまたぐるぐると旋回してスニッチを探し回っている。その動きを上空から見るのは初めてだったが、やはりいい動きはしている。
(完全に感覚派って感じかしらね。いい動きしてる)
上空高くから俯瞰していると、妙なものが目に入った。
黒い犬とオレンジ色の猫が座っている。珍しいというか、変な光景ではある。
黒い犬、黒い犬。何か──何だっけ。
まあいいか。今は試合中だし。
戦況はスリザリンが50-30でリードしている。練習の成果あってか、
ポッターも少しおとなしく高度を上げて捜索モードに入った。フィールド内はひと通り見終わったのか、上の方を見ている。よし、やるか。
彼の近くにそれとなく移動し、それからセラフィーナは突然急降下を始めた。
風が顔にへばりつくほどの勢いのそれにポッターはスニッチを見つけられていないまま本能的に追随する。
そして地面に激突する寸前に思い切り柄を引き上げて減速し、
──ちっ、立て直したか。
今のはウロンスキー・フェイントと呼ばれる技である。まあ技というほどのものだとセラフィーナは思っていないが、ともかく、スニッチを見つけたフリをして油断した敵シーカーの自爆を誘うテクニックだ。だがさすがにやられてくれなかった。
実際、スニッチはまだ見つかっていない。
再びセラフィーナは上空に戻って捜索モードに復帰する。
◆ ◇ ◆
ふとまたさっきの犬が目に留まった。
じっと座って、クィディッチを……観戦してる?
──シリウスは黒い犬だった。
ルーピン教授の憔悴しきった声がふと脳内で再生された。
黒い犬!?
そのまま突っ込んで捕獲するか?仮に違ったとしても捕まえてから考えればいいし……と
一瞬で思考が飛び、しかし同時に『選手は競技場の地上境界線から外に出ると反則になってクアッフルを敵に渡さないといけない』というルールが頭をよぎる。
その瞬間、ポッターが急降下を始めた。本能的に後を追って急降下しながら先を見る。あ、スニッチ。
さすがにここでフィールド外に飛びだして犬を捕獲に向かうほどセラフィーナも学生をやめているつもりはないというか、
──いや嘘。曲がりなりにもクィディッチ選手としての本能がその思考を叩き出した。そもそも衆人環視で違ったらどうするのという話でもある。少なくともマーカスはセラフィーナもろとも焼身自殺を試みると思うし、放っておけばポッターは数分もせずにスニッチを捕まえるだろう。
まあ、いいや。アレがもしそうなら、こういう場に出てくる可能性があるっていう情報が得られただけで十分ってことにしておきましょう。
……などという思考をほとんど片隅に、セラフィーナはポッターより遅れて上空からフルスピードで降下する。高度差を速度に変換してユニフォームが千切れそうな勢いでさらに加速し、ゆるく旋回しながら徐々に追いついた。そして並んだまま、内側から箒を加速させて
ポッターはセラフィーナと
スニッチがふと急停止して鋭角で上空斜め後ろに進路を変えた。
セラフィーナは身体をぐるりと
視界の端でポッターが片手で箒を掴んでぶん回されるように似たような動きを繰り広げているのを見つつ、飛び去ろうとするスニッチを落下しそうになるほどの急加速で追いかけ、腕を思い切り大きく振ってばしりとキャッチした。
──勝利、である。
そして凱旋飛行と見せかけて掴んだスニッチを片手で大きく掲げつつフィールドを一周しつつ、ちらりとさっきの黒犬を探すと、もう消えていた。ちぇ。まあ、仕方ないか。あたしも学生だし。
……しかし、さっきのはポッターがニンバスじゃなかったら勝ててたかだいぶ怪しかった。ふぅ。 最新の箒に乗り換えてこられたら絶対勝てるなんて言い切るのはとても無理だわ。敵ながらいい腕してる、やっぱ。
◆ ◇ ◆
優雅に地上に降り立つと、もう
「くそおおおお!!!」
と叫びながら悔しがっていた。うふ。
こちらのキャプテンであるマーカスがいつものようにばんばんと背中をたたき、セラフィーナはヒリヒリするくらいのそれに抗議のジト目を向けつつ、チームメイトと腕をぶつけて勝利を祝われる。いやいや、みんなも頑張ったし。最終得点は220対40。スニッチ分を差し引いても70対40で勝っていたのはさすが日頃の練習の成果って感じ。みんなおつかれ。
ポッターは箒を手に持ったままがっくりと肩を落としている。いや、うん、乗り換えなよ、それ。腕が勿体ないわよ。
とか言いつつ、セラフィーナはもうちょっと自分の練習にも力を入れようと内心で思った。本当に乗り換えてこられたら
いや、いや。クィディッチ選手目指してるわけじゃないからアレだけども。けど